ありあまるごちそうの紹介:2005年オーストリア映画。日々消費され余っては処分されてしまう食糧。それらはいったいどのように作られ又は採取され、どこから来るのか?食料の流通を改めて地球規模で現状と展望を考える。
監督:エルヴィン・ヴァーゲンホーファー 出演:ジャン・シグレール、ピーター・ブラベッグ、ドミニク・クルジュー、ヴィンセント・ジョゼ・プール、ほか
映画「ありあまるごちそう」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ありあまるごちそう」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ありあまるごちそうの予告編 動画
映画「ありあまるごちそう」解説
この解説記事には映画「ありあまるごちそう」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ありあまるごちそうのネタバレあらすじ:起
一日に廃棄されるパンの量は街一つ分であるにも関わらず、その原産国では重大な飢餓が起こっていると言う不均衡がある。
フランスのブルターニュで漁業を営むドミニクは、過去十年間、自ら培った知識と漁獲量をEUに申告している。これにより、大型漁船による漁業が盛んになった。
小型漁船と違い、長期間航海する大型漁船によって水揚げされた魚は売りものにはなるけれど、けして新鮮とは言えない。しかしヨーロッパの漁業は工業化されつつあり、一年中乱獲することで魚資源の枯渇をいずれは招く事になるだろう。
スペインのアルメリアでは、かつては産業も無く貧しかったが、栽培用のハウスを用いて冬場は野菜の産地の中心となった。しかしこの土地の絶頂期が過ぎた今は、競争相手の増加による農産物の不当廉価が進み、農業が破壊する寸前となっている。
ありあまるごちそうのネタバレあらすじ:承
またこのような廉価の野菜がアフリカなどへ流通し、その土地の農家は大打撃を受けている。ヨーロッパやアメリカの農家は政府から助成金を受けているが、アフリカ諸国はそうはいかず、労働者は国外へ移住し劣悪な条件下で働かざるを得なくなっている。
ルーマニアでは、資金不足で農家の機械化がされず、今でも馬と鋤による手作業で農業がおこなわれている。しかし一方で、在来種より味は劣るが外見の良い交配種の栽培が盛んになった。在来種は農家自らが種を採取でき、翌年も収穫できるが、交配種は一代限りで、国からの援助もなくなった今は利益を上げ毎年種を買わなければならない。
市場にはトレンドがあり、このような農業もやがて崩壊するだろう。
ありあまるごちそうのネタバレあらすじ:転
アメリカでは遺伝子組み換えの大豆栽培が盛んにおこなわれ、長く持つように開発された。しかし食料を必要とする国には輸出されず、既に十分足りている国で消費されている。今の世界経済なら問題なく世界全体を養えるにも関わらず、飢餓、栄養失調が深刻化している。
ブラジルでは、アマゾンの原生林を切り開き栽培された大豆は、中国・日本・ヨーロッパへ食品や家畜の飼料として輸出される。こうして伐採された原生林はフランスとポルトガルの国土面積に匹敵し、生態系システムを壊しかねない状況に陥っている。
ブラジルは世界最大の大豆輸出国であるにも関わらず、国民の25%が飢餓に陥っている。そして、その恩恵にあずかるヨーロッパは家畜飼料の90%を輸入に頼っている。
ありあまるごちそうの結末
ドイツの養鶏場では、ヒナを人口孵化させ、肥育業者に売られる。利益を出すために大量に取引され、若鳥になると、食肉に処理される。消費者はこの鶏肉の製造法を知らない。昨今は価格にばかり気をとられ、利益ばかり追い、味は二の次の非常識な経営者が増えてきた。大量の食肉処理では、肉の安全性の確保が課題となってくる。
グローバル化が進み、生産地と消費地が異なる場合が増えると、需要の低い部位を国内で消費し、必要とされる部位を輸出する。アジアの大型生産拠点は脅威となって来た。
世界最大の食品会社、ネスレのCEOは、かつては厳しいと思っていた自然だが、例えば有機栽培など、今では自然の物はよいとされる風潮があると語る。ネスレは世界最大のペットボトル入りの水のシェアを誇っており、水を一つの食料品として捉え、それを人に水の価値を考えさせる。さらに水を手に入れられない人のために入手法を提供する必要性も出てくる。
企業は収益を維持し将来を確かにすることで、雇用をはじめとした世界が抱える問題に取り組む事ができる。より働くことで、未来が明るくなり、将来を悲観しなくてよくなる。
以上、映画「ありあまるごちそう」のあらすじと結末でした。
ありあまるごちそうのレビュー・考察:南北問題
食料の北半球と南半球の不均衡が問題視されてから既に半世紀以上が経つ。かつては人口増加に合わせた食料が確保できないと言う問題が根底にあったがこの作品が作成された2005年の時点その懸念は、品種改良などにより解消されたかのように見える。しかし、依然として、食糧の南北問題続いている。単なる貧富の差ではなく経済のグローバル化により、富める国が搾取するという構図になり、問題は複雑化している。そして最大の問題は食料を消費する側の無関心に他ならない。
この映画の感想を投稿する