チップス先生さようならの紹介:1939年イギリス映画。好きな道を見つけること、たとえ道に迷い挫けても、慌てず騒がず好きな道を進み続けていくこと。かならず救世主はあらわれる。チップス先生の生き方が人生の正しい法則を教えてくれます。そこには小さな自我にとらわれない大きな愛と、日々の喜びへの感謝が求められています。チップス先生にロバート・ドーナット。第12回アカデミー主演男優賞を受賞しました。相手役には映画初出演のグリア・ガースン。瑞々しい美しさの陰に大器を予感させます。
監督:サム・ウッド 出演者:ロバート・ドーナット(チップス先生)、グリア・ガースン(キャサリン)、ポール・ヘンリード(ステュフェル先生)、ジュディス・ファース(キャサリンの友人フローラ)、デビッド・ツリー(ジャクソン先生)、ジョン・ミルズ(ピーター・コリー2世)、ジル・ファース(ピーター・コリー2世の妻)、ルイーズ・ハンプトン(ウィルケット夫人)ほか
映画「チップス先生さようなら」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「チップス先生さようなら」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
チップス先生さようならの予告編 動画
映画「チップス先生さようなら」解説
この解説記事には映画「チップス先生さようなら」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
チップス先生さようならのネタバレあらすじ:起
20世紀初頭。
「どんなことが起きても、誰もが経験してきた道だと思いなさい」。チップス先生(ロバート・ドーナット)が新任のジャクソン先生(デビッド・ツリー)にアドバイスします。83歳になるチップス先生は、ブルックフィールド校の名誉教師です。しかも、いまなお学校へ通いつづけています。「先生!」とつぶらな瞳で近づいてくる生徒たちが先生は愛おしくてなりません。
ブルックフィールド校は、イギリスにある全寮制の学校です。5歳から16歳までの男子生徒が、卒業までの間、敷地内にある寮で起居を共にします。1870年。着任間もないチップス先生は、低学年の生徒たちの予習クラスを担当することになりました。町に来てまだ間もない先生は、学校内の一室を生活の場として教師生活の第1歩を踏みだします。
チップス先生の1時限目。クラスの生徒たちが好き勝手に暴れはじめます。新任教師を困らせるのが生徒たちの習わしだと先生も承知しています。しかし、あまりの乱暴ぶりに先生はなす術がありません。校長があらわれて教室内の騒ぎは収まりますが、先生は敗北感を味わいます。以後先生は、生徒との間に距離を置いて厳しく接する教師になりました。
チップス先生さようならのネタバレあらすじ:承
チップス先生はその後、教員歴が長いだけの堅物の教師になります。ある年の学期末、いよいよ新学期からは幹部の仲間入り、と期待に胸を膨らませましたが、アテがはずれてしまいます。気落ちするチップス先生を、同僚のステュフェル先生(ポール・ヘンリード)が無理やり旅行へ誘います。この旅行がチップス先生の運命を変えました。
チップス先生は頑固者です。いちど思いこむと“信条”として、考えを曲げることがありません。そのことはけっして悪いことではないかもしれません。しかし人間それだけでは窮屈です。人には落ち度があり、油断もあります。だからこそ失敗を笑い飛ばすだけの心のゆとりも必要です。
チップス先生が自身の非を認めたのは、旅先のオーストリアでした。山登りがきっかけで出会ったキャサリン(グリア・ガースン)は、自転車登山をしていました。その時代、レディーが自転車を漕ぐなど常識に反する行為です。「まして登山など」と先生は思います。しかし固定観念が、かえって生き方を狭くすると先生は考えるようになりました。
先生はキャサリンに恋をします。自分よりもずっと年下の女性です。しかも長年、女性に縁のなかった先生は、女性に臆病です。先生はそのことを正直にキャサリンに打ち明けます。すると、「教師はすばらしい職業」だと彼女は先生を褒めます。若い生徒たちに混ざって、いつまでも若いままで過ごせる。だから、あなたもチャーミングなのだと。
チップス先生さようならのネタバレあらすじ:転
シャイな先生は、しかし出会いを結果に結びつけることができずにウィーンへ旅立ちます。キャサリンも友人のフローラ(ジュディス・ファース)と女性ふたりの旅へ出ます。ウィーンへ向かう船上、ステュフェル先生が、名曲の「美しく青きドナウ」はすこしも青くないね、とこぼします。チップス先生は「ノー」と言います。恋をしている者にドナウ川は青く映っていると宣言します。桟橋で再開したキャサリンもおなじことを呟きます。
オプションの舞踏会。キャサリンとワルツを踊るチップス先生。夢見心地の会場は、かつてウィーン会議が催されたシェーンベルク宮殿です。最初はおどおどとステップを踏んでいた先生も、正装の男女がそろそろと散ってゆく時間になると、堂々としたリバースターンを披露します。ふたりは、とうとう結婚することになりました。
チップス先生の本名チッピング夫人となったミセス・キャサリン。美人である点と感じのよさが同僚の先生たち、生徒たちを惹きつけます。そればかりでなく、キャサリンの朗らかさ、きめの細かい対応は先生の人柄も変えていくことになりました。先生の運は上向き、それと共に気負いが消え、生徒たちに愛される先生になっていきました。
いよいよブルックシールズ校の幹部に選任された先生は、キャサリンからも次期校長だと励まされ、充実した毎日を過ごします。意気軒昂な先生と歩調を合わせるようにキャサリンも子を授かり、中年を過ぎてからの先生は人生のあらゆる幸福を手に入れます。その暮らしに綻びが入ります。まだ見ぬわが子、そしてキャサリンを1度に亡くしてしまいます。
チップス先生さようならの結末
大きな落胆に、先生は一時ユーモアを忘れてしまいます。しかしキャサリンは、亡くなっても変わらず先生の支えです。そのことに気づいた先生に、また朗らかさが戻ってきます。その後、先生は最初の教え子ピーター・コリーの子、そして孫を3代にわたって送りだします。その年月は、同時に先生を教師生活の引退へと導きます。
オーストリアの皇太子が暗殺され第一次世界大戦がはじまります。成年男子は次々と戦場へ駆り出され、教え子たちもまた戦場へ向かいます。教員の数も減ってゆき、校長までが兵士となります。そこで、またチップス先生の出番です。校長のなり手がいなくなったことで、チップス先生にお鉢がまわってきます。キャサリンの願いがとうとう実現しました。
経験豊かな先生は、町中に轟く戦火のなか、みごと銃後の責任を果たします。そして終戦。先生が生徒全員を前にイギリスの勝利を告げました。その瞬間、子どもたちは自由を得た喜びを身体いっぱいに表現します。先生の思い出はそこまでです。先生は夢を実現し、まっとうしました。「何千人もの子供たちがみんな私の息子なんだ」。先生は最後にそう呟きます。
以上、映画「チップス先生さようなら」のあらすじと結末でした。
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