羊飼いと風船(原題:気球/BALLOON)の紹介:2019年中国映画。チベットの大草原。牧畜をしながら生活をする、タルギェとドルカル夫婦の一家。祖父と3人の息子も羊の世話を手伝いながら、慎ましい生活を送っていた。そんなある日、ドルカルの妊娠が発覚する。周囲は喜んでいたが、ドルカルの心は揺れ動く。伝統的な信仰と変化する時代の流れの中で、少しずつ家族はすれ違っていく。監督は作家としても活躍するチベット映画の先駆者ペマ・ツェテン。詩的で幻想的な映像美もみどころのひとつ。
監督:ペマ・ツェテン 出演:ソナム・ワンモ(ドルカル)、ジンバ(タルギェ)、ヤンシクツォ(シャンチェ・ドルマ/尼僧)ほか
映画「羊飼いと風船」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「羊飼いと風船」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
羊飼いと風船の予告編 動画
映画「羊飼いと風船」解説
この解説記事には映画「羊飼いと風船」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
羊飼いと風船のネタバレあらすじ:起
チベットの東北に位置する草原地帯アムド。2人の子供が草原を駆け遊んでいます。
手にしているのは楕円の形をした白い風船。父タルギェが駆け寄り「お前らが盗んだのか!」と叱りつけ、風船を割ってしまいました。
それは子供たちが枕の下で見つけた、コンドーム。事情も分からず、たかだか風船でそんなに怒るなとなだめる祖父。タルギェは子供達に、街に行ったら色のついた風船を買ってやると約束しました。
種付けの時期になりました。
タルギェが種羊をバイクに乗せてやってきました。種付けは毎年隣村の友人から羊を借りてきます。この日も、酒と引き換えに上等な種羊が連れてこられました。盛りのついた羊を見て、タルギェに恥ずかしそうに「あんたみたい」と笑うドルカル。タルギェも笑みを返しました。
羊飼いと風船のネタバレあらすじ:承
青海湖チベット中学校に通っているタルギェの長男ジャムヤンは、明日から夏休みに入ります。そんな彼を尼僧の格好をした女が待っていました。ドルカルの妹シャンチェです。
しかし、ジャムヤンより先にシャンチェの前に現れたのは、元恋人のタクブンジャでした。
教師をしているタクブンジャはシャンチェと別れた後に転勤になり、偶然にもジャムヤンの中学に赴任し担任をしていました。
シャンチェは訳ありな様子で気まずそうに目をそらしました。足早にその場を去ろうとするシャンチェにタクブンジャは本を渡します。「僕が書いた本だ。良かったら読んで欲しい」と。本の表紙には”風船”と書かれていました。
しかし、ほどなくしてその本はドルカルによって燃やされてしまいます。妹を捨て尼に追いやったタクブンジャを今でも許していなかったからです。
その後ドルカルは湖東診療所にやってきました。ここには何でも話せる女先生がいました。ドルカルは女先生に避妊手術をしたいと相談しました。来月に手術をすることを決め、女先生は「とりあえず私のを使って」と1個しかないコンドームをドルカルに渡しました。
羊飼いと風船のネタバレあらすじ:転
その日の夜、ジャムヤンは2人の弟たちから背中のほくろを見せるようせがまれます。それは亡き祖母の生まれ変わりの印でした。祖父は、改めてジャムヤンのほくろを見つめて「ばあさんが家族に転生したとはありがたいことだ」と言いました。
ある日の夜、タルギェが寝室でコンドームを探しますが見当たりません。しかし、タルギェは欲求を抑えることができずドルカルに迫りました。
翌朝、タルギェとジャムヤンはバイクで種羊を返すために隣村へ行きました。友人と酒を交わし改めて礼を言うタルギェ。その時、携帯電話が鳴りました。それは祖父の訃報を知らせる電話でした。タルギェらが急いで家に戻ると、すでにたくさんの僧侶が集まりお経を唱えています。全身を白い布で包まれた祖父の亡骸を車に乗せ、タルギェとジャムヤンは火葬場へ向かいました。
数日が過ぎても父の死を受け入れられずにいるタルギェとジャムヤン。2人は高僧のもとを訪れ尋ねます。「父はいつどこに転生しますか?」と。高僧は、帰ったら僧侶を招きお経を唱えれば、家族の中に転生すると言いました。
羊飼いと風船の結末
再び診療所にやってきたドルカル。今度は妊娠検査のためでした。結果、ドルカルは新しい命を授かっていました。家族の期待を知っていたドルカルは戸惑いを隠せません。「また産んだら罰金よ、堕しなさい」と女先生。家に戻り、妊娠をタルギェに告げると予想通り、父が戻ってきたと大喜びでした。しかし、ドルカルは毎日の牧畜作業に3人の子供の世話で心身ともに限界に来ていました。彼女の腹は決まっていました。
堕胎のために分娩台にいるドルカルの元に、すごい剣幕でタルギェとジャムヤンが入って来ました。ジャムヤンが涙ながらに訴えます。「じいちゃんの魂に戻ってきて欲しい」
手術が行われたか否やは明確ではありません。
しかしこの出来事は、家族に暗い影を落としました。タルギェは街で大きく赤い風船を2つ購入しました。まるで下の子供達には幸がありますようにと祈るかのように。
しかし風船が2人の子の手に渡ったのも束の間、1つは割れ、もう1つは手を離れ空高く飛んでいってしまいました。
皆が空を見上げて自由に飛んでいく風船を眺めていたのでした。
以上、映画「羊飼いと風船」のあらすじと結末でした。
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