ユダヤ人だらけの紹介:2016年フランス映画。ユダヤ人であることを隠しているフェリックスが、カウンセラーに語る被害妄想の数々から、世間の無意識な偏見と、それが生み出すプレッシャーや軋轢が浮かび上がる。
監督:イヴァン・アタル 出演者:イヴァン・アタル、ブノワ・ポールヴールド、ヴァレリー・ボネトン、ダニー・ブーン、グレゴリー・ガドゥヴォワ、ドゥニ・ポダリデス、シャルロット・ゲンズブール、フランソワ・ダミアン
映画「ユダヤ人だらけ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ユダヤ人だらけ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ユダヤ人だらけの予告編 動画
映画「ユダヤ人だらけ」解説
この解説記事には映画「ユダヤ人だらけ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ユダヤ人だらけのネタバレあらすじ:起・そこら中にいる妄想
フランスで生まれ育った俳優フェリックスは、非公式でユダヤ人のアイデンティティと、洗礼名を別で持っている。第二次大戦のユダヤ人狩りのせいで隠しているだけで、そこら中にいるのだと、カウンセラーに妄想を語り始めた。
政治家のエヴァは反ユダヤ主義・人種差別主義を掲げる政党の大統領候補だった。しかし夫ボリスの祖母が亡くなり、これまでユダヤ人だと言うことを隠していたと知った。夫の母方がユダヤ人だと知りスキャンダルを恐れるエヴァに、ボリスは、事実を隠すために難病だと嘘をついて政界からの引退を提案し、代わりに自分が大統領候補になった。
支持率は急上昇したボリスだったが、テレビで祖母がユダヤ人だと指摘されると、他界した後に知らされたと告白し、党は反ユダヤ主義ではないと宣言した。
フェリックスにとって、ユダヤ人について外で話すことはタブーだった。
ユダヤ人だらけのネタバレあらすじ:承・ユダヤ人はお金持ち
妻のマチルドに、ユダヤ人なのに貧乏だとなじられるパスカル。検索すれば富をなしたユダヤ人の記事ばかり。彼は両親に金持ちでないユダヤ人だということを責めると、伝統を軽んじようとするなら親子の縁を切るとまで言われた。
パスカルの母親は宝くじを買い、パスカルの娘アナを預かり、くじの番号を決めさせると50万ユーロが当たり、妻はブランド三昧だったが、結局強盗に入られて水の泡になってしまった。
そんな事を語りながら、フェリックスは、ユダヤ人は経典の解釈など勉強熱心だが、自分達が嫌われる理由を自分たちで作っていると思い込もうとしている、という事も話した。
ユダヤ人だらけのネタバレあらすじ:転・モサドのトンデモ計画
「キリストの殺害が、ユダヤ人問題の始まり」だと考える彼らは、ノルベールにタイムマシンに乗ってヨセフとマリアの子供を殺す計画を立てた。2000年前の世界では、彼がタイムマシンで現れたせいで、メシアとあがめられた。そしてマリアに出会い、モサドのイヤホンを貸して、奇跡だと教えた。
ヨセフはイエスの事も浮気だと思っており、焦った彼女はノルベールに子供を預かるように頼んだ。殺してしまうチャンスだったが、イエスを殺せずに現代に戻るも、マリアに会いたい彼は、再びタイムマシンで飛び、そこで真のメシアだと、イエスの代わりに磔刑にされた。
そんな妄想をする自分にフェリックスはうんざりしていた。
ユダヤ人だらけの結末:ユダヤ人の専売特許
読み聞かせボランティアをする赤毛の男性は、迫害の苦しみはユダヤ人の専売特許だろうか、黒人やアラブ人は差別に苦しみ、自分も赤毛に悩んでいる。ユダヤ人が同情を集めているのが嫌で、赤毛デーを作ろうと言うデモを行った。
金髪やアルビノなど他のたくさんの団体がそれに続く。そして認知症の集まりで電話番号を覚えるはずの男性が出したのは、アウシュビッツで腕に残された番号だった。それもまた妄想に過ぎない。
不況の続くフランスに打つ手はなく、既存の枠を超えた改革として、この不況になんとか対処しているのはユダヤ人だけ、裕福で結束の強い民族なのでみんなでユダヤ人になろうという案を国民投票に委ねる。イスラエルでは胡散臭いと言われたが、68%の賛成で可決。もちろんこれも妄想。
ユダヤ人がいれば反ユダヤ主義は復活する。絶対になくならないのだろうか?
カウンセラーが、フェリックスに仕事について聞くと、イスラム教徒役の出演依頼があっり、世間の批判にあうその気持ちや不安や被害妄想は自分と同じだった。アラブ人を演じてユダヤ人から信用を失うのが怖いが、一人の男の物語して引き受けたいと、フェリックスは明るかった。
以上、映画「ユダヤ人だらけ」のあらすじと結末でした。
ユダヤ人だらけのレビュー―・考察:フェリックスの答え
ユダヤ人から考えたフェリックスの被害妄想は突拍子もないものばかりだが、最後に、おそらく彼の非公式のアイデンティティとは相いれないイスラム教徒を演じる事を、一人の男の物語として引き受けようとする点には、移民問題や宗教間の争いで混迷を極めている今、だからこそ、希望を感じた。
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