映画「君は行く先を知らない」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
君は行く先を知らないの紹介：2021年イラン映画。イランの国境近くを走る1台の車。車内には4人家族と1匹の犬。幼い次男が大はしゃぎし、足にギプスをはめた父親は悪態をつく。母は流行りの歌を口ずさみ、そして成人したばかりの長男は無言でハンドルを握っている。車は一体どこへ向かっているのか？何が家族を待ち受けているのか？旅の⽬的を知らない次男が無邪気に騒ぐ中、両親と⻑男は動き始める。イラン映画の巨匠ジャファル・パナヒの長男パナー・パナヒ初めての長編作品。
監督：パナー・パナヒ 出演：モハマド・ハッサン・マージュニ（父親）、パンテア・パナヒハ（母親）、ヤラン・サルラク（次男）、アミン・シミアル（長男）ほか
この解説記事には映画「君は行く先を知らない」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
どこまでも広がる乾いた大地を走る1台の車。
後部座席には足にギプスをつけた父がずっと悪態をつきながら、一瞬たりともじっとしないやんちゃな次男の相手をしていました。助手席の母親は時折悲しそうな表情を見せつつ明るく振舞おうとし、カーステレオから流れる古い歌謡曲に身体を揺らしていました。
一方、運転席では成人した長男が悲しい表情で無言のままじっと前を見据えていました。家族4人と病気で弱っている愛犬ジェシーを乗せた車はイラン北西部の国境を目指していました。
休憩所で自転車レースの一団が家族の前を駆け抜けていきました。車を走らせるとやがて一団に追いつき、次男が窓を開けて最後尾の選手の青年にエールを送りました。
すると、その青年が気を抜いた瞬間に家族を乗せた車にぶつかり横転してしまいます。彼は大げさに怪我をしたふりをして家族の車に乗せてもらい、まんまと仲間を抜いていきます。
青年は車中で、ツール・ド・フランスで7連覇したアームストロングに憧れていると話しました。しかしドーピングが発覚し自転車競技からの永久追放処分を下されたアームストロングに対し、父は「不正をする人間たちの味方をすべきでない」と言い放ち、母も「さすが、我が夫！」とその言葉を褒めたたえました。
それまで黙って聞いていた青年は口を開き「誰でも不正をすることはある」と言いました。父親は下を向き「実はうちの息子も…」と言いかけましたが、次男を気にする母親によって遮られました。
青年を降ろした家族の車は休憩のために小さな店で停まりました。
トイレに向かった次男と父親を待っている間、憂鬱そうな長男を気遣う母親は自身の感情を必死に抑えながら気丈な姿勢で会話をしようとしていました。この旅の先には長男との別れが待っていたのです。目的は分かりません。しかし、長男のために両親は家を抵当に入れ、車を売ってここまでやってきたのでした。
家族を乗せた車は目的地に到着しました。トルコとの国境近くの村のようで、小高く広がる丘には無数の羊がいました。
村人の指示で“次の旅人”のための羊皮を高い金で買わされたあと、怪しげな覆面男がやってきました。男は長男と両親に段取りを説明すると、濃い霧の中をバイクで去っていきました。
案内人から次の指示を待つ長男を父親は川へ連れ出し、2人きりの最後の時間を過ごしました。「母親の前では泣いてはいけないが、父親の前なら泣いてもいい」と言う父。この旅行の中で長男は、決して弟に旅の目的を知られないように、悲しい気持ちを抑えるよう両親へ頼んでいたのでした。
そしてついに、長男が発つときがやってきました。キャンプ場に再びやってきた覆面男のバイクに乗せられ連れ去られていった兄。何がなんだか分からない弟はずっと騒いでいました。
夜になりキャンプ場で星を眺めながら、兄のことを尋ねる次男に、駆け落ちしたと伝え「バッドマンのマスクを持って帰って来るよ」と話して聞かせる父。それからもお伽話のような父の話は続き、次男を喜ばせました。
旅の目的は果たされ、車は乾いた大地を走り始めました。カーステレオから流れてくる大音量の懐メロが長男のいない家族の心の隙間を埋め、悲しい気持ちを払拭するようにみんなで大合唱をしました。サンルーフを空けてご機嫌な様子の次男に知られないようにそっと涙をぬぐいながら笑顔を作る母。
ところが突然、次男が騒ぎました。「ジェシーの様子が変！苦しそう！！」
ずっと病気と闘っていたジェシーでしたが、間もなく息を引き取りました。
干上がった大地にジェシーを埋め、家族3人でジェシーを弔いました。カーステレオから流れてくる懐メロを長男が口ずさみました。
そして再び3人を乗せた車は走り出したのでした。
以上、映画「君は行く先を知らない」のあらすじと結末でした。
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