鶴は翔んでゆく(別題:戦争と貞操)の紹介:1957年ソ連映画。ヴィクトル・ローゾフの戯曲「永遠に生きるもの」を映画化。愛し合う男女の一途さと、それを引き裂く戦争の悲劇を描くドラマ&ロマンス。第二次世界大戦の最中、ベロニカは恋人ボリスと結婚する日を夢見て暮らしていた。ところがボリスは志願して出征してしまい、ベロニカも戦火の中両親を喪ってしまう。生きる気力を失ったベロニカは、以前から彼女に想いを寄せていたボリスの従弟マルクに犯され、彼と結婚することになってしまった。生き地獄の中、それでもボリスへの愛を取り戻すベロニカ。そんな彼女のもとに、ボリスの戦死が伝えられるのだった。別題は「戦争と貞操」。
監督:ミハイル・カラトーゾフ 出演者:タチアナ・サモイロワ(ベロニカ)、アレクセイ・バターロフ(ボリス)、ワシリー・メルクーリエフ(ヒョードル)、スベトラーナ・ハリトーノワ(イリーナ)、アレクサンドル・シュウォーリン(マルク)ほか
映画「鶴は翔んでゆく」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「鶴は翔んでゆく」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「鶴は翔んでゆく」解説
この解説記事には映画「鶴は翔んでゆく」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
鶴は翔んでゆくのネタバレあらすじ:悲劇の始まり
舞台は第二次世界大戦前夜のソ連。明るく美しい女性ベロニカは、恋人ボリスと満ち足りた日々を送っていました。2人は互いに夢中で、特にベロニカはボリスとの結婚を夢見ています。そんな折り、ついに戦争が始まりました。
ベロニカはボリスに招集令状が来るのではと怯えます。ボリスの従弟マルクは、自分のように優秀な人材は招集を免れると話しました。彼は長い間ベロニカに想いを寄せており、ボリスの目を盗んでは口説いています。しかしボリスへの愛でいっぱいのベロニカが相手をすることはありませんでした。
そしてベロニカの誕生日前日。ベロニカはボリスに理想の結婚について話し、式では純白のウェディングドレスを着るのだと語ります。彼女は戦争が始まった今も、ボリスとの未来を信じて疑っていませんでした。ところがそこへ友人ステパンがやって来て、彼とボリスが招集されたことを知らせます。
彼らは2人で軍隊に志願していたのです。ベロニカは大変なショックを受け、塞ぎ込んでしまいました。ボリスの志願を知らなかったのは、彼の家族も同様でした。突然のことに慌ただしくなる家の中で、ボリスは祖母にベロニカへの誕生日プレゼントを託します。それは小さなカゴを持ったリスのぬいぐるみでした。ボリスは急いでベロニカへの手紙を書き、カゴの中に忍ばせておきます。ボリスは祖母や父ヒョードルに見送られ、家を後にしました。
鶴は翔んでゆくのネタバレあらすじ:戦火と不幸
ボリスが家を出て少しすると、ベロニカが慌てて訪ねて来ました。バスが遅れ、見送りに間に合わなかったのです。ボリスの祖母はベロニカにリスを渡しました。そして手紙があるはずだと言いますが、2人とも見つけられません。祖母は、きっと後で送って来るだろうと慰めました。
ベロニカは急いで軍隊の集合所へ向かい、別れを惜しむ人々の中でもみくちゃにされながら、やっとボリスの姿を見つけます。必死に声を張り上げましたが、ボリスは気付かずそのまま戦地へ向かってしまいました。その後もベロニカはボリスからの手紙を待ち続けます。戦争は街にも暗い影を落とし、ベロニカの生活もずいぶん変わってしまいました。
そんな中、ベロニカは空襲で両親を喪います。深い心の傷を負った彼女は、ボリスの家に身を寄せることになりました。相変わらずボリスからの手紙は届かず、ベロニカは生きる気力を失ってしまいます。そんな彼女に、更なる追い打ちをかける事件が起こりました。
空襲の最中、2人きりになったマルクに犯されてしまったのです。事件を知り、ヒョードルはベロニカへの申し訳なさで頭を抱えました。結婚すると報告するマルクの隣で、ベロニカは唇を強く噛んでいます。
鶴は翔んでゆくのネタバレあらすじ:非業の死
一方、ボリスは前線で必死に戦っていました。負傷した仲間を救うため危険を冒したボリスは、敵の銃弾に倒れます。戦地から帰還し、ベロニカを迎えに行く幻を見るボリス。部屋から現れたベロニカは純白のウェディングドレスを着て、幸せそうに笑っています。幸福な夢を見ながら、ボリスは非業の死を遂げました。
ボリスの死を知らないベロニカは、ヒョードルやマルクらと共にシベリアまで逃げていました。ベロニカはマルクを完全に拒絶し、今もボリスからの手紙を待っています。彼女はヒョードルやボリスの妹イリーナが医師として働く病院で、看護師の仕事をしていました。傷を負った兵士達の世話をしていると、患者の1人が突然暴れ出します。
彼は自分の出征中に婚約者が別の男性と結婚したことを知り、自暴自棄になってしまったのです。駆けつけたヒョードルは、英雄を捨てた尻軽女だと罵り、そんな女に執着するなと激励しました。それを聞いたベロニカは絶望し、自殺するため病院を飛び出します。
しかし小さな男の子が車に轢かれそうになっているのを見つけ、慌てて助けに入りました。男の子は、駅で母親とはぐれてしまったようです。彼の名前がボリスだと知り、ベロニカは自殺をやめて小さな命を胸に抱きました。そしてそのまま、小さなボリスを家に連れて帰ります。
鶴は翔んでゆくのネタバレあらすじ:ボリスからの手紙
帰宅したベロニカは、ずっと大切にしてきたリスが見当たらないことに気付きました。マルクがベロニカへの当てつけに、浮気相手アントニーナの誕生日プレゼントとして持って行ってしまったのです。その話をイリーナから聞き出したベロニカは、アントニーナの家に走りました。何も知らないアントニーナは、リスのカゴの中から偶然ボリスの手紙を発見します。
駆けつけたベロニカは、ようやくボリスの手紙を読むことが出来ました。手紙の最後には、「愛してるよ 信じてる」と綴られています。ベロニカはボリスへの強い愛を再び取り戻しました。マルクを何度も殴った後、リスと手紙を胸に帰宅します。弱りきったマルクは、ヒョードルにベロニカの説得を頼もうとしました。
しかしヒョードルの顔は怒りに染まっています。ほんの少し前、ヒョードルはマルクの上司から、兵役免除についての真実を聞かされました。マルクは優秀な人材として免除されたのではなく、医師であるヒョードルの名前を使った上に、金を積んで出征を逃れていたのです。怒りと情けなさに震えるヒョードルは、マルクを家から追い出しました。
鶴は翔んでゆくの結末:生きる理由
小さなボリスを育てながら、前向きに愛するボリスを待つベロニカ。そんな彼女のもとに、ついにボリスの戦死が伝えられました。ベロニカは酷くショックを受けますが、知らせを持って来た兵士がボリスの埋葬は見ていないと言ったことから、ボリスの生存を信じることにします。
やがて戦争が終わり、生き延びた兵士達が街に帰って来ました。花束を持った人々が駅に詰めかけ、英雄の帰還を喜びます。ベロニカは再会を喜ぶ人々をかき分けながら、必死にボリスを探しました。そしてステパンと再会し、改めてボリスの死を伝えられます。ベロニカは花束を胸に泣き出しました。
すると兵士が演説を始めます。彼は戦争を憎む心を決して忘れるなと叫びました。恋人達を戦争で引き裂くことも、母親に息子の安否を心配させることも、父親にしのび泣きさせることも、絶対に二度としないと誓う兵士。彼は、自分達は新しい世界を築くために生き延びたのだと声を張り上げました。
ベロニカの隣に立っていた老人が、大切な人に花を渡すよう勧めます。ベロニカは老人に花を差し出すと、周囲の人々にも花を配り始めました。鶴が翔んでゆく、と声が上がります。空を見上げたベロニカの目には、未来を生きる力が宿っていました。
迎えに来たヒョードルに促されてベロニカがその場を後にし、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「鶴は翔んでゆく」のあらすじと結末でした。
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