映画「落下の解剖学」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
落下の解剖学の紹介：2023年フランス映画。第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを、第96回アカデミー賞で脚本賞を受賞した法廷サスペンス作品です。夫が不審な転落死を遂げ、夫殺しの容疑をかけられた妻が無実を証明すべく法廷に立つうちに、夫婦が抱えていた秘密や嘘が炙り出されていく過程を描いていきます。
監督：ジュスティーヌ・トリエ 出演：ザンドラ・ヒュラー（サンドラ・ボイター）、スワン・アルロー（ヴァンサン・レンツィ）、ミロ・マシャド・グラネール（ダニエル）、アントワーヌ・レナルツ（検事）、サミュエル・タイス（サミュエル・マレスキ）、ジェニー・ベス（マージ・ベルジェ）、サーディア・ベンタイブ（ヌール・ブダウド）、カミーユ・ラザフォード（ゾーイ・ソリドール）、アン・ロトジェ（裁判長）、ソフィ・フィリエール（モニカ）ほか
この解説記事には映画「落下の解剖学」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ドイツ人のベストセラー作家サンドラ・ボイターは夫で教師のサミュエル・マレスキ、視覚障害のある11歳の息子ダニエル、愛犬のスヌーブと人里離れたフランスの雪山の山荘で過ごしていました。
ある日、サンドラのもとに女学生のゾーイ・ソリドールが取材のため訪れました。ゾーイはダニエルが視力を失うことになったある事件の体験を聞こうとしたのです。その時、山荘の屋根裏から大音量で音楽が流れ出したため、サンドラは取材を途中で打ち切ってゾーイを帰らせました。
その頃、ダニエルはスヌープと外で遊んでいました。ダニエルが帰宅すると、サミュエルは山荘の前で頭から血を流して死亡していました。サミュエルは山荘の3階から転落したとみられ、警察による検視が行われました。その結果、死因は不明ながらも頭部には転落する前についたとみられる打撲の跡があり、他殺の可能性が浮上してきました。
警察の事情聴取を受けたサンドラは旧知の弁護士ヴァンサン・レンツィに当時の状況を説明しました。サンドラは、ゾーイの取材を受けていた時に音楽を大音量で流したのはサミュエルであること、ゾーイが帰りダニエルが出かけた後にサンドラは2会の寝室でドイツ語の雑誌の翻訳作業をしていたもののサミュエルは音楽をかけ続けていたので耳栓をして昼寝したこと、ダニエルの叫びを聞いてサミュエルの死を知ったこと、そしてサミュエルは3階の部屋の窓を常に開けていたことを語りました。
現場の状況では、3階の窓から転落したサミュエルは外の小屋の屋根に当たったとみられ、地面に転落してから2mくらい這って進んだところで力尽きていました。小屋の屋根からはサミュエルのDNAは検出されませんでしたが、壁には3つの血痕が付着していました。サンドラの腕には痣があり、サミュエルと争ったのではないかと疑われましたがサンドラは否定しました。
警察の捜査により、サミュエルの持っていたUSBメモリから事件の前日にサミュエルとサンドラが言い争いをしている様子を録音した音声データが発見されました。サンドラはサミュエル殺人容疑で警察に逮捕・起訴され、ヴァンサンがサンドラの弁護を担当することになりました。
ヴァンサンと同じ事務所に所属するヌール・ブダウド弁護士は裁判所にサンドラの保釈を要請、裁判所はダニエルの視覚障害を理由に保釈を許可しました。保釈中は法廷監視員マージ・ベルジェがサンドラとダニエルが不適切な接触をしないよう監視にあたることになりました―――。
―――過去のある日。サミュエルの帰りが遅いことから代わりにベビーシッターがダニエルを迎えに行くことになりました。しかし、ダニエルとベビーシッターは路上でバイクに撥ねられ、その結果ダニエルは視力を失ってしまったのです。サミュエルはこのことがきっかけでうつ病となり、夫婦関係にもヒビが入ることとなったのです―――。
―――裁判の最中、サンドラは実はバイセクシャルであることが明らかになりました。検察側はサンドラが現実から逃れるためにゾーイを取材と称して誘惑しようとしたのではないかと疑いましたが、サンドラとヴァンサンは否定しました。
検察側は小屋の壁の血痕はサミュエルが転落した時に付着したとは考えられず、3階のベランダで殴打された際に飛んできた血飛沫ではないかと疑いました。一方の弁護側はサミュエルをベランダの手すりから突き落とすのは困難であり、小屋の血痕はやはりサミュエルが転落した時に付着したものであること、屋根にDNAが残っていないのは当時屋根に積もっていた雪が解け落ちたからだと証言しました。
サミュエルは死の7ヶ月前に処方されていた抗うつ剤を止め、6ヶ月前に自殺未遂をしていました。サンドラはサミュエルが抗うつ剤を止めてから2、3週間後に彼が泥酔して嘔吐しているのを見かけ、その際にサミュエルはアスピリンを服用していたことを知りました。
サンドラはヴァンサンに、サミュエルは生前多くの問題を抱えていたことを打ち明けました。サミュエルは仕事の傍ら小説の執筆活動をしていましたが、教師の仕事や子育てで執筆の時間が取れないことに不満を抱いていました。やがて法廷でサンドラとサミュエルの事件前日の口論を録音したデータが再生されました。サミュエルは死の6ヶ月前から日常生活の様子を録音していたのです。
サミュエルは執筆の時間が取れないのはサンドラに子育てと教師の仕事を押し付けられたからであり、サンドラは自分のアイデアを盗用していたのだと責めていました。サンドラはサミュエルのアイデア盗用を一部認め、セックスレスの寂しさから女性と浮気していたことを認めていました。サンドラはいつまでもダニエルの事故を引きずるサミュエルを責め、二人は喧嘩に発展したのです。サンドラの腕の傷はこの時についたものであり、警察側は事件当日にサンドラが女性（ゾーイ）と会っていたことを嫉妬したサミュエルが飛び降り自殺を図った可能性があると証言しました。サンドラはサミュエルにかねてから自傷癖があったこと、生活を録音していたのは小説のネタにしようとしていたのだと証言しました。
裁判を傍聴していたダニエルは週明けに自ら証人になると申し出、週末の間はサンドラと離れて過ごすことを選択しました。サンドラはホテルに身を寄せることになり、ダニエルはマージと過ごすことになりました。
翌朝、ダニエルは愛犬スヌープの餌にアスピリンを混ぜて食べさせ、スヌープは昏睡状態に陥りました。スヌープはマージの救命措置を受けて一命を取り留め、ダニエルはマージにアスピリンを飲ませた意図を語りました。サミュエルの自殺未遂の件を法廷で初めて知ったというダニエルは以前にもスヌープが今回と同じように倒れ込んでいたことを覚えており、スヌープはサミュエルの嘔吐物を食べてしまったのではないかと思っていたのです。
週明けの法廷、ダニエルは証人として出廷しました。ダニエルはサミュエルの嘔吐物を食べたスヌープが病院に運ばれる際、サミュエルが「誰でもいきなりいなくなることがあるから覚悟しておくように」と告げていたことを証言しました。ダニエルは今思うとあの発言はサミュエルの自殺をほのめかす言葉だったと振り返りました。検察側はダニエルの証言は証拠にならないと反論しましたが、裁判所はサンドラに無罪の判決を下しました。
晴れて自由の身となったサンドラはヴァンサンや弁護士事務所関係者らと夕食を共にしました。サンドラはヴァンサンに、裁判に勝っても得られたものは何もないと話しました。そしてサンドラはダニエルとスヌープが待つ我が家へと戻り、再び一緒に暮らすことにしました。
以上、映画「落下の解剖学」のあらすじと結末でした。
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