突撃の紹介:1957年アメリカ映画。29歳のスタンリー・キューブリック監督による反戦映画。第1次大戦でのフランス将校の無謀な突撃命令と、その結果による自国兵士の銃殺刑を描く。長らくフランスでは上映禁止処分が取られた。
監督:スタンリー・キューブリック 出演:ダックス大佐(カーク・ダグラス)、ミロー大将(ジョージ・マクレディ)ほか
映画「突撃」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「突撃」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「突撃」解説
この解説記事には映画「突撃」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
突撃のネタバレあらすじ:起
第1次世界大戦中、フランスとドイツの戦いは膠着状態にありました。フランス軍のブルラール大将がパリから作戦本部に到着。ミロー大将と会談を持ちます。ブルラールは、アリ塚と呼ばれる堅牢なドイツ軍の陣地を即時攻略を命令。それに成功すれば、という条件で、ミローのさらなる昇進を約束します。その言葉に目のくらんだミローは、攻略を成功させると断言。自ら塹壕に出かけ、兵士たちを見舞います。兵士たちは長引く戦闘に士気が下がり、明らかに神経をやられているものもいます。しかし昇進にこだわるミローは部下のダックス大佐に会うと、自殺行為そのものの突撃を命令。当然ダックスは反対しますが、軍令は絶対でした。
突撃のネタバレあらすじ:承
ダックスの笛の合図とともに、突撃は決行されます。ダックスもピストルを手に先頭に立ち、部下たちを導こうとしますが、砲撃があまりにも激しく、部隊は自分の塹壕に戻らざるを得ません。しかし狂気に駆られたようなミローは再び突撃を命じます。兵士たちには最早覇気もなく、そんな無謀な命令など無視。ミローは作戦の失敗に激怒、その原因は自分の命令を無視した兵士たちにあるとし、そのうちの100人を軍法会議にかけようとします。ブルラールはさすがに100人は無理だとして3人にするよう進言。やがて3人が選ばれます。
突撃のネタバレあらすじ:転
パリス伍長はある上官の秘密を握っているせいで目をつけられて選ばれ、フェロル2等兵は”社会的劣化者”として選出。そして残りの1人であるアルノー2等兵はその勇敢さを讃えられていたにも関わらず、くじ引きの結果選ばれてしまいます。軍法会議では、ダックスが弁護士となり、3人の弁護を必死に行いますが、大将たちの命令で最早結果は決まっています。判決は銃殺刑でした。神父を交えた席でアルノーは怪我をしますが、死刑執行の日は変わりません。執行直前、泣き叫ぶフェロルに対し、あとの2人は落ち着いています。やがて並んだ銃口が火を吹き、3人は死にました。
突撃の結末
処刑のあと、ミローはブルラールと食事をします。その最中、自分が事情聴取されると聞き激怒。突撃の際、塹壕に留まった兵士を撃つよう命じたことが原因でした。ブルラールはミローの後釜にダックスを据えようとしますが、彼は反抗し、ブルラールを罵ります。居酒屋に行ったダックスは、兵士たちが女性の歌声に涙を流しているのを見ます。また前線に戻る命令が出たのですが、ダックスはそれをすぐには伝えず、しばしの休息を取らせました。
この映画「突撃」は、スタンリー・キューブリック監督が、29歳の時に発表した長編劇映画の4作目の作品です。
第一次世界大戦下のとあるフランスの歩兵連隊の悲劇を軸に、組織論的なアプローチで描いた、明快なメッセージをもった反戦映画の秀作だと思う。
第一次世界大戦でドイツ軍と戦うフランス軍の陣営が舞台となっていて、”蟻塚”と呼ばれるドイツ軍の要所を48時間以内に攻略せよ、という命令が701連隊に下される。
この戦功をあせるフランス軍のミロー将軍の無謀な策略で、敵の要塞を攻略せよとの命令を受けたダックス大佐(カーク・ダグラス)は、兵は疲れ切っており、自殺行為だと必死に抗弁するが、その訴えも空しく、作戦は実行に移されることになる。
ダックス大佐は、尻込みする部下を叱咤激励して、自らも先頭に立って突撃するが、難攻不落の要塞を落すことができず、予想通り退散することになる。
だが、指揮官のミロー将軍は、敗因を兵の命令違反にあるとして連隊の全員を逮捕。
そして、無茶な軍法会議のあげく「突撃失敗の責任をとって兵士を銃殺にする」として、無作為で選び出された兵士3名が銃殺されることになる。
ダックス大佐が、銃殺の非人間性を訴えるが却下される。
ところが昇進を夢見る無能なミロー将軍も、結局は粛清されてしまう。
軍の最上層部が、ミロー将軍のエゴイズムを暴き出して放逐したのだ。
軍隊では下が上の犠牲になり、上はまたその上によって自在に踊らされる。
そんな冷徹なメカニズムを作り出す”軍隊と戦争の不条理”を、スタンリー・キューブリック監督は、リアルに描き出すのです。
塹壕の中で、疲れた兵隊の様子を視野に入れながらの、今や映画好きの間で語り草ともなっている、長い後退移動撮影の視覚的なショットが、実に見事だ。
そして、ラストで女性が歌うにつれ兵士が和していくシーンには、宗教的な平和への祈りを感じてしまいます。
この宗教的な荘厳さは、「フルメタル・ジャケット」のラストの女性スナイパーの死へと繋がっていると私は思っています。