白い牛のバラッドの紹介:2020年イラン, フランス映画。死刑執行数が世界2位のイランを舞台に、冤罪による死刑で夫を失いシングルマザーとなった女性の姿を通じて社会の不条理や人間の闇について描いたサスペンス映画です。主人公のシングルマザーを演じたマリヤム・モガッダムはベタシュ・サナイハと共同で監督と脚本を勤めています。本作は第71回ベルリン国際映画祭で金熊賞と観客賞にノミネートされています。
監督:マリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハ 出演者:マリヤム・モガッダム(ミナ・エグバリ)、アリレザ・サニファル(レザ・エスファンデアリ)、プーリア・ラヒミサム(ババクの弟)、アヴィン・プルラウフィ(ビタ・エグバリ)、ファリド・ゴーバディ(レザの同僚)、リリ・ファルハドプール(ミナの近所の人)ほか
映画「白い牛のバラッド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「白い牛のバラッド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
白い牛のバラッドの予告編 動画
映画「白い牛のバラッド」解説
この解説記事には映画「白い牛のバラッド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
白い牛のバラッドのネタバレあらすじ:起
イラン。ミナ・エグバリ(マリヤム・モガッダム)は1年前に夫ババクを死刑で失いました。シングルマザーとなったミナは牛乳工場で働きながら女手ひとつでまだ7歳の娘ビタ(アヴィン・プルラウフィ)を育てていました。ビタは生まれつきの聴覚障害で口がきけず、ミナとビタは手話で意思疎通をしていました。
ミナは1年経った今でも喪服を着ており、工場での稼ぎだけでは食べていけず瓶の飾り付けの内職をしていました。そんなある日、ミナのもとにババクの弟である義弟(プーリア・ラヒミサム)がやってきました。
ババクの父である義父はビタの親権を欲しており、義弟を通じてしつこくビタに会わせろと要求し続けていました。かねてから義父との折り合いの悪いミナはこの日ものらりくらりと要求をかわし、義弟はミナにもう喪服を着るのをやめて少しは人生を楽しんだらどうだと声をかけて去っていきました。
生活の苦しいミナは福祉事務所に相談しに出向きました。福祉事務所側は遺族年金に加えてビタの障碍者手当も出るだろうと説明し、なぜ出産時に手続きをしなかったのか尋ねてきました。ミナは当時はババクも生きており、収入が安定していたためだと答えました。
ミナは年金などの申請手続きを行いましたが、審査が通るまでには時間がかかるのです。そんなミナはビタにはババクの死を伝えておらず、ババクは勉強のために遠いところに行っていると嘘をついていました。
白い牛のバラッドのネタバレあらすじ:承
そんなある日、ミナは裁判所から電話で呼び出されました。義弟と共に裁判所に出向いたミナは、ババクが死刑判決を受けた殺人事件の真犯人が見つかったとの衝撃的な知らせを受けました。事件の際、ババクは確かに被害者を殴ってはいましたが、とどめを刺したのは事件の証人だったのです。
ミナと義弟はババクが冤罪により死に至らしめられたことに深い衝撃を受けました。裁判所は2億7千万トマン(日本円で約732万円)の賠償金を支払うと持ちかけましたが、手続きに時間がかかるため受け取るのには時間がかかります。
放心状態のまま帰宅したミナは、いつも親身になって世話を焼いてくれている自宅アパートの大家の妻から死んだ人は二度と戻ってこないので早く忘れるように慰められました。
納得のいかないミナはババクに死刑判決を言い渡したアミニ判事に会って直接謝罪をしてもらおうと思いつき、再び裁判所を訪れましたが、あいにくアミニ判事に会うことはできませんでした。
何もできぬまま帰宅したミナはアミニ判事を控訴しようと考えていたところ、自宅にレザ・エスファンデアリ(アリレザ・サニファル)と名乗る中年の男が訪ねてきました。レザはババクの古い友人だといい、昔にババクから借りていた金を返したいと申し出てきました。レザは約束通りに1千万トマン(日本円で約27万円)の金を返し、生活苦のミナはまさかの金をありがたく受け取りました。
仕事から帰ってきたミナを義弟が待っていました。かねてからミナに好意を抱いていた義弟は裁判所からの賠償金で新たに家を買い、自分や義父と一緒に暮らそうと持ちかけてきましたが、ミナは聞き入れようとしませんでした。
ところが、ミナが見知らぬ男を部屋に入れたということは大家に伝わっており、激怒した大家はミナをアパートから追い払うことを決めていました。大家の妻は申し訳なさそうにそのことを伝えました。
ミナは新居探しと並行して新聞にアミニ判事に謝罪を求める広告を載せるよう依頼しました。しかし、新居探しは難航を強いられました。そんな時、ミナのもとに被害者の妻が訪れ、自分は真犯人のことを許したので自分のことも許してほしいと言ってきました。
白い牛のバラッドのネタバレあらすじ:転
ミナは新聞にアミニ判事への謝罪を求める広告が掲載されたことを確認しました。そこに再びレザが現れ、自分が所有する集合住宅に空き部屋があるので住まないかと持ちかけてきました。レザから格安の家賃を提示されたミナはビタと共に引っ越すことにしました。
自宅マンションに帰宅したレザは、息子マイサムから明日にも兵役に就くと告げられました。マイサムはレザがなぜ仕事を辞めたのかと問いました。実はレザこそがババクに死刑判決を下したアミニ判事その人だったのです。
冤罪でババクを死なせてしまったレザは良心の呵責に苦しみ、レザという偽名を名乗ってミナとビタの生活を陰ながらサポートしようと決意したのです。レザは裁判所に辞表を提出していましたが、上司は辞表を受理せず職場に戻って来るよう説得してきました。上司はたとえ冤罪だとしても失った命はもう二度と戻ってこないのだから悔やんでも仕方がないと諭しましたが、レザは裁判所に戻るつもりはありませんでした。
早速レザの紹介した物件に引っ越したミナとビタはすぐに新しい環境に慣れました。ところが、義弟は相変わらずミナに電話をかけてビタの親権をよこせと要求し、ミナから相談を受けたレザは裁判所にいる友人に頼めばことを上手く解決してくれるだろうと言ってミナを安心させました。
その後もレザはなにかとミナとビタの世話を焼き、ビタもすっかりレザに懐くようになりました。レザはミナやビタと共にババクの墓参りに行き、映画館で映画を見に行く約束をしました。その一方で、レザの正体に気づかぬままのミナは引き続きアミニ判事への謝罪を要求し続けており、未だに控訴の可能性も考えていました。
白い牛のバラッドの結末
映画を見に行く当日となりましたが、待ち合わせ場所にはいつまで経ってもレザは現れませんでした。その頃、レザは兵役に就いたはずの息子マイサムが麻薬中毒で死亡したとの知らせを受け取っていました。
レザはミナに電話をかけ、ミナはレザの自宅へと向かいましたが、レザは衝撃のあまり心臓発作寸前に陥っていました。ミナは病院にレザを連れて行き、その後自分とビタの部屋に連れて行き懸命に看病しました。
その翌日、ミナはビタを学校まで送っていった際に教師に呼び出されました。ミナはまだビタにババクの死を伝えておらず、ビタはまだババクがどこかで生きていると信じ込んでしまっているのです。
ようやく意識を戻したレザは自分がいつの間にかミナの部屋にいることに気付きました。ミナは帰ろうとするレザを引き留め、一緒にマイサムの遺体の引き取りに行くことにしました。
その一方、ミナの働く工場に義弟が現れ、ミナが自分たちに黙って引っ越したことを追及してきました。そして義弟は来週からビタの親権を巡る裁判が始まると告げてきました。
あくる日、ミナとビタはマイサムの遺体を引き取りに行くレザに同行しました。レザが変わり果てた我が子と対面している間、ミナは初めてビタにババクはもう二度と帰ってこないことを告げました。
ビタの親権を争う裁判はミナ側の勝訴に終わりました。安堵したミナでしたが、義弟と義父はミナにレザの正体はアミニ判事であることを告げてきました。ミナは深い衝撃を受けました。
帰宅したミナはビタを同じ物件の住民に預け、レザを部屋に招き入れました。ミナはレザに温めたミルクを飲むよう迫り、飲んだレザは途端に吐き出して苦しみ出しました。ミナはレザが動かなくなったことを確認してから荷物をまとめて部屋を出ていきました。死んだと思われていたレザは実は死んでおらず、椅子に黙って腰掛けていました。
一方、ミナはビタと共にバス停でいつまでもバスが来るのを待ち続けていました。
以上、映画「白い牛のバラッド」のあらすじと結末でした。
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