L.A.コールドケースの紹介:2018年アメリカ, イギリス映画。元ロサンゼルス市警のラッセル・プールは1997年に発生した人気ラッパー、“ノトーリアス・B.I.G.”の射殺事件から18年経った今も、真相を一人で追い続けていた。90年代に勃発した、西海岸のラッパー“2パック”が所属する「デス・ロウ・レコード」と、東海岸で台頭してきたラッパー“ノトーリアス・B.I.G.が所属する「バッド・ボーイ・レコード」の争い、いわゆる”HIPHOP東西抗争“によって偉大な2人のラッパーが射殺されたが、事件の全貌は謎に満ちていた。独自に事件を探っていた記者のジャックはプールを訪ね手がかりを究明する。膨大なリサーチと綿密な取材に基づき02年に出版したノンフィクションを土台に映画化。実際の当時のニュース映像などを織り交ぜ、実在した元刑事ラッセル・プールが追ったロサンゼルスに巣食う悪の正体を描く。
監督: ブラッド・ファーマン 出演:ジョニー・デップ(ラッセル・プール刑事)、フォレスト・ウィテカー(ジャック・ジャクソン)、トビー・ハス(フレッド・ミラー刑事)、デイトン・キャリー(オシェイ警部補)、ニール・ブラウン・Jr(ラファエル・ペレズ)、ルイス・ハーサム(ロサンゼルス地方検事ストーン)、シェー・ウィガム(フランク・ライガ)、シャミア・アンダーソン(デヴィッド・マック)、アミン・ジョセフ(ケヴィン・ゲインズ巡査)、ローレンス・メイソン(FBI捜査官ダントン)、マイケル・パレ(バーニー刑事)、ザンダー・バークレー(エドワード)、ジャマール・ウーラード(ノトーリアス・B.I.G.)ほか
映画「L.A.コールドケース」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「L.A.コールドケース」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「L.A.コールドケース」解説
この解説記事には映画「L.A.コールドケース」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
LAコールドケースのネタバレあらすじ:起
1997年3月9日。
全米に衝撃を与ええたノトーリアス・B.I.G.の暗殺事件が勃発。事件の担当を任されたのはロサンゼルス市警察署のラッセル・プールでした。
そのわずか9日後の1997年3月18日。
あおり運転が発端となり、非番の黒人警官ケヴィン・ゲインズ巡査が、白人の麻薬潜入捜査官フランク・ライガによって射殺される事件が発生しました。現場に到着したプールは、この事件がきっかけとなり引退に追い込まれることになりました。
その事件から18年が経過した今、プールはこれらの未解決事件の真相を独自に追い続けていました。
そんなある日、プールのもとに事件の謎を独自に探っていた記者のジャック・ジャクソンがやってきます。当時、“東西抗争”という見出しでノトーリアス・B.I.G.を批判する記事を書いたジャックはこれにより名誉あるピーボディ賞まで受賞しましたが、プールはこの記事に否定的な態度を取っていました。
はじめはジャックを追い払おうとするプールでしたが、世間から忘れ去られようとしている事件に終止符を打とうとするジャックに重い口を少しずつ開き始めました。
LAコールドケースのネタバレあらすじ:承
当時プールは捜査の過程で、ゲインズがノトーリアス・B.I.G.と対立する西海岸のレーベル「デス・ロウ・レコード」の極悪非道なCEO、シュグ・ナイトに警備として雇われていた事実を突き止めていました。
ノトーリアス・B.I.G.の暗殺は、デス・ロウ・レコードに所属するライバルラッパー、2パックが射殺されてから、たった数か月後に起こった出来事でした。プールはこれらの事件には関連性があり、何か裏があることを確信しました。
高い捜査手腕によりプールは次々と新事実を洗い出していきました。デス・ロウ・レコードにはロサンゼルス市警の汚職警官たちが多数関係している疑惑が浮上してきました。デヴィッド・マック巡査をたどった先にあったのは、ノトーリアス・B.I.G.の殺害時に暗殺グループが乗っていたシボレー・インパラSS、遺体に打ち込まれたゲッコー9ミリ弾などでした。
それだけではなく、汚職警官たちはギャングとしての顔も持ち、強盗や麻薬取引などの凶悪犯罪にまで手を染めていました。次第にプールはノトーリアス・B.I.G.暗殺自体が市警によって行われたのではないかと疑い始めました。
しかし、ロサンゼルス市警もプールの捜査を妨害しようとします。この一大スキャンダルが世間にさらされれば訴訟にかかる費用は莫大なものとなり、ロサンゼルスの街そのものが破綻する恐れがあったからです。プールが事件を追っていくと、必ず上層部に捜査を止められてしまいました。それまで味方だった上司までもが保身のために口を閉ざしてしまうのでした。
LAコールドケースのネタバレあらすじ:転
1999年5月。民事訴訟を起こしたライガの証人として、イーストLA裁判所へやってきたプールは、ある作戦を決行しようとします。
ノトーリアス・B.I.G.暗殺にデヴィッド・マックが関与し、ロサンゼルス市警がそれを隠蔽していることを公文書に記録させようとしたのです。しかし、この訴訟は司法取引が行われ、裁判直前に中止となってしまいました。
さらには、ロサンゼルス市警は、70人もの悪徳警官を自ら暴いて別の汚職事件“ランパート・スキャンダル”を陽動作戦として使ってきました。ノトーリアス・B.I.G.暗殺事件とデス・ロウ・レコードへの関与は全く触れることなく市警とのつながりを覆い隠してしまったのです。
プールはこれを受けて、年金を受給できる勤務年数までたった2週間のところで辞職を決意しました。
LAコールドケースの結末
記者ジャック・ジャクソンは、プールと待ち合わせたカフェへ行くと、そこにはノトーリアス・B.I.G.の母、ヴォレッタ・ウォレスの姿がありました。事件発生から18年たった今でもプールはヴォレッタと定期的に会って親交を深めていました。
この姿にジャクソンは深く感銘を受け、ヴォレッタに過去の記事を詫びました。ジャクソンは事件の究明をしていくうちに、過去に書いた記事に後悔し苦しんでいたのです
2015年8月9日。
プールは、ロサンゼルス郡保安局にいました。独自に行ってきた調査を広げ事件について話している最中、意識を失い帰らぬ人となりました。
今現在でも、ノトーリアス・B.I.G.暗殺事件の真相は未解決のままです。
以上、映画「L.A.コールドケース」のあらすじと結末でした。
【怪優と怪優の激突!】 ジョニー・デップとフォレスト・ウィテカーの共演は予想していた以上に素晴らしかった。デップとウィテカーが「プラトーン」以来、30年振りの共演でいったいどのような「化学反応」を起こすのか注視していた。この2人は典型的な「憑依型」のカメレオン俳優である。今回の2人はピッチャーとキャッチャーの「役割分担」を見事に果たした。デップ(プール刑事)が「クセ球」を投げる変則ピッチャーならば、その「クセ球」を受ける名キャッチャーこそが女房役のウィテカー(記者のジャクソン)なのである。 【ジョニー・デップの孤高の美学】 デップは堅実で朴訥とした風采の「職人タイプ」の刑事をただただ淡々と力演していた。そしてプール刑事は普段は淡々と素朴に振る舞っているが、その実、内に秘めたる熱き情熱は尋常ではないのである。このプールを演じたデップの「先鋭的な感性」(表情や目力)が「要所要所で」キラリと光っていた。プール刑事の深い闇と苦悩を抱えた「孤高の男」の悲壮感に、私は究極の「男の美学」を見たのである。改めて、ジョニー・デップの「魔性の男」の魅力に触れた気がする。 【フォレスト・ウィテカーがまたもや消えていた】 「ラストキング・オブ・スコットランド」で「人喰い大統領アミン」を怪演してみせたウィテカー。この時のウィテカーの演技は正に「憑依型」の典型であった。今回の新聞記者のジャクソン役でも、お人好しで繊細で「オタッキー」な人物像を「完璧なまでにビルドアップ」していた。本人以上に本人に成り切ったアミン大統領役と、今回のジャクソン役の落差、このギャップがかなり「エゲツナイ」。ウィテカーはまるでカメレオンのように、自分の体色を変えて周りに同化しようとする。元の姿を消して、その役に成り切る彼の「技量力量」は正に圧巻であり驚異である。仮に私が映画監督(或いはプロデューサー)であるならば、重要な役どころで是非ともウィテカーを使ってみたい。ウィテカーはそう思わせる誠に稀有な名優なのである。 【濃密で見どころ満載の傑作映画!】 「L・A・コールドケース」の世間の評判や関係者の評価は意外に低い。私の本音で言わせてもらうと、この作品は不当に低評価され冷遇されていると思う。ただこの映画のマイナス材料はプロットの情報量が多すぎる点と、登場人物の背景や人物像が複雑な為に、映画全体の流れが悪く所々で過密になっている点である。なので結果として、イマイチこの映画の「波に乗り切れない人」が続出するのである。この辺は改めて編集をし直す(再編集する)必要があるだろう。しかしながら個人的には、逆に濃密で見どころ満載の「傑作映画」であると考えている。 この作品では白人と黒人の根深い対立や拭えない「遺恨」、ロスアンジェルス市警の汚職や警察権力への「不信感」などが赤裸々に描かれている。また一口に「人種問題」と言ったって、「ケースバイケース」なのであって、状況によっては立場が瞬時に逆転する。黒人がみな犯罪者だというわけではないし、逆に白人みなが「差別主義者」で悪人だという訳でもない。これらの複雑に捻じれた深刻な「人種間のギャップ」や対立は米国の日常であり現実なのである。「L・A・コールドケース」は大前提としてリアルなファクトに基づく実話がベースになっている。米国は「人種のるつぼ」と言われる多民族国家でありながら、其々の人種間では「一神教的世界観」による「対立構造」が厳然と存在している。作品中に多くの警察関係者や幹部が登場するが、その全ての者が「ポジショントーク」に終始する。己の保身の為に事実を隠蔽し、組織の為に情報を秘匿し、重大事件を有耶無耶にする為だ。 「L・A・コールドケース」はエンターテイメントとしても、米国社会に一石を投じる「社会派ドラマ」としても、とてもユニークで濃密な「傑作映画」であると思う。