サラエヴォの銃声の紹介:2016年フランス,ボスニア・ヘルツェゴヴィナ映画。サラエヴォにあるホテル・ヨーロッパは、第一次世界大戦のきっかけであるサラエヴォ事件から100年の記念式典の準備に追われていた。しかしホテルでは従業員たちがストライを企てており、支配人はそれを阻止しようと試みる。一方、屋上では女性ジャーナリストと、100年前の暗殺者と同じ名を持つ男が議論を交わし、ホテルを中心に様々な人の思惑が同時進行で複雑に絡み合っていた。第66回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で上映され、審査員グランプリとFIPRESCI賞を獲得した作品。
監督:ダニス・タノヴィッチ 出演:スネジャナ・ヴィドヴィッチ(ラミヤ)、イズディン・バイロヴィッチ(オメル)、ファケタ・サリフベゴヴィッチ-アヴダギッチ(ハティージャ)、ヴェドラナ・セクサン(ヴェドラナ)、ムハメド・ハジョヴィッチ(ガヴリロ・プリンツィプ)、ジャック・ウェベール(ジャック)、ほか
映画「サラエヴォの銃声」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サラエヴォの銃声」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サラエヴォの銃声の予告編 動画
映画「サラエヴォの銃声」解説
この解説記事には映画「サラエヴォの銃声」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サラエヴォの銃声のネタバレあらすじ:起
第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から100年目の2014年。現地・サラエヴォではその節目の記念式典や特別番組などあらゆる催しが予定され、事件現場からほど近いホテル・ヨーロッパも記念式典の準備で追われていました。これまで各国のVIPが止まった由緒正しいホテルですが、経営は不調で支配人以下の従業員たちは2ヶ月も給与を支払われず、電気代も半年滞納している有様。支配人・オメルは従業員たちが記念式典前にストライキを計画していることを知り、その計画を阻止することを決意します。
フロントの責任者・ラミヤはリネン室にいる彼女の母・ハティージャのもとを訪れます。その途中、ラミヤは駐車場で複数の男が一人を暴行しているのを目撃します。それはオメルの指示をうけたホテルの地下カジノの男たちによるものでした。ストライキのリーダーを潰すことで実行を阻止しようとしたのです。ラミヤはストライキに対して消極的でハティージャにもやめるべきだと進言しますが、今更リネン室や厨房、監視室で働く従業員たちを止めることはできませんでした。
サラエヴォの銃声のネタバレあらすじ:承
そのころ、屋上ではサラエヴォ事件の特別番組の収録が行われていました。女性キャスターのヴェドラナはインタビュー形式で番組を進行します。サラエヴォ事件の実行犯ガヴリロ・プリンツィプを中心に彼は英雄か犯罪者か、皇太子夫妻は占領者か被害者か、など意見を交わしていました。そして3人目のゲストに実行犯と同じ名である男・ガヴリロ・プリンツィプが現れます。その男の家では代々男性はガヴリロと名付けられており、ガヴリロは同名の実行犯をセルビアの大英雄と認識していました。ガヴリロはサラエヴォ事件に対して過激な本音を露わにし、それに触発されたヴェドラナも本音で反論します。お互い議論に熱が入り、その勢いはまさに一触即発でした。
一方、ホテルの従業員たちは新しいストライキのリーダーを誰にするか模索していました。その結果、古株であるハティージャに白羽の矢が立ちます。それを知ったラミヤは母を説得しますが、ハティージャは聞く耳を持ちません。記念式典が行われる2日後ではEU各国から要人たちが集まるため注目がそがれてしまっては意味がないと、その日の18時にストライキを決行することが決まります。そんな中、監視室の男は防犯カメラの映像を通して先日スイートルームに泊まったフランス人男性・ジャックのスピーチ練習を黙々と眺めていました。
サラエヴォの銃声のネタバレあらすじ:転
オメルの耳にも、ハティージャがリーダーとなったことは届いていました。ハティージャへ長年共にホテルで働き、娘も雇ってあげたし夫の治療費も支援したと説得しますが、ハティージャは心を変えません。その後、オメルはラミヤを呼び出し、今からホテルを出て行くようにと告げます。悔しさを隠しきれないラミヤは母のいるリネン室へ向かい、不当解雇だと言い合っていました。そんな時、リネン室に数人の男たちが乗り込み、ハティージャを連れ去ります。オメルは再びストライキを阻止するため、クラブの男たちに連れ去るよう指示していたのです。目の前で母を連れ去られたラミヤはホテル内を探し回りますが、その姿を見つけることはできませんでした。
再度オメルのいる支配人室を訪れ、ハティージャが連れ去られたことを伝えますが、オメルは聞く耳を持ちません。それだけでなくラミヤへセクハラ行為を働きます。ラミヤはまたしても涙ぐみながら支配人室を去るのでした。一方、ヴェドラナとガヴリロの口論は収束していました。むしろ本音を包み隠さず話し合ったことで気が合うようになっていたのです。二人が移動のためエレベーターを待っていると、ヴェドラナが何かを隠します。不審に思ったガヴリロは物を出すよう銃で威すと、二人のインタビューを録音したレコーダーが出てきました。ガヴリロは何も知らない田舎者の話を録っていたのかと憤りを隠せません。
サラエヴォの銃声の結末
そんなとき、ホテルのスイートルームに宿泊していたジャックがホテルを出る仕度をしていました。仕度の合間にもジャックは演説の練習を繰り返し行います。防犯カメラからジャックを監視していた監視室の男は、仲間からの無線でジャックが部屋を出たことを知り、後を追います。
ジャックがエレベーターに乗った瞬間、ヴェドラナと口論をしていたガヴリロが突然男の前に現れ、男はガヴリロに向かって2発発砲します。その瞬間を目撃してしまったヴェドラナは呆然と座り込み、発砲した男も倒れたガヴリロの前で立ち尽くしているばかりです。
ホテル内に響き渡った発砲音で、警察官や宿泊客、来賓たちは混乱状態に陥りホテルの外へ避難します。ストライキも決行となり、瞬く間にホテル内は無人となり、オメルだけが支配人室にいました。ホテルの差し押さえも近づく中、呆然とした様子でテレビを付けます。テレビではサラエヴォ事件の記念式典と、100年を記念した劇『ホテル・ヨーロッパ』の初演が生中継されていました。そこには繰り返しスピーチを練習していたジャックの姿が映っていました。オメルはすぐにテレビの電源を消し支配人室を出ます。ホテルのリネン室、厨房、バー、ラウンジはどこも無人で静寂に包まれています。無人のホテルにはオメルの足音だけが響き、やがてオメルもホテルの外へ出るのでした。
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