イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国の紹介:2012年ドイツ映画。ロシア・モスクワを舞台に、爆弾テロ事件の濡れ衣を着せられたドイツ人ジャーナリストが汚名を晴らすため真相の解明に動くうちに国家絡みの壮大な陰謀に辿り着く様を、1999年に実際に発生した「ロシア高層アパート連続爆破事件」とそれに端を発する「第二次チェチェン紛争」をモチーフに描いたドイツ発のポリティカル・サスペンス作品です。
監督:デニス・ガンゼル 出演者:モーリッツ・ブライプトロイ(ポール・イェンセン)、カシア・スムトゥニアク(カティヤ)、マックス・リーメルト(ディマ)、ラデ・シェルベッジア(アレクセイ・オネーギン)、マーク・イヴァニール(アスラン)、スティペ・エルツェッグ(ウラジミール)ほか
映画「イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国の予告編 動画
映画「イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国」解説
この解説記事には映画「イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国のネタバレあらすじ:起
1990年代後半のロシア・モスクワ。一人の男がとある高層アパートを出た瞬間、アパートは大爆発を起こして崩壊しました…。
それから13年後。モスクワの空港にドイツ人ジャーナリストのポール・イェンセン(モーリッツ・ブライプトロイ)が降り立ちました。ポールは亡き父ノルベルト(ペーテル・フランケ)の友人だったアレクセイ・オネーギン(ラデ・シェルベッジア)が主筆を務めるロシア随一のゴシップ雑誌社「マッチ社」に短期雇用されたためにロシアを訪れたのであり、空港でこれから同僚となるカメラマンのディマ(マックス・リーメルト)に出迎えられたポールは滞在先となるアパートに案内されました。旧東ドイツの新聞社編集長だったノルベルトは5年前にロシアで自動車事故死しており、社会主義者だったノルベルトとは真逆に旧西ドイツでジャーナリストの職を得たポールは今では妻と離婚しており娘にも中々会えない日々を送っていました。
翌日、アレクセイと再会したポールは、滞在先のアパートがかつて父も滞在していたことを知りました。アレクセイや「マッチ誌」編集長のネフスキー(エフゲーニ・シッチン)から話題性のある記事を書いてくれと檄を飛ばされたポールは、出勤する途中のエレベーター内で見知らぬ女性が初老の男と何やら会話を交わしているところに遭遇しました。その後、アパートに戻ったポールは父の所有する書籍などがそのまま残されている書斎に入り、懐かしい家族写真、ノルベルトがアレクセイと組んでいた時の記事の切り抜き、自分の幼少時代の記録が収められた8mmフィルムなどを発見しました。
その夜、ポールはディマに誘われて街に遊びに出かけました。ポールはディマから「ここでは汚い連中ほど出世するものさ」と教えられ、ディマから紹介された富裕層の女たちとクラブで遊び明かしました。
順調に仕事をこなしていたポールでしたが、そんなある日、ポールは先日エレベーターで鉢合わせした初老の男が何者かに射殺される現場に遭遇しました。犯人はそのまま逃走していきました。
殺害された男は著名なジャーナリストのイジェンスキーでした。それから程なくして、イジェンスキーと共にエレベーターに乗っていた女性ジャーナリストのカティヤ(カシア・スムトゥニアク)が「マッチ誌」を訪れ、ネフスキーにイジェンスキーの記事を書くよう要求してきました。カティヤを見かねたポールは彼女に協力することを約束、夜のバーで落ち合いました。カティヤはあらかじめポールの経歴を調べ上げており、ノルベルトがイジェンスキーと一緒に仕事していたことを明かしました。カティヤは腕がありながらもゴシップ記事の仕事に甘んじているポールを「過ちの中に正義はない」と叱責し、その後二人は酒の勢いもあってすっかり意気投合しました。
イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国のネタバレあらすじ:承
翌日、オムスクで自爆テロが発生、ロシア政府はこれを機に反テロ法の成立に全力を挙げると表明しました。ポールはカティヤに誘われ、反テロ法の反対集会に足を運びました。主催者は反テロ法はロシア政府が権力を拡大するための口実に過ぎないと批判、ポールはカティヤの弟で医学部学生のアナトリー(グリゴリー・ドブリギン)やカティヤの友人ウラジミール(スティペ・エルツェッグ)を紹介されましたが、間もなく集会は当局に摘発され、タクシーでその場を逃れたポールとカティヤは互いに惹かれ合っていきました。
その翌日、ポールは独断で「マッチ誌」にイジェンスキーの追悼記事を掲載、そのことを知らされていなかったネフスキーは「このマッチ社を閉鎖に追い込むのか! この国では命取りだ」とポールを責め立てました。編集部に当局の役人が来ていることに気付いたディマはポールに、カティヤとは深入りするなと忠告しました。
アパートに戻ったポールは、ノルベルトの書斎から「哲学者は世界を様々に解釈した。重要なのは変革だ。家族の真実を探せ」と書かれたメモを発見しました。その夜、カティヤからパーティーに誘われたポールは、彼女から「一緒にこの国を出よう」と唐突に持ちかけられました。困惑するポールはひとまずカティヤをアパートに連れて行くことにし、地下鉄の駅に着いたところでポールは近くにいた男から煙草の火を貸してほしいと頼まれました。大きなリュックを担いだカティヤが一足先に駅に入った直後、駅は大爆発を起こし、ポールは爆風に吹き飛ばされました。
2日後。ポールは刑務所の病棟で意識を取り戻しました。当局の取り調べを受けたポールはカティヤは地下鉄駅爆破テロの実行犯だったと告げられ、共犯の疑いをかけられました。ポールは爆薬をリュックで運んでいたカティヤは爆破で死んだと知らされ、カティヤのウラジミールはコーカサスの過激派と繋がりのある反政府活動家であることも知らされました。ポールは自分は巻き込まれただけだと無実を主張するも聞き入れられず、数多くのチェチェン人が収監されている大部屋に収監されました。
イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国のネタバレあらすじ:転
アレクセイは弁護士を伴ってポールと面会しました。弁護士はロシアでは些細な疑惑でも逮捕されると告げ、7ヶ月以内に公判が開かれるまではここに収監されたままだと伝えました。アレクセイはポールの無実を証明すると約束しました。
大部屋内で他の囚人とトラブルになったポールは、この部屋に収監されているチェチェン人の大物活動家アスラン(マーク・イヴァニール)に声を掛けられました。アスランは当初ポールは当局のスパイではないかと疑っていましたが、ポールからノルベルトの名を聞くと一転して彼との関わりを語り始めました。
ノルベルトとアスランとの出会いは、ノルベルトがチェチェン紛争を取材していたことがきっかけでした。ノルベルトは1998年に発生した高層アパート爆破事件とチェチェン紛争との関係を記事にして発表しようとしていましたが、記事は発表されずお蔵入りとなっていました。アパート爆破の数年前、ソ連の崩壊と共にチェチェンはロシアからの独立を宣言したのですが、これを認めないロシアはチェチェンに軍事介入、家族や仲間をロシア軍に殺されたアスランたちは地下組織を結成してロシアに対抗したのです。
アスランは中世の思想家マキャヴェッリの言葉「権力を保持するには時としてテロに頼るべし」を引用、ロシアはわざとテロ事件をでっち上げてチェチェンに介入し、タリバンを排除する名目でアフガニスタンに近づいて石油の利権を得ようと目論んでいることを示唆しました。アスランはノルベルトもその真相に辿り着いたことを知っていました。
ある日、アスランは大部屋から刑務所所長や看守らに連行されていきました。その夜、凄惨な拷問を受けて大部屋に戻されたアスランは、この部屋の囚人の中に密告者がいると告げました。ポールは密告者がアスランと仲間たちに処刑される様を目の当たりにしました。
翌日、ポールら大部屋の囚人たちはアスランを残して他の房に移されました。アスランはポールに「頑張れよ」と別れを告げ、刑務所所長らに殺害されました。アスランの仲間たちは、アスランが死んだのはポールのせいだとして激しく責め立てました。リンチにかけられて殺されそうになったポールは独房に移されました。
ポールの元を弁護士が訪れ、アレクセイのコネを使った奔走によりポールは国外退去処分となったことが告げられました。ポールはこの国で不当な扱いがなかったこと、今回の件を国外に公言しないことに同意する契約書にサインし、刑務所から直接空港に向かう車に乗せられました。
イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国の結末
空港に向かう道中、ポールはこの車が空港に向かっていないことに気付きました。ポールは人気のない場所に連れて行かれ、同乗していた者たちに殺されそうになりましたが間一髪で脱走しました。
街に戻ったポールはディマに助けを求め、ディマの妹がいるキエフに逃げるよう勧められました。しかし、キエフ行きのバスに乗ろうと向かったバスターミナルにはポールの指名手配の張り紙が張られており、当局も監視していたことからポールはキエフ行きを断念せざるを得ませんでした。
再び街に戻ったポールは、地下鉄駅爆破事件の直前に煙草の火を貸した男と偶然にも遭遇しました。ポールは男の後を追って地下鉄に乗り込み、街の外れにあるビルの一室に辿り着きました。ポールは男が再び外出した隙を突いて部屋に入り込むと、そこにいたのは何と爆破で死んだはずのカティヤでした。驚きを隠せないポールに、カティアは「ごめんなさい…」とだけ呟きました。そこにあの男が戻ってきてポールに襲いかかり、ポールはカティアの助けを得て男の脚を拳銃で撃ち、ビルから逃亡てカティアの友人の家に身を隠しました。
カティアはポールに事情を語り始めました。反テロ法反対集会後にカティナの弟アナトリーが逮捕され、当局からの尋問を拒否したアナトリーは刑務所に収監されました。アナトリーの件で証言を求められたカティナは外国人であるポールを利用して逃れようとしましたが、爆破事件の直前に男の一味に拉致されたのです。男の正体は当局の諜報員であり、ウラジーミルは仲間の情報をバラシて罪を免れたのです。
ポールはカティナを連れてドイツ大使館に逃げようとしましたが、地下鉄車内で乗客が自分の記事が掲載された雑誌を手にしているのを見てノルベルトのアパートに向かいました。書斎の内部は荒らされていましたが、ポールはノルベルトが遺したメモを発見しました。メモのメッセージはマルクスの言葉の引用であり、ポールはノルベルトとはよく心理ゲームをしていたことを思い出しました。“家族の真実を探せ”とは家族写真の中に隠されていたノルベルトの写真であり、ノルベルトは自分のロッカーにヒントが隠されていることを指し示していました。
ポールとカティナはディマの助けを借りて「マッチ社」に潜入すると、ノルベルトのロッカーの物は資料室に移動されていました。資料室にあったノルベルトの箱の中にはノルベルトとアスランのツーショット写真などの他にマスクスの本が収められており、本には1枚のDVDが挟められていました。それはノルベルトが生前ポールに向けて残していたビデオメッセージであり、ノルベルトがこれまで掴んだ1998年のアパート爆破事件の調査の結果が克明に記録されていました。
事件後、ロシア政府は確たる証拠もなしにチェチェン人の犯行と断定したのですが、ノルベルトの調査の結果、事件当日に現場のアパートには当局の者が見張っていたこと、事件に使用された爆弾と同型の物が現場近くの保安庁職員の自宅にあったこと、汚職スキャンダルに見舞われていた当時の大統領が指名した後継者が事件直前に訴追免除を働きかけたことが明らかになりました。保安庁を調べようとしたノルベルトは事件直後に逮捕され、チェチェン紛争勃発後に極秘に釈放されました。
その直後、前大統領から指名された後継者は圧倒的な支持を受けて大統領に就任したのです。ロシアの真の姿に気付いたノルベルトはこの記事を発表しようとしましたが、この頃からゴシップ色を強めていた「マッチ誌」が採用することはなく、ノルベルトは最後の手段として事故に見せかけて自らの命を絶つことで何らかのメッセージを残そうとしたのです。
ポールとカティナはディマが用意したホテルに匿われ、ディマは二人を国外に脱出させる手筈を整えてくれることになりました。父の真意を知ったポールは自身とノルベルトの共同名義で一連の件をまとめた「流血の秋」と題した記事を書き上げました。
ポールはカティアに一緒に出国しようと言いますが、カティナは弟を残してはいけないとロシアに留まる決意を固めており、一旦サンクトペテルブルクの知人の元に身を寄せた後にポールが無事出国するのを確認してから当局に自首するとポールに告げました。カティアはポールに無事帰国したら連絡してほしいと別れを告げました。
その夜、ポールはアレクセイの自宅を訪れ、ノルベルトのDVDを渡すと書き上げた記事を掲載するよう依頼しました。アレクセイは「民衆は過去の紛争の話など興味はない。歴史的にも時として政府の陰謀は必要なものだ。テロの脅威が国民の結束を固めた。他の国も同じことをしている」と記事掲載を拒否しましたが、帰国の準備だけはすると述べました。
アレクセイは密かに保安庁の役人に賄賂を渡してポール出国の準備をしており、ポールはアレクセイの車で空港に向かうことになりました。車中でアレクセイは1998年当時崩壊しかけたロシアを立て直したのは今の大統領であり、それには代償が伴ったこと、ノルベルトは事件と国内の反応とのギャップに心を痛めていたことを告げ、「親父さんの二の舞にはなるなよ」と忠告しました。
ポールがベルリン行きの飛行機に乗り込んだのと時を同じくして、アレクセイは何者かによって乗っていた車ごと爆殺されました。当局はコーカサスの過激派の犯行と断定、反テロ法の早期可決を目指すと宣言しました。無事にベルリンに到着したポールはアレクセイのニュースを見て呆然と立ちすくみました。その一方、カティナは「流血の秋」が掲載された「マッチ誌」を手にして笑みを浮かべました。
以上、映画「イヤー・オブ・ザ・スネーク 第四の帝国」のあらすじと結末でした。
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