ディナーラッシュの紹介:2001年アメリカ映画。ニューヨーク。ギャングによって殺された老人エンリコ。彼はとある人気のイタリアン・レストランの共同経営者だった。そして、レストランを舞台に弔い合戦が始まる。
監督:ボブ・ジラルディ 出演:ダニー・アイエロ(ルイス)、エドアルド・バレリーニ(ウード)、カーク・アセヴェド(ダンカン)、ヴィヴィアン・ウー(ニコーレ)、サマー・フェニックス(マルティ)、マイク・マッグローン(カーメン)、ジョン・コーベット(ケン)、マーク・マーゴリス(フィッツジェラルド)、サンドラ・バーンハード(ジェニファー・フリーリー)、ほか
映画「ディナーラッシュ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ディナーラッシュ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ディナーラッシュの予告編 動画
映画「ディナーラッシュ」解説
この解説記事には映画「ディナーラッシュ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ディナーラッシュのネタバレあらすじ:起・イタリア料理とギャング
ある日、子供を迎えに来た老人エンリコは、クイーンズのギャングに襲撃され死亡してしまう。
ウードがシェフを務めるイタリア料理店は、今日も客で溢れていた。ウードは、厨房と、レストランフロアを行ったり来たり。厨房はまさに戦争状態。けれど副シェフのダンカンがまだ来ていなかった。
いつもの奥の席に座る父でオーナーでもあるルイスに、ウードはミキサーの購入とイタリア人料理人の賃上げを要求、そして、この店を自分に任せてくれるよう頼むが、かつて母親と経営していた頃の伝統的なイタリア料理が忘れられないルイスは、オーナーの座を渡そうとはしなかった。
スポーツで賭けをして借金を抱えている副シェフのダンカン。エンリコが殺されたのは、彼の借金のせいだった。エンリコを亡き者にし、相棒のいなくなったルイスの元に、自分たちの事業の拡大と、あわよくば、相棒になりレストランを乗っ取ろうと、二人のギャングがやって来た。
ディナーラッシュのネタバレあらすじ:承・シェフはイタリア料理界の新星
ウードはイタリア料理の中でもキュイジーヌ・ヌーベルという新しい料理の分野を得意とし、副シェフのダンカンは、オーソドックスなイタリア料理を得意としていた。彼が遅刻して厨房に入ると、料理がどんどんと出来上がっていった。
そんな時ニューヨークが停電してしまう。レストランフロアではキャンドルサービスで食事が続けられ、ギャングを含めた客たちは、優雅に食事をしていた。
ルイスはギャングたちに何度も呼びつけられるが、自分は堅気のレストラン経営者になったと話を受けようとしない。
ウードはダンカンに他の店から引き抜きの声がかかっていると言うが、余計な噂だと一蹴されてしまった。そんななか、エンリコの娘と孫や料理記者や、アーティストの集団が続々と店にやって来た。
バーカウンターでは、誰かを待っている一人の男が、ウードの料理を見て、食べ物が見世物になっていたと、茶化した。
再びルイスの席を訪れたウードは、料理記者から見放される前に、雇われをやめたい、相棒になりたいと言い募った。彼は、息子ではないダンカンの料理が好みの父が彼を継がせるのではと心配していた。
ディナーラッシュのネタバレあらすじ:転・ギャングがいようと平常営業
借金があるにも関わらず、料理をしながらスポーツ賭博をやめられないダンカンは、借金を返そうと賭けていたバスケットボールの試合にも負けてしまう。上で待つギャング呼ばれ、料理に毒を盛ろうとするも、断念。恋人のニコーレに電話でその事を話すと、事情を説明するように諭された。
ルイスはエンリコの娘と孫に電話をし、エンリケと自分はギャングじゃないと弁明、すると娘は、彼にケーキを持ってくるように頼んだ。
オーナーのルイスの席を訪れる人の中には、刑事の夫妻もいた。夫は仕事かと思っていたが、妻は人気レストランでのディナーを楽しみしていた。
バーで一人酒を飲む男は、ルイスの所に人が寄ることに目をつけ、バーテンとルイスの事を聞いた。しばらくすると、同じく一人の女性がバーカウンターにやって来て、二人は意気投合した。
ルイスはギャングにレストランは譲らないが、胴元を譲るからクイーンズに帰るように伝え、借金分のお金を彼らに渡した。そしてダンカンには彼の借金が原因で自分のエンリコが殺されたと話し、店をしばらく博打からも手を引くように言った。
ディナーラッシュの結末:イタリア式引継ぎ方
ルイスは指定席やレストランの儲けの分け前は貰うが、事実上オーナーの座をウードに譲ることにした。そして、厨房を見て、母さんの料理が食べたいとぼやき、ギャングに洗面所に呼び出されているのも無視して、ケーキを持ってエンリコの娘の元へ行く所だった。
バーでは、仲良くなった女性が男性のネクタイを見て、ウォール街勤めだと見事に当てて見せた。しかし彼は殺し屋稼業もやっており、ちょうどゲイリーが他の人が入らないようにしている洗面所へ行き、二人を殺した。そこへ、ちょうど刑事の妻が入っていき、ギャングの遺体を発見した。容疑者は不明のまま、ウードに店は受け継がれた。
以上、映画「ディナーラッシュ」のあらすじと結末でした。
ディナーラッシュのレビュー・考察:イタリアの母の味
おそらくイタリアからアメリカにわたって来たルイスは、妻の作っていた素朴なイタリア料理を忘れられないでいる。だからこそイタリアのシンプルな料理を作る料理人を副シェフに置いている。しかし、オーナーの席を譲るのは、息子のイタリア料理をべースに新しい創作料理を作るウード。故郷を懐かしみながらも最先端のアメリカのレストランであることを忘れてはいない。そして、古い因縁を断ち切る事で、アメリカの土壌にさらに馴染むことを元オーナーのルイスはもくろんでいたのかもしれない。
この作品は2000年に公開されたのだそうだがこの映画のことを私は知らなかった。「ディナーラッシュ」は文句なしの傑作映画である。先日CATV(CS)のムービープラスで録画したものをじゅっくりと鑑賞。戦場と化した厨房で繰り広げられる料理人たちの熱きバトル。そしてウエイトレスと料理人の丁々発止のやり取りなどもリアルで見応えがあった。イケメンで若き天才シェフの息子ウードと、レストランのオーナーでウードの父であるルイスの料理をめぐる確執もまた面白い。あくまでもイタリアの伝統を重んじた「郷土料理」に拘る父のルイス。一方で「ヌーベルキュイジーヌ」にこそ発露を見い出そうとする天才肌のウード。これは正に料理界の「保守派」VS「リベラル派」(新進気鋭)の対峙であり父子の相剋でもある。この映画は典型的な群像劇であるが、登場人物たち一人ひとりのキャラ(人物像)が丁寧かつ克明に描かれていた。つまり緻密にして濃厚な「人物描写」が実に見事なのである。厨房で腕を振るう料理人たちの手際のよさや食材の捌き方も素晴らしい。そして一流のシェフは「名指揮者」の様に各パート(スタッフ)に的確な指示を出し、場合によっては「交通整理」の力量も必要とされる。いったいこの映画のリアルな空間(厨房)は何なのか? かつて私もコンサートホールやイベント会場などで指示を出し、混乱を避ける為の交通整理を身を以て実践して来た。だからこそこの映画での厨房内のリアルさに驚きと共感を覚える訳である。チョット調べてみたところ監督のボブ・ジラルディは、CMディレクターでありミュージックビデオも手掛ける実力派なのだとか。更には複数のレストランを経営するオーナーでもあるらしい。そして本作の舞台となったレストラン「ジジーノ」も、セットではなく実際に彼のレストランで撮影したのだそうだ。だから「臨場感」に富んでいるのか、なるほど私の目に狂いはなかった訳だ。ショーネシーとカラタの両氏の共作である脚本もまた傑出している。製作者や監督及び脚本家などは、この映画を除けばほぼ無名のようだ。つまりは「ディナーラッシュ」の為だけに優秀な人材が結集した訳である。この作品は正に一期一会(たった1度の出逢い)が生んだ「映画の奇蹟」なのである。このように作品を生んだ背景にも其々に人生の濃密なドラマが内包されていたのだ。また主役を務めたダニー・アイエロ(オーナーのルイス役)も等身大の人物像を投影していた。wikiによるとイタリア移民で苦労人のアイエロは、ナイトクラブの用心棒なども経験しているそうだ。余談ではあるが、かのディーン・マーティンもイタリア系移民であり、カジノやナイトクラブなどで用心棒をしていた。なるほどアイエロの器量と押し出しの強さは彼の人生経験ともシンクロしているようだ。この物語はエンリコの殺害から始まり、終盤での二人のヤクザの殺害によって幕が下ろされる。つまり冒頭での一滴の水の落下がみるみるうちに周囲に波紋を広げてゆき、やがて大河の奔流となって最終的には一点に注ぎ込んで収斂(しゅうれん)する。この流麗なるプロットと脚本が誠に素晴らしい。個人的にもイタリア料理の大ファンなのでとても後味が良かった。