海外特派員の紹介:1940年アメリカ映画。ヒッチコックのエスピオナージ・スリラーの傑作。「レベッカ」に続く渡米2作目だが、雨の中の暗殺場面や風車小屋でのサスペンスなど、ヒッチコックらしい見せ場や要素が随所に盛り込まれている。特にラストの飛行機の墜落シーンは圧巻。
監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ジョエル・マクリー(ジョニー・ジョーンズ)、ラレイン・デイ(キャロル・フィッシャー)、ハーバート・マーシャル(スティーブン・フィッシャー)、ジョージ・サンダース(スコット・フォリオット)、アルバート・バッサーマン(ヴァン・メア)、ほか
映画「海外特派員」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「海外特派員」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
海外特派員の予告編 動画
映画「海外特派員」解説
この解説記事には映画「海外特派員」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
海外特派員のネタバレあらすじ:起
ニューヨークグローブに勤めるジョニー・ジョーンズは血の気の多い新聞記者。警官を殴ったことでクビを覚悟していましたが、突然、社長に呼び出されます。用件は驚いたことに、彼を海外特派員に任命する、というものでした。社長は、緊迫するヨーロッパの政治情勢を偏見のない目で報道したい、と考えていましたが、三面記事担当で、世界情勢などには無関心のジョーンズこそその任にピッタリだと思ったのです。
ジョーンズは戸惑いながらも新しい特派員としてロンドンに向かいます。ロンドンでの第一の仕事は、オランダの外交官ヴァン・メアからベルギーとの講和条約の詳細を聞き出すことでした。幸い、滞在しているホテルから昼食会に行く途中でヴァン・メアに遭遇したため、ジョーンズは車の中でインタビューをしようとします。しかしヴァン・メアは鳥の話ばかりしてジョーンズを煙に巻き、実のある内容を語りません。
海外特派員のネタバレあらすじ:承
昼食会ではニューヨークで社長から紹介された平和団体の代表フィッシャー、そして初対面であるその娘のキャロルもいました。ジョーンズは昼食のあと再びヴァン・メアの取材をするつもりでしたが、彼が途中退席してしまったため、それはかないません。ジョーンズはヴァン・メアの後を追ってオランダへと移動。そして雨の中、市庁舎に入ろうとしたヴァン・メアに話しかけたところ、突然カメラマンのふりをした男がヴァン・メアを射殺します。人々が騒然となる中、ジョーンズは暗殺者を追うために通りかかった車に乗せてもらいます。その車は偶然キャロルのものでした。
フォリオットという記者を加えた3人は必死に車を追跡するものの、一旦は見失います。ところがジョーンズが風向きに逆らって回転する風車を発見。その小屋に入ってみると、そこには一味に捕えられたヴァン・メアがいました。撃たれたのは暗殺者たちが用意した替え玉だったのです。その風車小屋から逃げ出したジョーンズは警察と共に戻ってきますが、もはやそこはもぬけの殻です。しかもヴァン・メアが生きているといっても信じてもらえません。
海外特派員のネタバレあらすじ:転
その後、秘密を知ったジョーンズは暗殺者グループにホテルで命を狙われます。しかし、キャロルの協力で何とか助かり、これをきっかけに2人は恋仲となります。イギリスへ帰還した彼らは、すぐにヴァン・メアを巡る陰謀についてフィッシャーに相談にいきます。ところが、なんと彼こそが陰謀の首謀者でした。フィッシャーは陰謀について口外しないように図ったあと、ジョーンズを殺し屋に始末させようとしますがうまく行きません。しかもそのことでジョーンズに自分の正体を勘づかれてしまいます。
ジョーンズの方ではフォリオットと協力してキャロルを誘拐したように見せかけ、フィッシャーからヴァン・メアの居場所を聞き出そうとするのですが、こちらも失敗に終わります。しかしフォリオットがフィッシャーの後をつけたことで敵のアジトが分かり、ヴァン・メアを見つけ出します。ジョーンズもやってきてヴァン・メアは奪還しますが、残念なことにフィッシャーたちはすでに秘密条項を彼から聞き出していました。
海外特派員の結末
翌日、ついにイギリスがドイツに宣戦布告。そしてフィッシャーと父親の正体を知らないキャロルは、大西洋横断飛行機に乗り込んで帰国の途につきます。ジョーンズとフォリオットもフィッシャーを逃すまいと同じ機に乗っていました。フィッシャーは偶然フォリオット宛の電信を読んで自分が逮捕されることを知り、キャロルにすべてを告白。キャロルはショックを受けます。
まもなく飛行機はドイツの駆逐艦から砲撃を受けて海に墜落し、ほんの数人だけが助かります。その中にはジョーンズ、キャロル、フォリオット、フィッシャーもいました。しかしフィッシャーは他の乗客を助けるために海に身を投げ、自ら命を絶ちます。アメリカの船に助けられたジョーンズはこれらの出来事を特ダネとして本社に伝え、海外特派員として有名な存在になるのです。
以上、映画「海外特派員」のあらすじと結末でした。
「海外特派員」は、サスペンス・スリラーの巨匠・アルフレッド・ヒッチコック監督が、1940年に撮った映画ですね。
ストーリーそのものからして、古めかしい感じがするのは否めません。
第二次世界大戦前夜のヨーロッパ情勢を背景にしているにしては、何か薄っぺらな感じがしなくもないし、主人公のジョエル・マックリーを亡き者にしようとする、自称、探偵の男にしても、教会の塔の上から突き落とそうという、極めて原始的な方法を用いたりしています。
しかし、ヒッチコック監督には、初めから複雑な政治情勢などには全く興味がなく、また描く気もなかったし、彼にとっては、〇人は一種のゲームであって、いかにして我々観る者をハラハラ、ドキドキさせ、笑わせ、ホッとさせるか、そんなことばかり考えながら映画を撮っているのだと思います。
まったく、次から次へと、さまざまな趣向を凝らしたサスペンスの場面を用意して、これでもか、これでもかと観ている我々に迫ってくる。
このヒッチコック監督の名演出の中でも、特に優れている場面が、少なくとも二つあるように思います。
一つは、アムステルダムの議事堂前で、平和主義者の元高官が〇害されるところ。
ザーザー降りの雨の中で、特派員のジョエル・マックリーが、この元高官に近づいて話をしようとすると、カメラマンが、シャッターを切るかに見せかけて、元高官を撃ち〇す。
マックリーが犯人を追うが、傘、傘、傘に遮られて、まったく身動きがとれない———-。
ヒッチコック監督のサスペンスが、ストーリー展開の面白さとともに、映像によって導き出されていることがよくわかります。
映画本来の魅力を十二分に生かして、サスペンスを組み立てているのだと思います。
もう一つは、主人公たちの乗った旅客機が撃墜され、海上へまっしぐらに突っ込むところでは、操縦席にカメラを据えて、ワンカットで、前面の硝子が割れ、海水が飛び込んでくるまでを見せてしまう。
もう、これはまさしく、ヒッチコック監督による”映像の魔術”と言えると思います。
ヒッチコック監督の映画が永遠に不滅なのは、映画の面白さを知り尽くし、映画ならではの面白さに徹しているからだと思います。