天国は待ってくれるの紹介:1943年アメリカ映画。レスリー・ブッシュ=フェキート作の戯曲『Birthday』をハリウッドで映画化したロマンチック・コメディです。地獄行きを覚悟しながら死後の世界にやってきたプレイボーイの男が、閻魔大王を相手に自らが歩んできた人生を振り返る物語です。アカデミー賞でカラー撮影賞、監督賞、作品賞にノミネートされています。
監督:エルンスト・ルビッチ 出演者:ジーン・ティアニー(マーサ)、ドン・アメチー(ヘンリー・ヴァン・クリーヴ)、チャールズ・コバーン(ヒューゴ・ヴァン・クリーヴ)、レアード・クリーガー(閻魔大王)、ルイス・カルハーン(ランドルフ・ヴァン・クリーヴ)、スプリング・バイイントン(バーサ・ヴァン・クリーヴ)、ユージン・ポーレット(E・F・ストレイブル)、マージョリー・メイン(ストレイブル夫人)、アリン・ジョスリン(アルバート・ヴァン・クリーヴ)、シグネ・ハッソ(イヴェット)ほか
映画「天国は待ってくれる」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「天国は待ってくれる」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
天国は待ってくれるの予告編 動画
映画「天国は待ってくれる」解説
この解説記事には映画「天国は待ってくれる」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
天国は待ってくれるのネタバレあらすじ:起
ヘンリー・ヴァン・クリーヴ(ドン・アメチー、9歳時:スコッティ・ベケット、15歳時:ディッキー・ムーア)は死後の世界の受付にやってきました。死者は閻魔大王(レアード・クリーガー)によって天国行きか地獄行きかの裁きを受けることになります。ヘンリーはこれまでの人生を振り返れば自分は天国に行く資格はなく、地獄行きで当然だと考えていました。興味を抱いた閻魔大王はヘンリーの話を聞くことにし、ヘンリーは自らの生涯を語り始めました…。
1872年10月25日、ヘンリーはアメリカ・ニューヨークの上流階級のクリーヴ家に生を受けました。一人っ子だったヘンリーは母バーサ(スプリング・バイイントン)や祖母(クララ・ブランディック)に甘やかされて育ちました。そんなヘンリーが女性に興味を抱くようになったのは9歳の頃でした。
ヘンリーが15歳の時、クリーブ家にフランス人メイドのイヴェット(シグネ・ハッソ)がヘンリーの教育係を兼ねて雇われることになりました。父ランドルフ(ルイス・カルハーン)や祖父ヒューゴ(チャールズ・コバーン)から子供扱いされていることを不満に思っていたヘンリーは、自分のことを理解してくれたイヴェットと気が合いました。やがてイヴェットは屋敷を出ることになりましたが、ヘンリーはイヴェットとクラブで酒を飲み、騒ぎを起こしました。
天国は待ってくれるのネタバレあらすじ:承
26歳になったヘンリー(ドン・アメチー)は自由気ままで自分の良き理解者であるヒューゴに甘やかされ、すっかり暇を持て余したプレイボーイとなってショーガールに夢中になっていました。バーサはヘンリーに、弁護士になった堅物の従兄弟アルバート(アリン・ジョスリン)を見習ってほしいと考えていましたが、どうしてもヘンリーに厳しくすることはできませんでした。
そんなある日、街に繰り出したヘンリーは公衆電話で母親と通話をしている美女を見かけました。美女が明らかに母親に対して嘘をついているのを見たヘンリーは彼女に興味を抱き、彼女が入った書店で店員になりすまして声をかけました。その際、ヘンリーは美女が「夫を幸せにする方法」という本に興味を示していたことから、彼女には婚約者がいることに気付きましたが、結局は店員ではないことがバレて彼女に逃げられてしまいました。
ある夜、アルバートが婚約者マーサ(ジーン・ティアニー)、彼女の父でカンザスの精肉業者ストレイブル(ユージン・パレット)とその妻(マージョリー・メイン)と共にクリーブ家を訪れました。実はヘンリーが街で出会った美女こそがマーサであり、二人は驚きながらも街での一件は二人だけの秘密にすることにしました。これまでマーサには何度か縁談はあったものの両親が中々OKを出さず、アルバートこそが初めて両親が認めた相手だったのです。
しかし、マーサはアルバートを心から愛してはおらず、彼との結婚はカンザスの田舎を離れて憧れのニューヨークで暮らすための手段にすぎませんでした。マーサの気持ちを理解したヘンリーは彼女を口説き落とし、駆け落ちしてしまいました。激怒したストレイブルはマーサを勘当し、ヘンリーとマーサを祝福したのはマーサを気に入ったヒューゴだけでした。
天国は待ってくれるのネタバレあらすじ:転
10年後。ヘンリーとマーサはクリーヴ家に戻っていました。父ランドルフは既になく、ヘンリーとマーサの間には息子ジャックが誕生していました。ところが10回目の結婚記念日の前夜、ヘンリーが他の女性と浮気をしていることを知ったマーサはクリーヴ家を飛び出し、カンザスの実家に戻ってしまいました。
その頃、カンザスのストレイブル家では、不仲に陥っていたストレイブル夫妻の元にアルバートが訪れていました。アルバートは未だにマーサへの想いを抱き続けており、ストレイブル夫妻もマーサの勘当を解く気になりました。マーサもヘンリーとの離婚を決意していましたが、ヘンリーはヒューゴと共にストレイブル家に潜り込んでマーサに謝罪し、ヘンリーを許したマーサは彼から二度目の駆け落ちを持ちかけられ、父がうたた寝をしている間にヘンリーと共に駆け落ちしていきました。
それから15年後。ヘンリーとマーサは結婚25年目を迎えていました。そんなある日、ヘンリーは成長した息子ジャック(トッド・アンドリュース)がコーラスガールのペギー・ナッシュ(ヘレン・レイノルズ)と交際していることを知り、ジャックからペギーを引き離すために彼女の楽屋に乗り込みました。ヘンリーがジャックの父であることに気付いたペギーは手切金2万5000ドルで手を打ち、ジャックがペギーと別れてくれたことに安堵しましたが、それから程なくしてジャックはフィラデルフィア出身のショーガールと付き合い始め、ヘンリーとマーサの頭を悩ませました。
それから程なくして、ヘンリーはマーサが体調を崩していることに気付きました。結婚記念日のパーティーの日、ヘンリーはマーサと出逢った25年前のことを思い出しました。マーサもヘンリーを心配させまいとパーティーで彼と踊りました。マーサが他界したのはこれから数か月後のことでした。
天国は待ってくれるの結末
60歳になったヘンリーはマーサを失った寂しさから若い女と遊び始め、ジャックに注意されました。それでもヘンリーはマーサと出会った時の本「夫を幸せにする方法」を手にしては彼女を思い出していました。ヘンリーがその生涯を閉じたのは70歳の時、最期を看取ったのは美人の看護師ネリー・ブラウン(ドリス・メリック)でした…。
閻魔大王に全てを語ったヘンリーは地獄行きを覚悟していました。しかし、閻魔大王はヘンリーの地獄行きを認めず、天国にもたまに空きがあること、そして何よりも天国でマーサとヒューゴがヘンリーを待っていてくれていることを語りました。ヘンリーは閻魔大王に別れを告げ、閻魔大王はヘンリーを“上”行きのエレベーターへと送り出しました。
以上、映画「天国は待ってくれる」のあらすじと結末でした。
流石はソフィスティケイテッド・コメディの名手、エルンスト・ルビッチ。見事に仕上がっていて、古さを感じさせない。メイクもうまい。
しかし、この映画、1943年の作だ。美しいカラーで20世紀初頭の上流社会の遊び人を描く。日本では学徒出陣が行われた年。雨の中、学生服銃を担ぎゲートル姿で行進する学生達とこの映画を作る国とが対峙しながら繋がっている。そこにある大きな差に改めて愕然とする。