夜の大捜査線の紹介:1967年アメリカ映画。人種差別の激しいアメリカ南部で起こった殺人事件に取り組む黒人刑事を巡るサスペンスドラマ。公民権運動が盛り上がっていた1960年代を描き、第40回アカデミー賞の各部門を受賞したサスペンス映画です。原作はジョン・ボールのベストセラー小説『夜の熱気の中で』(アメリカ探偵作家クラブ新人賞受賞作品)をスターリング・シリファントが脚色しました。音楽監督はクインシー・ジョーンズで、主題歌は題名の『IN THE HEAT OF THE NIGHT』で、レイ・チャールズのヒット曲の1つです。
監督:ノーマン・ジュイソン 出演:ロッド・スタイガー(ビル・ギレスピー)、シドニー・ポワチエ(バージル・ティッブス)、ウォーレン・オーツ(サム・ウッド)、リー・グラント(コルバート夫人)、スコット・ウィルソン(ハーヴェイ)、ほか
映画「夜の大捜査線」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夜の大捜査線」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「夜の大捜査線」解説
この解説記事には映画「夜の大捜査線」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:1.プロローグ:町の救世主殺人事件発生
ある真夏の夜、アメリカ南部ミシシッピ州の田舎町スパルタの寂れた駅に到着した夜行列車から、ひとりの黒人男性が降り立ちました。うだるような暑いその日、サム・ウッド保安官はラルフ・ヘンショウの食堂で冷たいジュースを飲んで一休みした後、深夜のパトロールに行きました。途中、灯りのついているロイド・パーディの家でサムは少女が裸でジュースを飲んで姿を目にしましたが、その姿に呆れ、パトロールを続行しました。すると町の路上で一人の男性が殺されているのを発見しました。その男は、この田舎町に工場を建設しようと北部から来ていた重要な実業家コルヴァート・コルバートでした。彼は頭を殴られて死亡していました。犯人は彼の財布を盗んで逃げたようでした。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:2.殺人課No.1の黒人刑事ヴァージル・ティッブス
駆けつけたビル・ギレスピー署長の命令で、サムは容疑者捜索のためパトロールに行きました。すると、駅の待合室で一人の黒人男性がいました。サムは彼を問答無用で銃を突きつけ、大金を所持していたので、容疑者として署まで連行しました。署まで連行されたその黒人男性を、ギレスピー署長は、彼の話をまともに聞こうともせず、大金を所持している黒人というだけで、端から犯人扱いで尋問しました。すると、その黒人はヴァージル・ティッブスと名乗り、ギレスピー署長に「あんたと同じ警察官だ」と言い、バッジを見せました。それでもギレスピー署長は、大金を所持していたティッブスを疑いました。ティッブスは自分の給与は「週に162ドル97セント」だと言うと、驚き憤ったギレスピー署長は、直ぐに彼の上司に確認をとりました。ティッブスは紛れもなく北部ペンシルバニア州フィラデルフィア署の殺人課No.1の刑事でした。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:3.容疑者ハーヴェイ、逮捕
ティッブスは上司からその殺人事件の捜査を手伝うように言われましたが、彼は拒否しました。また、ギレスピー署長もその提案に拒否をしました。しかし、殺人などめったに起きない田舎町のギレスピー署長は「俺は専門家じゃねえ!悔しいがな」と言い、帰ろうと出ていくティッブスを無理矢理引き止め、検死に立ち会わせました。ティッブスは仕方なく被害者の検死をしました。さすが殺人課No.1の刑事だけあって、彼の検死は手慣れた手つきで、綿密に検死を行いました。ティッブスは、最初に検死したスチュアート医師の死亡推定時刻午前2時15分よりも死亡時刻はもっと早いと判断しました。すると、そこに容疑者確保の電話が入り、そのティッブスのもっともな論理に感心したギレスピー署長は、医師に「その男が欲しい物は何でも揃えろ」と言い、部屋を出ていきました。ティッブスが署に戻ると、署長室に被害者の妻レズリー・コルバートが来ていました。ティッブスは署長が戻っていませんでしたが、彼女に会いました。「主人に何があったの!?ここの人はみんな口がないの!?」と訴えかかるレズリーに、ティッブスは事実を告げました。驚き悲嘆にくれるレズリーをティッブスは慰め、落ち着かせ、「暫く一人にして」と言う彼女を署長室に残し、部屋を出ました。するとそこに容疑者ハーヴェイ・オバーストを確保してきたギレスピー署長たちが嬉しそうに帰ってきました。ティッブスはハーヴェイの両腕を触り調べました。ハーヴェイは犯行の自白はしていませんでした。ティッブスは、ハーヴェイを左利きだと言い、彼は無実だと主張しました。その頃、署長室では、被害者の財布を所持していたハーヴェイは、犯人扱いされていました。しかし、彼はレズリーに「ただ拾っただけだ」と主張しました。遺体確認のため、レズリーを葬儀屋まで連れて行こうとしたギレスピー署長に、ティッブスは「検死の結果、死因は右から17度の角度で後頭部に加えられた一撃」で、左利きのハーヴェイは無実と主張しました。黒人から誇りを汚されて憤ったギレスピー署長は、ティッブスを町から出そうとしますが、彼はFBIがいずれ乗り出すだろうと言い、証拠物件を持っていこうとしました。その白人と黒人のつまらない意地のやりとりを見ていたレズリーは、「情けない。それでもあなたたちは警官なの。…警官なら犯人を探しなさい!」と呆れ、憤って出ていきました。ギレスピー署長は、ティッブスを証拠隠匿罪でハーヴェイと同じ牢屋に入れました。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:4.ティッブスの決意
ハーヴェイは牢屋に入ってきた黒人ティッブスを、始めは毛嫌いしましたが、ティッブスが刑事だと知ると、ハーヴェイは事実を全て告白しました。その話の中で、露出狂のデロレスの話もしてきました。一通り話を聞いたティッブスはハーヴェイの右手を調べました。すると、ティッブスはギレスピー署長により釈放されました。ティッブスはハーヴェイが犯行時刻0時半頃に現場にいなかったこと、彼の右の指爪にチョークの粉がついていたことを理由にあげ、彼も釈放したほうがいいと助言しました。そして、ティッブスは、被害者は別の場所で殺され、現場に捨てられたと言い、署を出ていきました。ギレスピー署長は市長とレズリーに呼ばれ、ティッブスに今回の事件捜査の全権を与えるように訴えられました。レズリーはそうしないと工場は建てないと言ってきました。ギレスピー署長は市長からも説得され、そうすることにしました。帰ろうと駅のホームで電車を待つティッブスに、ばつが悪そうにギレスピー署長は彼に近寄り、彼に今回の殺人事件の捜査をしてほしいと頼みました。断ってきたティッブスに署長は「工場は町の救世主だ。…黒人も働ける。犯人を挙げないと…黒人の職場が幻となって消える。それでいいのか?…俺だって、お前を厄介払いしたいだよ。でも、今はお前が必要なんだ。…貴様は自分が白人より腕が立つことを鼻にかけてそいつをみんなの前で証明したいはずだ」と言い、ティッブスを挑発しました。ティッブスは町に残り、捜査をする決意をしました。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:5.人種偏見の塊エリック・エンディコット
人種偏見がまだ色濃く残っていた町で、ティッブスは、偏見を持たず気のいいジェス一家に居候することになりました。ティッブスは早速、本格的に捜査を始めました。まず、彼はレズリーに「ご主人には敵はいませんでしたか?」と尋ねました。するとエリック・エンディコットという大地主の名前が挙がりました。彼は被害者コルバート氏が来るまでは町を牛耳っていたようでした。ティッブスはコルバート氏の車を調べました。その車には助手席に血痕、ブレーキペダルにゼンマイの根がついていました。彼は犯人が殺害当夜、コルバート氏の車を運転していたことに気付き、それをやって来たギレスピー署長に告げました。そして、ティッブスはギレスピー署長と共にエンディコットに会いに行きました。エンディコットは町の有力者で綿花工場を経営しており、広大な綿花畑で多くの黒人たちを働かせていました。エンディコットは趣味で温室の中で色々な植物を栽培していました。彼は二人を歓待しました。ティッブスが彼に着生ランが好きだと言うと、彼も偶然同じで、その理由は「黒人に似て、何から何まで面倒をみてやらないといけないからです」と答えました。そして、会話の最中、ティッブスはゼンマイの根の部分を見つけました。すると、エンディコットは、ティッブスが自分を容疑者と関係があると疑念を抱いていることに気付き、彼の頬にビンタしました。ティッブスは賺さず、エンディコットの頬をビンタし返しました。エンディコットは憤り、「どういう処置をとるつもりだ。…その気になれば、貴様なんか、とっくに殺せたんだ!」と言い放ちました。ティッブスとギレスピー署長はその場から出ていきました。憤っていたティッブスは、署長に「あと2日だけ待ってくれ。…あのエンディコットの奴をこの奥から引きずり降ろして、両手をついて謝らせてやる!」と訴えました。驚いた署長は「大先生もカッカするのかい…人間だ」と言いました。それを耳にした市長は、ギレスピー署長に「いつから奴の肩を持つようになった」と言い、彼に圧力をかけてきました。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:6.犯人はサム?
その夜、ティッブスはサム保安官と、殺害当夜と同じような速度で同じルートでパトロールしました。サムは事件当夜と同じように、ラルフ・ヘンショウの食堂へ立ち寄りました。すると、そこにギレスピー署長がやって来ました。署長は「帰れと言ったはずだ!…この上、お前が殺されでもしたら町は収拾がつかなくなる」ティッブスに警告しましたが、彼は無視して店に入っていきました。ラルフはティッブスには何も売らないと言い放ちました。ティッブスたち3人は店から出て、署長を乗せて、車を走らせました。しかし、途中、ロイド・パーディの家の手前を通らず、手前で曲がりました。ティッブスはそれに気付き、一緒に乗っていた署長はラルフを疑いました。署に帰ったティッブスに、ギレスピー署長は容疑者としてサムを逮捕することを言いました。ティッブスはコースを変えたのは、露出狂の少女ドロレスの裸を見せたくなかったからと彼を弁護しましたが、署長はサムが600ドルという多額のお金を預金したことも理由にしてきました。サムは必死で無実を訴えましたが、通りませんでした。署長はサムを牢屋に入れました。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:7.ティッブスの勘
「勘違いしているんだよ」とギレスピー署長にティッブスは笑って言いました。そして、ティッブスが署長の部屋を出たとき、ロイド・パーディが妹デロレスを連れて、署長室に入っていきました。パーディは16歳の妹デロレスがサムの赤ん坊を産むという話で、抗議に来ていました。ティッブスはその話を聞くため、署長室に入ると、パーディは「てめえ、痛い目に遭いたいのか」と如実にティッブスに憎悪を表しましたが、ティッブスはそのまま動きませんでした。署長によって、デロレスの事情聴取がなされました。ティッブスは静かにそれを聞き終わると、部屋を出ていきました。パーディは黒人の前で恥をかかせたと激しく憤りました。ティッブスはそのデロレスの話からある勘が閃きました。「事件当夜、被害者はエンディコットの家に行き、そこから帰る途中、赤ん坊を中絶させるお金目的で殺され、そして路上に捨てられた」と。ティッブスはまだ容疑者として牢屋に入れられているハーヴェイに、女と寝るときどうするかを聞き出しました。その頃、憤ったパーディは、黒人が白人を取り調べるという屈辱に怒る町民を集めていました。また、人種差別が色濃く残っていたので、捜査は易しいものではありませんでした。ティッブスは命を狙われていました。ティッブスはコルバートの工場建設予定地に行き、自分の勘が正しいか確かめに行きました。そこに、これ以上は事を大きくしたくないギレスピー署長は、捜査を止めるようにティッブスに言いました。ティッブスは自分の勘を署長に伝え、ハーヴェイもサムも無実だと言い、彼は捜査を止めませんでした。
夜の大捜査線のネタバレあらすじ:8.事件解決
その夜、ギレスピー署長は、自宅にティッブスを招き、共に酒を酌み交わしました。ギレスピーは「俺の部屋に入ったのは世界でお前が初めてだ」とティッブスに言いました。ギレスピーは結婚もせず孤独な人生を歩んできた話をしました。ティッブスも結婚はしていませんでした。その部分ではひとり暮らし同士で一致していましたが、ティッブスが「あんた程ではない」と呟くと、ギレスピーは「同情などいらん」と言い、急に不機嫌になりました。その時、パッキー・ハリソンというハーヴェイの友人が来ました。ティッブスは彼に案内され、「白人の行けない所だ」とギレスピーに言い、この町で密かに中絶をしている場所に急行しました。そこは一見、雑貨屋のようでした。ティッブスはその店の黒人女ママ・カレバに「デロレスの中絶代を払う男は誰なんだ」と尋問しました。ママ・カレバはティッブスに「どういうつもりなんだい。白人の警察の味方なんかして」と批判しました。なかなか白状しないママ・カレバをティッブスは脅して、白状させようとしました。すると、そこへあの16歳の少女デロレスがやって来ました。デロレスはティッブスを見るなり、直ぐ逃げ出しました。追うティッブスに、男が銃を向けてきました。その男が真犯人です。よく見ると、食堂を経営している男ラルフ・ヘンショウでした。そこへ、デロレスの兄パーディたちが、黒人ティッブスに制裁を加えようとしてやって来ました。ティッブスに銃を向け脅すパーディに、ティッブスは「財布を見てみろ。子供をおろすのに100ドル持ってるぞ。金を出すのはラルフだ」と告げました。パーディは妹の財布を確かめると100ドル紙幣が1枚出てきました。パーディはラルフに怒りました。恐怖に耐えきれなくなったラルフは、パーディに向かって銃の引き金を引いてしまい、彼を殺してしまいました。ティッブスはラルフを逮捕しました。ラルフは犯行の全てを白状しました。事件は解決しました。
夜の大捜査線の結末:エピローグ:二人の友情と別れ
翌日、事件を解決に導いたティッブスは、フィラデルフィアへ帰る汽車に乗るため、ギレスピー署長に送ってもらいました。ギレスピー署長は、最後に黒人のティッブスに「ありがとう」と言い握手をしました。ティッブスが汽車に乗ろうとしたとき、ギレスピーは振り返り「ヴァージル、元気でやれ。分かったな」と笑顔で別れの言葉を送りました。ティッブスは笑顔で「分かった」と言うと汽車に乗り、フィラデルフィアへ帰って行きました。
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