ジャージの二人の紹介:2008年日本映画。芥川賞作家・長嶋有の小説を原作とした映画です。キャッチコピーは「ワケあり父子の、何もしない夏休み」で、仕事が嫌いな父と無職になった息子との夏の北軽井沢の山荘でのアンチ・スローライフの日々を軽妙に描いたコメディ映画です。堺雅人と伝説のロックバンド“シーナ&ザ・ロケッツ”の鮎川誠出演で映画化された作品です。
監督:中村義洋 出演:堺雅人(息子)、鮎川誠(父親)、水野美紀(息子の妻)、田中あさみ(花子)、ダンカン(岡田さん)、ほか
映画「ジャージの二人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ジャージの二人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ジャージの二人」解説
この解説記事には映画「ジャージの二人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:1.プロローグ:お婆ちゃんの古着・ジャージ
蝉の鳴き声が響く真夏、僕はあるコンビニで父と待ち合わせをしていました。僕と父はコンビニの中でソフトクリームを買って、話をしました。父は僕に「仕事辞めて、何してるの?」と聞いてきました。僕は無職だったので「何も」と答えると、父は「何か言われない?」と聞いてきました。僕には妻がいました。その妻は「いいんじゃない」と言っていたので、そのまま、父に伝えました。ソフトクリームを食べ終わると、父は「行くか」と言い、僕と愛犬ミロを連れて、避暑地・群馬の北軽井沢の山荘に行きました。そこは父が子供の頃に住んでいたと思われる古い家で、携帯電話も繋がらないし、カマドウマも出てくる山奥でした。僕は仕事を辞めて小説を書こうと思っていました。しかし、原稿用紙にはまだ1字も書き始めていませんでした。僕は何気なく「やっぱり、寒いね。こっちは」と言うと、父はある段ボール箱を持ってきました。その箱にはお婆ちゃんの古着・ジャージがたくさん入っていました。父は「何小学校にする?」と聞いてきました。僕は「何でもいいけど」と言うと、父は赤いジャージを僕に渡しました。父は黄緑のジャージを取り、それに着替え始めました。僕もジャージに着替えました。無職の僕は32歳、グラビアカメラマンの父は54歳でした。僕のジャージは桶谷小学校のものでしたが、父のジャージの胸には「和小」とだけあったので、正確な小学校の名前は分かりませんでした。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:2.「気持ちに幅をね」
その夜、二人はなかなか眠れませんでした。父は仕事も順調とは言えず、三回目の結婚で築いた家庭も順調とは言えませんでした。僕も妻に浮気をされ、落ち込み、この山荘に来ました。もちろん、妻には内緒でした。翌朝、近所の遠山という女性がやって来ました。遠山は僕にいつまでいるのか、うちにも遊びに来てと言い、帰っていきました。僕は遠山が帰るのを見ていましたが、父が来て話している内に遠山の姿は消えていました。二人は朝ご飯を食べながら、テレビで天気予報を見ていると、東京の最高気温は35度でした。ここは23度でした。二人は密かにガッツポーズをしました。ここでの生活には薪が必要でした。父は薪割りをしながら、小枝を切っていた僕に、切る寸法を40から60センチぐらいでと言い、間違えないには「気持ちに幅をね」と教えてくれました。薪割りをしていると、家に電話がかかってきました。急いで僕は出てみると、それは妻からでした。内緒にしていたのにバレてしまいました。妻に今夜、もう一度電話をくれないかと僕は言いましたが、妻は浮気相手と会うのか、仕事なのかで忙しくでかけられないと断ってきました。僕はそれ以上話すことも無く、電話を切りました。二人はスーパーにジャージ姿で買い物に行きました。トマトが安売りしていたので、二人はトマトを大量に買い込みました。山荘に帰り、僕が愛犬ミロを連れて広大なレタス畑を散歩していると、片手を天高く挙げている中学生の少女を見かけました。僕は何をしているのか知りたかったのですが、少女は自転車に乗って、僕に挨拶をして走り去っていきました。今夜の夕食は大量に買ったトマトのサラダでした。父は麻雀のテレビゲームをしてくつろぎ、僕は風呂に入り、寝床につきましたが、父はまた眠れないようでした。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:3.魔女・遠山
翌朝、遠山が訪ねて来ました。彼女は父にカメラの修理を頼みに来たのですが、彼女は僕たちの家に入ろうとしなかったので、僕たちが遠山のところに壊れたカメラを受け取りに行きました。遠山は僕のジャージを見て、「桶谷小だ。…ダムの底」と言いました。父は壊れたカメラを道具はありませんが、直してあげることにしました。遠山は喜び、何か入ってコンビニ袋を僕に渡しました。その中はトマトがいっぱい入っていました。僕は遠山を家に誘いましたが、彼女は家にあがらず、二人を見て「あんたたちさ~、親子じゃないみたいよね。…とにかく、変よね。変」と言いながら帰っていきました。僕は父に遠山を家に誘っても、一度も家にあがったことがないことを話すと、父は遠山は魔女で他人の家に入ると魔法が解けちゃうのではないかと言いました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:4.携帯の電波が3本立つ穴場
ある日、また僕は愛犬ミロを連れて広大なレタス畑を散歩していると、片手を天高く挙げているあの中学生の少女を見かけました。彼女は僕がその場所に行こうとすると、自転車で帰っていきました。僕は彼女の立っていた場所に行き、手を挙げましたが、何も起きませんでした。すると、あの少女が戻ってきて、携帯電話を持って手を挙げました。彼女は僕に、ここは携帯の電波が3本立つ穴場だと教えてくれました。僕は家事をしながら、小説を書こうとしていました。父は相変わらず麻雀のテレビゲームに興じていました。父は買い物リストに「熊手」と書き、あと何か甘い物を買ってくるように、僕に言いました。僕は父に甘い物でもどんな物なのか聞きましたが、父は「何かこう…」と繰り返し、結局、ジャイアントコーンを買ってくることで落ち着きました。父は買い物リストに「ジャアントなんたら」と書きました。僕は買い物リストを持って、買い物に行き、昔からある園芸店で熊手を買おうとすると、店主のおばさんが出てきて、「大きくなっちゃって…何年ぶり?お父さん、元気?」と僕に尋ねると、僕の答えも聞かず、店の奥に入り、うちの畑で採れたものと言い、またトマトがいっぱい入ったコンビニ袋を僕に渡しました。僕は広大なレタス畑の買い物の帰り道、携帯の電波が三本立つ穴場から、妻に電話をかけました。しかし、慌てたような妻は「ご免、後でかけ直す」と直ぐに切ってしまいました。僕は、ふと、以前、妻が浮気相手の子供が欲しいと告白されたときのことを思い出しました。僕は苛立ちました。そして、僕は林の中で道に迷ってしまいました。僕はうろうろしていると、イノシシに注意の看板がありました。すると、林の中からガサッと音がしたので、僕は必死で逃げました。どこにいるのかも分からず、転けてしまい、貰ったトマトを林の中を落としてしまった僕のところに、父が車で迎えに来てくれました。その助手席には山荘の五右衛門風呂を作ってくれた父の友人・岡田が乗っていました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:5.父の友人・岡田
岡田は僕たちの家に入り、夕食を共にしました。岡田は僕のことをあれこれと聞いてきました。僕は無職で、今、素人だが小説を書いていると答えると、岡田は驚きました。父はジャイアントコーンを食べながら、僕の妻から電話があったことを伝えてくれました。父は僕に妻に電話してあげたらと言いました。僕は妻に電話をかけました。僕は妻に「例の件、直訴してみたの?…何とかならないの?」と聞くと、妻は「した。ならないんですよ」と答えてきました。僕はその言葉を聞き、電話を切りました。岡田の妻も男をつくって家出したと聞き、僕は岡田の事が他人事には感じられませんでした。「寒いね」と言う岡田に、父はジャージの入った箱を持ってきて、ジャージを貸そうとしましたが、岡田は断り、持ってきたトレーナーを着込んだので、父は残念そうにしていました。眠れぬ父は眠れぬ僕に、自分のジャージの胸にある「和小」は“なごみしょう”と読むことを思い出しました。そして、父は僕に「君たちはうまくいっているのか?」と問いました。父は僕と妻の夫婦関係が良くないことに気付いていました。父は自分も若いときにしっかりしていなっかので、今、妻(僕の母)と「またしてもうまくいっていない」と言い、離婚の危機状態にあり、反省していると告白しました。父の話しを聞いた僕は、なぜか涙が出てきました。翌朝、岡田の変な携帯電話の音で、僕は起こされました。僕は岡田をアンテナが3本立つレタス畑のあの場所に案内しました。岡田は妻に電話をかけ、「頼むよ~」と叫び、妻にすがりました。僕は遠くから、そんな岡田の姿を見て、切なく思いました。その日、父と僕は岡田を駅まで送ると、父は「せば、帰るか」と僕に言いました。家に帰り、僕と父は家の片づけをし、帰り支度を始めました。父と僕はジャージを脱ぎ、着替えると、父はジャージを持って、僕に「これ、どうする?」と聞いてきました。もう洗濯もしてしまったので、二人はジャージをそのまま持って帰ることにしました。僕は父が着ていた「和小」のジャージの方がレアものという感じがしていいと言うと、父と僕はジャージを交換しました。帰り道に父は車を出すと、僕に「俺が君ぐらいの歳の頃、この道でジョン・レノンとオノ・ヨーコを見たよ」と告白しました。僕は父に「先に言ってよ。生活がもう全然、違ってくるよ」と怒って言いました。父は申し訳なさそうな顔をして、車を出していきました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:6.ジャージの三人
1年後の夏。僕と父はまた昨年と同じコンビニで待ち合わせをしました。父はコンビニで買ったBLTサンドを食べながら、僕にこれ何の略と聞いてきました。すると、一緒にいた僕の妻が、父に「ベーコンのB」と説明しました。僕は「Lはレタスか」と言うと、父はTを卵の略と考えました。僕の妻はすかさず、「それ日本語じゃないですか」と突っ込みました。みんなが食べ終わると父は「せば、行くか」と言い、僕と僕の妻、愛犬ミロを乗せ、山荘へ行きました。僕は山荘を掃除しながら、父にミロの鼻のところにあるおできを尋ねると、父は「ガンじゃないかって」と答えました。僕の妻は携帯電話の電波を調べましたが、圏外でした。父は密かに携帯電話を買っていました。僕は驚きました。父はメールをしているようでした。相手は岡田さんでした。父は岡田の前についている「Re」の意味を聞きました。すると、僕の妻は「Reは返信という意味。…たぶんレスポンス(Response)の頭文字じゃない」と父に教えました。父は僕の妻に「君は頭文字に詳しいね」と言いました。レタス畑の道で、僕はミロを連れ、妻と散歩していると、例の場所で女子中学生が手を高く挙げていました。妻は「何やってるんだろう?」と言うと、僕は「さあ、何だろね」と答えました。突然、僕は妻から腕を組まれ、咄嗟に拒んでしまいました。その夜、僕の妻が夕食の準備をしようとすると、父は「何かこう…さっぱり系だな」と呟きました。それを聞いた僕の妻は、「やっぱり、親子で同じ口癖」と指摘しました。僕にはそんな口癖があった記憶がありませんでした。僕の妻は「なんだか寒いですね」と言うと、父は嬉しそうに立ち上がり、例のジャージの入った箱を取りに行きました。しかし、僕の妻は、自分が持ってきたジャージを出しました。それを見た父は、「わざわざ買ったの? あるのに…」と呟き、残念そうな顔をしました。僕は和小のジャージを、父は新たなブルーの「田井小」のジャージを着ました。僕の妻は買ってきた赤いジャージを着てきました。僕は父の「田井小」を「たいしょう」と読むと、父は嬉しそうにしました。二人の姿を見て、僕の妻は「よかった~、買ってきて」と呟き、台所に立ちました。その2日後、僕の妻は仕事の関係で、電車で先に帰りました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:7.「山荘においでませ」
1か月後、僕は妻が寝ている間に、妻のバッグの中を密かにチェックしました。すると別れたと言っていた男とのプリクラの写真を見つけてしまいました。日付は4月21日となっていました。僕は妻に問い質しました。妻は泣きながら、僕に「返して。大事なものだから」と懇願しました。僕の妻は、別れたと話していた男との浮気はまだ続いていたのでした。落胆した僕は父とまた、山荘に行きました。そして、僕と父はパソコンから「山荘においでませ」という件名で知人にメールを送ろうとしました。父は僕が作ったメールの文章を読むと、「これ。人が来たら違うって言われない」と指摘しました。僕は父の言う通りと思い、思い切って文を変えました。「一、室内に虫がでます。二、布団がじめっとしています。三、トイレはくみとりです。四、五右衛門風呂です。五、携帯電話は通じません。」と書き直すと、父は「誰も来ないよ」と呟きました。僕はいいところも書きました。「一、涼しい。二、ジャージ貸シマス。」と。そして、これでメールを送りました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:8.父の娘・花子
暫くしたある日、電車に乗って、父の娘で僕の異母兄弟の花子(花ちゃん)が山荘に遊びに来ました。僕はミロを連れて、花子と散歩をしていると、遠山が声をかけてきました。父は花子がお風呂に入っている間、僕に「花子ってさ。何かこう…友達が少ないらしい」と打ち明けました。僕は父に「それは遺伝だよ」と言いました。父は花子がイジメを受けてないか心配していました。僕は父に「イジメられてても、言わないでしょ」と言いました。花子がお風呂からあがる音がしたので、父は「着る物だしといたぞ~」と言い、古いオレンジのジャージを用意していました。しかし、花子が着てきたジャージは、僕の妻が昨年買ってきた今時のデザインのジャージでした。父はがっかりしました。花子がビデオを見たいと言うので、僕はインターネットで調べるとお店がありました。しかし、山荘にはビデオデッキがありませんでした。花子は父に「あると言ってた」とくい下がりますが、父は「言ってない」の一辺倒でした。怒った花子は山荘のピアノを滅茶苦茶に弾き、鬱憤を晴らそうとしましたが、それでも晴れず、散歩に出ていきました。早足で歩く花子に、ミロを連れて僕は跡をつけ、花子に道に迷わないように注意しました。広大なレタス畑に出た花子は、女子中学生が3人手を挙げているのを見て、すぐに携帯電話のアンテナがあそこで立つことをすぐ理解しました。花子はその場所に行き、携帯電話を上にかざしました。アンテナは3本立ちました。ぼくはその場所からレタス畑を見ていて、昨年の夏、妻と散歩に出たとき、妻が僕の腕と組もうとしたとき、咄嗟に僕が拒否したことを思い出しました。花子は僕を林の中の滝に案内しました。そこは僕も子供の頃、遊んだ場所でした。花子は昔、家族でここに来て、不注意でタオルを川に流してしまい、母に怒られた想い出を語りました。花子は僕にこれから父と母はどうなるか聞いてきました。僕は「分からないよ」と答えました。花子と僕はそれから歩いて山荘に戻ろうとしましたが、道に迷ってしまいました。花子は「ミロなら分かるんじゃない。ミロの行きたい方に行かせてあげようよ」と言い、ミロに声をかけると、ミロは走り出しました。しかし、二人はどこか分からない所に出てしまいました。花子は携帯をかざしながら、「湖ハイキングコース」と書かれている看板を見つけ、二人で湖の所に行き、僕は父に電話をしました。父が迎えにくることになりました。
ジャージの二人のネタバレあらすじ:9.父の決意
父の車で帰った花子は、遠山さんに電話をして、彼女からデッキを借りることにしました。3人はレンタルビデオ屋に行き、花子は観たいビデオを借り、帰りに遠山さんの家にデッキを借りに行きました。遠山さんとの会話がはずみ、父が昔は大自然を撮る専門の写真家だったことを知り、花子は喜びました。山荘に帰り、3人でビデオ鑑賞していると、電話がかかってきました。それは花子のピアノの先生を訃報でした。花子はお葬式に出ると言い、急遽、父と花子は帰ることになりました。僕はまた眠れぬ父と、花子について話しました。父は、元の大自然を撮る専門の写真家に戻る決意をしました。実は父は今、グラビア撮影をしているので、花子が学校で片身の狭い思いをしているのではないかと心配していたのでした。父は自分が大自然の写真家に戻ることで、花子はそういう思いから解放されるだろうと思いました。僕は根拠はないけれど「花ちゃんは大丈夫だよ」と父に言いました。父は明日、花子と帰るが、僕はどうするか聞いてきました。僕は残ることにしました。翌朝、帰る前、3人で掃除をしていると、遠山が父が直したカメラを持ってやって来ました。父と花子が急遽、今日帰ると聞いた遠山は「あなたたち、親子じゃないみたいと思ってたけど、似てるわね。立ち方が」と言い、カメラを覗き「かのうしょうね」と笑い、3人の家族写真を撮ってくれました。
ジャージの二人の結末:エピローグ:ジャージの1人
父と花子が帰った後、一人残った僕は、嵐の夜に小説を書きあげました。翌朝、嵐も収まり、遠山が撮った家族写真を届けに来ました。その写真を見ると、3人はまるで携帯の電波マークのように並んで写っていました。遠山は僕のジャージを見て、「まだ“かのうしょう”を着てんだ」と呟きました。僕はそれで気付きました。ミロの鼻にガンらしきおできができ、遠山はよくそれを「化膿症」と言っていたので、僕らはミロのおできのことだと思っていましたが、そうではなかったのです。僕はレタス畑のあの場所で、妻からメールを受信しました。それは「私は暫く、一人で暮らそうと思う。勝手ばかりでご免なさい。でも、あなたも同じことを思っていたのではないですか」というものでした。レタス畑を遠山が歩いていました。僕は父に「件名:和小は」でメールを送りました。「和小は、かのうしょう、です」と。
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