蜘蛛女のキスの紹介:1985年ブラジル,アメリカ映画。刑務所で同房となったホモのモリーナと政治犯のヴァレンティン。モリーナが語る恋愛映画にうんざりするヴァレンティンでしたが、いつしか2人は打ち解けあっていきます。マヌエル・プイグが1976年に発表した同名の小説を元にしています。映画化以外に、舞台化やミュージカル化にもなっています。主演のウィリアム・ハートは、第58回アカデミー賞の主演男優賞など数々の賞に輝きます。
監督:ヘクトール・バベンコ 出演:ウィリアム・ハート(ルイス・モリーナ)、ラウル・ジュリア(ヴァレンティン・アレグイ)、ソニア・プラガ(レニ、マルタ、蜘蛛女)、ホセ・レーゴイ(刑務所長)、ミルトン・ゴンサルヴェス(秘密警察の警官)ほか
映画「蜘蛛女のキス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「蜘蛛女のキス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
蜘蛛女のキスの予告編 動画
映画「蜘蛛女のキス」解説
この解説記事には映画「蜘蛛女のキス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
蜘蛛女のキスのネタバレあらすじ:起・閉ざされた世界の片隅で
ファシズムが台頭する南米某国の刑務所。未成年者を誘惑したホモのモリーナと政治犯のヴァレンティンは同房に投獄されています。空想の世界に浸るモリーナは、大好きな恋愛映画を延々と語ります。モリーナは自分の話に興味の無さそうなヴァレンティンに構うことなく、第2次大戦ナチ占領下のパリ舞台に、美人シャンソン歌手と青年ドイツ将校の悲恋を綴った映画を語ります。
蜘蛛女のキスのネタバレあらすじ:承・捕らわれたものたち
仲間との連絡が取れず、鬱屈しているヴァレンティンをモリーナは元気づけます。ヴァレンティンに恋人がいると察したモリーナは、手紙を出すように勧めますが反体制活動の情報がバレるのを懸念するヴァレンティは嫌がります。モリーナは、病弱な母親のことや既婚男性に恋をするものの、友達止まりの関係だったことなど自身の過去を語り始めます。食事中、モリーナが腹痛を訴えますが軽症で済みます。所長による企みだと警戒するヴァレンティンも、腹痛に襲われます。仲間のことを白状させられるとわかっているヴァレンティンは、医務室に行くことを断固拒否します。モリーナは、映画の話をしてヴァレンティンの気を紛らわそうとします。幾分気持ちが落ち着いてきたヴァレンティンは、反体制活動を続けるために恋人と破局した過去を語ります。
蜘蛛女のキスのネタバレあらすじ:転・儚い愛
ヴァレンティンに対するモリーナの信愛は、反体制活動の情報を得ようとしていた所長の差し金だったのです。所長は病弱な母親を心配するモリーナに揺さぶりをかけ、釈放を条件にモリーナを使ってスパイをさせていたのです。モリーナの狙いも知らず、彼の献身的な看護でヴァレンティンは回復します。モリーナに心を許し始めたヴァレンティンは、彼が語る映画の話に聞き入ります。中々情報が得られないモリーナは、自分が釈放されることによって一抹の寂しさを感じたヴァレンティが何か話すだろうと所長に提案し、釈放の約束を取り付けます。残り少ない時間の中モリーナは、とある島に住む蜘蛛女と呼ばれる女と、流れ着いた男との儚い愛の映画を語ります。それはまるで、モリーナとヴァレンティンを思わせるような内容です。そして、互いの想いに気付いた2人は結ばれます。
蜘蛛女のキスの結末:解放
結局モリーナは、情報を得ることができませんでしたが釈放されます。別れ際にヴァレンティから伝言を頼まれたモリーナは、決死の覚悟で反体制活動のメンバーとの接触を試みます。秘密警察に尾行されていたモリーナは、口封じのためメンバーに射殺されます。秘密警察は瀕死のモリーナから情報を得ようとしますが、モリーナは一言も言うことなく絶命します。用済みをなったモリーナの死体は、ゴミ捨て場に放棄されます。秘密警察から激しい拷問を受け瀕死のヴァレンティンは、薄れ行く意識の中に恋人の面影をみます。
以上、映画蜘蛛女のキスのあらすじと結末でした。
「蜘蛛女のキス」感想・レビュー
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この映画「蜘蛛女のキス」は、1985年度のアカデミー賞とカンヌ国際映画祭で、ウィリアム・ハートが主演男優賞を受賞した作品で、監房の中で芽生えた、男同士の恋愛物語だ。
この映画の舞台は、ファシズムが支配している南米の監房。
政治犯のヴァレンティンは、現実主義者。同室のホモセクシャルのモリーナの優しさに触れるうちに、ヴァレンティンの心に、今までにないような感情が芽生えていく。
水と油のようだった二人が、次第に打ち解け合っていく様子、そして意外なラストのどんでん返しが胸を打つ秀作だ。
ホモセクシャル役のウィリアム・ハートが、どう見ても男にしか見えない風貌なのに、物腰や口調を柔らかくし、見事に女性になりきろうとしている男性を演じて、見事の一語に尽きる。
なんとも妖しく切ない傑作映画。さすがに文学作品を原作にしているだけありストーリがいい。画面もあまり動かないし、ダイナミックなシーンはないのだけれど、ウイリアム・ハートがひとり語りをするシーンは、妙な迫力がある。その理由はあとでちゃんと回収されるのがまたすごい。とにかくウイリアム・ハートの怪演は見ごたえがある。