木と市長と文化会館/または七つの偶然の紹介:1992年フランス映画。『春のソナタ』『冬物語』のエリック・ロメール監督が贈る、フランスの田舎町を舞台にした風刺喜劇です。地元に文化会館を建設しようとする市長とその周辺の人々が巻き起こす騒動を7つの章に分けてドキュメンタリータッチで描き、モントリオール世界映画祭でFIPRESCI賞を受賞しています。
監督:エリック・ロメール 出演者:パスカル・グレゴリー(ジュリアン・デ・ショームズ)、アリエル・ドンバール(ベレニス・ボリヴァージュ)、ファブリス・ルキーニ(マルク・ロシニョール)、クレマンティーヌ・アムルー(ブランディーヌ・ルノワール)、フランソワ・マリー・バニエ(ロギス・ルブラン・ブロンデ)、ジャン・パルヴュレスコ(ジャン・ウォルター)、フランソワーズ・エチュガレー(ロシニョール夫人)、ギャラクシー・バルブット(ゾエ・ロシニョール)、ジェシカ・シュウィング(ヴェガ・デ・ショームズ)ほか
映画「木と市長と文化会館/または七つの偶然」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「木と市長と文化会館/または七つの偶然」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
木と市長と文化会館/または七つの偶然の予告編 動画
映画「木と市長と文化会館/または七つの偶然」解説
この解説記事には映画「木と市長と文化会館/または七つの偶然」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第1章『もし、1992年3月地方選挙の前夜に大統領選の多数派が少数派になっていなかったら…』
フランス・パリの南西部に位置するヴァンデ県の田舎町サン=ジュイール。この町の市長ジュリアン・デ・ショームズ(パスカル・グレゴリー)は、大統領率いる与党・社会党から州議会選挙に出馬しましたが、その選挙直前になって社会党が議会で少数派になってしまい、ジュリアンも選挙に落選してしまいました。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第2章『もし、ジュリアンが選挙戦の敗北後に小説家ベレニス・ボリヴァージュと恋に落ちなかったら…』
落選したジュリアンはパリ出身の女性小説家ベレニス・ボリヴァージュ(アリエル・ドンバール)と出逢い、恋に落ちました。
やがてジュリアンはこのサン=ジュイールに図書館・CDやビデオのライブラリー・野外劇場・プールを備えた総合文化会館を建設する計画を打ち立てました。ジュリアンは併せて農業に依存する地元の主力産業を最先端テクノロジーに転換させようと目論み、成功した暁には再び国政進出へチャレンジしようと考えたのです。
しかし、周囲の反応はあまり良いものではなく、根っからのパリっ子であるボリヴァージュに至ってはこんな田舎町なんか見捨ててパリに進出しようと言い出す始末でした。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第3章『もし、コミューンの草地にあるセイヨウシロヤナギが長年の破壊に奇跡的に耐えていなかったら…』
文化会館の建設予定地となる草地は町の自然保護地区であり、ここには樹齢100年以上にもなるセイヨウシロヤナギの大木がそびえ立っていました。
しかし、この大木は工事に伴い伐採されることが決定的であり、環境保護運動に熱心な地元小学校の校長マルク・ロシニョール(ファブリス・ルキーニ)は文化会館の建設に強く反対していました。
しかし、さしものマルクも建設を止める術はなく、妻(フランソワーズ・エチュガレー)と娘のゾエ(ギャラクシー・バルブット)に愚痴をこぼすことしかできませんでした。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第4章『もし月刊誌『明後日』の編集者ブランディーヌ・ルノワールが、不意にも、フランス文化の放送を録音しようとして応答機のプラグを抜かなかったら…』
パリの月刊誌「明後日」に勤めるジャーナリストで編集者のブランディーヌ・ルノワール(クレマンティーヌ・アムルー)は、フランス文化のラジオ番組を録音するため電話機の留守電を切ったことが原因で、編集長との会議がキャンセルになっていました。
出勤したブランディーヌは、たまたま新作小説の打ち合わせのため編集部を訪れていたボリヴァージュと、同行していたジュリアンと話をする機会を得ました。これまで口先だけの政治家の取材にうんざりしていたブランディーヌは、ジュリアンの地方自治に根ざした考えやボリヴァージュの思考などについて感銘を覚え、早速サン=ジュイールに飛んで取材することにしました。
そしてブランディーヌは取材を進めるうちに、この町は昔と比べて活気が失せており、人々の暮らしもかつてより貧しくなっていることに気が付きました。ブランディーヌの取材を受けたマルクは予算がついたから文化会館を建設するだけだとジュリアンの政策を痛烈に批判しました。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第5章『もし、月刊誌次号を作る際に、ブランディーヌがソマリアにユニセフの使命を携えて行っていなかったら…』
サン=ジュイールでの取材内容をまとめたブランディーヌは、ユニセフの使命のためソマリアへ飛びました。
ところが、数日後にブランディーヌが帰国すると、今までまとめたはずの取材内容は編集部によって大幅にカットされており、環境保護を訴えるマルクの記事がメインに据えられていました。
ブランディーヌは記事の内容を勝手に書き変えられたことに激しく憤慨しました。腹を立てたのはジュリアンも同じでした。記事を読んだジュリアンは理想ばかり掲げるマルクに向けられました。
木と市長と文化会館/または七つの偶然のネタバレあらすじ:第6章『もし市長の娘ヴェガが偶然にも彼女のボールを道に飛ばして、そこで教師の娘ゾエに届かなかったら…』
ある日、ジュリアンの前妻との娘ヴェガ(ジェシカ・シュウィング)がボール遊びをしていると、偶然にもボールはゾエの元に届き、そのことがきっかけでヴェガとゾエはすっかり親しくなりました。
ゾエは現れたジュリアンに対し、自分も父と同じく文化会館の建設に反対だと訴えました。ジュリアンはどうせ父の受け売りだろうと聞く耳を持ちませんでしたが、ゾエは既に町の中には文化会館と同じ機能を有する施設が分散して存在しており、何よりも子供たちが安心して遊べる緑地こそが必要だと訴えました。
ジュリアンは幼いながらもしっかりした意見を持つゾエに感心しますが、結局は話を途中で打ち切って去っていきました。
木と市長と文化会館/または七つの偶然の結末:第7章『もしコミューン当局が、習い性によるものにせよまたは命令によるものにせよ、やる気がありすぎると示さなかったら…』
結局ジュリアンは予定通り文化会館の建設計画を推し進めることにしましたが、当局の地質調査により地盤そのものには十分に強度があると認められたものの地下水の枯渇という問題が浮上してきました。
それでもジュリアンはなお計画を強行しようとしましたが、資金は思うように集まらず、予算を許可したはずの文化大臣からも支援を打ち切られ、遂に文化会館の建設を断念せざるを得ませんでした。建設中止の報を受けたマルクは大いに喜びました。
ジュリアンは事実を受け止め、自らの所有する緑地に町の人々や子供たちを招いてささやかなパーティを催しました。ジュリアンは町の人々と共に「新しい世代のために解決策を見つけた」としてこれからは豊かな自然と共存していく決意を固めました。ヴェガや子供たちは豊かな自然のもとのびのびと戯れていました。
以上、映画「木と市長と文化会館/または七つの偶然」のあらすじと結末でした。
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