悪童日記の紹介。2013年ドイツ、ハンガリー映画。映像化は難しいと思われていたアゴタ・クリストフの悪童日記に挑戦状。第2次世界大戦下を生きた双子の日記を通して世界を見つめる衝撃作品。両親と離れ見知らぬ村に預けられた少年たちが日々激化する戦いの中で自分たちのルールに従い厳しい状況に追い込んでいく姿を描く。スクリーンに綴られる「ぼくら」の見た真実とは何か?
監督/ヤノーシュ・サース 出演/アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント、ピロシュカ・モルナール、ウルリッヒ・トムセン、ウルリッヒ・マテス、オルソルヤ・トス、ザビン・タンブレア、ペーター・アンドライほか
映画「悪童日記」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「悪童日記」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「悪童日記」解説
この解説記事には映画「悪童日記」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
悪童日記のネタバレあらすじ:父からの贈り物は日記、双子の日記の始まり
軍属の父親は帰宅の折に、双子の息子たちに日記をつけるようにと言い渡す。1944年8月14日、双子は目立つから引き離したほうがいいと父は言うが、母親は列車で20年ぶりに実家を訪れ、双子にとっては祖母にあたり魔女と揶揄される人物に子供だけでも疎開させてくれと頼んだ。祖母は双子をメス犬の子供と呼んだ。母は勉強を続けるようにと言って二人を残した。祖母は働かないと食事をやらないというので巻き割りと水汲みを行う。日記には「真実を書くこと」という決まりをつけて、続ける事にした。勉強は辞書と聖書を使って新しい言葉や綴りを覚える事に。やがて、将校がやってきて離れに泊まることになる。言葉が通じないので通訳がついている。森の川の向こうは別の国で、鉄条網を越えると撃たれてしま、そんな森の中で二人は薪拾いをし、祖母と街に出て野菜売りをしたりもした。その最中に泥棒に遭い追い詰めたと思ったら逆にはめられた。生き抜くために二人は訓練を始める。まずは身体を鍛える事。痛くても泣かない事。二人はそれぞれ順番に罵りながら倒れるまで殴り、殴られた。そんな二人を見つめる離れの将校。二人の楽しみは夜に天井から祖母の部屋を覗くこと。宝物を隠している事を知る。穀物置き場で二人が休んでいると、泥棒して二人をはめた隣の女の子がやってくる。彼女の母親が病気だと知ると、三人で酒場で稼ぎ、空襲警報が鳴ると避難して誰も居なくなった酒場で盗みをした。空襲警報のサイレンの最中に二人は耳と目を使わない訓練をする。片方は耳を塞ぎ、片方は目をふさいだ。日記の端には人を撃ち殺すパラパラ漫画、ダビデの星や戦闘機の落書き。
悪童日記のネタバレあらすじ:死にかけの兵士から奪ったもの
朝、将校が入ってきて、眠っている双子に触れる。目を覚ますと、将校は「トモダチ」だと言った。二人が雪の中で遊びながら薪を探していると、死にかけの兵士が4日間何も食べていないと空腹をうったえた。双子は食べ物を取りに戻るが、次の日来てみると、銃を持って周りを威嚇したまま死んでいた。双子は彼の持っていた銃と爆弾を奪い家のベンチの下に埋めて隠した。そして兵士のように情けない死に方はしたくないと、空腹に耐える訓練をする。祖母には水だけしかいらないと宣言し、少なくとも4日間は耐えようとする。そんな双子の前で祖母はいつもはスープだけ食事なのに鳥の丸焼きを頬張った。空腹になりながらも家畜に餌をやり、休み無く働いていれば凍えないという答えを出す。郵便屋から荷物が届く。祖母に奪われそうになった母からの暖かい服と、手紙を取り返した双子、母からは必ず迎えに行くと手紙に書いてあった。次は精神を鍛える訓練。母からの手紙を燃やしながら、暗誦している罵り言葉を言い合う二人。そして飼っている鶏を一匹殺し羽を毟り、祖母に焼いてくれと迫った。一番いい鶏を絞めたので祖母に悪態を吐かれる二人は微動だにしない。そして、残酷に慣れる、殺しに慣れる訓練。虫、魚を殺し、標本のようにピン止めしていく。クリスマスには、離れで祝っている将校に招かれ、訓練について聞かれた。負けたくないからと答える双子。彼らを将校が誉めると、別の付き人は出て行けと二人を追い出した。雪用のブーツが欲しい二人はお金が欲しいと女の子に相談すると、教会の司祭に頼めと言われる。彼女は身体を見せたらもらえたそうで、二人はそれをネタに司祭を強請り、ダビデ星のマークの描かれた靴屋でブーツを買った。靴屋は一足買って使いまわせと言ったが、双子が魔女の家に住んでいて親はいないと言うと、二足をタダで譲ってくれた。
悪童日記のネタバレあらすじ:罪を犯した者は罰を受ける
司祭館の女性がジャガイモ貰いにきたついでに双子に荷物を持たせ、汚れた二人は彼女に風呂に入れられた。外では町から連れて行かれる人の列があり、窓から顔を覗かせた彼女は靴屋も連れて行けと言う。察した双子が靴屋を訪れると、彼はすでに殺されていた。司祭館の女は関わっちゃダメと言って、ジャムを塗りたくったパンを食べた。司祭館のストーブに薪を入れる時、二人はそこに死んだ兵士から奪った爆弾も一緒に詰め込んだ。罪を犯した者は罰を受けると語る双子は司祭に勉強はしているかと本を渡される。二人が聖書を使って勉強をしているというと司祭は十戒は守っているかと彼らに尋ねた。二人は自分たちは守っていないし、誰も守っていないでしょと言い返したところで、ストーブに火をつけた司祭館の女は吹き飛ばされる。家に帰った二人は雪の中に倒れた祖母を家に入れる。司祭館のストーブ爆発の件で司祭に連れてこられた二人は、片方は廊下で耳をふさがれ、片方が司祭に問い詰められる。爆発のせいで、彼女の顔はめちゃくちゃになったと司祭は言った。閉じ込められた二人を助けに来たのは将校で、司祭は撃ち殺された。
悪童日記の結末:戦争は終わったのに平和は来ない、最後の訓練
春になり、トモダチ将校が去った。戦争が終わったらしいと収容所を見に行くと、そこは黒煙を吐くばかりで何も無かった。代わりに別の軍がやって来た、祖母は侵略者と言い、他の人は解放軍だと言った。隣の女の子は彼らの戦車に乗せてもらい家に招き入れた。双子が彼女の家を訪れると、ベッドで裸のまま死んでいる彼女の傍らにいた母が「幸せに死んでいった」「私が代わりに死ねばよかった」と嘆いた。その夜、彼女の家は燃えて母親も死んだ。ある夜、空爆の中、母が迎えにやってくる。胸にはまだ赤ん坊の妹を抱いていて、早く車に乗るように二人を急かすが、双子は祖母の所に留まることを選び、車においていかれた母は落ちてきた爆弾で赤ん坊もろとも死亡、祖母は見てはいけないと双子に言いつけ、その夜、遺体を庭に埋めた。朝、庭に倒れていた祖母を助けた双子は、仕事は全部二人でやる事にする。祖母は二人に薬の瓶を見せ、次に発作が起きたら自分に飲ませてくれるように頼んだ。二人の下に父が捕虜になっていた父がやってくる。妻を捜す彼は、墓を暴き、赤ん坊の産着を見つけ妻が子供を産んでいた事を知る。祖母の遺体を清め、母の横に埋めた双子。祖母は脳卒中で薬を飲ませて死ぬのを助けたと日記に綴る。とうとう二人きりになってしまった。双子の所へ再びやって来た父親の手は、爪が剥がされていて、国境を越えないと殺されると言った。しかし、国境の鉄条網の近くには地雷がジグザグに埋められているから難しい。双子の最後の訓練は一番難しい訓練は別れ。戦争は終わったけれど、平和にはならないと語る双子。祖母の宝物を二人で分け、父親に国境越えの出来そうな所は一箇所あるけど難しいと言う。それでも決行した父は鉄条網を越えたがそこで地雷を踏んだ。それを見て日記を押し付けあう二人。日記を持った方が国境を越える事にする。地雷原を抜けるには誰かを先に行かせる必要があった。そして地雷を踏んだ父を踏み国境の向こう側に走り去っていく片割れを見て、もう片方も元いた場所へ走った。エンドロールへ。
悪童日記のレビュー・感想:双子が生き抜くために必要だったもの。
主人公の双子には名前が無い。そのほかの人物にも名前が無い。唯一祖母に呼ばれるのはメス犬の子供で二人はあくまでも「双子」という不可分の存在として扱われている。日記も交互に書いているはずなのだが、どちらが書いているのか分からないし、作中に二人の性格に差異も見られない。兄弟にはない双子と言う結びつきも各所で見られる。それは気がつくと身を寄せ合っていたり、どちらからとも無く手を繋いでいたり等。彼らはあくまでも互いを必要とする。冒頭で双子は目立つから引き離そうというのが尾を引いているのか、双子は自分たちが戦争下のこの状況で行き述べる術を自分たちで考えそれは訓練と言う形で実行される。その訓練が彼らを成長させどんな悲劇的な状況にも冷静で容赦ない対処を出来るようになっていく様には、戦争下を生き抜くために必要だったのだろう。
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