レ・ミゼラブルの紹介:2019年フランス映画。フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの代表作『レ・ミゼラブル』にヒントを受けて製作され、同作の舞台のひとつであるフランス・モンフェルメイユの“今”を切り取った社会派ドラマです。移民と低所得者層の数多く住むこの街で相次ぐ人種間の対立、世代間の対立、警察による暴力などの社会問題を、この街に赴任してきたひとりの警察官の視点から描きます。自身もアフリカ系移民2世であるラジ・リ監督にとって初の長編作品であり、第92回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネート、セザール賞では最優秀作品賞を受賞するなど高い評価を得ました。
監督:ラジ・リ 出演者:ダミアン・ボナール(ステファン・ルイス)、アレクシ・マナンティ(クリス)、ジブリル・ゾンガ(グワダ)、イッサ・ペリカ(イッサ)、アル・ハッサン・リー(バズ)、スティーブ・ティアンチュー(市長)、レイモンド・ロペス(ゾロ)、アルマミ・カヌーテ(サラー)、ジャンヌ・バリバール(署長)ほか
映画「レ・ミゼラブル(2019年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「レ・ミゼラブル(2019年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
レ・ミゼラブルの予告編 動画
映画「レ・ミゼラブル(2019年)」解説
この解説記事には映画「レ・ミゼラブル(2019年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
レ・ミゼラブルのネタバレあらすじ:起
2018年。フランス・パリのシャンゼリゼ大通りやエッフェル塔付近などでは、サッカーワールドカップでのフランス代表の優勝に歓喜する民衆たちで溢れかえっていました。
そんな折、パリ郊外のモンフェルメイユにひとりの警察官ステファン・ルイス(ダミアン・ボナール)が異動して来ました。街に到着したステファンは同僚となる白人のベテラン警官クリス(アレクシ・マナンティ)とその相棒で移民出身のグワダ(ジブリル・ゾンガ)の出迎えを受け、警察署へと向かいました。
ステファンは移動中の車内で、警察署のあるボスケ地区はかつて麻薬取引の中心地だったことを説明されました。クリスとグワダはこの警察の犯罪対策班(通称:BAC)に属しており、移民や低所得者層の多いこの街で数々の犯罪組織の摘発にあたっていました。
警察署に到着したステファンは署長(ジャンヌ・バリバール)と対面し、BACに配属されることになりました。ステファンはBACでは単独行動よりもチームの団結力が重要であると署長から告げられ、早速クリスとグワダと共にパトロールへと出発しました。なお、警察署内には、ルーマニア人から鶏を盗んだ容疑でイッサ(イッサ・ペリカ)というアフリカ系移民の少年が呼び出されていました。
この街に住む内気な少年バズ(アル・ハッサン・リー)は、ドローンで近所の女性の着替えを盗撮することを趣味としていました。この日もバズは屋上でドローンを飛ばしていると、この団地の一帯を仕切る通称“市長”(スティーブ・ティアンチュー)と呼ばれる男に呼び出されました。ムスリム(イスラム教徒)である市長の手下たちはバズや同じ団地に住む少年たちに対し、モスクにおける態度の悪さを注意しましたが、バズたちは適当に受け流すのみでした。
レ・ミゼラブルのネタバレあらすじ:承
ステファンはクリスとグワダと共に不法移民の多い地区をパトロールしていたところ、バス停でハシシ(大麻から作られたもの)を吸っている少女たちを発見しました。クリスらは少女たちに職務質問を行い、ハシシの入手ルートを聞き出そうとしましたが、少女たちは不当逮捕だと騒き立ててクリスらを追い払いました。
ステファンはクリスとグワダから市長について説明を受けていると、街中でロマ族(ジプシー)のサーカス団の宣伝カーが周囲に怒号を浴びせながら走り回っていました。サーカス団のライオンの子供ジョニーがこの街に住む黒い服を来た黒人の少年に盗まれたとのことで、サーカス団団長のゾロ(レイモンド・ロペス)は「ジョニーを無事に返さなければお前らをぶっ殺す」と叫んでいました。
ゾロは市長の元を訪れ、24時間以内にジョニーを返すよう迫りました。事情を知らない市長と手下たちはゾロと一発触発の状態に陥りましたが、そこにクリスらが駆け付けて事情を聞きました。クリスは市長にこの一帯の子供たちをしっかり管理するよう告げると、ジョニー探しを手伝うことにしました。
クリスは犯人は真っ先に自慢するだろうとしてSNSのチェックを始め、ステファンは移民の客が多いケバブ屋に聞き込みをすることにしました。この店の経営者で地元ムスリムの有力者であるサラー(アルマミ・カヌーテ)は「ライオンは強さの象徴だから檻に入れてはいけない」とコーランの教えを説き、ステファンに店から出てもらいました。
レ・ミゼラブルのネタバレあらすじ:転
ジョニーを盗んだのはイッサでした。イッサは母親にジョニーを見せた後で地下室に連れて行き、インスタグラムにジョニーの写真をアップしました。
イッサのアカウントを発見したクリス、グワダ、ステファンは公園で仲間たちとサッカー遊びをしていたイッサを発見、問い詰めようとしましたが、イッサの仲間たちに邪魔されて取り逃がしてしまいました。クリスらは何とかイッサを追い詰めましたが、子供たちの抗議の声にパニックを起こしたグワダは思わずイッサにゴム弾を発砲し、顔に怪我を負わせてしまいました。
この様子の一部始終はバズのドローンによって撮影されており、クリスは救急車を呼ぼうとするステファンを制すと先にドローンを回収すると言い出しました。クリスはBACと親しく、度々揉め事を仲介してもらっている地元マフィアのボス“ハイエナ”に協力を求めました。
その頃、イッサの仲間たちから報告を受けた市長はドローンの動画をネタに警察を強請ろうと思いつきました。一方バズはドローンの動画を動画サイトへアップしようとしていましたが、そこにクリスらが現れたため、SDカードを持ってサラーの店に逃げ込みました。
バズの後を追ったクリスらはサラーの店で同じくバズを追う市長の一味と鉢合わせしました。ステファンはグワダがイッサを撃ったのは事故だとサラーに説明し、もし動画が出回れば街の民衆が暴動を起こしかねない事態になると説得しました。ステファンの言い分を信用することにしたサラーはバズのSDカードをステファンに渡しましたが、サラーはこの一件での民衆の怒りは免れないと忠告しておきました。
レ・ミゼラブルの結末
クリスたちはイッサの家でジョニーを保護、イッサを連れてゾロの元へ向かいました。ゾロはイッサをライオンの檻に連れ込み、興奮して吠えるライオンの前に突き出しました。ステファンはゾロに銃を向けましたが、ゾロは「からかっただけだ」と言ってイッサを解放しました。その際、クリスは「傷は転んでできたと周囲に言え」とイッサを脅しました。
イッサを帰したクリスはステファンにSDカードを渡すよう命じましたが、クリスはこの一件を隠蔽しようとしていることを見破ったステファンはこれを拒み、口論となりました。グワダは二人を制してその場を収めました。
その夜、ステファンはバーにグワダを呼び出し、「ゴム弾の構造上、うっかりはあり得ない」と故意に発砲した理由を問い質しました。グワダは子供たちの喚き声で頭に血が上ったと説明し、全ては子供たちのせいだと吐き捨てました。ステファンは全く反省の色がないグワダにこれ以上説得するのは無理だと判断し、グワダにSDカードを渡すと「すべきことをしろ」と告げました。
翌日、ステファンはクリスやグワダと共にいつも通りのパトロールをしていました。クリスらの車が団地近辺に差し掛かったその時、イッサが仲間たちと共にロケット花火でクリスらの車を襲撃してきました。クリスらはイッサたちが逃げ込んだアパートへ突入しましたが、三人はイッサの仲間たちに挟み撃ちにされて身動きが取れなくなりました。
騒ぎを聞きつけた市長は子供たちを止めようとしましたが、逆に子供たちに袋叩きにされてしまいました。駆け付けたハイエナも子供たちに殴られ、クリスは投げつけられたガラス瓶で目を負傷しました。
ステファンは近くの部屋のドアを叩いて助けを求めましたが、中にいたバズは無視しました。ステファンのすぐ近くではイッサが火炎瓶を手にして睨みつけており、ステファンは銃を構えてやめるよう説得しました。画面は暗転し、ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の一節「世の中には悪い草も悪い人間もいない。ただ育てるものが悪いだけなんだ」が流れて映画は幕を閉じます。
以上、映画「レ・ミゼラブル」のあらすじと結末でした。
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