めぐりあう日の紹介:2015年フランス映画。9才の頃に親に捨てられ、韓国からフランスへ養子に出されたという実体験をベースに、ウニー・ルコントがメガホンをとった「冬の小鳥」(2009)。東京国際映画祭・アジアの風部門で最優秀アジア映画賞を受賞したこの作品から6年、今回がルコントの長編2作目となる。養父母に育てられて大人になった女性が、本当の母親を探すため自分の出生地へとやって来る。彼女は無事に母親との再会を果たすことができるのか。ルコント監督が、再び自らの体験に想いを込めて繊細なタッチで描く。凛とした美しさが印象的なヒロインを演じるのは、「君と歩く世界」(2012)で注目を浴びたフランス人女優、セリーヌ・サレット。
監督:ウニー・ルコント 出演者:セリーヌ・サレット(エリザ)、アン・ベノワ(アネット)、エライズ・アグイス(ノエ)、ルイ=ドー・ドゥ・ランクザン(アレックス)、フランソワーズ・ルブラン(アネットの母)、カトリーヌ・ムシェ(カウンセラー)、ミシャ・レスコー(ファビオ)ほか
映画「めぐりあう日」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「めぐりあう日」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
めぐりあう日の予告編 動画
映画「めぐりあう日」解説
この解説記事には映画「めぐりあう日」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
めぐりあう日のネタバレあらすじ:起
理学療法士を生業とするエリザ。夫のアレックス、そして8才になる息子のノエとともにパリに暮らしていました。地に足ついた平凡な人生を歩んでいるエリザでしたが、つねに心のどこかにぽっかり穴が開いたような想いを抱えています。彼女は自分の生みの親を知りません。養父母のもとで育ち、成人してからも本当の両親の情報は何ひとつ与えられませんでした。自分を生んだひとは、どんな人間だったのか。思い惑うエリザは、実の母親を探し出すことを決心。養父母の理解を得た上で、ある専門の調査機関に依頼します。しかし調査はなかなか進みません。匿名で出産した女性の人権は法律で守られており、容易に開示されることはないのです。半年が過ぎ、諦めきれないエリザは思い切った行動にでました。ノエを連れてパリを離れ、フランス北部の港町ダンケルクに引っ越したのです。自分の出生地であるこの町で、自ら母親を探し出そうと考えます。
めぐりあう日のネタバレあらすじ:承
ダンケルクで新しい生活を始めたエリザとノエ。ノエは、転校した学校の食堂で「豚肉は大丈夫なの?」と尋ねられます。それはノエの外見が、フランス人らしくない黒髪と浅黒い肌であるためです。学校には、アネットという中年女性が働いていました。生徒達の給食準備や校内清掃などの仕事に従事しているアネットは、なぜかノエのことを気にかけており、いつも温かい目で見守っています。ある日のこと、エリザの診療所のことを耳にしたアネットが、治療のためにやって来ます。さまざまな不調を訴えるアネットに、エリザは優しく筋トレやリハビリを提案します。アネットは、自分が母親と2人暮しであること、姪がいることなどを親しげに話します。ある時、エリザのもとに助産婦の女性から電話があります。彼女はエリザの母親の出産を手伝った女性でした。しかしエリザの期待とは裏腹に、女性の記憶は曖昧でした。母親が子供の父親について何も話さなかったと聞いたエリザは、もしや自分はレイプの末に生まれたのかもしれないと不安を抱きます。
めぐりあう日のネタバレあらすじ:転
アネットはエリザの診療所に通うようになりました。アネットはノエのことを誉めますが、学校でのノエはアネットに辛く当たります。アネットは思わずエリザに、ノエが悪い生徒と付き合っているとお節介な発言をします。エリザは気分を害したようです。アネットは落ち込み、帰宅して母親にエリザのことを話します。「あの子は私のことを見つけるかしら」。アネットこそエリザの母親でした。母親は言います。「あれはアラブ男の娘だよ」。母親は、エリザの父親がアラブ人だったことに差別心を抱いていたのです。そんな中、自分が妊娠していると気づいたエリザは、夫に相談することもなく、国境を越えたベルギーで中絶手術を受けます。一方アネットは、自分の生んだ娘がエリザだと確信しながらも、名乗り出るかどうか思い悩んでいました。匿名出産した子供の名前を確認するには、書面申請しなければなりません。エリザに本当のことが言えないまま診療所に向かいますが、エリザもまた、アネットが自分の母親ではないかという思いに揺れていました。2人の間にぎこちない空気が漂います。アネットは意を決し、1981年に女児を出産したことを書面に記します。
めぐりあう日の結末
エリザの精神状態は徐々に不安定になり、ノエを友人の家に預けた夜、若い男と一夜を過ごしてしまいます。その事実を知ったノエは傷つき、家をとびだして警察に保護されます。エリザと連絡がとれず心配したアネットが、エリザの自宅を訪ねます。そこにエリザはおらず、彼女の夫アレックスがいるだけでした。夜、姿を消していたエリザが帰宅します。アレックスはエリザに、アネットがとても心配していたことを伝えます。エリザはアネットの兄が働くカフェに出向き、そこにいたアネットと向き合いました。再び気まずいムードが流れます。アネットの母親と兄は、エリザを歓迎するどころか反感を露わにします。彼らはエリザの父親である男を恨んでいました。モハンドというアラブ人の男は、妻子がありながらアネットをもて遊んだのです。しかしアネットはその話を否定します。「自分の人生のことは自分で話すわ」。そう言ったアネットは、ようやくエリザの顔をまっすぐ見つめます。その後、エリザはノエをつれてアネットに会いに行きます。公園のベンチに腰かけ、母と娘は静かに語りあいます。アネットはノエを見つめて「彼に似てる。同じ瞳よ」と微笑みます。ラスト、船の上でよりそうエリザとノエの姿に、アンドレ・ブルトンの詩「狂気の愛」の一節を朗読する声が重なります。
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