マルケータ・ラザロヴァーの紹介:1967年チェコスロヴァキア映画。チェコ・ヌーベルバーグの巨匠、フランチシェク・ヴラーチルの傑作が半世紀以上の時を経て日本初公開。『アンドレイ・ルブリョフ』(アンドレイ・タルコフスキー監督)、『七人の侍』(黒澤明監督)などと並び、その後の多くの監督たちに影響を与えたといわれる本作は、13世紀のボヘミア王国を舞台にした壮大な叙事詩だ。極寒の山奥で当時と同じように暮らしながら548日間にもわたる撮影を敢行したという本作は、21世紀の現代でもなお鮮烈な印象を残す。
監督・脚本:フランチシェク・ヴラーチル 原作:ヴラジスラフ・ヴァンチュラ 出演:マグダ・バーシャーリオバー(マルケータ)、ヨゼフ・ケルム(コズリーク)、フランチシェク・ベレツキー(ミコラーシュ)、ミハル・コジュフ(ラザル)、イヴァン・パルウィッチ(アダム)、パブラ・ポラーシュコヴァー(アレクサンドラ)、ヴラスチミル・ハラペス(クリスティアン)ほか
映画「マルケータ・ラザロヴァー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マルケータ・ラザロヴァー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「マルケータ・ラザロヴァー」解説
この解説記事には映画「マルケータ・ラザロヴァー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マルケータ・ラザロヴァーのネタバレあらすじ:起
13世紀半ばのボヘミア王国。
ボレスラフを目指すザクセンの伯爵の一行が盗賊に襲われます。馬を盗んだ片腕の男を伯爵の息子クリスティアンとその従者が追いますが、逆に捕らえられてしまいます。
しばらくして賊を率いるミコラーシュが現場に戻ってくると、隣の領地オボジシュテェの領主ラザルが掃除と称して馬具などを盗んでいました。ミコラーシュはラザルを脅しますが、キリスト教徒である彼の命乞いに免じて見逃します。
そのミコラーシュはロハーチェックの領主コズリークの息子で後継者といわれていますが、その弟で片腕のアダムはそれが面白くありません。コズリークは今回のやり方に不満があり文句を言いますが、伯爵を逃したことをアダムが告げ口すると更にミコラーシュを叱責します。彼らの妹アレクサンドラは捕虜のクリスティアンを気に入り、ほどなくしてふたりは愛し合うようになります。
事件のせいで王立軍の指揮官ピヴォに呼び出されたコズリークはひとりでボレスラフに向かいますが、危うく捕らえられそうになったため逃走し、狼の群れに襲われそうになりながらも間一髪で帰宅しました。そして王立軍が攻めてくるのでなんとかするようにとミコラーシュに指示します。
ミコラーシュは単身ラザルの屋敷に向かい、先日命を助けてやったのだから共に闘うよう呼びかけますが、そんなつもりはないとラザルははねつけミコラーシュを袋叩きにしてしまいます。修道女になることが決まっているラザルの娘マルケータは、その様子を見て心を痛めます。
何の成果もなく手負いで戻ってきたミコラーシュにコズリークは憤慨し、他の息子たちをけしかけラザルのもとへ向かわせるのでした。
マルケータ・ラザロヴァーのネタバレあらすじ:承
コズリークの報復を恐れたラザルは王立軍に護衛を依頼しますが、滞在中の兵士の食事など負担が大きく、早く春が来ないかと困っています。そんなとき、ついに敵が姿を見せ、マルケータにいいところを見せようと飛び出した補佐官がすぐに殺されてしまいます。敵はそのまま森に隠れてしまい、指揮官ピヴォは態勢を立て直して追っていきます。
ラザルはマルケータを修道女にするため尼僧院へ連れていきますが、誓いをたてるのに必要なお金が準備できず受け入れてもらえませんでした。屋敷に戻ってくるとそこは既にミコラーシュらに占拠されており、ラザルは精神に障害のある息子を殺されてしまいます。彼らはラザルを殺さない代わりに娘のマルケータを拉致して連れ去りました。
森の中にある拠点へと戻ってきたミコラーシュたち。アレクサンドラは殺されそうなクリスティアンを命がけで守り、ミコラーシュは自分のものだと見せつけるかのようにマルケータを犯します。
その翌朝、コズリークに因縁をつけられたミコラーシュ、マルケータ、アレクサンドラ、クリスティアンとその従者の5人は鎖でつながれバリケードの外に放置されます。そして彼らの間には奇妙な連帯感が生まれるのでした。
マルケータ・ラザロヴァーのネタバレあらすじ:転
一匹の羊を連れた修道士ベルナルドが施しを求めてやってきます。しかしコズリークの配下の者に暴行され、羊を奪われてしまいました。
羊を探して歩き回るベルナルド。偵察のため見回りをしていたアダムたちは、羊の鳴き真似をしてベルナルドをからかいます。しかし王立軍がやってきてアダムはつかまってしまいました。
ベルナルドはコズリークの要塞に招き入れられ、食事と酒を振る舞われます。久々のごちそうに気分よくひと晩を過ごしたベルナルドでしたが、朝起きると地面には丸焼けになった羊の頭がありました。ゆうべ食べた肉はあの羊のものだったのです。
そのころ、不自然な鹿の移動で敵の接近を察知したミコラーシュはそれをコズリークに知らせ、鎖を解かれ要塞の中に入ることを許されました。ミコラーシュに好意を持ち始めたマルケータはコズリークの幼い子どもたちと仲良くなり、一方のアレクサンドラとクリスティアンは片時も離れません。
実はアレクサンドラは兄であるアダムと通じたことがあり、そのせいでアダムはコズリークの怒りを買って片腕を斬り落とされていました。そんなアダムとの複雑な事情もありアレクサンドラはクリスティアンとの関係に救いを求め、彼もそれに応じたのです。
要塞のある高台の下には王立軍が集結していました。捕虜となったアダムを盾にする指揮官ピヴォに、味方であるザクセンの伯爵は「息子クリスティアンの仇を渡せ」と騒ぎ立てます。それを拒んでピヴォが要塞を攻めようとすると、中から生きていたクリスティアンが姿を現します。
伯爵は喜んでアダムとの人質交換に応じるようピヴォに命令しますが、アダムが要塞に向かって逃げ出したので背後から攻撃しアダムは絶命してしまいます。クリスティアンは再び要塞の中に隠され、本格的な戦闘が始まりました。
混乱に乗じてミコラーシュたちは逃走し、コズリークはピヴォにつかまります。伯爵はクリスティアンと再会を果たしますが、王立軍によって追われるアレクサンドラの姿を見て父や王への忠誠と彼女への愛の間で混乱しクリスティアンは心が壊れてしまいます。
ひとりさまよい歩いた挙げ句、廃墟となったラザルの屋敷に入り込み、先に来ていたベルナルドとひとときを過ごします。しかし一言も発せず、雪が降り始めると狼の群をものともせずひとり荒野に向かっていくのでした。
マルケータ・ラザロヴァーの結末
コズリークの残った家族たちは湿地に逃れました。男はほとんど殺されてしまい、女と老人、子どもたちばかりです。
ミコラーシュ、マルケータ、アレクサンドラの三人は森の中の木の下で休んでいます。ミコラーシュはコズリーク奪還を考えており、マルケータを父ラザルのもとに送り届けるつもりです。ふたりは最後の愛を交わし、アレクサンドラはそっとその場を離れます。
すると草むらで横たわっているクリスティアンを発見しますが、既にそれは彼女の愛したその人ではありませんでした。アレクサンドラは大きな石を彼に振り下ろし殺害します。そして彼女は伯爵に見つかりつかまってしまいます。
ラザルのもとに戻ってきたマルケータですが、父は汚れた彼女を拒絶します。失意のまま追い出されたマルケータは丘の上の尼僧院に向かい、そこで今までのすべてを償うべく自らの罪を復唱させられ、愛するミコラーシュを否定されます。やってきた幼い子どもに導かれるようにマルケータはキリスト教と決別しそこを出ていきます。
そのころミコラーシュは数人の仲間と、ボレスラフの牢に入れられているコズリークを助け出すべく戦いを挑んでいました。しかし企みは失敗し、瀕死の状態で彼は捕らえられてしまいます。
そこへマルケータがやってきました。愛するミコラーシュの死に際し、その場で指揮官ピヴォがふたりの結婚を宣言してくれました。そしてそのままコズリークとともにミコラーシュは連れていかれてしまいます。
その後マルケータはひとり野をさまよっています。途中、ヤギを連れたベルナルドに出会い、ラザルに許してもらうまでいっしょに旅をしましょうと声を掛けられますが、それを無視して彼女は歩いていきます。
その後マルケータはミコラーシュの子を産み、アレクサンドラが牢の中で産んだクリスティアンとの子どもとともに育てたそうです。
以上、映画「マルケータ・ラザロヴァー」のあらすじと結末でした。
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