イブラヒムおじさんとコーランの花たちの紹介:2003年フランス映画。ユダヤ人の少年と年老いたトルコ商人の心の交流を描くドラマ作品。家族の愛を知らない少年モモは、老商人イブラヒムが営む食料品店で万引きを繰り返していた。しかしイブラヒムは咎めるどころか鷹揚に接し、愛情に満ちた言葉をモモに贈る。それはイブラヒムがコーランから学んだ知恵の数々だった。やがてモモはイブラヒムと世代も宗教も超えた絆を結び、人生の素晴らしさを知っていく。
監督:フランソワ・デュペイロン 出演者:オマー・シャリフ(イブラヒムおじさん)、ピエール・ブーランジェ(モモ)、ジルベール・メルキ(モモの父)、イザベル・ルノー(モモの母)、ローラ・ネマルク(ミリアム)ほか
映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちの予告編 動画
映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」解説
この解説記事には映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちのネタバレあらすじ:孤独な少年とトルコの老商人
舞台は1960年代初頭のフランス、パリ。ユダヤ人街ブルー通りのアパルトマンに暮らす少年モイーズ(愛称モモ)は、愛を知らない日々を送っていました。母はモモが生まれてすぐ兄のポポルを連れて家出。一緒に暮らす父は優秀だったポポルとモモを何かと比較し、遠回しに非難するような言葉ばかりかけてきます。
モモの日課は、ブルー通りに立つ娼婦達を窓から観察することでした。彼女達をスマートに誘い、早く初体験を済ませたいと考えていたのです。モモは貯金箱を叩き割り、小銭を握り締めて通りの向かいにある食料品店へ向かいます。そこは「アラブ人の店」と呼ばれていました。店主のイブラヒムに頼んで小銭を札に両替して貰い、娼婦シルヴィの手ほどきで初めてのセックスを経験します。
モモはイブラヒムの店で買い物をする度に万引きを繰り返していました。アラブ人は嫌いだと心の中で毒づいていると、イブラヒムは「アラブじゃない “黄金の三日月地帯”の出身だ」と言い出します。心を読まれたかのような体験に驚くモモ。黄金の三日月地帯とは、トルコ中部からペルシャ一帯のことだそうです。「アラブ人の店」と呼ばれているのは、日曜日でも朝8時から夜12時まで店を開けているからだとイブラヒムは笑いました。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちのネタバレあらすじ:コーランの言葉
ある日、ブルー通りで映画の撮影が行われました。モモ達は通りに出て見学します。イブラヒムは店にやって来た映画スターに、いつもより高値で水を販売しました。ぼったくりだと言うモモに、イブラヒムは万引きの補填だと話します。気付かれていたと知ったモモはしどろもどろになり、弁償すると口走りました。しかしイブラヒムは、弁償は必要無いので盗みを続けるならこの店でするように、と笑います。
それからイブラヒムはモモに様々な知恵を与えてくれました。中でも一番役立ったのは、笑うことで幸せになれるということ。笑顔を浮かべると色々なことが上手く運びます。しかし父には通用せず、歯列矯正が必要だとあしらわれてしまいました。イブラヒムを訪ねたモモは、ポポルと比較される苦しさや怒りを口にします。イブラヒムは「君の方がずっといい」と笑い、モモを励ましてくれました。イブラヒムの言葉の数々は、全てコーランの教えだそうです。イブラヒムがイスラム教のスーフィー教徒であると知ったモモは辞書を引いて調べますが、難しい言葉ばかりでほとんど理解出来ませんでした。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちのネタバレあらすじ:裏切りと真実
そんなある日、父が突然解雇されてしまいます。気落ちするモモのボロボロの靴を見たイブラヒムは、翌日新しい靴をプレゼントしてくれました。モモが意気揚々と家に帰ると、父の姿がありません。彼は金と知人のリストを残し、モモを捨てて出て行ってしまったのです。喪失感と怒りに震えるモモは、イブラヒムにさえこのことを秘密にしていました。1人きりの部屋でコーランを開き、少しずつその教えに触れていくモモ。初めての失恋に打ちひしがれるモモを慰めてくれたのもイブラヒムでした。モモは父が集めていた本を売り払い、次々娼婦を買う生活を送ります。
そんな毎日を続けていたある日、警察が家にやって来ました。父がマルセイユ近郊で列車に轢かれ、死亡したそうです。自殺でした。遺体の確認を求められたモモが拒絶したため、イブラヒムが代わりに埋葬まで行います。それから少ししてモモの家に初めて目にする母親が訪ねて来ました。モモは「モハメッド」と名乗り、「モイーズ」はポポルを探しに出て行ったと嘘をつきます。すると母親は怪訝な顔になり、子供はモモしかいないと言い出しました。ポポルは父が作り出した空想の人物だったのです。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちのネタバレあらすじ:イブラヒムの故郷へ
モモはイブラヒムの店に飛び込み、養子にして欲しいと頼みました。イブラヒムも快諾し、2人は親子になります。イブラヒムは車の免許を取得し、新しく買ったオープンカーにモモを乗せてブルー通りを発ちました。目指すは彼の故郷、トルコです。
イブラヒムはトルコまでの長い道のりで様々なことを教えてくれました。ゴミ箱の有無で見分ける土地の貧富。それぞれの宗教の匂い。モモがいて、コーランの教えがある現在に「幸せだよ」と呟くイブラヒム。しかしモモはブルー通りが忘れられず、恋しい気持ちを抱えていました。そんなモモに、イブラヒムはスーフィー教の神秘的なダンスを見せます。彼は現地の人々にモモを自慢の息子だと紹介しました。モモは初めて感じる家族の愛に包まれます。
イブラヒムおじさんとコーランの花たちの結末:旅の終着点
ついにトルコまでやって来た2人。イブラヒムは故郷の家を見てくると話し、モモを降ろして車で出発します。なかなか帰って来ないイブラヒムにモモが不安を覚え始めると、バイクに乗った男性が「モモ」「イブラヒム」と話しかけてきました。言葉はさっぱり分かりませんでしたが、モモはバイクに乗せて貰ってイブラヒムの家へ向かいます。
途中でイブラヒムの車が横転していました。事故に遭ったイブラヒムは瀕死の重傷を負い、家で寝かされています。モモが到着すると、イブラヒムは旅の終わりを告げました。「私は ちっとも怖くない」「コーランの教えがある」と穏やかに語るイブラヒム。彼は自分の素晴らしい人生を振り返ります。涙を流すモモの手を握り、イブラヒムは静かに息を引き取りました。
その後、イブラヒムの遺言に従って彼の全財産を相続したモモは、ブルー通りの店を引き継ぎます。日曜日も朝8時から12時まで店を開けている「アラブ人の店」です。かつての自分と同じく万引きをする少年を見つけた大人のモモ。イブラヒムのように「アラブ人じゃないよ モモ」と笑い、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する