無法松の一生の紹介:1943年日本映画。無類の喧嘩好きから「無法松」と呼ばれる富島松五郎は、ある少年との出会いによって運命を変えていきます。人力車夫の仕事で生涯を終えた彼が一途に思いつづけたこととは。主演は男の心意気を貫いて爽快な阪東妻三郎。監督は骨太な演出で定評のある稲垣浩。撮影は詩情豊かなカメラワークで名高い宮川一夫。原作は、岩崎俊作の小説『富島松五郎伝』です。
監督:伏水 修 出演者:阪東妻三郎(富島松五郎)、永田靖(吉岡大尉)、園井恵子(吉岡夫人)、川村禾門(吉岡敏雄)、長門裕之(敏雄の少年時代)ほか
映画「無法松の一生(1943年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「無法松の一生(1943年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「無法松の一生(1943年)」解説
この解説記事には映画「無法松の一生(1943年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
無法松の一生のネタバレあらすじ:起
明治時代の福岡県小倉。人力の車夫として生計をたてる富島松五郎は、小倉きっての暴れん坊としてその名が知られています。松五郎自身、喧嘩の強さが自慢なため、喧嘩の武勇伝にも事欠きません。しかし彼には些かのケレン味もありません。
警察や侠客との諍いでも、一本気な性格から乱暴者として扱われますが、じつは「無法松」と呼ばれるその名には、ある種の愛情さえ込められています。
松五郎は仕事の帰り道に、竹馬で遊ぶ小学生たちとすれ違います。その中のひとり、吉岡敏雄の竹馬が転げて少年はケガを負います。松は、敏雄を人力車に乗せて家へ送り、さらにまた敏雄を抱いて医者へ向かいます。
そのことを知った父親の吉岡大尉は、わが子を救ってくれた車夫の名を聞いて大いに喜びます。吉岡夫人もまた、今日息子のために奮闘してくれた腰の低い車夫が、町きっての暴れん坊だと知って驚きます。
無法松の一生のネタバレあらすじ:承
お礼にと、吉岡大尉の歓待を受けた松は、すっかりご機嫌です。しかし、それも束の間、大尉は急な病でその日のうちに亡くなります。
それから幾十日が過ぎたのでしょうか、生活にすこし落ち着きを取り戻した吉岡夫人と敏雄、そして松とが墓参に訪れます。松が「奥さん」と呼ぶ吉岡夫人は、すでに松に強い信頼を寄せる人になっています。
無法松は、馬喰の子として、小倉に生まれました。貧苦と継母に厳しく扱われた少年は、その後、身体を張って生きる道を選んでいます。しかし、町の人たちの中には、暴れん坊の彼から距離を置く人も少なくありません。
そんな中、いつも変わらず、温かく接してくれる奥さんに彼は感謝しています。その奥さんが、敏雄を強い子に育てたいと言っています。松も奥さんに同意します。
無法松の一生のネタバレあらすじ:転
敏雄はおとなしく、人前では顔を伏せていることの多い子です。根が優しく、すぐに涙を見せるため、自分でも泣き虫だと決めつけています。そこで松は考えます。強い自分と数多く接する機会を持つことを。
町の運動会です。松は全力で走ります。応援席にいる敏雄は、松の姿をじっと追いかけます。しかし恥ずかしくて応援の声が出てきません。松は、目の色を変えて1等を狙っています。ゴールまであとわずか。「おじさん、がんばれ」。「がんばれ、おじさん」、「がんばれ…」。人目もはばからず、夢中で松を応援する敏雄。奥さんは、松に万感の思いで感謝します。
敏雄は日に日に成長します。中学から高等学校へ通う頃になると、学校が違う学生同士の喧嘩にも参加します。気が気ではない奥さんを他所に、松をして「してやったり」と敏雄は丈夫な青年に育っています。
しかし敏雄は、青年期特有の気の難しさから、松を避けるようになります。敏雄が大学入学で小倉を離れるまで、道で会ってもすましこむ敏雄に、松は気の抜けた寂しさを味わうことになってしまいます。
無法松の一生の結末
熊本の大学へ通う敏雄が夏休みを兼ねて帰省します。大学の先生に小倉の祇園祭りを案内するのが目的のひとつです。先生は、小倉の正統派祇園太鼓が廃れ、バチのさばき手が今はいないことを残念がっています。
太鼓の山車が松の目の前へやってきます。敏雄と先生を案内していた松は山車に上り、太鼓に向かいます。松の叩く太鼓の音が響きます。ド・ド・ドン・ドン、ド・ド・ドン・ドン。
太鼓の音は、しだいに激しくなってきます。バチの微妙なさばき具合。流れ打ち、そして勇み駒、暴れ打ち。リズムが上がってきます。松の脳裏には、かつての日々が蘇ります。奥さんと出会った日。敏雄の成長を見守ったこと。血沸き肉躍る太鼓の音に合わせて、幾つものできごとが走馬灯のように巡ってきます。敏雄と先生の顔に笑みがこぼれます。松は満足です。
しかし、翌年の祇園祭に、松はもういません。貯金を残したまま死へ旅立っています。松が、長年こつこつと貯めた大金の受取人が「吉岡敏雄様」であったことが奥さんを驚かせます。人力の車夫「無法松の一生」は、敏雄から喜びをもらうこと、敏雄に喜びを与えること、これに尽きていたようです。
以上、映画「無法松の一生」のあらすじと結末でした。
「無法松の一生(1943年)」感想・レビュー
-
1958年の三船敏郎版を観ました。
少年時代の松がお父さんに会いに行く際、途中で立ち寄った家でうどんをすする姿や、ラストの自分が卑しいと思ってしまうほど、純粋な心を持った描写と演技が、とてもよかったです。 -
阪東妻三郎版を視聴しました。
検閲により、重要なシーンがカット(特にラストの一連の流れ)されすぎているのが残念です。
ラストもやはり、終わり方が唐突になってしまっています。無法松の悲しさや、純粋さからくる自分を責めてしまう苦しみが、こちらに伝わりきらずに終わってしまいます。
見方の話ですと、阪東妻三郎伴の方が、確かに無法松が幾分か幸せには見えてしまいます。
-
三國連太郎版も観たいのですが、ソフト化されていないようですね。
残念です
失礼します。一つの見方として、奥さまへのプラトニックな想いがあると思いました。愛する母子を見守った人生は、幸福だったのかもしれません。後年?松さんの出自についての記事を読んだことがありますが。どうなのでしょう?