暁の7人の紹介:1975年アメリカ映画。1942年、連合軍は起死回生を狙ってヒトラーに継ぐNo.2、ハイドリッヒ占領軍最高司令官の暗殺を計画。即刻、解放軍兵士の中から勇気ある3人をプラハに送り込んだ。
監督:ルイス・ギルバート 出演:ティモシー・ボトムズ(ヤン・クビシュ)、アンソニー・アンドリュース(ヨゼフ・ガブチック)、マーティン・ショー(カレル・チューダ)、ジョス・アクランド(ヤナク)、ニコラ・パジェット(アンナ)、アントン・ディフリング(ラインハルト・ハイドリッヒ)、シリル・シャップス(ペトレク)、ほか
映画「暁の7人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「暁の7人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「暁の7人」解説
この解説記事には映画「暁の7人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
【繰り返しの妙】
第二次世界大戦中のプラハが舞台で、ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者ラインハルト・ハイドリッヒ暗殺の実話を基にした映画です。タイトル ロールでハイドリッヒが自宅で身支度をして出掛けるまでを克明に描写し、中盤7人のレジスタンスが2度目の暗殺計画で辛うじて成功した前段にその描写が そっくりそのまま繰り返し映し出された時は思わず唸ってしまいました。今でこそよく使われる手法ですが1975年封切りで観た時はドキドキものでした。ル イス・ギルバート監督は「アルフィー」「フレンズ」「007/私を愛したスパイ」など何でも作る器用な、逆に言えば特色のない監督と言えるかもしれません が地味ながらこれが彼の最高傑作だと私は思います。
【子供と戦争】
最初のシーン、3人の先発隊が故国にパラシュートで降りバスでプラハに着いた時一人の自転車に乗った少女がジッと彼らを見つめていて、これ から起こる様々な惨事が彼女の幼い瞳にどう映るのか居たたまれなくなって来ます。戦争の悲惨さはその対象が幼ければ幼いほど悲劇性が増し、彼女も最後は強 制収容所で亡くなったそうですが、この世の最悪の時代に生まれしまった不運、恋さえ知らずに散ってしまった儚さに胸が締め付けられます。
【目、眼】
「ジョニーは戦場へ行った」のティモシー・ボトムズは手も足も耳も目もなく口もきけない生ける屍の状態で反戦を訴えていましたが、この映画の彼 も寡黙でそれ以上に目がものを言っていました。彼と愛を交わした同志の女性アンナもまたしかりで、饒舌な映画よりよほど観る者の心に染み入ります。それと もう一つの眼 カメラアイ、アンリ・ドカエの撮影が素晴らしく、戦禍に沈んだ重苦しい雰囲気、濡れたような灰色のプラハの街を鮮やかに映し出し宗教色の音 楽と相まって一貫したムードを醸し出していました。
【裏切り】
ナチの報復手段としてリディツェ村の住民を虐殺し村を破壊させますが地図から一つの村が消滅させられることに身震いがします。そして一人の裏切 り(彼の心の内も解りすぎるほど解るが)の密告によって教会における最後のクライマックスを迎えますがその過程で短いけれど印象的なシーンがありました。 それは、律儀な夫には何も告げず密かにレジスタンスに参加していたマリーおばさんが親衛隊に逮捕される時一言『許して・・』と言い、その一言ですべてを察 した夫は何も言わず強く抱きしめる夫の表情はいまこれを書いていても涙が出そうになります。残念なことにこの作品はDVD化されておらずたまにどこかの局 で放送されることがあるので是非是非チェックして下さいね。
「暁の7人」感想・レビュー
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「暁の7人」の主演俳優ティモシー・ボトムズは、「ジョニーは戦場へ行った」「ラスト・ショー」「ペーパー・チェイス」等での印象的な演技で、私のお気に入りの俳優のひとりになりました。
「暁の7人」の彼は、きりっと引き締まった表情で、緊張でピリピリするような心が張り詰めた荒武者といった風情があります。
そして、ある種の悲しみを湛えた優しく暗い眼が、とても印象的です。第二次世界大戦において、チェコスロヴァキアは、ドイツ軍の怒濤の進撃で占領されてしまいます。
ティモシー・ボトムズ扮するヤンは、ロンドンで機会を待つチェコ解放軍の兵士。
その彼らに、祖国チェコで占領・支配しているナチス・ドイツの総司令官ハイドリッヒ暗殺の指令が下される。この指令は、大胆不敵な極秘作戦で、戦局を連合国軍側に有利に展開させるための、非情極まる作戦計画だった。
そして、今回選ばれたヤンを含む解放軍の3人は、明らかに”捨て駒”だったのだ。私は、この映画を観ながら、イギリス、ドイツ、ロシア等の強国に挟まれて、悲劇的な歴史を歩んできた東欧諸国の運命を垣間見る思いがしました。
そのように感じた時、どこか悲劇的で悲しい表情を張り詰めさせたティモシー・ボトムズの個性が、ひと際、ものをいっていると思います。このティモシー・ボトムズという俳優は、本質的に”青春の悲しさ”を体現できる稀有な存在だと思います。
眉をきりりと上げて、しっかりと未来を見据えている時でも、その高い鼻梁のかげに、若く純粋な悲しみと愁いの影が漂うのです。「暁の7人」は、ティモシー・ボトムズを主演俳優として起用したことで、この悲劇的な戦争秘話に、悲しみの感動を盛り込むことができたと言ってもいいと思います。
ただ、その後の彼は、良い作品にも恵まれず、役者として失速していったのが残念でなりません。
戦争の辛さ悲しさ。シンドラーのリストとは違ったリアルを見せてくれた。子供の頃テレビで見て衝撃を受けました。戦争は嫌です。