嵐の孤児の紹介:1921年アメリカ映画。孤児となった二人姉妹が盲目の妹の目の治療のためにパリに行くが折しもパリにはフランス革命の嵐が吹き荒れようとしていた。恋あり、戦闘シーンありで、『国民の創生』や『イントレランス』を彷彿させる大スペクタクル映画。D・W・グリフィス監督の『見えざる敵』(1912年)で共にデビューしたギッシュ姉妹だが、この作品が同監督の作品への最後の出演になった。1943年にはマキノ正博監督で、この映画を翻案した『阿片戦争』が製作され、原節子、高峰秀子が姉妹を演じた。
監督:D・W・グリフィス 出演者:リリアン・ギッシュ(アンリエット・ジラール)、ドロシー・ギッシュ(ルイーズ・ジラール)、ジョセフ・シルドクラウト(騎士ド・ヴォードレ)、モンテ・ブルー(ダントン)、シドニー・ハーバート(ロベスピエール)、リュシル・ラ・ヴェルヌ(フロシャール婆さん)、フランク・プリア(ピエール・フロシャール)、ほか
映画「嵐の孤児」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「嵐の孤児」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
嵐の孤児の予告編 動画
映画「嵐の孤児」解説
この解説記事には映画「嵐の孤児」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
嵐の孤児のネタバレあらすじ:秘密の子供
貴族のド・ヴォードレ家の娘が平民と結婚するが、身分違いの二人の結婚に怒った娘の一族は男を殺害し、二人の間に生まれたばかりの娘を母親が手放すことを強要する。
赤ん坊は雪の夜ノートル・ダム寺院の前に捨てられるが、ジラールという男がそれに遅れて貧しさゆえにアンリエットという名の自分の赤ん坊を捨てに来る。だが、先に捨てられた赤ん坊を見てかわいそうに思ったジラールは、結局二人の赤ん坊をもって帰宅してしまう。
拾ってきた赤ん坊の身に着けるペンダントの中には「この子の名はルイーズ」と書かれた紙が隠され、また赤ん坊は大金も身に着けていた。ジラール夫妻はルイーズをアンリエットの妹のように育てることになる。
嵐の孤児のネタバレあらすじ:危険なパリ
月日が流れ、ルイーズの母は過去を隠して、国王直属のパリ警視総監ド・リニエール伯爵と結婚していた。ルイ16世が統治するフランスでは貴族が暴虐をつくす一方、街には貧民があふれる。この状況に心を痛める法律家ダントンは、パンを求める貧民の姿にいたたまれずパンを配る若い貴族、騎士ド・ヴォードレ(ド・リニエール伯爵夫人のおい)と出会う。
一方、疫病により、地方に住むジラール夫妻は死にルイーズも視力を失ってしまった。アンリエットは妹をパリの医者に診せようと考える。ルイーズは、パリに行ったらアンリエットはきっと素敵な男をみつけて結婚して自分を捨ててしまうと言ってパリ行きをためらうが、アンリエットは妹の目が見えるようになるまでは結婚しないし、妹が承認する相手以外とは結婚しないと誓う。
パリへ向かう途中、立ち往生した馬車から降りた姉妹を見たド・ブラーユ侯爵はアンリエットの飾らぬ美しさを見て自分のものにしようと思う。パリに着いたアンリエットを侯爵の家来が誘拐する。アンリエットが侯爵の屋敷で気付け薬をかがされて意識を取り戻したとき、貴族たちが酒池肉林で乱痴気騒ぎを続けていた。
「ルイーズはどこ、私を放して」というアンリエットの叫びにただ一人、騎士ド・ヴォードレだけが応える。深夜12時をまわったら私の屋敷を出てはならないとうそぶく侯爵とド・ヴォードレは剣を抜いて戦い、侯爵を負傷させてやっとアンリエットを連れて屋敷を出る。
アンリエットは貧しい法律家ロベスピエールが営む下宿屋に部屋を借りる。ド・ヴォードレはたまらずアンリエットの口にキスをしてしまい慌てて無礼を謝って帰る。
一方、姉と引き離されたルイーズは、河に落ちそうになったところを気弱な青年ピエールに助けられるが、ピエールの母の強欲なフロシャール婆さんは、盲目の娘に乞食をさせれば金を恵んでくれる人が増えると思ってルイーズを家に連れ帰る。ルイーズはやがて婆さんに引きずられ雪の降る街で歌って乞食をすることになる。
嵐の孤児のネタバレあらすじ:引き裂かれる姉妹、引き裂かれ恋人たち
街では王政打倒を呼びかける演説をするダントンに民衆の支持が集まりつつあった。王党派はダントンの人気を恐れて、夜の街を歩く彼を襲撃する。ダントンが逃げ込んだのは友人ロベスピエールの下宿屋の、たまたまアンリエットの部屋だった。
アンリエットは追っ手に嘘を教えてダントンを助ける。朝まで身を隠したダントンは、若い娘の部屋から出るところを道徳にやかましいロベスピエールに見られないように気を付けて部屋を出るが、物陰からロベスピエールはそれを見ていた。
アンリエットと恋に落ちたド・ヴォードレから会ってほしいと頼まれて、伯爵夫人が下宿にアンリエットを訪れる。赤ん坊のルイーズが身に着けていたペンダントを見てアンリエットの捜すルイーズが彼女の娘であることを知る。
そのとき下宿の下の道をフロシャール婆さんとルイーズが通りかかる。捜し続けていた妹の歌声に気づき、アンリエットは二階にある部屋から妹に叫ぶ。だが、ちょうどその時警視総監ド・リニエール伯爵が警官を率いて下宿に現れ、おいとの仲を裂くためにアンリエットを逮捕する。
国王の決めた縁談を承知しないド・ヴォードレは懲罰のために地方の要塞監獄に護送される。
嵐の孤児のネタバレあらすじ:革命と恐怖政治
アンリエットはバスティーユ監獄に入れられるが、ダントンの演説に勇気づけられた民衆が蜂起し、圧政のために監獄に入れられた人々を救うために監獄に押し寄せる。民衆は王の軍隊との戦いに勝利し、アンリエットも解放される。
アンリエットは、監獄で出会った医師からの情報でフロシャール婆さんの家を訪れるが、婆さんは、ルイーズは死んだと泣いて嘘をつき、アンリエットを絶望させる。だが、ピエールは兄がルイーズを襲おうとするのを見て勇気を振り絞って兄をナイフで刺してルイーズを守り、二人で逃亡する。
伯爵夫人は夫にルイーズという娘の存在を告白し、夫の理解を得るが、革命によって亡命を余儀なくされる。貴族の暴虐から解放された民衆により街はお祭り騒ぎ。政府ではロベスピエールが発言力を増し、道徳的に腐敗した階級である貴族とその味方は次々とギロチンにかけられて命を失う。
ド・ヴォードレはアンリエットと再会するために命の危険を冒して身分を偽ってパリに潜入するが、ド・ヴォードレ家に恨みをもつジャン・スタンという男がド・ヴォードレの顔を忘れることはなかった。ド・ヴォードレは下宿でアンリエットと再会するが二人とも逮捕されてしまう。
嵐の孤児の結末:断頭台のアンリエット
二人は傍聴の民衆であふれる法廷に引き出される。アンリエットは傍聴人の中にピエールにともなわれたルイーズを見出す。裁判ではロベスピエールの監督の元ジャン・スタンが判事を務める。「ド・ヴォードレをかくまったか?」という問いにアンリエットは「彼を愛しています」と答える。死刑判決の二人はすぐさま、多数の見物人がいる刑場に運ばれる。
だが、遅れて法廷に現れ二人の判決を知ったダントンが二人を助けるために雄弁をふるう。民衆は彼の演説に心を動かされ、判決は修正されることになる。ダントンたちは二人を救うために刑場に馬を走らせるが既にアンリエットはギロチンに首をのせている。
ピエールがルイーズの姉を助けようと処刑役人をナイフで刺して時間稼ぎができた。ダントンたちが到着し、アンリエットとド・ヴォードレは解放され、ピエールも罪を見逃してもらう。
やがてロベスピエールの恐怖政治は終わり、世の中は落ち着きを取り戻す。ド・リニエール伯爵夫妻は元の屋敷に戻る。屋敷の庭で伯爵夫人はルイーズとピエールの交際を祝福し、アンリエットは再び目が見えるようになったルイーズに、パリに来る前に誓った通り、ド・ヴォードレをアンリエットの夫として認めるかどうか尋ねるのだった。
以上、映画「嵐の孤児」のあらすじと結末でした。
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