サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~の紹介:2019年アメリカ映画。メタルバンドのドラマー、ルーベンは恋人でメンバーを組んでいるルーと共にアメリカ各地のライブハウスをキャンピングカーで回るツアー生活を送っていた。そんなある日ルーベンはひどい耳鳴りに襲われ、突如聴力を失ってしまう。不安と絶望で精神的に不安定になっていくルーベンだったが、ルーの勧めで聴覚障がい者の支援コミュニティーに参加することに。新たな環境に馴染んでいく一方で、元の生活に戻ることを諦めきれないルーベンは葛藤する。ルーベンが直面する状態を、観客がまるで彼になったかのごとく味わえる本作。アカデミー賞で作品賞を含む6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞した。
監督:ダリウス・マーダー 出演:リズ・アーメッド(ルーベン・ストーン)、オリヴィア・クック(ルー)、ポール・レイシー(ジョー)、ローレン・リドルフ(ダイアン)、マチュー・アマルリック(ルーの父親)ほか
映画「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~の予告編 動画
映画「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」解説
この解説記事には映画「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サウンドオブメタル 聞こえるということのネタバレあらすじ:起
熱気あふれる小さなライブハウス。ルーベン・ストーンは力強くドラムを叩きます。そして、それに呼応するように、刺すような鋭い声で歌い上げる恋人のルー。2人はキャンピングカーでアメリカ国内を回りながら、行く先々でライブを行い日銭を稼ぐメタルデュオバンドでした。
ある朝、ルーベンはお手製のスムージー片手に彼女を起こします。ルーの腕には不規則に横に並んだいくつもの傷があり、これまでの人生が簡単ではなかったことを物語っていました。腕を掻きむしるルーの手をつかみ、スムージーを差し出すルーベン。こんな慎ましい暮らしを4年も続けながらも2人は幸せを感じていました。
ところがライブ会場につきスタッフたちといつものようにグッズを並べていたルーベンは、耳に違和感を感じます。しかしそれはすぐに治ったかのようでした。
翌朝、目が覚めたルーベンは耳に明らかな異変を感じます。
それは、耳から聞こえるくぐもった音。静かな騒音。いつも聴こえてきた音全てが鈍い音へと変わっていました。
慌てて薬局に駆け込むルーベンでしたが、薬剤師の声すら聞こえません。すぐ医師を紹介されて検査をしてもらうことになりました。
サウンドオブメタル 聞こえるということのネタバレあらすじ:承
検査の結果、ルーベンの右耳は28%、左耳は24%の音しか聴き取れていないことが判りました。
医師の話では、内耳インプラント手術はあるが保険が適応されず高額になるとのこと。そして一度失った聴力は元には戻らず今後さらに悪化するとまで。ルーベンにとって何より辛かったのは、大音量の環境から離れること。つまりそれは音楽活動を辞めることを意味していました。
ルーには何も言わずにその日のライブに出たルーベン。しかしくぐもった音からさらに聴こえなくなり演奏をやめてしまったルーベンは、自らの置かれている状況をルーに全て話しました。
心配したルーは、ルーベンを聴覚障害者の自助グループが共同生活を行っている施設へと連れて行きました。自暴自棄になり荒れるルーベンとは対照的に、ルーはその深刻さを理解しルーベンのために彼を置いて施設を去りました。
ルーベンはグループをまとめるジョーと話しました。同じく聴覚障害を持ったジョーは読唇して話し、ジョーの言葉は文字となってモニターへ表示され会話をすることができました。
過去にヘロイン依存症だった自分を救ってくれたのがルーだったと話すルーベンに、ジョーは自らもアルコール依存症だったと話しました。
サウンドオブメタル 聞こえるということのネタバレあらすじ:転
共同生活を送るにあたって、それぞれに家事などの役割が与えられていました。新入りのルーベンは”聴覚障害者の生活を学ぶこと”。ろう者の子供たちの学校で、自らも聴覚障害を持ったダイアンのアシスタントをすることになりました。
ところが、まったく手話ができないルーベンにこの生活は苦行そのものでした。子供たちとのコミュニケーションは取れず、共同生活でも会話に入っていくことができません。投げ出しかけたこともありましたが、ある少年とすべり台を叩き合い振動から音を通じた心の交流が、ルーベンを変えました。音を失ってから、はじめて音に助けられた出来事でした。
ルーベンが心に静寂を戻せるように、ジョーは毎朝5時に部屋を開け、コーヒーを用意して紙に向かわせる提案をしました。
解決する問題は、耳ではなくて心。
そんなジョーの言葉も今なら理解できるルーベン。少しずつ生きる活力を取り戻していきました。不自由なく手話で会話できるようにもなりました。
サウンドオブメタル 聞こえるということの結末
ある日、ルーベンは自分のキャンピングカーが停められている場所へ行き、ジョーに取り上げられたキーの代わりに隠していたスペアで車へ乗り込み、ドラムセットを解体し梱包し始めました。それどころかお金になりそうなものは車も含めて全て売り払い、現金に換えると、内耳インプラントができる医師のもとを訪れました。ルーベンは耳を治すことを諦めていなかったのです。
これで耳が治り、元の生活に戻れる。そんな希望を抱き手術に臨んだルーベン。ところが、手術が終わり聞こえてきたのは、元通りの音ではなくひどく歪み音の調節も明度もバラバラな不快な音でした。
それでも手術は成功したと思いたいルーベンは、コミュニティ生活から離れ、父親と暮らすルーに会いに行きました。ルーはひとりで音楽活動を続けやっと軌道に乗ったところでした。腕を掻きむしる癖もなくなっていました。
その日はちょうど父親の誕生日パーティーでした。歌を披露したルーの歌声を聴き入る人々の中で、ひとり孤立を感じるルーベン。
その夜、ルーベンがこれからの2人の活動のことを語ろうとしたときに、ルーはしきりに腕を掻きむしりました。
その瞬間、ルーベンは何かを悟りました。
翌朝、別れも告げずにルーのもとを去ったルーベンは、ベンチに腰掛けあたりを見回しました。
子供の遊ぶ声、車の音、時を告げる鐘、それら全ての音がルーベンを襲い苦しめました。
ほとんど発作に近い状態で、たまらず補聴器を外してしまいます。
その瞬間、静寂がルーベンを包みました。これまでに感じたことのない静寂に落ち着きを取り戻しました。
ルーベンの表情にはわずかな穏やさが現れていました。
以上、映画「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」のあらすじと結末でした。
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