ストレイ 悲しみの化身の紹介:2019年ロシア映画。最愛の一人息子が行方不明となり、悲しみに暮れる夫妻は養子を迎え入れましたが、やがて養子は次第に実子に似てきて夫妻を恐怖に陥れることに…。人の悲しみにつけ入る悪魔的存在を描いたロシア発のゴシック・ホラー作品です。
監督:オルガ・ゴルデツカヤ 出演者:エレナ・リャードフ(ポリーナ・ベロワ)、ウラディーミル・ウドヴィチェンコフ(イゴール・ベロワ)、セバスチャン・ブガーエフ(ヴァーニャ(“それ”))、イェン・ラノフ(ヴァーニャ・ベロワ)、エフゲニー・ツィガノフ(セリョージャ・ワシリー)、ローザ・カイルリーナ(シスター・イシドラ)ほか
映画「ストレイ 悲しみの化身」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ストレイ 悲しみの化身」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ストレイ 悲しみの化身の予告編 動画
映画「ストレイ 悲しみの化身」解説
この解説記事には映画「ストレイ 悲しみの化身」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ストレイ 悲しみの化身のネタバレあらすじ:起
2016年、ロシア・モスクワ。外科医のイゴール・ベロワ(ウラディーミル・ウドヴィチェンコフ)と、妻で教師のポリーナ(エレナ・リャードフ)の間には6歳になる息子ヴァーニャ(イェン・ラノフ)がいました。
ある日のこと、ヴァーニャは外へ遊びに行くと言ったっきり戻ってきませんでした。それから間もなく、警察から知らせを受けたイゴールは死体安置所に行き、そこで損傷が激しい身元不明の遺体を見せられました。警察は身体の特徴から、この遺体はヴァーニャではないかと判断しましたが、我が子の死を受け入れられないイゴールは頑なに認めようとはしませんでした。
3年後の2019年9月。未だに悲しみの癒えないイゴールとポリーナは養子を迎えるべく、田舎にある孤児院を訪れました。ポリーナは孤児院の横にある、荒れ果てた廃墟に興味を持ちました。イゴールは孤児院の子供たちを見定めようとしましたが、子供たちに関心を示さないポリーナはいたたまれなくなったのか建物の外に出ました。廃墟から何かの気配を感じ取ったポリーナが中に入ると、そこには一人の男が拳銃で右目を撃ち抜かれた状態で死亡しているのが発見されました。
ポリーナは男に構わず、物音がした部屋に入り込みましたが、暗くてはっきり確認できませんでした。そのうち、ポリーナは死んだはずの男が咳き込んでいるのに気づき、男の様子を確認したところ、その隙に赤い服を着た謎の存在が廃墟の外に出ていきました。
やがて孤児院に警察が現れて現場検証を始めました。死亡した男性は孤児院の管理人で、どうやら自殺を図った様子でした。警察は発見者のポリーナと孤児院の修道女シスター・イシビラ(ローザ・カイルリーナ)に事情聴取を行い、管理人が子供と暮らしていたようだと訊かれたイシドラは「何も知らない」と答えました。ただ、イシドラは孤児院の子供たちは墓場から死者が甦ると噂していることは伝えました。
その時、ポリーナは汚れた赤い服を着た不気味な少年(セバスチャン・ブガーエフ)が孤児院の子供たちから「悪魔」呼ばわりされていじめられている光景に遭遇しました。ポリーナが少年を助けると、少年はポリーナに飛びつくように抱きついてきました。少年はどうやら孤児院の者ではないらしく、身元も不明で、獣のように暴れ回ることから、手に負えないと判断した修道院側は少年をモスクワの養護施設に送ることにしました。
この子供はどうやら何らかのトラウマがあるだろうとのことでしたが、どうしても少年が気になったポリーナはこの少年を引き取りたいと願い出ました。しかし、イシドラはイゴールに「あの子を連れて行ってはダメだ」と忠告、少年はそのまま警察によって養護施設に送られることとなりましたが、少年は忽然と乗せられたパトカーから姿を消しました。
イゴールと共に帰路についたポリーナはあの少年の姿に気付き、少年を車に乗せて孤児院近くにあるイゴールの祖父所有の別荘に連れて行きました。イゴールはこの少年を養護施設に送り届けるつもりでしたが、ポリーナはどうしてもこの少年を養子に迎え入れたいと言って聞きませんでした。
少年は別荘の飼い猫ティホンを見て威嚇し、イゴールは一抹の不安を抱きました。少年はヴァーニャの大好きだった虎のぬいぐるみに関心を示し、喜んだポリーナは少年を我が子と同じ“ヴァーニャ”と呼びました。イゴールは他の呼び名にするよう注意しましたが、ポリーナは聞き入れませんでした。
ストレイ 悲しみの化身のネタバレあらすじ:承
翌日。イゴールは台所から物音がするのに気づき、様子を見てみると、そこでは少年が冷蔵庫から取り出した生肉を咥えていました。イゴールが肉を取り上げようとすると、少年は唸り声をあげてイゴールの腕に噛みついてきました。それでもポリーナは、なぜかこの少年を気に入った様子でした。
程なくして、別荘にイゴールの知人であるヴィクトル刑事が訪れ、昨日の事件の捜査の進展状況を語りました。死亡した男はパーシャ・クムロフという56歳の男で、元消防士だったパーシャは20年前に妻を亡くしてから仕事を辞め、この孤児院の管理人に転職したということでした。パーシャはこの身元不明の少年を密かに育てていたようですが、少年に関する手掛かりは何も見つかっていませんでした。それでもポリーナの心中を察したヴィクトル刑事はしばらくこの少年をイゴール夫妻に預かってもらえるよう手配することにしました。
イゴールの友人セリョージャ・ワシリー医師(エフゲニー・ツィガノフ)は少年の身体を診察し、見た目は6歳児に見えるものの実際は9歳程度で、栄養失調で発育が遅れて精神面でも未熟だと判断しました。ワシリーは少年を精密検査にかけるべきだと提言しましたが、ポリーナは少年を自分の手で育てるつもりでした。その夜、ポリーナはヴァーニャに呼ばれる夢を見ました。やがてヴァーニャは恐ろしい怪物へと姿を変え、ポリーナが夢から覚めると足元にはいつの間にか少年が眠っていました。
翌朝、少年はすっかりポリーナになついていました。イゴールは姿が見えなくなったティホンを探していましたが、屋敷の隅で無残にも惨殺されたティホンの死骸には気づきませんでした。それでもイゴールは笑顔を取り戻したポリーナを見て喜び、ポリーナと共に少年をモスクワの自宅マンションに連れ帰りました。
翌日、ポリーナが目を離した隙に、少年は黒ずくめの謎の女に連れ去られそうになりました。ポリーナが気付くと女は姿を消し、ポリーナから相談を受けたヴィクトル刑事は自らも孤児院の出身だったことを明かすと、少年の身元調査と養子縁組への協力を約束してくれました。こうしてイゴールとポリーナは少年と養子縁組を組み、失踪した我が子と同じ“ヴァーニャ”と名付けました。しかし、“ヴァーニャ”の姿を見た近隣の住民ペーチャと妻のターニャは驚きを隠せませんでした。
イゴールとポリーナは“ヴァーニャ”に愛情を注いで育てましたが、“ヴァーニャ”の野生児みたいなしぐさは収まりませんでした。そんなある日、イゴールが“ヴァーニャ”を公園に連れて行くと、“ヴャーニャ”を不気味がった子供たちが嫌がらせをしてきました。その時、“ヴァーニャ”はいじめっ子の一人に襲いかかり、相手に15針を縫う怪我を負わせました。イゴールは駆け付けた警察と児童保護局の職員に対応し、怪我をしたいじめっ子の母親に賄賂を渡して警察沙汰にしないよう頼みました。
帰宅した“ヴァーニャ”は浴室で自分の頭を壁に打ち付け、右の額に怪我をしました。イゴールは“ヴァーニャ”の手当てをし、ポリーナは優しく寝かせ付けました。イゴールは“ヴァーニャ”の描いた絵が失踪した実子ヴァーニャの描いた絵と全く同じであることに気付き、実子のヴァーニャの額にも“ヴァーニャ”と同じような傷があったことを思い出しました。ポリーナには“ヴァーニャ”の顔が実子ヴァーニャの顔とそっくりに見えました。
“ヴァーニャ”こそが失踪した我が子ではないかと考えたポリーナは実子ヴァーニャの誕生日を“ヴァーニャ”の誕生日とすることに決め、ちょうど実子ヴァーニャが9歳になる日に誕生日パーティーを開きました。ところが、ケーキのろうそくの火を見た“ヴァーニャ”は突然豹変したかのように暴れ始めました。イゴールはポリーナの考えはありえないとなだめましたが、ポリーナは完全に“ヴァーニャ”こそが実子だと信じて疑いませんでした。
ストレイ 悲しみの化身のネタバレあらすじ:転
悩んだイゴールはワシリーにこのことを相談すると、ワシリーは我が子を失った母親の正常な反応だと判断しました。イゴールは念のために“ヴァーニャ”に精密検査を受けさせることにしましたが、“ヴァーニャ”はMRI機器に入ることを激しく拒み、悲鳴を上げた瞬間に停電が発生しました。
精密検査は中断され、ワシリーから“ヴァーニャ”のことを詳しく調べてみるべきだとアドバイスされたイゴールは再び孤児院に向かいました。イゴールはイシドラからパーシャのことについて話を聞き、パーシャは犯罪を犯したわけでもなく暴力的な性格でもなかったがどこか魂の抜け落ちたようなところがあったと聞かされました。イゴールはパーシャの部屋に忍び込み、20年前に発生した火災に関する新聞記事を発見しました。
イゴールは新聞記事を持ってヴィクトル刑事に詳細を訊いてみたところ、当時消防士だったパーシャは火災現場から一人の少年を助け、孤児院に送ったのですが、その少年は極度に火を恐れるようになり、やがて身元が不明のまま孤児院から姿を消したとのことでした。自身も孤児院出身であるヴィクトル刑事は「孤児院は決して家庭にはならない」とイゴールに協力する姿勢を見せました。帰宅したイゴールは、ポリーナから妊娠したことを告げられて大喜びしました。その様子を物陰から“ヴァーニャ”が見つめていました。
ある日、自宅マンションに帰宅したポリーナは、階段でターニャが怯えて腰を抜かしているところに遭遇しました。階段の上には“ヴァーニャ”の姿がありました。その後、ポリーナは産婦人科でエコー検査を受けた際、“ヴァーニャ”がモニターに目を凝らすと、突然お腹の胎児が暴れ出し、エコー装置が故障しました。それからというもの、“ヴァーニャ”と一緒に買い物に出かけたポリーナは危うく背後から走ってきたカートにぶつかりそうになったり、病院でもらった胎児の写真が破かれていたりと不可解な出来事が起こるようになりました。
ポリーナは“ヴァーニャ”の仕業だと考え、“ヴァーニャ”もこの頃からポリーナに対して凶暴な態度を見せるようになりました。しかし、産婦人科医は「生まれる兄弟にヤキモチを焼くことはよくあることです」と語り、“ヴァーニャ”はすっかりイゴールになつくようになっていました。今ではすっかり“ヴァーニャ”を溺愛するようになったイゴールはポリーナから“ヴァーニャ”は深刻な精神疾患を抱えているのではないかと訴えましたが聞く耳を持とうとはしませんでした。
イゴールは二人の会話を聞いていた“ヴァーニャ”に自分たちにも息子がいたことを話すと、これからは“ヴァーニャ”を息子同様に愛すると言い聞かせました。イゴールから相談を受けたワシリーは、“ヴァーニャ”を養子にするのは時期早々だったと語りました。
イゴールはポリーナと“ヴァーニャ”の仲を取り持とうと公園で記念撮影をしましたが、イゴールが目を離している隙に“ヴァーニャ”はキックスケーターで危うくポリーナにぶつかりそうになりました。イゴールがポリーナをながめているといつの間にか“ヴァーニャ”は姿を消し、必死で探しているといつの間にか“ヴァーニャ”が戻ってきました。イゴールとポリーナは周囲に謎の黒ずくめの女がいたことに気付いていませんでした。
ストレイ 悲しみの化身の結末
そんなある日、イゴールが帰宅すると、そこには“ヴァーニャ”の姿がありませんでした。イゴールはポリーナに訊いてみると、“ヴァーニャ”はヴィクトル刑事に頼んで孤児院に連れて行ってもらったとのことでした。
その頃、ヴィクトル刑事は“ヴァーニャ”を車の後部座席に乗せて孤児院に向かっている途中でした。ヴィクトル刑事は母が歌っていた歌を口ずさんでいると、後部座席には“ヴァーニャ”の姿はなく、代わりに何とヴィクトル刑事の母と同じ顔の女性が乗り込んでいました。驚いたヴィクトル刑事はハンドル操作を誤って事故を起こしました。
事故現場に駆け付けたイゴールは、警官から遺体は1つしかないと告げられました。現場からはヴィクトル刑事の遺体のみが運び出され、イゴールはその際にヴィクトルの車から捜査資料を抜き取りました。そこには写真と検死報告書がありました。車に乗り込んだイゴールは、いつの間にか後部座席に“ヴァーニャ”が乗り込んでいることに気付きました。
イゴールは“ヴァーニャ”を自宅に連れ帰ると、ポリーナは露骨に嫌な顔をし、どうか“ヴァーニャ”と二人きりにしないでと訴えました。しかし、イゴールは全く取り合わず、そのまま外へ出かけていきました。そしてポリーナに“ヴァーニャ”が牙をむきました…。
孤児院を訪れたイゴールは、孤児たちに改めてパーシャの死の真相を尋ねてみました。子供たちはゾンビの存在を信じており、スマホで隠し撮りしていた動画をイゴールに見せました。そこには赤い服をまとった謎の女が奇怪な動きをしていました。イシドラによると、この女性はイシドラの妹でパーシャの妻だったレナであり、イゴールは1997年に自殺したレナの墓へと案内されました。
イシドラはイゴールに“ヴァーニャ”に関する話を語り始めました。イシドラが見せた20年前の新聞記事に写っていた、パーシャが助けた少年は何と“ヴァーニャ”そっくりでした。イシドラは言うには“ヴァーニャ”は全く年を取らず、性別の年齢も魂すらもなく、“ヴァーニャ”の正体である“それ”は失った愛する者の姿に化けて現れる邪悪な存在だということでした。イシドラは“それ”と暮らすことは危険だと忠告しました。
帰宅したイゴールは血まみれで倒れているポリーナと、何事もなかったかのように遊ぶ“ヴァーニャ”の姿を発見しました。病院に搬送されたポリーナはお腹の胎児が死亡しており、彼女自身も危篤状態に陥っていました。ポリーナはイゴールに何かを語りかけようとすると“ヴァーニャ”は姿を消し、ペーチャとターニャの部屋に現れると腕時計が欲しいとねだってきました。
帰宅したイゴールは、かつて実子ヴァーニャに腕時計の付け方を教えているビデオ映像を見ていました。そこに血まみれになった“ヴァーニャ”が現れ、イゴールに腕時計を差し出してきました。それから間もなくして、ペーチャとターニャは惨殺死体となって発見されました。
イゴールはペーチャとターニャの部屋を捜索していた警察官から、ペーチャの車のドライブレコーダーの映像を見せられました。それは3年前、ペーチャ夫妻の車がイゴール夫妻の実子ヴァーニャを撥ねて死なせた様が映し出されていました。ペーチャ夫妻はヴァーニャの死を隠蔽しており、イゴールはペーチャ夫妻に復讐したことを完全否定すると、警察官はペーチャ夫妻はどうやら狂犬病のような犬のようなものに噛み殺されたとのことでした。病院に向かったイゴールは、実子だけではなくポリーナを失いたくないと泣きながら呟きましたが、懸命の治療の甲斐なくポリーナは息を引き取りました。
帰宅したイゴールは“ヴァーニャ”に睡眠薬入りのジュースを飲ませ、イシドラの元へ連れて行くとベッドに縛り付けて部屋に閉じ込めました。“ヴァーニャ”の正体である“それ”は様々な人の姿に変化しながらイゴールの名を呼び続けました。イゴールはイシドラから“それ”とは「愛する人を失った者の前に愛する人の姿で現れる。その人の愛を失うと他の者の前に現れる。人の弱さにつけ入り試練を与える存在だ」と聞かされ、イゴールは果たして自分がその試練に打ち勝ったのか疑問に感じました。
それからしばらく経ったある日、ワシリーは田舎の別荘にイゴールを訪ねました。イゴールはポリーナの死後、全てを捨ててこの別荘に引き籠っており、何か力になれないかと言うワシリーに一人にしてほしいとだけ告げて追い返しました。帰り際、塞がれた窓の隙間から別荘の中を覗き見したワシリーは、イゴールのそばにポリーナそっくりに化けた“それ”がいることを目撃しました。
以上、映画「ストレイ 悲しみの化身」のあらすじと結末でした。
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