愛しのタチアナの紹介:1994年フィンランド映画。4人の男女による独特で奇妙な旅の様子を綴るドラマ&コメディ。仕立屋ヴァルトと自動車修理工レイノは、ある日退屈な田舎が嫌になって衝動的に旅に出た。バスの故障で困っていたエストニア人タチアナとロシア人クラウディアを車に乗せ、ひたすら港を目指して走る。シャイで不器用なフィンランド男達は会話らしい会話も出来ないが、4人は少しずつ心の距離を縮めていった。カウリスマキ作品の看板俳優、マッティ・ペロンパーの遺作ともなった異色のロードムービー。
監督:アキ・カウリスマキ 出演者:カティ・オウティネン(タチアナ)、マッティ・ペロンパー(レイノ)、マト・ヴァルトネン(ヴァルト)、キルシ・テュッキュライネン(クラウディア)、エリナ・サロ(ホテルの受付)ほか
映画「愛しのタチアナ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛しのタチアナ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
愛しのタチアナの予告編 動画
映画「愛しのタチアナ」解説
この解説記事には映画「愛しのタチアナ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛しのタチアナのネタバレあらすじ:あてのない旅
舞台は1960年代のフィンランド。40歳を過ぎて独身の冴えない仕立屋ヴァルトは、未だに頭が上がらない母親と一緒に黙々と仕事をしていました。母がコーヒーを切らしていたため、コーヒー中毒のヴァルトは激怒。母を物置に閉じ込めて金を盗み、コーヒーのために家から飛び出して行きました。
車用のコーヒーメーカーを手にしたヴァルトは、愛車を預けている自動車修理工のレイノを訪ねます。レイノはヴァルトの友人で、いつもウォッカを瓶でラッパ飲みしていました。ロックンローラー気取りのレイノは、革ジャンを羽織って髪にたっぷりポマードをつけ、ヴァルトと一緒に目的の無い旅に出ます。助手席でかつての武勇伝を喋り続けるレイノ。無口なヴァルトは相槌を打つでもなく運転しています。
愛しのタチアナのネタバレあらすじ:奇妙な旅の始まり
レイノとヴァルトは眠気覚ましのためバーに入りました。そんな彼らの様子をうかがう女が2人。エストニア人のタチアナと、ロシア人のクラウディアです。彼女達は故郷に帰るためバスに乗っていましたが、そのバスが故障して困っていました。
クラウディアは、あの間抜けな顔の2人に港まで送らせよう、とタチアナに囁きます。タチアナに港まで送って欲しいと話しかけられたレイノは、緊張した様子でうなずきました。4人の奇妙な旅が始まりました。
寡黙なヴァルトはもちろん、少し前まで喋り続けていたレイノも一切口を開かないので車内は微妙な空気です。女達から話しかけられても、シャイなフィンランド男達は返事すら出来ませんでした。
愛しのタチアナのネタバレあらすじ:沈黙の夜
夜になり、4人は安ホテルで一泊することにします。シングルを2部屋取り、タチアナはレイノと、クラウディアはヴァルトと同室になりました。当然部屋でも会話はありません。クラウディアは、ロシアの男は妻や恋人を洒落たレストランに連れて行くと話します。するとヴァルトは部屋を出てレイノをレストランに誘いました。
男達は4人分の食券を購入しますが、同じテーブルを囲んでも気の利いた話が出来る訳ではありません。ダンスが始まり、2人で踊るタチアナとクラウディア。レイノは「バカな女たちだ」と呟き、ヴァルトも「まずいコーヒーだ」と応じます。戻ってきたクラウディアは、「あなたたちって本当に話し好き」と皮肉を言いました。
レイノはもう寝ると言って、タチアナのカメラを引ったくり部屋に戻ります。タチアナも慌てて後を追いかけました。レストランに残ったヴァルトはクラウディアの方を見ようともしません。レイノはタバコを持ったままベッドの片側で眠りました。タバコを抜き取ったタチアナは何度か吸うと、反対側に寝転がります。
愛しのタチアナのネタバレあらすじ:縮んでいく距離
翌朝からまた無言の旅が始まりました。いつまでもショーウインドウに飾られた工具を見つめるレイノ達に、待たされるタチアナ達は辟易します。クラウディアはバスが動くのを待てば良かったと後悔しました。
少し走った後の休憩中、レイノはタチアナと目が合います。意を決して彼女の隣に腰を下ろしたレイノ。タチアナはぎこちなく彼の肩に頭を乗せます。レイノは更にぎこちなくタチアナの肩を抱きました。最後の夜、タチアナとクラウディアはお礼だと言ってサンドウィッチと紅茶を奢りました。
翌日2人はエストニア行きの船に乗り込みます。タチアナ達を見送るレイノ達は居ても立ってもいられなくなり、なけなしの金を叩いて同じ船に乗りました。恥ずかしそうに船内で合流したレイノは、物凄くぎこちない動きでタチアナのタバコに火をつけます。船上で距離を縮めるタチアナとレイノ。一方のヴァルトは1人で過ごし、クラウディアは離れたところから彼を見守っています。
愛しのタチアナの結末:1人の帰路
4人はタリン駅へ到着し、クラウディアはロシアに帰る列車に乗りました。その直前、彼女はヴァルトにキスとプレゼントを贈ります。去っていくクラウディアを見送ったヴァルト達は、次に車でタチアナの自宅へ向かいました。別れを迎えたレイノは突然「俺は彼女と ここに残る」と言い出します。タチアナにキスをして「作家になる」と告げ、彼女の家に消えていきました。ヴァルトは呆然とその場に1人残されます。
1人きりの帰路、ヴァルトがクラウディアからのプレゼントを開けてみるとコーヒーミルが入っていました。ヴァルトは4人で破天荒な旅を続ける妄想をしながら、淡々と自宅を目指します。
夜になって帰宅したヴァルト。物置から母親を出してやり、ミシンの前に座ります。ヴァルトが黙々とミシンを動かし始め、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「愛しのタチアナ」のあらすじと結末でした。
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