男と女 人生最良の日々の紹介:2019年フランス映画。大恋愛のすえ結ばれる男と女。また反対に、否応のない理由によって別れを経験するその人たち。どんな出会いと別れを大恋愛と呼ぶかは人それぞれです。しかしここに、大恋愛のひとつの典型がありました。1966年、世の恋する男女から絶大なる賛同を得たあのふたり、あのメロディー。53年の月日が共に帰ってきます。映画『男と女(1966年)』の最終章「人生最良の日々」。
監督:クロード・ルルーシュ 出演者:アヌーク・エーメ(アンヌ)、ジャン=ルイ・トランティニャン(ジャン=ルイ)、アントワーヌ・シレ(アントワーヌ)、スアド・アミドゥ(フランソワーズ)、マリアンヌ・ドニクール(ジャン=ルイの担当医)ほか
映画「男と女 人生最良の日々」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「男と女 人生最良の日々」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
男と女 人生最良の日々の予告編 動画
映画「男と女 人生最良の日々」解説
この解説記事には映画「男と女 人生最良の日々」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
男と女 人生最良の日々のネタバレあらすじ:起
かつては人気カーレーサーだったジャン=ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)。いまは老人の施設で余生を送っています。
しわがれた声に無精ひげ、髪もまばらになった彼に、在りし日の面影は見られません。記憶はまだらになり、失ったり戻ったりを繰り返しています。彼は自称、自由を奪われた囚人。施設になじめず、駄々っ子のように、施設からの逃亡を夢見ています。
長男のアントワーヌ(アントワーヌ・シレ)は、子どもの存在すら忘れがちな父親に、せめても実態のある時間を過ごしてもらいたいと考えていました。そこで彼はある考えを担当医(マリアンヌ・ドニクール)に打ち明けます。ジャン=ルイの日常をよく知る医師は、もちろん賛成です。わが意を得た彼は、さっそく計画を実行に移すことに決めたのです。
ジャン=ルイは、現役のカーレーサーだった頃から女性にもて、女性とのゴシップが絶えない男でした。けれども、いま多くの女性たちは彼の記憶から消え、たったひとりのみその輪郭線を強めています。遠い日、なすすべもなく別れたアンヌ(アヌーク・エーメ)です。
アンヌこそ、父親の老いに歯止めをかける人だとアントワーヌは考えます。彼はアンヌ探しに奔走します。やがて彼は、施設からも車で足を延ばせる地、ノルマンディーでアンヌと娘フランソワーズ(スアド・アミドゥ)が生活を共にしていることを突きとめます。
男と女 人生最良の日々のネタバレあらすじ:承
突然現れ、自己紹介をするアントワーヌに、アンヌは戸惑います。彼の父親は、自ら背を向け、立ち去って行ったのです。何をいまさらと、その気が知れません。しかし、アントワーヌは訊ねます。父はいま、あなただけの思い出にすがって生きている、「もう許したら?」と。アンヌは「許す」の一言でためらいを解き、ジャン=ルイに会うことに同意したのです。
年齢が80を越えたいまもアンヌは30代の頃の美しさを携えています。老いを生きるいま、さらに落ち着きと気品とが備わっています。
ジャン=ルイは、目の前に現れた老女がアンヌその人だとは気づきません。アンヌもそ知らぬ風を装って、ジャン=ルイに正体を明かしません。しかしジャン=ルイは感じ取っています。老女がどこかしら、最愛の人に似た面影を宿していると。
会話がなごむにつれ、ジャン=ルイは老女に心を開き、心の内側に棲むアンヌを老女に紹介します。若い時代の自分がその女性をどれほど愛したか、アンヌ自身がかつて知り得なかった心のうめきまで彼は口にします。
彼はまた、胸元から札入れを取り出し、手札サイズの写真を引き抜きます。そして指さし、これがその人、これが俺だと紹介します。50年間、肌身離さず持ち歩いているのだと、彼は真顔で口にして、彼女に「見るよう」差し出すのでした。
アンヌは、ジャン=ルイがあの頃、1度も口にしたことのない本心をさらけ出していることに驚きます。また、想像以上に、ジャン=ルイが愛してくれていたことを知り、若い時代にも似た熱い想いで胸を打ち震わすのでした。
ジャン=ルイは、まだまだ語り尽くしていないと身を乗り出しますが、アンヌの帰宅時間は迫っていました。彼は老女に再会を願い出ます。アンヌは、また来る、とだけ言い残して帰路につきました。この日の面会はアンヌの生涯を覆す大きな衝撃になりました。
男と女 人生最良の日々のネタバレあらすじ:転
アンヌはふたたびジャン=ルイのいる施設へ現われます。アンヌはジャン=ルイを、車で外へ連れ出しますが、彼女の助手席に座るのは元カーレーサーです。「もっと速度を上げて」とせき立てます。しかしアンヌは「時間がゆっくり過ぎるように」と動じません。その当意即妙が、ジャン=ルイには嬉しくてたまりません。
アンヌが選んだ先はドーヴィルです。ふたりの思い出の地。そして最初に出会った場所。しかしジャン=ルイはドーヴィルを覚えていません。そればかりか、うららかな陽ざしに誘われて、道中眠りこけてしまいます。夢うつつに入った彼にそのあとの記憶はありません。次にまたアンヌが訪れ、声をかけてくるまでは。
夢から醒めた瞬間、彼は正気になっていました。アンヌを見て「あなたは誰なんだ?」と、まっすぐに彼女を見返します。アンヌもその強い問いに「アンヌ・・・」とだけ応じます。再会です。ふたりは遠い日々の追認と説明に時間をかけますが、もちろん取り戻しようのない歳月です。
そして遠出の日。ふたたびドーヴィルへ。初めての逢瀬の場。当時のホテルはいまも健在です。ジャン=ルイは記憶を濁らせていますが、アンヌはひとり、過ぎ去った日の特別な時間に浸ります。さらに車は海岸へ。するとジャン=ルイは突然、我に返り、アンヌに許しを請います。彼は、もう離れ離れになりたくないとアンヌに訴えます。
アンヌはジャン=ルイを浜辺へ連れ出し、ツーショットの写真をスマホにおさめます。アンヌの前では甘え、幼子のように振る舞うジャン=ルイ。不平も喜びも開け広げな彼を見守るアンヌ。胸の内には、彼の老いを慈しむ、甘やかな愛情が芽生えはじめているのでした。
男と女 人生最良の日々の結末
ドーヴィルは、ジャン=ルイの子アントワーヌとアンヌの娘フランソワーズが、寄宿舎で小学生時代を共にした場所でした。ふたりの間にも、親たちとは異なった50年が過ぎ去ったのです。
アントワーヌもフランソワーズも2度結婚し、ともに離婚しています。親たちの再会と行き交いを見守るふたりにも、自然なかたちの親愛が結ばれつつありました。そろそろ60歳に近づくふたりの年齢です。残りの人生を寄り添って生きることも視野に入ってきます。
ジャン=ルイは、とうとうアンヌの自宅まで招かれるようになりました。アンヌの話を聞き、アンヌを見つめるジャン=ルイの目は生き生きとしています。記憶のほうも次々と確かなものになっていますが、施設へ戻るとまた元のように霞がかった頭で逃亡を企てています。
しかしアンヌを迎える日だけは異なります。アンヌが押す車椅子から身を乗り出し、アンヌと息を合わせ、声をかけ合いながら、かつてカーレースに身を投じた日のように、「前へ、前へ!」進んで行くのでした。
(完)
以上、映画「男と女 人生最良の日々」のあらすじと結末でした。
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