ボーン・アイデンティティーの紹介:2002年アメリカ映画。ロバート ラドラムの小説である暗殺者を映画化した作品。海を漂流し、漁船に救助された男は記憶を失っていた。男は、自分に関わる怪しげな手掛かりと、かすかな記憶を辿りながら自分を探し始める。しかしそれは、血生臭い陰謀へと繋がっていた。ヨーロッパ中を舞台にした大型サスペンスアクション映画、ボーンシリーズの第1弾。
監督:ダグ・リーマン 出演者:ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)、マリー・クルーツ(フランカ・ポテンテ)、アレクサンダー・コンクリン(クリス・クーパー)、ニコレット“ニッキー”・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)、ウォード・アボット(ブライアン・コックス)、ダニー・ゾーン(ガブリエル・マン)、ニクワナ・ウォンボシ(アドウェール・アキノエ・アグバエ)ほか
映画「ボーン・アイデンティティー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボーン・アイデンティティー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ボーン・アイデンティティーの予告編 動画
映画「ボーン・アイデンティティー」解説
この解説記事には映画「ボーン・アイデンティティー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ボーンアイデンティティーのネタバレあらすじ:起
地中海で操業を続けていた漁船は、海を漂っていた男を引き上げます。船医は男を診療しますが、男の体には銃創が残されており、臀部にはスイスの銀行口座を刻んだ特殊なカプセルが埋め込まれていました。
CIA本部では、任務失敗の報告が飛び交っていました。その任務は、どこか船の上で行われたようでした。引き上げられた男は回復しましたが、記憶を失っていました。男は数ヶ国語を喋ることができ、船に関して技術的知識を持っていました。漁船は港に着き、男は船医から旅費を貰ってスイスへと向かいます。スイスに着き、彼は野宿をしている所を警察に咎められ、逮捕されそうになりますが、あっさりと警官を倒してしまいました。
元独裁者ウォンボシは、命を狙われたとテレビで激白しています。そのウォンボシはCIAにとって障害となる存在であり、トレッドストーン計画により暗殺作戦が決行されたはずでした。しかし、実行者は行方不明となり、更なる問題になっていました。
男は銀行に着き、案内されるがままに貸金庫の中身を確認します。中身は時計等とジェイソン・ボーン名義のパスポートが入っていました。しかしそれだけではなく、数カ国の紙幣と偽造パスポート、そして銃も預けられていました。その男ジェイソン・ボーンは、金とパスポートを持って銀行を後にします。その事を、一人の行員がどこかに知らせていました。
警察と揉めた事もあり、ボーンは大使館に入ります。女性が窓口で揉めているのを見たボーンは、大使館を出ようとしますが、警備員が不審に思い、それを止めます。警備員が実力行使に出ようとしたので、ボーンは咄嗟に警備を倒して銃を奪います。無線も奪い、銃は捨て、ボーンは大使館の中を逃げ回ります。
壁に張ってあった案内図を見て逃走経路を算出する手際など、ボーンの行動は素人離れしていました。ボーンは警備を出し抜いて何とか大使館脱出に成功しました。ボーンは路地裏で、先程窓口で揉めていた女性を見つけます。ボーンはその女性マリーに、パリまで車に乗せて貰うよう交渉します。マリーは大金を提示された事もあり、引き受けました。
銀行から、ボーンが姿を現したという報告を受け、CIAではボーンの捜索、処分命令が下り、ヨーロッパ各国の暗殺要員に指令が行き渡ります。
ボーンアイデンティティーのネタバレあらすじ:承
パリへの道中、マリーはボーンが何も喋らない事に疑問を口にします。ボーンは自分が記憶喪失だと告白します。二人は途中のレストランで休憩しますが、ボーンは自分の挙動が普通ではない事に戸惑います。人、車、全てに警戒をするよう習慣付いていたのです。そうこうしながらも二人はパリに到着し、パスポートに記載されていたボーンのアパートに入ります。
管理人は彼をボーンと認識していましたが、ボーンには自分の部屋だという実感ありませんでした。ボーンは電話のリダイヤルボタンを押して、自分が最後に連絡を取った場所を確認します。そこはホテルで、偽造パスポートの一冊と同じ名前、ケインが宿泊していました。しかし、ケインは死亡したと聞かされます。そしてその人物の荷物は弟を名乗る人物が引き取っていました。
ボーンの警戒感が高まる中、窓を破って侵入者が襲ってきました。ボーンは格闘した末に侵入者を戦闘不能にします。マリーは侵入者の持ち物を調べ、自分達の手配書を見つけます。問い詰めようとすると侵入者は窓から飛び降り、自ら死を選びます。
呆然とするマリーを連れ、ボーンは急いでアパートを離れました。処分が失敗した事を、パリ支局のニッキーは本部に報告しました。ボーンはマリーに警察に保護を求めろと言います。手配書から政府の関与も感じ取り、マリーが安全な所が無いと言い張る中、車を警察が取り囲み始めます。ボーンが最後のチャンスだと言うと、マリーはシートベルトを着けました。ボーンは車を急発進させ、パリの街でカーチェイスを演じ、警察を振り切りました。
ボーンアイデンティティーのネタバレあらすじ:転
死体安置所にウォンボシがやって来て、ケインの遺体を確認します。しかし彼は、それがケインではないと八つ当たりをします。ニッキーがその事を本部に報告すると、暗殺要員に新たな指令が伝わります。その指令に従い、ウォンボシは狙撃され暗殺されました。
ボーンはマリーに変装させ、ケインの泊まっていたホテルに向かわせます。彼はマリーに念密な計画を指示しましたが、彼女は色仕掛けとケインの秘書だと言う嘘で、あっさりと受付からケインの情報を手に入れてきました。
ウォンボシ暗殺の報告が、CIAの高官アボットの耳に入ります。ボーンを監督していたコンクリンは、それをボーンの仕業だと嘘を吐きます。
パリでは、乗り捨てたマリーの車を警察が発見したという無線をニッキーが傍受、報告します。すると、ウォンボシを暗殺した要員に新たな指令が下りました。ボーンは、ホテルで得た情報を元にケインが関わった会社を調べ、そこを尋ねます。その会社の警備船舶部門をケインは訪れており、その担当者はボーンをケインと呼び、その時した商談を再びしてくれます。それは、あるクルーザーに警備装置を取り付ける話でした。その船は、CIAが工作に失敗した同型の船でした。
会社を出て、ボーンは自分がケインでもあった事をマリーに告げます。マリーはケインが生きているなら、死んだケインは誰なのか?という疑問を口にします。二人は死体安置所に向かいますが、ケインの死体はありませんでした。ボーンは、死体を、弟を名乗る人物が引き取った事を聞き出し、訪問者記録簿の1ページを奪っていきます。そこに記入されていたウォンボシの名前を見つけ、警備を調べたのは、ウォンボシの持つ船と同型だったのを思い出します。二人はウォンボシが暗殺された事を知り、ネットで少し前に彼が船で襲われていた事を知ります。
その後、タクシーで宿に帰ると、警察が集まっていたのを見て慌てて徒歩で逃げます。ボーンはパトカーから自分達の手配書を見付け、マリーに見せます。マリーは恐くなって一人逃げようとしますが、ボーンは引き留め、二人で逃げ切る事を約束しました。
CIAではパリ市警の空振りでボーンを見失っていました。コンクリンはアボットにボーンが離脱した事を白状し、マリーの足取りから隠れ場所を探し始めました。
ボーンアイデンティティーの結末
ボーン達は、マリーが昔付き合っていた男の別荘に来ていました。しかし、この時期は使用されてないはずの別荘にクリスマスの飾りつけが行われていて二人は慌てます。そこに家主が子供達を連れて帰って来たので、マリーは今夜だけ泊めてくれと頼み込み、嫌がられながらも了解を受けます。
その頃CIAは、その別荘を特定し、暗殺要員を差し向けていました。翌朝、家主の犬が居ないと言う事を知り、ボーンはマリーと家主一家に地下室へ隠れるよう指示します。ボーンは別荘に備えてあったショットガンを携え、まず自分達が乗ってきた車を爆破しました。煙が立ち昇り、狙撃の準備を整えていた暗殺者は視界を失い、ボーンの接近に備えます。しかしボーンの方が一枚上手で彼は銃弾を受けてしまいます。瀕死の暗殺者にボーンは仲間が居るかを聞きます。すると彼は、ボーンをトレッドストーンの仲間だと言い、パリで一緒だったと残して事切れます。
ボーンは一旦別荘に戻ります。マリーを家主と一緒に行かせ、暗殺者の持ち物から携帯電話を取り、着信記録から最後の番号に電話しました。電話はCIA本部に繋がり、出頭を促されます。ボーンはマリーを殺したと嘘を吐き、コンクリンに、パリへ一人で来いと呼び出しました。
CIAはパリでボーンを捕らえる網を張ります。それを監視するボーンは、待ち合わせ場所に一人で来なかったという事で約束を反故にして消えます。コンクリンは仕方なくパリ支局に戻りますが、その車には、暗殺者の持ち物だった発信機がボーンによって付けられていました。コンクリンはパリ支局の閉鎖を指示します。
その頃、新たな暗殺要員がパリにやってきていました。パリ支局の場所を確認したボーンは、そこへ忍び込みます。支局内で閉鎖を進めるニッキーの目の前で、警報が鳴り電源が突然落ちます。コンクリンも警戒しますが、ボーンが現れ、銃を捨てろと言う指示を受けます。銃を突き付けるボーンは、自分の事、トレッドストーンの事を聞きだします。
コンクリンは、ボーンがCIAの特殊工作員でウォンボシの暗殺指令を命じた事を告げます。話すうちにボーンは標的の子供が近くに居た事で任務に失敗した事を思い出します。それを聞いたボーンは、もう抜けると言い、自分は死んだと報告しろ強要します。
その時、コンクリンの無線スイッチが入っている事に気付きました。外の護衛が待ち伏せている事がわかったボーンは、その護衛を全て排除しパリ支局を抜け出します。外には暗殺者が居ました。ですがボーンを見逃します。ボーンを追ってコンクリンが出てくると、暗殺者は彼を殺して任務を果たし、アボットにその報告が届きます。そしてボーンは消えました。
事は終わり、アボットはトレッドストーン計画の終了を委員会に報告、新たにブラックブライヤー計画の認可を求めます。
ある国の沿岸、マリーはそこでスクーターのレンタル業を営んでいました。そこに一人の若者が来てスクーターの貸し出しを求めます。マリーはその若者、ボーンにIDの提示を求めますが、無いと返答を受けます。マリーは抱き着き、二人は平穏に辿り着いたのでした。
以上、映画「ボーン・アイデンティティー」のあらすじと結末でした。
ボーンシリーズのネタバレあらすじ一覧
ボーン・アイデンティティーのネタバレあらすじ
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ボーン・アルティメイタムのネタバレあらすじ
ボーン・レガシーのネタバレあらすじ
ジェイソン・ボーンのネタバレあらすじ
嵐の海で救助された男の背中には、銃弾の痕が。
その男は、記憶が全くなく、皮膚の下に埋め込まれたマイクロチップに、スイスの銀行口座が記されていた。
そこで彼は、ジェイソン・ボーンという自分の名前を知り、数種のパスポート、多額の現金を発見する。
そして、驚く間もなく、何者かに命を狙われるのだ。
その後、マリーという女性を道連れに、逃避行を続けながら、自分の過去を探る事になるのだが——–。
「バイオハザード」や「ロング・キス・グッドナイト」などは皆、特殊な能力を持った人物が、記憶を無くすという設定の物語だった。
これらの作品が、”主人公は何者か?”を一番の謎とするのに対して、この「ボーン・アイデンティティー」では、主人公のジェイソン・ボーンが、実はCIAのエージェントだという事を我々観る者は、最初から知っている。
なぜ追われているのか、執拗に命を狙われる理由さえも、物語の途中で察しがついてしまうのだが、記憶は無くしても、身体が覚えている語学力や戦闘能力を駆使して、活躍する様が実に痛快だ。
それまで、繊細で知的な役柄が多かったマット・デイモンが、逞しく生まれ変わり、非常に魅力的だ。
無駄のない動きで相手を倒し、切れ味のいいアクションを披露する。
とはいえ、知性派の名に恥じず、ただ銃をぶっ放すだけではなく、様々な小道具を使って、追っ手を振り切るのだ。
無線を奪って、情報を収集し、ビルの内部の地図を見ながら、逃走経路を練り、電話のリダイヤルで敵の正体を探るのだ。
銃を使うのを本能的に避けるこの作戦は、単に頭脳戦というだけではなく、主人公の性格付けにも通じている。
記憶を無くした上、命を狙われる。
その不安は想像して余りあるが、マット・デイモンのどこか頼りなげなルックスが、この役柄にぴったりマッチすると思う。
あの幼い顔で、バッタバッタと敵を投げ倒し、激しいカーチェイスやビルの絶壁からダイブまでも披露してくれるから、サービス満点だ。
パリの街の複雑な路地や石畳で繰り広げられるカーチェイスの主役は、小回りが効く、真っ赤なミニ・クーパー。
実際のスピードを考えると、逃げ切れるかは疑問なのだが、この車は劇中のマスコットのような存在だ。
ヒロインを演じるのは、「ラン・ローラ・ラン」で鮮烈な印象を残したドイツ人の女優フランカ・ポテンテ。
彼女が演じるマリーもまた、欧州を放浪しながら、自分自身を探している人間なのだ。
この女優は、中性的な雰囲気でとても好演なのだが、惜しむらくは、マリー自身の役の設定に、もうひとひねり欲しかったような気がします。
いくらなんでも、素人すぎるので、足手まといの感は否めない。
だから、最後まで行動を共にできず、途中でボーンと離れなければならないのだ。
しかし、逃避行の合間に見せる、二人の短いラブシーンは、とても秀逸で、ボーンが彼女を変装させる為に、バスルームでマリーの髪を切る場面は、非常に印象深いものがある。
そして、主人公は次第に、自分が恐ろしい陰謀に加担していたことを知る事になる。
かつては、非情な任務をこなし、優秀なエージェントだった彼が、追われる事になる原因は、その根本に潜む彼の性格にあるのだ。
自分自身を認識し、その可能性を知るのは、人間の普遍的な願いだ。
主人公ボーンは、記憶を失った事で、半ば強引に、”自分探しの旅”をする羽目になるが、その中で彼が持つ、本来の人間らしさが、ボーンを生まれ変わらせようとするのだ。
かつての自分を知ってなお、変わろうとするひたむきさ。
ここに、この映画が従来のアクション映画と一線を画す魅力があるのだと思う。