チャイナ・シンドロームの紹介:1979年アメリカ映画。原発事故を扱ったサスペンス・ドラマの秀作。日本で「シンドローム」という言葉が一般化するきっかけとなった。アカデミー賞では、主演男優賞、主演女優賞、美術賞、脚本賞などにノミネート。カメラマン役のマイケル・ダグラスが製作も担当している。
監督:ジェームズ・ブリッジス 出演:ジェーン・フォンダ(キンバリー・ウェルズ)、ジャック・レモン(ジャック・ゴデル)、マイケル・ダグラス(リチャード・アダムス)、ダニエル・ヴァルデス(ヘクター・サラス)、ジム・ハンプトン(ビル・ギブソン)、ほか
映画「チャイナ・シンドローム」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「チャイナ・シンドローム」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「チャイナ・シンドローム」解説
この解説記事には映画「チャイナ・シンドローム」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
チャイナ・シンドロームのネタバレあらすじ:起
ハイウェイを走る車。中には地方局の女性TVレポーターのキンバリーとフリーのビデオカメラマンであるリチャードが乗っています。着いた先は原子力発電所。ここでエネルギー問題の取材をするのです。ところが取材中に原子炉でシャットダウンが発生。所員たちは大惨事につながりかねない非常事態の対応に大わらわとなります。TV撮影班は所員から撮影禁止を告げられますが、リチャードはこっそりその様子をフィルムに収めます。
チャイナ・シンドロームのネタバレあらすじ:承
キンバリーとリチャードがそのフィルムを専門家に見せると、事の重大さがハッキリします。フィルムが示す原子炉の計器は水量が減って炉心がむき出しになりかねない状態で、あわやメルトダウン寸前だったのです。放っておけば核燃料は地球の裏側まで達し、広範囲が放射能汚染に見舞われることになります。幸い、技師のジャック・ゴデルの対応で大惨事を免れましたが、原子力発電所の危険対策を考え直す必要がある事例でした。
チャイナ・シンドロームのネタバレあらすじ:転
しかし、発電所はこの事故を発表しません。キンバリー側もプロデューサーの判断で放送を取りやめることに。発電所の対応に疑問を覚えるゴデル。その彼にキンバリーが接触。2人は原子力発電所の是非について話し合います。ゴデルは職業柄、発電所の必要性を訴えますが、安全対策に手落ちがないか調べる気持ちになり、資料を渉猟。ゴデルは驚愕します。検査費用を削減するため、不正が行われていた事実が判明したのです。上層部に掛け合いますが、聞く耳を持ちません。
チャイナ・シンドロームの結末
このままではいずれ大事故が起こると考えたゴデルは、マスコミに真相を暴露し、その不正を告発しようとします。しかし、資料を手渡した人間が不可解な事故にあい死亡。ゴデルも命を狙われます。もはや最終手段を取るしかないと考えた彼は発電所のコントロール室に籠城。そこを取材させて真相を世間に知らせようとしますが、結局は射殺されます。しかし、キンバリーたちがショックを受けた所員たちに取材。ついにニュースでその真相を発表するのです。
チャイナ・シンドロームとは、原子力発電所で起こり得ると考えられる事故の最悪のものを言い、原子炉内部の高熱を事故でコントロール出来なくなり、発電所そのものがドロドロに溶解し、巨大なマグマの塊となって、それ自体の重量でどんどん地中に沈んでいき、地球を貫き、遂にはアメリカの反対側の中国に突き抜けてしまうだろうというところから来ているんですね。
この映画「チャイナ・シンドローム」の公開の前年には、我が日本でも黒木和雄監督の「原子力戦争」でも、ある原子力発電所で、それに至る可能性を含んだ事故が起こったことを、告発しようとした技術者が消されるというシチュエーションを扱っていましたが、このアメリカ映画もまた似たような着眼で作られていますね。
これは、偶然の一致というよりも、原子力発電の安全性に危惧を抱く者は誰でもそのことを考えるのだと思います。
ただ、日本では、それを余り評判にならないATG映画の低予算の小品でしか作れなかったが、アメリカでは、さすがに堂々たるメジャーのエンターテインメント作品として作り上げることに成功していると思います。
そこに、映画人の発想のスケールの違い、ひいては、民主主義の成熟度の違いがあり、また、それを支える原子力発電反対の層の厚さの違いもあるのだと思う。
もっとも、この映画がアメリカで大きな話題になり、興行的にも成功した要因として、封切り三週間後の1979年3月28日、ペンシルヴェニア州スリーマイル島の原子力発電所の二号機が事故を起こし、地域の住民が被曝するという、原発事故としては最大級の事件となり、大統領が自ら対策の指揮に当たるという事態になったからなんですね。
最悪の場合、穴が中国に届くというのはオーバーであるにしても、アメリカ国土の相当の部分が死の灰に覆われる可能性があったと言われ、人々は改めてこの映画に注目したのだと思います。
主演のジェーン・フォンダは、当時から反体制運動の活動家として有名ですが、この映画でも彼女自身がそうであるような役を演じていますね。
ロサンゼルスのテレビ局のニュース・キャスターのキンバリー・ウエルズ(ジェーン・フォンダ)は、ある日、カメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)と録音係を伴って、原子力発電所の取材に出かけたところ、突然、所内に振動が起こり、制御室が大騒ぎとなった。
放射能漏れがわかり、原子炉の運転が停止される。
キンバリーは、この騒ぎをフィルムに収めるが、局の上司に押さえられ放送されなかった。
不満なリチャードは、フィルムを密かに隠し持って物理学者に見せたところ、もう少しでチャイナ・シンドロームになるところだったと聞かされる。
一方、原子力発電所の技師ジャック・ゴーデル(ジャック・レモン)は、原子炉の運転が再開されたものの、なお不安を隠し切れず、調べたところ、事故の原因が建設当時、パイプ結合部を担当した業者の手抜きにあることを突き止め、真相を隠そうとする上役に反対して制御室を占拠し、言うことを聞かなければ、核物質を漏らすと脅し、キンバリーたちテレビの取材班に真相を発表する。
発電所側は、ジャックを騙して射殺し、真相を闇に葬ろうとするが、キンバリーたちは勇気を持ってそれを発表するのだった。
この映画は、こうした時代の核心を鋭く突いた、社会派映画の秀作だと思います。