クリエイティブ・ブレインの紹介:2019年アメリカ映画。人間の創造性が人類全体や個人にもたらすものについて、脳神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンが様々な方面で活躍するクリエイティブな人たちを取材し、考察を深める最新のドキュメンタリー。
監督:デイヴィッド・イーグルマン 出演:デイヴィッド・イーグルマン、D.B.ワイス、クリス・ロジャース、ティム・ロビンス、グライムス、ほか
映画「クリエイティブ・ブレイン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「クリエイティブ・ブレイン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「クリエイティブ・ブレイン」解説
この解説記事には映画「クリエイティブ・ブレイン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
クリエイティブ・ブレインのネタバレあらすじ:起
これまで20年間、脳神経科学を研究してきたデイヴィッド・イーグルマンが、人間の創造性とはどこから来るのかを探求にでかけよう、と視聴者を誘う。クリエイティビティは人間の生活を豊かにし、よりよく生きるための解決になる、と。
冒頭、数人の「創造性豊かな人々」が、創造性とは「要求だ」「己を捧げることだ」「それ、変、と言われることが目標」などと口々に語る。森に行くと、そこの動物たちは恐らく100万年前も同じことをしていた。しかし人間世界は激変した。変化の根本にあるのは人間の創造性だ。穴の中に住んでいた人間が今では宇宙に出かけるようになっている。芸術だけが創造性ではない。サイエンスも創造性によって発達する。
ナノテクノロジストのミシェル・カーンの発明は、子どもの頃に遊んだ「プラ板」にヒントを得ている。そこに到達するまでには「絶望と必死さ」があった。人間に創造性をもたらす脳の構造を見てみると、インプットとアウトプットに関わる部分が離れていることにポイントがある。例えばネズミならこの2つのエリアが非常に近いので、食べ物を見れば食べるという直接行動になる。しかし人間は、食べ物を見ても直接行動にはならず、例えばニンジンやダイコンに彫刻をしたり、トマト投げをしたり、とアートや武器として使うことを考えることもある。
イーグルマンによれば、額の裏側にある前頭全皮質が想像力の源泉だという。ビヨーケ・インゲルスは今世代一の幻視的建築家だ。これまでの経験の中に、ツールとなるアイデアが潜んでいる、と言う。今ある建築物は、誰かが想像して、それに基づいて作ったものだ。私たちはまだ存在しないものを想像する力がある。想像力は誰でもが持っている。
クリエイティブ・ブレインのネタバレあらすじ:承
誰もが創造的になれるとしたら、その時、脳には何が起こっているのか。まずビル・ゲイツが最も頭のいい人間と呼ぶ発明家のネイサン・ミラヴォルドに聞いてみる。創造性とはアイデアを別の物に応用すること、そしてクリエイターがアイデアを得られる環境づくりが大事だ、とミラヴォルドは言う。インプットされた情報が多ければ多いほど、それを脳が処理する量が多くなる、そしてインプット同士が衝突することで創造性が生まれる、とイーグルマンは言う。
脳は取り入れた情報を曲げて新しいものを作り出す。二つのアイデアがぶつかって相乗効果を生む。創造とは無から何かを作り出すのではなく、既にあるものを創りなおすことだ、とイーグルマンは言う。映画界の空想上の怪物を作り出すクリエーター、フィル・ティペットのアトリエには拾ったもの、子どもの工作、珍しいものなどが並ぶ。また、写真を適当に貼り付けたスクラップしたスクラップブックが数冊。めくっていると感情が見えてくるという。
イーグルマンは、このスクラップブックはティペットの脳の映像版だと解釈する。グラミー賞ミュージシャンのロバート・グラスパーはジャズにヒップホップを加えて非難された。しかしグラスパーは、ジャズは元々あったクラッシック、ブルース、ゴスペルが混ざり合って自然発火したものと言う。
また、彼はピアノ以外の経験すべてがピアノに影響している、と言う。現代の最も創造的なピューリツァー賞小説家、マイケル・シェイボンも、既存のものに関わることで独創性が生まれる、と話す。イーグルマンは、独創とは世界に目を開くことだ、と言い換える。
クリエイティブ・ブレインのネタバレあらすじ:転
創造性には人生を作り変える力もある。湾岸戦争で心を病んで帰ってきた兵士エーレン・トゥールは陶芸に出会って陶芸家となった。戦争、死、喪失をテーマにカップを作り続ける。創造性の治癒力は、刑務所でも見いだされた。数人の受刑者が顔を隠さず自分のした罪を語る。文筆家のザッカリー・ラザーが受刑者たちに創作文を書く指導をしている。ラザーは子どもの頃父親を殺されている。復讐では父親は戻らないと気づき、殺人が起こる原因について考え始めた。受刑者が再び刑務所に戻らないようにするには、彼らの創造力を使うことだとラザーは言う。
受刑者たちは書くことで自分が見えてくる、と語る。読んだり書いたりすることで自分自身を認められる、と。ギターで曲を作って歌う受刑者。映画「ショーシャンクの空に」で囚人を演じたティム・ロビンスは、現在囚人との芝居工房を主催している。彼は囚人の可能性、創造力はものすごい、と言う。罪を犯したから社会貢献ができない、というのは違う。彼らにはこれまでの体験があるからこそ、彼らにしかできない社会貢献ができる、とロビンス。
創作的プログラムに参加した囚人の80%は再犯しない。創造性が生活向上に役立つとしたら、どう使えば良いのか、と言うのが次の課題だ。創造的になるということは脳の基本的なシステムと戦うこと、とイーグルマンは言う。脳は過去と同じ回路を使おうとするが、その回路から逸れたときに創造性が生まれる。
例えば転職。世界的名声を得た歌手クリス・ロジャースは、シェフとしての活動も始めた。歌手としてはすでに有名だったが、料理学校で目標に向かって努力している仲間を見ると、初心にかえってクリエイティブになれる、という。転職は難しくても新しいスキルを学ぶ、などすると良い、とイーグルマンは提案する。新しいことを学ぶとうまくいかなくて苛立ったりもする。しかし、そこでクリエイティブになるためには間違うことを恐れないことだ、と前述のネイサンは言う。
クリエイティブであるためのもう一つの方法は、新奇なものを求める脳の性質を利用して、限界を広げること、とイーグルマン。ミュージシャンでアーティストのグライムは、見慣れたものと奇怪なものとの間を行き来する音楽、そして映像を作っている。限界を広げることはリスキーだが、見返りも大きい。
クリエイティブ・ブレインの結末
何かを創造することは苦しみがある。それはリスクを伴うから。有名なTVプロデューサー、DB・ワイスに、イーグルマンは、「創造にとっても失敗の役割」について訊ねる。彼は「自分の人生は失敗の連続だったが、この才能は失敗によって作られた」と言い切る。
創造性を高める教育がバーモント州の小学校で行われている。芸術に焦点を置いて、子どもたちの創造性を高めようというのだ。この学校は貧困地域にあり、かつて全州で最もテストの点数が低い学校だった。今では算数のクラスも、抽象画を媒体に幾何を学ぶ。全教科の中心が芸術だ。校長は、4年生の時の点数など大人になったら忘れるが、芸術を通して世界の見方を教えてもらったことは一生忘れない、と話す。
この学校のテストスコアは全教科で上がり、算数に関しては2倍になった。創造性は誰にでもあり、自由自在に使える最強の変革装置だ、創造性を育てることが、人間であることを活かすことができる、とイーグルマンは締め括る。
以上、映画「クリエイティブ・ブレイン」のあらすじと結末でした。
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