パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニストの紹介:2013年ドイツ映画。現代の若きヴィオリニスト、デビット・ギャレットが19世紀の天才ヴァイオリニスト、パガニーニを熱演。鬼気迫る演奏シーンは必見!
監督:バーナード・ローズ 出演:デビット・ギャレット、ジャレッド・ハリス、・アンドレア・デック、クリスチャン・マッケイ、ジョエリー・リチャードソン、ヘルムート・バーガーほか
映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」解説
この解説記事には映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニストのネタバレあらすじ:革命児パガニーニは気まぐれ
超絶技巧曲を作曲していたパガニーニ少年は成長し、今ではオペラの幕間でバイオリン演奏を披露していた。しかし彼の斬新さを理解しない聴衆は、野次を飛ばし茶化すばかり。そんな舞台を見ていたウルバーニは、パガニーニの才能を見抜き、彼の滞在するホテルを訪れ、見世物ではなくマエストロとして彼の音楽を残そうと持ちかけ、マネージメントを引き受けひと月以内にミラノの劇場で演奏会をしようと言う。彼と約束と交わしたパガニーニが演奏会をするとすぐさま新聞に載った。
ロンドンの指揮者ワトソンは、財政難のロンドンのオペラハウス盛り立てようとパガニーニを招こうと手紙をしたためた。ウルバーニはロンドンでのコンサートに乗り気だったが、パガニーニはなかなか了承せず、ワトソンは家財を差し押さえられても送金をし渡英を願った。ウルバーニはパガニーニを昏倒させ、イギリスまで連れ出した。しかしホテルに入ろうとすると、彼の放蕩ぶりを糾弾する女性運動家のデモ隊に阻まれワトソン家に滞在することになった。
家財も使用人もいないワトソン家は娘のシャーロットをメイドとして紹介。パガニーニはシャーロットと友達になりたいと請うが、ハンサム気取り自惚れ屋だと拒否、ウルバーニも宝石で彼女をパガニーニあてがおうとするが最低だと拒否されてしまう。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニストのネタバレあらすじ:シャーロットとパガニーニが恋に落ちるまで
ワトソンは家の前を塞ぐ記者達とデモ隊を避け、リハーサルに行った。そこでパガニーニはコンサートマスターのバイオリンをいい楽器だと言ってそのまま持って行っていってしまった。
パガニーニに興味を持つ女性記者ミス・ランガムはコンサートのチケットが高すぎて売れないと記事を載せた。そこへ英国王宮から直々に書簡が来る。しかしウルバーニとパガニーニは名誉や宣伝にはなっても一銭にもならないならと陛下のお召しは拒否、聞きたいならボックス席をワトソンが買って陛下に差し上げるなりすればいいと取り合わなかった。
そんな二人に業を煮やしたシャーロットは自分がワトソンの娘であることを明かし、出て行けと迫り、パガニーニが人前で練習をしないのは、下手なのがばれるからじゃ無いのかと罵った。
その夜、デモ隊と記者が去ったワトソン家を物陰からランガムは見張った。案の定夜半に出てきた二人を、ホワイトチャペルまで行く馬車の後ろに乗り、酒場へ向かった。酔っ払いに絡まれた二人を、娼婦のフリをして現れたランガムは歌うからと許しを乞う。パガニーニは代わりにバイオリンで超絶技巧を披露、弦が切れてもG線だけで演奏した。酒場の聴衆がこの男は誰だとびっくりしていると、すかさずパガニーニだと叫んだ。ウルバーニはランガムがタイムズの記者だと気付いていて、馬車に乗せインタビューさせた。彼の記事は翌日新聞に載った。
朝、ピアノを弾きながら練習をするシャーロットの歌声をパガニーニはベッドで聞いていた。彼女は自分の歌っていた歌がバイオリンで弾かれている事に気付き、パガニーニの部屋を訪れると、音楽家同士として仲直りをした。パガニーニは歌手を探していたと言って、持っていた楽譜を渡して彼女に歌わせた。それを聞いたワトソンは娘の声が美しかったことに驚き、ウルバーニは誉め、二人を共演させてもいいかも知れないと提案する。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニストのネタバレあらすじ:ロンドンでのリサイタルは成功するのか
会場前に押し寄せたデモ隊のリーダーにこっそり話をするウルバーニ。会場は満席。国王席も押さえてあった。しかし演奏会が始まらない。楽屋ではウルバーニがもう少し待てと言うばかり。ワトソンは団員を先に舞台へ上がらせ、代役を立て演奏会を始めようとする。演奏が始まりシャーロットが楽屋を訪れるともぬけの殻だった。逃げたと思ったがバイオリンソロパートになると、弾きながら客席から現れるパガニーニがいた。民衆の中を演奏しながら歩き舞台の上に上がった彼は超絶技巧を披露。会場には記者ランガム、楽譜を起こす青年や卒倒する女性がいた。大歓声で沸く中、国王陛下が到着、パガニーニは陛下の方を向いてソロ曲を披露。シャーロットはアンコールに歌うように頼まれ、パガニーニのバイオリンと共演を果たした。
シャーロットへの執心ぶりが気にくわないウルバーニは、興味津々の記者ランガムにシャーロットの年がとても若い事を暗に示す。終演後、楽屋に押し寄せた人垣からウルバーニはシャーロットを連れ出しワトソン家に送り返した。そしてワトソンに公演料を求め、パガニーニとホテルでの祝賀会に向かった。シャーロットを待つパガニーニに酒が回り始めると、ウルバーニは彼を寝室に篭らせ、彼女と背丈と髪の色が似ている女性を彼にあてがった。
家で一晩過ごしたシャーロット、翌日の新聞には彼女とパガニーニの関係が載っていた。しかし、手紙に渡された手紙にあったホテルの部屋を訪れると、そこからは見知らぬ女性と乱れた服のパガニーニが出てきて事の次第を理解した。ホテルの前で待ち受ける民衆は、外に出てきたシャーロットを被害者としてまつりあげ、パガニーニ女たらしの烙印を押した。パガニーニは子供をレイプした門で逮捕、拘留される。シャーロットも拘留されるがワトソンによって連れ出された。パガニーニを迎えに来たウルバーニは、シャーロットと別れるよう言い含め連れ出した。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニストの結末:シャーロットとの別れ、ウルバーニとの決別
ウィーンへ戻ったパガニーニは息子アキレウスと共に過ごす。
ワトソン家の前には記者が押しかけ、シャーロット記事の差し止めを求めたが、まま母広告と思えばいいと言った。
パガニーニは、シャーロットにヨーロッパの演奏旅行に加わって欲しいと手紙を書いたが、シャーロットはアメリカに渡って父と演奏会をする返事を送った。気落ちした彼は、ウルバーニさえいなければ彼女が帰ってくると思い、ウルバーニと手を切り、追い出した。その事を手紙で伝えたが、シャーロットは然るべき人を見つけ結婚、既に身重だった。
マネージメントが出来ないパガニーニは、身持ちを崩し患った結果、息子とジェノヴァで余生を過ごすことにした。その床でもシャーロットのためにコンチェルトの譜面を書いた。
今際、やって来た司祭に、神を出し抜いてやると罵るパガニーニ。彼は最後までシャーロットの歌声を思い浮かべていた。
教会はパガニーニの遺体を教会の墓地に入れることを拒否し、息子がローマ教皇に直訴したが受け入れられなかった。と言うテロップの後エンドロールへ。
以上、映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」のあらすじと結末でした。
「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」感想・レビュー
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音楽にしろ美術にしろ芸術家にはたいていパトロンなりパートナーなり、彼らの芸術をサポートする人間がいる。音楽家と言えば宮廷お抱えというシステムが崩れていた当時、パガニーニにはウルバーニのようなマネージメントを担当するものが必要だっただろう。市民に音楽が開かれ始めた時代、新聞に広告を載せるだけでなく、記事として取り上げられることも音楽家としてのステータスだったかもしれない。音楽家は才能を持っていてもそれを宣伝することに苦労するといって、シャーロットの不名誉な記事を宣伝として利用すればいいと言った、オペラ歌手だった彼女の継母の言葉は、同じ歌手として宣伝されずに終わった側からの提言にも聞こえた。
この作品は「シネマギーク」としても「クラシックマニア」としても充分に満足のいく映画だと思う。ニコロ・パガニーニに関しては様々な伝説や逸話が残されており、デモーニッシュでミステリアスな「奇人:鬼神」といったところだろうか。ただ個人的には作曲家としてのパガニーニを聴くことは殆どない。理由としては聴き飽きる(食傷気味になる)ので、繰り返し愛聴するには不向きなのである。しかしこの映画のように「エンタテインメント」としてみた場合には、インパクトが強く濃厚なのでパガニーニは最適である。主役のデイヴィッド・ギャレットは速弾きではギネス記録を持つ技巧派である。これまで私は50年以上に亘って数多くのヴァイオリニストの演奏を聴いてきた。ギャレットはその正統派のクラシック演奏家の系譜には入らない。彼がクラシックの世界ではなくクロスオーバーの世界を選んだからだ。しかし実力派の「現役バリバリ」の演奏家がパガニーニを演じること自体が既にひとつの奇蹟なのだ。超一流の演奏家が大作曲家を演じるのは「夢」であり「快挙」なのである。しかも甘顔の「イケメンでセクシー」とくれば、これはもうケチのつけようがない。ストーリーや登場人物に関しても特に過不足もなく及第点だ。ギャレット君はハーレクイン小説か少女漫画の主人公のようなキラキラ「王子様系」?或いは「セクシーモデル系」?と思ったら、本物のモデルさんなのでありました。今後も実力派の演奏家や指揮者が映画に出てくれることに期待したい。アーティストであれば俳優女優としての力量は特に問わない。個人的には女性ピアニストや女性ヴァイオリニストに是非ともお願いしたいものである。ピアノではユジャ・ワンやカティア・ブニアティシヴィリ、ヴァイオリンではパトリツィア・コパチンスカヤやマリア・ドゥエニャスなどのユニークな美形の実力派がいいだろう。このように「パガニーニ愛と狂気のヴァイオリニスト」は、「シネマギーク」で「音楽中毒患者」の私に多くの夢と希望を与えてくれる貴重な作品となっている。