5つの銅貨の紹介:1959年アメリカ映画。実在のコルネット奏者であるレッド・ニコルズと、その家族の物語。主役のダニー・ケイのトランペットを本人が吹き替えたり、ルイ・アームストロングが本人役として登場するなど、豪華な配役が話題となった。作中で披露されるダニー・ケイとルイ・アームストロングによる「聖者の行進」のパフォーマンスは圧巻の一言に尽きる。
監督:メルビル・シェイブルスン 出演者:ダニー・ケイ(レッド・ニコルズ)、バーバラ・ベル・ゲデス(ウィラ・ストゥッツマン)、ルイ・アームストロング(本人)、ハリー・ガーディノ(トニー・ヴァラニ)、チューズデイ・ウェルド(ドロシー・ニコルズ) ほか
映画「5つの銅貨」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「5つの銅貨」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「5つの銅貨」解説
この解説記事には映画「5つの銅貨」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
5つの銅貨のネタバレあらすじ:起
1924年.コルネット奏者のレッド・ニコルズ(ダニー・ケイ)はニューヨークにやって来ます。裏口酒場で歌手のウィラ・ストゥッツマン(バーバラ・ベル・ゲデス)と出会ったレッドはそこでルイ・アームストロング(本人)の演奏に夢中になりますが、生まれて初めて酒を飲んだ彼はその場で恥をかいてしまいます。その後、彼は得意のコルネットを吹きルイらバンドメンバーたちと共演し、会場を沸かせます。彼はその後、ウィラと結婚するのでした。レッドは楽団の雇い主にウィラも雇って欲しいと頼み込みますが、そりが合わずに辞めてしまいます。そのことで2人は喧嘩をしますが、コルネットを質屋に出して新婚部屋を用意してくれたことを知ったウィラは彼と仲直りをします。
5つの銅貨のネタバレあらすじ:承
レッドはその後、職を転々とし、ウィラはトニー・ヴァラニ(ハリー・ガーディノ)を介してグレン・ミラーやジミー・ドーシーらと出会い、レッドの編曲した曲を演奏してほしいと頼みますが、一同は乗り気になりません。しかし、改めて譜面を呼んだ彼らは曲を絶賛し、レッドの楽団は商業的に段々と成功し始めます。2人の間に元気な女の子ドロシーが生まれ、間もなくウィラもレッドの楽団の巡業に同行します。5年後、レッドとウィラは相談の上、ドロシーを寄宿学校に入れようと決意しますが、それはドロシーにとっては不本意なことでした。彼女は大好きだったレッドを拒絶し始めます。
5つの銅貨のネタバレあらすじ:転
ある日、ドロシーが悪性の小児麻痺を患い、ショックを受けたレッドはコルネットを海に捨て、巡業を中止します。レッドは小児科の子供たちに合唱を教えながら交流を深め、ドロシーとの仲直りを試みます。そして、レッドは退院後に住むための家を購入するのでした。ドロシーは自宅で治療を続けます。14歳になったドロシー(チューズデイ・ウェルド)は戦況が悪化して今は造船所で働いているレッドが率いたバンドのことを忘れかけていました。レッドが働く造船所に、かつて自分の楽団にいたベニー・グッドマンの楽団が慰労演奏にやって来ますが、レッドはその活躍を素直に喜ぶことができません。
5つの銅貨の結末
レッドはドロシーの誕生日に、長年吹いていなかったコルネットを演奏しますが、その技術は明らかに落ちていました。その夜、食事をしにレストランへ行った3人はトニーたちと再会します。彼らから音楽の世界に戻るよう説得されるレッドですが、彼は既に自信を失っていました。しかし、ウィラやドロシーに背中を押され、演奏活動の再開を決意します。演奏会当日、空席の目立つ会場でレッドが演奏を始めると、ルイや、かつて彼の元で演奏していたバンドメンバーが大勢の観客を引き連れて現れます。ウィラはそのステージで歌い、レッドの献身的な看病により歩けるようになったドロシーはレッドと共に「5つの銅貨」の曲に乗って踊ります。一同は、楽しいひと時を過ごすのでした。
この映画「5つの銅貨」は、良質のホームドラマであり、コメディであり、おまけにデキシーを中心とした軽快なジャズのナンバーが存分に楽しめる伝記映画の傑作だ。
ニューオリンズからニューヨークに出て来たレッド・ニコルズ(ダニー・ケイ)は、デキシーランド・ジャズ調でコルネットを吹こうとし、あちこちでトラブルが続出する。
ダブル・デートで知り合ったボビー(バーバラ・ベル・ゲデス)と恋仲になり、結婚したが仕事は次々とクビになり、生活は火の車状態。そこで、知り合いのグレン・ミラーらとバンドを結成、自作の曲をレコーディングするや大ヒットとなり、全米巡業におおわらわとなるのだった——。
この映画は、グレン・ミラーやジミー・ドーシー、アーチー・ショウなどの大物をメンバーにしたがえたバンドのリーダーで、名コルチネット奏者のレッド・ニコルズの半生を描いた感動の実話だが、ダニー・ケイがニコルズを演じることで、笑わせて泣かせる”松竹新喜劇”みたいなバラエティに富んだ名作に仕上がっていると思う。
まず、この映画は出だしからして、実にいい。
田舎出のニコルズが、友人(ハリー・ガーディノ)に誘われダブルデートと洒落込むが、相手の女ボビーは、彼を馬鹿にしてからかうのだった。
酒をがんがん注ぎ、へべれけになったニコルズは、トイレでゲーッ。ところが、これからがカッコいい。
コルネットを口に当て、リパブリック賛歌を素晴らしくゴキゲンに吹き始めるのだ。
ステージのサッチモも思わず聞き惚れる、この場面。
さらには、ナイトクラブでサッチモとやる”聖者の行進”のセッション。ジャズ・ファンならずとも、この二つのシーンには圧倒的に魅了されること請け合いだ。
さらにゴキゲンなのは、ダニー・ケイ、バーバラ・ベル・ゲデス、ハリー・ガーディノの三人で踊る”Follow the leader”。振付けの中で”私がリーダーよ”と手を回すベル・ゲデスが、実にチャーミングで素晴らしい。
目が細く庶民的な感じがする彼女が、劇中で称される”友人夫婦”タイプぴったりの、若々しさや優しさに満ちて好演していると思う。
ケイは、というと、彼お得意の物真似や音楽コントでバッチリ笑わせてくれる。特に”泣き虫小僧”の演じ分けには、彼のエンターテイナーとしての神髄を見ることができる。
娘が小児麻痺になり、音楽を絶つべくコルネットを川に捨てる中盤から、シリアスなホームドラマに変わっていく。
そしてラスト——これはもう涙なくしては観られない。きっと、”This little penny—-“という主題歌が耳から離れなくなるはずだから。