愛すれど心さびしくの紹介:1968年アメリカ映画。ろうあ者のシンガーがケリー家に間借りを始める。音の聞こえないシンガーと、その家の高校生の長女で音楽に飢えるミック。孤独感を抱える二人は絆を深めていく。原作はカーソン・マッカラーズの小説『心は孤独な狩人』。撮影監督はサイレント時代から活躍し撮影技術の進歩に貢献してきたジェームズ・ウォン・ハウ。デイヴ・グルーシンによる映画音楽の初期の仕事の一つでもある。第41回アカデミー賞でアラン・アーキンが主演男優賞に、初めての映画出演のソンドラ・ロックが助演女優賞にノミネートされた。
監督:ロバート・エリス・ミラー 出演者:アラン・アーキン(ジョン・シンガー)、ソンドラ・ロック(ミック)、チャック・マッカン(スピロス・アントナパウロス)、パーシー・ロドリゲス(コープランド医師)、ステイシー・キーチ(ジェイク・ブラウント)、ローリンダ・バレット(ケリー夫人)、ビフ・マクガイア(ケリー氏)ほか
映画「愛すれど心さびしく」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛すれど心さびしく」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「愛すれど心さびしく」解説
この解説記事には映画「愛すれど心さびしく」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛すれど心さびしくのネタバレあらすじ:起・新しい町へ
南部の町でジョン・シンガーは金属に模様を入れる彫刻職人として宝石店で働いている。ろうあ者だが読唇術で人が話すことがわかる。同じくろうあ者の親友スピロス・アントナパウロスと同居しているが、知的障害があるスピロスは深夜、ケーキ店のショーウィンドウを割って警察のやっかいになる。
彼の問題行動はこれが初めてではない。スピロスの法的保護者で自分の食料品店でスピロスを雇ってもいた彼のいとこはスピロスを州立病院に入れることにし、バスで町を離れる友をシンガーは見送る。
シンガーは自分が友の法的保護者になって彼を病院から出すつもりだが弁護士が、手続きに時間がかかるので、病院に近い大きな町ジェファソンに引っ越して心機一転することを勧める。
バスでジェファソンに来たシンガーは新聞の貸間の広告を見てケリー家に行く。戸口で彼を最初に迎えたのが、その家の長女ミックだった。
愛すれど心さびしくのネタバレあらすじ:承・孤独な人たち
ケリー家では時計職人である父が腰を悪くして働けなくなり家計の足しにするためミックが使っていた部屋を週20ドルで貸すことにした。それが不満なミックは、障害者に部屋を貸したことについて父に文句を言い、差別的な言葉を使ったために父にぶたれたうえ、ちょうど帰宅したシンガーを罵ってしまう。
しかし、シンガーはオーケストラの演奏会にホールの外で耳を傾けているミックの姿を見かけ、その日の演目のモーツァルトの交響曲のレコードを買って彼の部屋にあるプレイヤーにかける。学校から帰ってその音に気づいたミックと打ち解け始める。
ある晩、食堂で、流れ者の酔っぱらいが世間への不平をわめき、シンガーにからみ始めてとうとう店主に追い出される。彼は店を出ると壁にこぶしを打ちつけて血を流す。見かねたシンガーは近くにいた黒人医師に治療を頼む。
私は黒人専門だからと治療を拒否した医師だが、シンガーがろうあ者なのに気づいてから、特別に男の手当てをする。シンガーの部屋でしゃべり続けたその男、軍隊帰りのジェイク・ブラウントは朝になってやっとシンガーがろうあ者なのに気づく。
シンガーは黒人医師コープランドの診療所に治療代を払いに行くが迷惑がられる。君は口をきけないから黒人の医者が白人を診たという噂が広がらなくて助かると言われる。それがシンガーを傷つけたことに気づいた医師は、追いかけてシンガーを呼び止めて謝る。シンガーは医師がろうあ者の患者とコミュニケーションをとるのを手伝うようになる。
シンガーがスピロスの面会に行って遅く帰宅した夜、ミックが眠れなくてシンガーの部屋でレコードを聴いていた。シンガーが自分同様に孤独な人間であると感じたミックは仲良くなろうと思い、音の聞こえないシンガーにレコードの音楽について説明するのだった。
愛すれど心さびしくのネタバレあらすじ:転・辛いできごと
ジェイク・ブラウントは遊園地のメリーゴーラウンドの係になった。ある晩、その遊園地にシンガーとミックは遊びに行く。その日は、コープランド医師の、医者になってほしいという期待に背いて結婚し今はメイドをしている娘ポーシャも夫のウイリーと遊びに来ていた。
ウイリーは白人の男から言いがかりをつけられ、ブラウントが制止したにもかかわらず、白人たちはウイリーを襲う。ウイリーは相手のナイフを奪って抵抗したせいで逮捕される。保安官は黒人の言い分はきかない。
ポーシャは、正当防衛であるのを見ていたと嘘の証言をしてくれと父に頼むがコープランド医師は偽証を拒否する。ウイリーは刑務所送りになり、ブラウントはこんな腐った町にはいられないとシンガーに別れを告げて町を去る。
シンガーは偶然コープランド医師が病気で余命わずかであることを知るが、最期まで仕事を続けたいコープランドから口止めされる。その日ミックは家に友人たちを招いてずっとしてみたかったパーティーを開く。
ところが、友人の兄ハリーといい雰囲気になったところで、弟ババとその友だちが花火でパーティーをじゃましたのをきっかけに、お客が外で花火をして遊び出す。怒ってミックはパーティーをお開きにしてしまう。
でも翌朝シンガーの描く下手な似顔絵に慰められる。そしてハリーとデートをするようになり、夏休みのアルバイトもがんばっていたが、ある夜母から、父の腰がずっと治らない、アルバイトをずっと続けて高校は夜間コースに変えてほしいと言われる。ミックは悲しくてシンガーの胸で泣く。
だがシンガーも辛い思いをしていた。初めてのスピロスの外出で、門限を守らせるためにシンガーは食いしん坊のスピロスの食事を途中でやめさせてタクシーに押し込まなければならず、スピロスに恨まれてしまったのだった。
愛すれど心さびしくの結末:誰も知らない悩み
ウイリーは脱走に失敗して入れられた独房で体に合わない鎖で縛られたために足が壊死し、片足を切断された。コープランドと同居するようになるが、偽証を拒んだ父を許せないポーシャは、シンガーがコープランドを訪れた日も人前でウイリーの足のことで父に悪態をつく。
そこでコープランドは正式な抗議を申し立てようと判事に会いに行く。待たされたあげく保安官に判事はもう帰ったと言われて建物を出た時、シンガーに連れられてきたポーシャが彼に駆け寄る。シンガーが彼女に父親の病状を教えたのだった。
その日、ミックはハリーと川に遊びに行く。音楽や雪の降る遠くの土地へのあこがれを話した後、ミックはハリーに、結婚した人たちがするようにキスしてと言う。二人はキスの後初めてのセックスをする。
ミックは自分が望んだことだからと言ってハリーを安心させ、自分はもう大人だと思おうとした。でも帰宅すると、新しいレコードをプレゼントしようとするシンガーをよせつけない。シンガーはドアの前にレコードを置かなければならなかった。
再びスピロスの面会に行ったシンガーは、スピロスが死んだことを初めて聞かされる。既に埋葬され粗末な墓標が立っていた。
夜、ポーチで編み物をしていたミックは上からの銃声を聞く。二階に駆け上がるとシンガーが自殺していた。
後日、ミックがシンガーの墓参りに行くと、葬儀で会ったコープランドがいた。二人ともシンガーが死んだ理由はわからなかった。皆が彼に悩みをぶつけたが、誰も彼の悩みに気がつかなかった。コープランドが去った後、ミックは墓に花を供えて「あなたが大好きだった」とシンガーに呼びかけるのだった。
以上、映画「愛すれど心さびしく」のあらすじと結末でした。
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