聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの紹介:2017年イギリス,アイルランド映画。第70回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したサイコホラー作品です。心臓外科医が過去に因縁のある少年を自宅に招き入れたことから生活は一変、医師の子どもたちに異変が起こり始め、やがて医師は究極の選択を迫られることになります。
監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:コリン・ファレル(スティーブン・マーフィー)、ニコール・キッドマン(アナ・マーフィー)、バリー・コーガン(マーティン・ラング)、ラフィー・キャシディ(キム・マーフィー)、サニー・スリッチ(ボブ・マーフィー)、アリシア・シルヴァーストーン(マーティンの母)、ビル・キャンプ(マシュー・ウィリアムズ)ほか
映画「聖なる鹿殺し」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「聖なる鹿殺し」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
聖なる鹿殺しの予告編 動画
映画「聖なる鹿殺し」解説
この解説記事には映画「聖なる鹿殺し」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
聖なる鹿殺しのネタバレあらすじ:起
アメリカ・オハイオ州シンシナティの心臓外科医スティーブン・マーフィー(コリン・ファレル)は、結連れ添って16年になる妻で眼科医のアナ(ニコール・キッドマン)、娘のキム(ラフィー・キャシディ)息子のボブ(サニー・スリッチ)と4人家族で暮らしていました。
スティーブンはあることがきっかけで知り合った16歳の少年マーティン・ラング(バリー・コーガン)に物をプレゼントしたり食事を奢ったりと親切にしていました。実はマーティンの父はスティーブンの患者であり、自動車事故で瀕死の重傷を負い死亡に至ったのですが、緊急手術の際にスティーブンは酒に酔っており、そのせいでマーティンの父を死に至らしめたのではないかとの罪悪感に苛まれ続けていました。
ある日、スティーブンはマーティンを家に招き入れ、家族も快く出迎えてくれました。年頃のキムはマーティンにほのかな想いを抱くようになっていきました。
聖なる鹿殺しのネタバレあらすじ:承
マーティンは今度はスティーブンを自宅に誘い、マーティンの母(アリシア・シルヴァーストーン)を交えて食事をし、三人でとりあえずテレビで映画を観ることにしましたが、眠くなったというマーティンが席を外している間にマーティンの母は露骨にスティーブンを誘惑してきました。さすがのスティーブンも誘惑をはね除けると逃げるようにして帰っていきました。
しかしその翌日。突然マーティンが体調不良を訴え始め、スティーブンはやむなく検査をすることにしました。ところが週明けになって、今度はボブが体調不良を訴えてきました。スティーブンとアナはボブを病院に診せましたが不思議なことに、身体に何の異常も見られませんでした。
その翌日、マーティンはボブの病室へ見舞いに訪れた後、スティーブンにこう告げました。「先生は僕の家族をひとり殺した。だから家族をひとり殺さなければならない。殺さなければ、やがてみんな病気で死ぬことになる」
誰を殺すか数日で決めてほしいというマーティンをスティーブンは追い出しましたが、やがてボブの容態は悪化の一途を辿っていきました。
聖なる鹿殺しのネタバレあらすじ:転
食欲が沸かないボブにスティーブンとアナは付きっきりで看病し、改めて様々な検査を受けさせましたがそれでも原因は不明のままでした。ひとり残されたキムはマーティンを誘惑しますが、マーティンにその気はありませんでした。しかしその後、今度はキムまでもがボブと同じ症状で倒れ、ボブと同じ病室に入院しながら検査を受けましたが、やはりキムにも特に異常は見られず、やがてキムとボブは完治せぬまま退院させられることになりました。
ことの重大さに気付いたスティーブンはアナにマーティンとの出来事を打ち明け、アナはマーティンと対峙してなぜ自分たち家族までもが責めを負わねばならぬのかと問いますが、マーティンは口を開きませんでした。
聖なる鹿殺しの結末
スティーブンはマーティンを捕まえて自宅に監禁、猟銃を突き付けて脅しますが、それでもマーティンは相変わらず「早く誰を殺すか選べ」と命じてきました。そうしているうちにキムとボブは更に体調が悪化していきました。思い悩んだアナは、自分はまだ子供を産めるので殺すのはキムかボブのいずれかにするしかないとスティーブンに進言しました。アナは結局マーティンを解放することにし、いよいよ精神的に追い詰められたスティーブンはアナを含む三人に白い布を被せて拘束、自分は目隠しをした状態で猟銃を撃ち、ボブは被弾して死亡しました。その後、キムの体調は回復していきました。
後日、スティーブンはアナとキムを連れて外出しましたが、そこにマーティンが現れました。スティーブンはマーティンとは言葉をかわすことも目を合わせることもなく、アナをキムを連れて立ち去っていきました。
終止不穏な空気感。これがこの監督の魅力なのだろう。「呪い」なのか「病気」なのか、子供たちに降りかかる奇妙な現象がなんなのかという直接的な説明が一切なく、観客をどんどん居心地の悪い方へ引き連れて行くようだ。深読みしたくなるといえばそういう映画だが、解き明かすことへの執着を煽るというよりは、この確立された不気味すぎる世界を観客は忘れることができないのだと思う。映画として最先端の表現だと感じた。