悲しみのミルクの紹介:2008年ペルー映画。一人で外に出たことがないファウスタは母の埋葬のためにメイドとして働き始めた。そこで変わっていく彼女の心模様を静かに描き出す。
監督:クラウディア・リョサ 出演:マガリ・ソリエル(ファウスタ)、スシ・サンチェス(アイダ)、エフライン・ソリス(ノエ)、マリノ・バリョン、ほか
映画「悲しみのミルク」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「悲しみのミルク」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
悲しみのミルクの予告編 動画
映画「悲しみのミルク」解説
この解説記事には映画「悲しみのミルク」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
悲しみのミルクのネタバレあらすじ:起・母から受け継いだもの
ファウスタの母は彼女を妊娠している間に、ゲリラに夫を殺され自身は男たちに手籠めにされた過去を持つ。その時の悲しみが母乳によって自分に伝わったと信じるファウスタは一人で外を出歩くことが出来ないまま育ち、ある日、その母が死んだ。ショックで倒れたファウスタが連れて行かれたのは産婦人科。彼女は、母のような被害にあわないために、自分の子宮の中にジャガイモを入れていた。しかしそれが芽を出し根を張り、子宮を傷めていると言う。医者は取り出すことを勧めたが、ファウスタは断った。家へ帰るとおじさんが家の横に穴を掘り、埋葬の準備をしていたが、ファウスタはどうしても母を父親同じ故郷の村へ埋葬したいと譲らなかった。しかしそれには高額の費用が必要だった。
悲しみのミルクのネタバレあらすじ:承・故郷へ埋葬するために
母の遺体に油を塗り布で包んでいる間、おばは彼女に町のお屋敷でメイドを探しているのでそこで働くことを勧めた。一人で外に出た事のないファウスタは付き添われながらお屋敷へ行き、働くことにした。そこは白人のピアニストのお屋敷で、治安が悪いので家に入れていいのは庭師のノエだけ、彼女も用のあるまでは台所にいるようにと言われた。ある日ファウスタが働きに来ると庭にピアノと割れた窓が散乱していた。作曲がうまくいかないピアニストが落としたものだった。そして即興で歌を歌うファウスタに、壊れてしまった真珠のネックレスを拾わせながら、一曲歌うごとに一粒の真珠を上げると言った。
悲しみのミルクのネタバレあらすじ:転・いとこの結婚式と母の葬式
おじは娘のマキシマの結婚式までに遺体をどうにかしてほしいとファウスタに言い募るものの、給金の前払いはされず、結婚式までに運べそうにはなかった。そんな中、婚約の儀式で新郎側の男性に美しいファウスタは迫られた。ファウスタは母の影響もあってか男性を常に拒んでいた。彼女が唯一心を許しかけているのは庭師のノエだけだった。ノエがファウスタに花を贈ると、彼女はジャガイモの花はないのかと聞いた。ノエはジャガイモはあまり花を咲かせないからないのだと答えた。
ファウスタの歌のおかげで新しい曲を演奏で来たピアニストのコンサートは盛況だった。帰り道、車の中でファウスタがそのことを口にすると、ピアニストはファウスタを夜の道に一人置き去りにした。
悲しみのミルクの結末:離さなかったもの
いとこの結婚式は盛大に行われた。しかしファウスタは祝いの輪に入れず、母の遺体のある部屋に篭った。するとおじがやって来て、彼女の口を塞いだ。おじはちゃんと息をしているのにどうして生きようとしないのかと嘆いた。おじの手から逃れたファウスタは、ピアニストの屋敷まで走り、寝室に零れていた真珠を片手にいっぱい拾った。そして門で倒れている所にやってきたノエに、彼女は自分の中から取り出してと言って気を失った。病院に彼女を担ぎこんだノエはずっと彼女を見守り、目を覚ますと、処置の間ずっと手を握っていたことを教えた。手の中には真珠が握られていた。
ファウスタと親戚たちは遺体を乗せて故郷の村に向かった。その途中、ファウスタは海辺で車を止めてもらうと、母を担ぎ海を見せに行った。
後日、普段の生活に戻ったファウスタの元へ、誰かがやってきた。彼女が門を開けると、そこには白い花を付けたジャガイモの鉢植えがあった。
以上、映画悲しみのミルクのあらすじと結末でした。
作中色々な形で描かれるジャガイモはペルーの村の人々にとっては生活の糧として忘れてはならないもののひとつ。婚約の儀式にも出てくるくらい縁の深いものでもある。
ファウスタはそれを自分が母から受け継いだ手籠めにされた記憶と一緒に、自分の子宮の中へ収めている。もちろん彼女の言葉通り母のような仕打ちを受けないために入れているが、腹の中へ母の記憶を置いているように見えてならない。そしてその母から子守歌で一部始終を母が死ぬまで聞かされていた彼女にとっては一つの呪いのようにも見える。
母が亡くなり、外に出たファウスタが少しずつ変わり始め最後にそのジャガイモを取り出した時、ファウスタの彼女の本当の人生が始まったように見える。それは門に置かれた花を付けたジャガイモが暗に示している。