ナチスに仕掛けたチェスゲームの紹介:2021年ドイツ, オーストリア映画。かつてウィーンで公証人を務めていたヨーゼフは、ヒトラー軍率いるドイツがオーストリアを併合した際、ナチスに連行され、彼が管理する貴族の莫大な資産の預金番号を教えろと迫られた。拒絶したヨーゼフは、ホテルに監禁された。一方、妻と豪華客船でアメリカへ向かう現在のヨーゼフ。船内ではチェスの大会が開かれ、世界王者が船の乗客全員と戦っていた。船のオーナーにアドバイスを与え、引き分けまで持ち込んだヨーゼフは、彼から王者との一騎打ちを依頼される。ヨーゼフがチェスに強いのは、監禁中の悲しい出来事が理由だった。原作はオーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの『チェスの話』。ユダヤ人のツヴァイクはこの小説の完成直後に自殺を選んだため、これが最期の作品となった。ツヴァイク自身と重なる主人公が極限状態の中、何とか生き延びようとする姿が描かれる。
監督:フィリップ・シュテルツェル 出演:オリヴァー・マスッチ(ヨーゼフ・バルトーク博士)、アルブレヒト・シュッヘ(フランツ=ジョセフ・ベーム/ミルコ・チェントヴィッツ)、ビルギット・ミニヒマイアー(アンナ)、ロルフ・ラスゴード(オーウェン・マッコナー)、アンドレアス・ルスト(ジョアン・プラントル)、サミュエル・フィンジ(アルフレッド・ケラー)、ほか
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」解説
この解説記事には映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ナチスに仕掛けたチェスゲームのネタバレあらすじ:起
ロッテルダム港からアメリカへ向けて出発する豪華客船に乗ったヨーゼフ・バルトーク。目はうつろで手は震えすっかりやつれたヨーゼフを、久しぶりに再会した妻のアンナが抱きしめ言いました。「すべて元通りになる」
かつてウィーンで公証人を務めていたヨーゼフは、芸術を愛し、毎晩のように友人たちとパーティを楽しむ優雅な暮らしを送っていました。
しかし、ヒトラー率いるドイツがオーストリアを併合した日にヨーゼフの生活は一変してしまいます。自宅に踏み込んできたナチスは、ヨーゼフを連行しメトロポール・ホテルへ監禁。そこで待ち受けていたゲシュタポのフランツ=ヨーゼフ・ベームから、ヨーゼフが管理する貴族の莫大な資産の預金番号を教えろと迫られました。
ナチスに仕掛けたチェスゲームのネタバレあらすじ:承
しらを切り続けるヨーゼフにしびれを切らしたベームは、部下に“特別処理”を命じました。それは家具以外何もない空間に閉じ込める精神的な拷問でした。食事は毎回パンとスープ。それを運ぶ警察官も決して口を聞きません。時折、どこかの部屋から聞こえる苦悶に満ちた叫び声が静寂を破ります。
読書家のヨーゼフは次第に文字の読めない環境に苦痛を覚え始めました。再びベームが現れ、ヨーゼフに頭にある番号を書けと命じました。ヨーゼフは紙に勢いよく鉛筆を走らせベームへと渡しました。しかし、そこに書かれていたのは、預金番号ではなく『オデュッセウス』の一節。ヨーゼフのせめてもの抵抗でした。
そんな過酷な日々を忘れることができない現在のヨーゼフは、時折激しいパニックに襲われ錯乱に陥ります。一緒にいたと思い込んでいた妻アンナはそんな自分が生み出した幻でした。船のバーで酔っ払って周囲の客に話しかけるヨーゼフ。しかし誰からも相手にされません。
そんな中、船内ではチェスの大会が開かれていました。世界王者は乗客全員と戦い、最後のひとりを相手にしていました。ヨーゼフはすでに負けが確定していたこの男にアドバイスを与え、奇跡的に引き分けまで持ち込みました。男の名前はオーウェン・マッコナーで、この船のオーナーだったのです。
「大会で何度優勝したんだ?」そう尋ねるマッコナーにヨーゼフは答えました。
「駒に触れたのは今が人生始めてだ」と。
ナチスに仕掛けたチェスゲームのネタバレあらすじ:転
ヨーゼフがチェスに強い理由は悲しい過去にありました。
メトロポール・ホテル監禁時、書物を求めるも無視されていたヨーゼフは、監視の目を潜り抜け廃棄本の山から無造作に1冊盗みました。それがチェスのルールブックだったのです。小説ではないことに絶望したヨーゼフでしたが、仕方なく熟読を重ねるうちに夢中になり、すべての手を暗唱できるまでになったのです。
与えられたパンを少しずつ集めて粘土のように固めて駒を作り、ナチスに隠れてチェスにのめり込むことで、ヨーゼフは監禁による狂気と立ち向かったのでした。
ところが、ベームはヨーゼフの異変に気付き、隠していたチェス本と駒を見つけてしまいます。罰として、ヨーゼフは浴室と窓を潰されベッドと用を足すためのバケツだけの部屋に閉じ込められてしまいました。
ナチスに仕掛けたチェスゲームの結末
船のヨーゼフはマッコナーから依頼されたチェスの世界王者との一騎打ちを引き受けることにしました。試合が始まると、熱戦の中であの監禁中の記憶が次々と蘇り息が荒くなってくるヨーゼフ。審判に自分が売った手を記録するよう促されます。
それと同時にホテルでナチスから預金番号を書くよう命じられたヨーゼフは一心不乱に番号を書き始めました。ところが、それは預金番号ではなく、あるチェスの試合でのスコアだったのです。
その試合とは、まさにこの豪華客船で行われた歴史的に有名な試合で、そこでプレイしていたのはヨーゼフではない全く別の人だったのです。
本で読んだチェスの手を暗記し、何度も繰り返し頭に入れているあまり、ヨーゼフは自分自身をこのチェスプレイヤーへと重ねてしまっていたのでした。ヨーゼフは自分が何者かも分からなくなってしまっていました。
ホテルでフランツから番号が書かれた紙を渡されたベームは、この番号が預金番号ではなくチェスのスコアであることに気付き、「私の負けのようだ」と言いヨーゼフを釈放しました。
ヨーゼフは1年もの歳月をホテルで過ごしていました。書類にチェスプレイヤーの名前をサインすると、ホテルをあとにしました。
月日は経ち、とある病院にヨーゼフの姿がありました。
隣には看護師の服装をしたアンナがいて、ヨーゼフに本を読み聞かせていました。ヨーゼフは看護師に訪ねました。「君は新しい看護師なのかい?」
その病院は精神病院でした。メトロポール・ホテルを出たあとのヨーゼフは結局自分を取り戻せないままでいたのです。
果たして目の前にいる看護師は本当に看護師なのか?またはかつての妻アンナなのか、ヨーゼフには分かるはずもありませんでした。
以上、映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」のあらすじと結末でした。
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