街角/桃色の店(別題:桃色(ピンク)の店)の紹介:1940年アメリカ映画。ダウンタウンの街角に店を置く「マトチェック商会」。映画のタイトルとはまったく趣を異にした輸入雑貨を扱う商店です。オーナーと従業員たちのやり取り、どこにでもいる従業員たちと思い当たるフシのある従業員、そして意外性を運ぶ恋愛模様など、映画はテンポよく運んで、「納得」の結末を迎えます。全編を笑いで満たした粋な会話を通し、これがエルンスト・ルビッチと大向こうをうならされる名品です。
監督:エルンスト・ルビッチ 出演者:ジェームス・スチュワート(クラリック)、マーガレット・サラヴァン(クララ)、フランク・モーガン(マトチェック)、ジョセフ・シルドクラウト(ヴァダス)ほか
映画「街角/桃色の店」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「街角/桃色の店」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
街角/桃色の店の予告編 動画
映画「街角/桃色の店」解説
この解説記事には映画「街角/桃色の店」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
街角/桃色の店のネタバレあらすじ:起
東欧ハンガリーのブタペスト。その一角に雑貨店「マトチェック商会」はありました。輸入雑貨を扱うこの店で6人の従業員が働いています。従業員たちは毎朝、オーナーのマトチェック(フランク・モーガン)を店の前で迎えます。夏冬を問わず、雨の日も風の日も、雪が降りしきって路面が凍る日も、オーナーの出勤を待って、店の1日ははじまります。
主任格のクラリック(ジェームス・スチュワート)は、オーナーの信望が篤く、昨夜はオーナー宅へ招かれ、夕食を共にしました。クラリックには気乗りしない食卓のようでしたが、彼はオーナーに目をかけられ、夫人にも好かれています。そんな彼の如才なさが従業員たちからも一目置かれ、店の内外の信頼を勝ち得ていました。
仕入れを担当するのは、オーナーのマトチェックです。しかしオーナーはかならずクラリックに商品見本を見せ、是非を訊ねます。ふたりは商品の仕入れでぶつかることがありました。しかし丁稚の頃から培ったクラリックの目利きには一廉のものがあります。ダメ出しも理に適っていますが、オーナーにも35年間店を守ってきた意地があるのです。
夏のバーゲンセールがはじまっています。店のバックヤードでは、今朝もオーナーとクラリックの意見の衝突がはじまっています。ふたりは口舌では一歩も引きません。そこへ若い女性客が現われます。店内の品をあれこれと品定めする女性に対し、クラリックが相好を崩して応対します。しかし客ではなく、店に勤めたいと言っています。
就職希望のクララ・ノバック(マーガレット・サラヴァン)は有名店舗での接客経験を持ちながら、就職難に喘いでいます。しかしクラリックはクララの願いに難色を示します。オーナーのマトチェックはクララを一顧だにしません。そこへ中年の女性客が現われます。クララのみごとなセールストーク。商品は店が望む以上の高値で売れてしまいました。
街角/桃色の店のネタバレあらすじ:承
冬になりました。クララが加わったマトチェック商会は、さらに活気づいています。しかし、クラリックとクララはことあるごとに衝突します。持って生まれた闘争本能の証しだとも言えなくはありませんが、経験と実績を併せ持つ持つふたりは、犬や猫のように互いのテリトリーを主張して止みません。
そんな折々のことでした。オーナーのマトチェックに異変が起きます。従業員のやることなすこと、ことごとく気に入りません。とくにクラリックには怒鳴る、叱る、冷淡に接するといった具合に、手を替え品を替え八つ当たりしてきます。クラリックはストレスをぶちまけます。「やってられねえや」。とうとうふたりは袂を分かつことになりました。
なぜそんなことになったのでしょうか。じつは愛妻家のマトチェックは、妻に疑いを抱いていました。妻の金遣いが荒くなっているのです。今までになく、生活費と称して大金をねだるようになった妻。妻をこよなく愛する男は、嫉妬心から「男がいる」と感づき、その相手としてクラリックを疑いはじめているのでした。
街角/桃色の店のネタバレあらすじ:転
クラリックには文通を交わす、とある女性がいました。カフェやクラブ通いに飽きた彼は、そういうところに出入りする女性ではない交際相手を求めて、新聞広告を出しました。第15郵便局「私書箱237」。今春、彼の私書箱に1通の手紙が届きました。
その女性との往復書簡は、いまも途切れることなく続いています。今夜はその女性と初めて会う晩でした。しかし、いま彼は失業者です。「おまえとは肌が合わない」とオーナーは彼に言い切りました。「8年間、店に仕えた俺なのに」とクラリックは、自信喪失の体で夜の人ごみに紛れています。
それでも彼は気をとり直して、女性との待合せ場所へ向かいました。目印は『アンナ・カレーニナ』。遠目に赤いカーネーションが目に入りました。しかし彼はここでも理不尽な目に会います。本を手にしていたのは、クララでした。なんと彼の部下にして天敵だったあのクララ。唯一の心の支えが崩れ落ちてしまいました。
街角/桃色の店の結末
妻の不行跡を問うマトチェックは興信所の「報告書」を見て愕きます。浮気の相手がじつは店の従業員のヴァダスだと分かります。自らの見当違いに色をなくすとともに、23年間の夫婦生活を切って捨てた妻に、忠実な店員を装っていたヴァダスに絶望します。しかし、それ以上に、謂われなき理由で解雇してしまったクラリックへ申し訳が立ちません。
マトチェックは拳銃を胸に自殺を図りますが、間1発、丁稚のピロビッチの機転に救われます。報せを聴いて駆けつけたクラリックにマトチェックが詫びます。「私も、もう潮時だ。君には迷惑をかけた。その代わりと言っては何だが、店の鍵を君に渡そう。思うように切り盛りしてくれ。ヴァダスの処分も君に任せた」。
とうとうクラリックが店のマネージャーとして腕を振るうことになりました。しかし翌朝、クララが出勤してきません。それもそのはずです。前夜は文通相手が現われず、さんざん待ちくたびれて、精も根も尽きてしまったのです。クラリックは、慌ててクララの下宿へ向かいました。
クラリックの見舞いと時を同じくして、クララのもとに文通相手から手紙が届きます。クララの病は気の病。手紙を一読した途端に歓喜の表情を浮かべ、クララはファイトいっぱいです。明日はクリスマスイブ。非礼を詫びる文通相手をクララは許します。店にとっても、クリスマス商戦の決戦日です。クララはクラリックに健闘を誓いました。
クラリックもクララも一所懸命に働いて、イブは店の1日の売上げを25年ぶりに更新しました。その夜、クララは文通相手の待つカフェへ向かう準備をしています。そこへクラリックが現われて、「私書箱237」は僕だよと告白しました。クララは入社当初から、クラリックは文通相手がクララだと分かった日から、密かに思いを温めていたのでした。
以上、映画「街角/桃色の店」のあらすじと結末でした。
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