スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~の紹介:2011年スペイン映画。1940年、独裁政権下のスペイン・マドリード。反政府主義者の妻や恋人達が、次々と刑務所に収監されていた。夫の活動に加担したとされ、死刑を言い渡されたオルテンシア。そしてその妹ペピータの視点から、女性にとっての「戦争」が描かれる。ドゥルセ・チャコンの同名小説を読んで感銘を受けたベニト・サンブラノ監督が、6年もの歳月をかけて完成させた。姉妹を演じたスペインの実力派女優、マリア・レオンとインマ・クエスタの凛とした美貌にも注目。
監督:ベニト・サンブラノ 出演者:マリア・レオン(ぺピータ)、インマ・クエスタ(オルテンシア)、ダニエル・オルギン(フェリペ)、マルク・クロテット(パウリーノ)、スシ・サンチェス(ソル)、アナ・ワヘネル(メルセデス)、ミリアム・ギャレロ(ドナ)ほか
映画「スリーピングボイス 沈黙の叫び」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スリーピングボイス 沈黙の叫び」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~の予告編 動画
映画「スリーピングボイス 沈黙の叫び」解説
この解説記事には映画「スリーピングボイス 沈黙の叫び」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~のネタバレあらすじ:起
スペイン内戦が終結した翌年の1940年。フランコ総統の独裁政権に抵抗し、マドリードの刑務所に収監されたオルテンシア。夫のフェリペは共産主義の活動家で逃亡中。オルテンシアはフェリペの子供を身籠っていました。ある時、オルテンシアの妹ペピータが、故郷コルドバからやって来ます。ペピータは、なんとか姉の力になりたいと考えていました。オルテンシアが懇意にしていた女性セリアは、ペピータに部屋を貸し、メイドの仕事も紹介してやります。勤め先は、会計士ドン・フェルナンドの屋敷です。フェルナンドはフェリペの知り合いで、ペピータの事情を理解していました。刑務所へ面会に訪れたペピータは、鉄格子を挟んでオルテンシアと再会します。喜びに泣き出すペピータにオルテンシアは、潜伏中のフェリペに手紙を届けてほしいと頼みます。刑務所を出たペピータに、姉の友人だという女性が声をかけます。女性は強引にペピータに偽造IDとお金を渡すと、フェリペの仲間と合流するよう指示します。そんな恐ろしいことはできないと怖気づくペピータでしたが、姉のためならと腹をくくります。
スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~のネタバレあらすじ:承
女性に指示された通り、バスに乗って小さな村に着いたペピータ。ひと気のない山道で、フェリペの使いだという青年、パウリーノと出会います。パウリーノはフェリペが撃たれて負傷したと言い、ペピータの雇い主、フェルナンドが元医者なので診せてほしいと頼みます。ペピータはフェルナンドのもとへ行き、義兄を助けてほしいと懇願します。フェルナンドはしぶしぶ了解し、フェリペの隠れ家へ向かいます。治療を受け、ベッドに寝ているフェリペは、ペピータにオルテンシア宛ての手紙を託します。隠れ家にはパウリーノもいました。ペピータとパウリーノは、互いに心惹かれ合います。しかしペピータは、パウリーノが政府から「黒い上着」と呼ばれている政治犯だと気づくのでした。フェリペの手紙はペピータからオルテンシアに手渡され、オルテンシアは夫の無事に安堵します。喜びも束の間、判事に呼ばれたオルテンシアと他の女性達は、反逆幇助の罪で死刑を宣告されます。弁護士を呼ぶ権利すら与えられず、翌月の審理を待つこととなりました。
スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~のネタバレあらすじ:転
ペピータに会いに来たパウリーノは、フェリペと共にフランスへ行くと言います。オルテンシア達の裁判が始まりました。新生スペインに共産主義は不要と言い切る判事は、被告達に最高刑を求刑。これはファシスト裁判だと反撃する声で騒ぎになり、混乱のまま審議は終了します。オルテンシアも死刑を言い渡されますが、生まれてくる子供に罪はないとされ、刑の執行は出産後となりました。姉を救いたい一心のペピータは、なりふり構わずフェルナンドに助けを求めます。共産主義者を嫌うフェルナンドの妻はペピータに司祭を紹介し、ペピータは藁にもすがる思いで司祭に手紙を渡します。ある晩、フェルナンド邸で食事会が開かれます。訪れたフェルナンドの父親は、総督と繋がりのある人間でした。ペピータは涙ながらに父親に訴えます。「どうか姉を助けてください」。一方、怪我が回復したフェリペが、正体を隠してオルテンシアの面会に刑務所を訪れます。夫婦は涙の再会を果たします。パウリーノもまた、ペピータに気持ちを打ち明け、2人はキスをします。のちにオルテンシアは刑務所内で出産します。生まれた女の子はテンシと名付けられました。「洗礼はしないわ」とオルテンシアは言います。
スリーピング・ボイス ~沈黙の叫び~の結末
その後、フェリペとパウリーノが音信不通になり、不安に陥っていたペピータ。ある日、男達に車に乗せられ政府によって監禁されます。そこには、拷問を受けて傷だらけになったフェリペとパウリーノがいました。ペピータは「どちらの男が“黒い上着”だ」と尋問され、ひどい拷問を受けます。必死に口を閉ざし、全裸で牢屋に入れられたペピータの前に、フェルナンドの父親が現れます。父親は冷酷にも「息子の名前は決して言うな」と口止めします。彼にオルテンシアを助ける気などなかったのです。ペピータは、オルテンシアに「フェリペとパウリーノはフランスに渡った」と嘘をつきます。その後、ついにオルテンシアの刑執行が告げられます。神父に最後の懺悔を求められたオルテンシアは、きっぱりと断ります。憤慨した神父は、生まれた娘テンシの洗礼申請を要求します。オルテンシアは答えます。「娘には独裁者と聖職者がいない国を」。最後の母乳を娘に与え、処刑場へ連行されていくオルテンシア。女性看守は、テンシをペピータに預けると約束します。姉の死を知らされたペピータは、託されたテンシを抱きしめ、いつまでも泣き続けました。大人になったテンシの声が語ります。ペピータは刑務所のパウリーノをひたすら待ち続け、出所後に39才で結婚。内戦とその後の出来事は、決して起こるべきではなかったのだと。
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