いちご白書の紹介:1970年アメリカ映画。ジェームズ・クネン(映画にも出演している)のコロンビア大学での学生生活をつづったノンフィクション『いちご白書』の、遊園地を軍事関連施設に建て直すことに端を発して学生が学部長事務所を占拠した1968年の抗議行動の記録を原作とする青春映画。撮影はコロンビア大学のあるニューヨークでなくサンフランシスコで行われた。恋と学生運動とスポーツの間で気持ちの揺れるサイモンをブルース・デイヴィソンが演じる。キム・ダービー(『勇気ある追跡』)、バッド・コート(『バード・シット』、『ハロルドとモード』)等が共演。プロデューサーは後に『ロッキー』シリーズや『レイジング・ブル』を製作することになるアーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフ。ジョニ・ミッチェルの代表作の一つ「サークル・ゲーム」のバフィー・セントメリーが歌ったバージョンが主題歌として用いられている。原題の“The Strawberry Statement”は、コロンビア大学教授だったハーバート・ディーンの「大学の問題について学生がイエスやノーの声を上げるのは、せいぜい苺が好きだと学生たちが言う程度の重要さしか私にはない」ということばを学生たちがからかって呼んだもの。映画『いちご白書』ではサイモンたちの大学の学部長がそのことばを言ったことになっている。103分の劇場公開版と109分の国際版が存在する。
監督:スチュアート・ハグマン 出演:ブルース・デイヴィソン(サイモン)、キム・ダービー(リンダ)、ダニー・ゴールドマン(チャーリー)、バッド・コート(エリオット[ボート部コックス])、マーレイ・マクレオド(ジョージ)、ボブ・バラバン(エリオット[ストライキのリーダーの一人])ほか
映画「いちご白書」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「いちご白書」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「いちご白書」解説
この解説記事には映画「いちご白書」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
いちご白書のネタバレあらすじ:起・食料係になる。
ボート部の練習に明け暮れる大学生のサイモンは、部屋にはロバート・ケネディのポスターを貼り、ベトコンには敬意を抱いているが政治には特に関心がない。それは同居する友人のチャーリーも同じ。
だが、サイモンの留守中にチャーリーが部屋に連れこんでセックスをしていた女子学生は、政治に関心をもて、ストライキに参加しろと二人に呼びかける。多くの学生が、大学が黒人の子供たちの公園を予備士官訓練所の本部にする計画であることに抗議してストライキを行い、学長室を占拠しているところだった。
今や大学構内は学生の解放区となっている。その構内に入るには学長が呼んだ警官たちの検問をくぐりぬけなければならない。大学の門の向こうにサイモンは気になる女子学生を見出す。人種差別丸出しの警官にことわりを入れて構内に入ったサイモンは管理棟に入っていく。
学生たちがたむろする学長室にもぐりこんだサイモンは何となく食料係にされた。学長用の洗面所で遊んでいるサイモンの前にさっき見かけた女子学生が現れる。リンダと名乗る彼女も食料係で、サイモンはリンダに従って脱出ルートを使って建物を抜け出す。
大学当局を支持する右派学生を逃れて味方の食料品店へ。店の主人は好きな物をもっていけというがなぜか強盗に襲われたふりを続ける。強盗に襲われたことにすれば保険が下りるのだ。食料をもって大学に戻った二人は大歓迎される。
いちご白書のネタバレあらすじ:承・初めての逮捕
サイモンは学長室からボート部の練習に通う。ボート部コックスのエリオットにストライキの武勇伝を話す。このことがバレたら退部だぞと言いながらもエリオットは女子学生がたくさんストライキに参加しているのが気になる。
エリオットもサイモンやリンダと公園での抗議活動に参加。公園を囲う柵を壊して警官たちと戦った学生たちはサイモンたちを含めて大量逮捕される。警察に着くとサイモンの同室のチャーリーまで逮捕されていた。気分が盛り上がるサイモンだったが、初犯なので家族に電話した後解放される。
いちご白書のネタバレあらすじ:転・リンダ
サイモンとリンダは学内の塔の上で話をする。ボート部なんて体制派よというリンダ。サイモンはそんなことはないと言う。サイモンが断固とした決意をもって運動に参加しているのではないのにリンダも気づく。でも、サイモンも迷っていた。
1年程前に大喜びで入学した大学の建物を壊すなんて、という思いがあるが、大学もアメリカも最低だとも思う。夜まで二人で過ごすが、リンダはサイモンに別れを告げてストライキの現場から去ることにする。このままサイモンとつきあうとブルジョワ的に堕落しそうな自分が怖いのだった。
リンダがいなくて寂しいが、サイモンはボート部の練習と大学管理棟を往復する生活を続ける。エリオットやチャーリーも退屈しながら学長室にたむろしている。ある日、ボート部の体制派学生ジョージがシャワー室でサイモンを殴り、口が切れて出た血をあえて服につけて大学に行くと、警察による暴力の証拠ということにされサイモンはもてはやされる。
ところが、そのジョージが一転してストライキに参加したと言い、サイモンに謝罪する。そして虚ろな日々を過ごしていたサイモンの前に、リンダが戻ってきてくれた。夜も昼も二人は話し続ける。
いちご白書の結末:警察突入
ストライキ中でも試験は受けざるを得ない。サイモンはジョージのノートで地質学の試験に備える。ところがそのジョージが体制派の連中に攻撃されて足の骨を折って入院した。警察は見ているだけだったと言う。当局への怒りを新たにしたサイモンは学部長室に行って不在の学部長の代わりに秘書に抗議する。
夜、全国ネットワークのテレビカメラも外に待機している。建物にたてこもる学生たちに学長は、出てこないと警察が入る、君たちは逮捕され停学になるとメガホンで警告する。警察に加えて州兵も大学に到着。ついに警察があっさりバリケードを破って建物に突入し、体育館に輪になって座り床を叩いて歌っていた学生たちに催涙ガスをふきかける。
そして学生を警棒で叩き排除していく。エリオットは小突き回され、体を寄せあっていたリンダとサイモンは引き離される。辛うじて警官から身をほどいたサイモンはリンダのいる方へめがけてダイブするが警官たちに捕まれてしまう。
以上、映画「いちご白書」のあらすじと結末でした。
「いちご白書」感想・レビュー
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この映画「いちご白書」は、タイトルそのものに、青春のロマンを秘め、末永く語り継がれるべき映画だと思います。
この映画は、1960年代後半の大学紛争を描く、我々映画ファンの間では、もはや伝説的な青春映画の傑作だ。
1970年度のカンヌ国際映画祭で、「M★A★S★H」と最後までグランプリを争い、残念ながら敗れたものの、審査員賞を受賞したことでも有名だ。そして、このタイトルそのものに、青春のロマンを秘めたこの作品は、末永く語り継がれるべき作品でもあると思う。
1970年代というのは、学生運動もヤマを越えたとはいえ、安保がらみの大学立法粉砕闘争で、全国の大学が揺れに揺れていた時代だ。
そんな時代の状況の中で、当時の若者の圧倒的な支持を得た映画としても有名だ。ボートが水面を滑るように進むシーンからこの映画は始まる。
そのボートのエイトの二番を漕ぐのが、主人公のサイモン(ブルース・デイヴィソン)。
彼は大学のボート部員、ノンポリ学生だ。彼の大学はストライキ中だ。学校側が、近くの公園に予備将校訓練隊のビルを建てようとしたのが、事件の発端だった。
そして、これに社会不安や政治問題が絡んで、事態は一層、深刻になって来ていた。サイモンはノンポリだから、ストライキのことは良くわからない。
それでも、友人から大学の本館は女子学生であふれていると聞いて、ノコノコと出かけていく。
そして、この大学構内で、彼は素敵な女の子を見つける。
彼女はリンダ(キム・ダービー)、女性解放委員だった。ただでさえ、見るもの聞くもの新鮮で、好奇心をかきたてられていたサイモンは、リンダと知り合って、大学構内の闘争生活も更に楽しくなっていく。
どーも、ヘラヘラした闘争青年なのだが、誰でも初めはこんなものかも知れない。
リンダと二人、食料集めに行ったり、抜け出してボートの練習もしたり、ボート仲間を闘争に引っ張り込んだり——。だが、激しい闘争の巻き添えをくらって、警察に逮捕されたあたりから、サイモンも少しずつ気付いて来る。「これは遊びじゃない」と——。
そして、リンダが彼のもとから去って行ってしまう。
理由は、彼が学生運動をゲームのように考えていると思ったからであり、リンダにはリンダで、ボーイフレンドがいたからでもあったのだ。こうして、サイモンの心はしだいに追いつめられてくる。
リンダと一緒の楽しい生活はもうない。
しかし、闘争からは身を引けない何かが、心の中にある。
彼は”自分の青春を賭けるべきもの”を、知り始めていたのだ。
そして、サイモンは、”自分との対話”を始める——。そんな時、反対派のボート部員に殴られて、彼は自分にとって必要なのは、”自分自身のために闘うこと”だと知る。
自分にとって出来ること、出来ないことをはっきり感じ、何をしなければならないかを理解したのだ。そんなサイモンを待っていたかのように、リンダが彼のもとへ戻ってくる。
サイモンは、彼女と同じ目的に向かって最善の努力を尽くすことに、今まで感じられなかった愛の実感と、生き甲斐とを見つけだすのだ。そして、二人は自分たちの正しいと信じたことをやり遂げようとする。
仲間たちと腕を組み、協力し、そして、大学側の不正が暴露されて、闘争はエスカレートしていく。
今、大学当局との緊張した状況の中で、同じ目的に向かう二人。
この時、初めて二人は、”真実の愛”を、語り合えたのかも知れない。しかし、時の歯車は回っていき、この美しい二人にも容赦はなかった。
大学当局が遂に、学生たちの強制排除に踏み切ったのだ。
体育館に立て籠もったサイモンたちに、警官隊と州兵が襲いかかってくる。
催涙ガスが充満し、棍棒が振り下ろされた。
リンダが殴打され、顔が鮮血に染まっていく——。それを見て、サイモンは初めて、自分から警官隊に飛びかかっていく。
サイモンは、自分の守らねばならぬものを知っていたのだ。
そして、それは、生命を捨てても守らなければならないものを——。心にズシリと重たいものを残してくれる映画だ。
ユーミンの歌がなかったらこの映画を最後まで見てなかったかもしれない。あの東大の68年闘争時代の腑に落ちなかった部分と重ね合わせてやっと自分なりにそうだったのかと思うことが出来ました。色褪せた思い出が鮮やかに蘇る♬ ♬