女と男のいる舗道の紹介:1962年フランス映画。舞台女優を夢見て夫と子供を残し家を出た女。夫の説得にも応じず離婚するが、結局は夢叶わず、金に困って娼婦となった末に悲劇的な結末をたどる。
監督:ジャン=リュック・ゴダール 出演:アンナ・カリーナ、サディ・レボ、ブリス・パラン、アンドレ・S・ラバルト、ほか
映画「女と男のいる舗道」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「女と男のいる舗道」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
女と男のいる舗道の予告編 動画
映画「女と男のいる舗道」解説
この解説記事には映画「女と男のいる舗道」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
女と男のいる舗道のネタバレあらすじ:起
パリのとあるカフェで女と男が言い争っていた。女はナナ、言い争っている相手の男ポールと彼の実家で暮らしていたが、舞台女優になる夢を叶えるため、彼との間にできた子供までも置き去りにして彼の家を出たのだった。なんとか彼女を説得しようとするポールだったがナナはポールへの不満をあらわにし、聞く耳を持たない。とはいうののの家を出たナナは女優になる足がかりもなく、レコード店で働いていたが生活は厳しい。同僚に借金を申し込むがあてにはならず、家賃が払えずアパートの鍵も取り上げられてしまい、管理人室からこっそり鍵を取り返そうとするも失敗に終わる。しかたなく映画館に足を運び、「裁かれるゝジャンヌ」を観る。処刑が言い渡されてジャンヌが涙するシーンでナナも涙を流す。
女と男のいる舗道のネタバレあらすじ:承
その後、ナナはカフェで写真家を名乗る男と会う。写真を撮り、映画関係者に見てもらうという男にナナは裸は嫌だというが、相手に気に入ってもらうためには必要だと説得し、ナナは男にと共に店を出る。
ナナは街の売店で女性が落とした金をネコババしようとした罪で警察に尋問されていた。金も住むところもないナナは警察を出た後、娼婦が立つ舗道を歩き、そこで声を掛けられた男に初めて体を売る。そうして娼婦となったナナは、ある日娼婦仲間のイヴェットと行ったカフェでラウルという男に出会う。
女と男のいる舗道のネタバレあらすじ:転
娼婦としてもなかなか稼げないナナは、イヴェットに紹介してもらった家政婦の仕事を得ようとカフェで手紙を書いていた。そこへラウルが現れ、自分がもっと稼げるようにしてやると持ちかける。ラウルはいわゆるポン引きで、組織としての売春のノウハウをナナに教え込み、ナナはラウルの管理の下で娼婦としての仕事を始める。
カフェに入ったナナは隣の席で読書をしている初老の男が気になって声をかける。本を読むことが仕事なのだというその男は哲学者だった。ナナは言葉と思考についての疑問を彼に投げかけ、彼との問答によってナナは計らずも哲学していた。
女と男のいる舗道の結末
その後、ナナはいつかラウルと訪れたビリヤード場で出会った男と愛し合うようになる。一緒に暮らそうと約束しあうが、ナナはラウルによって他の組織に売り渡されることになる。ラウルは客をえり好みするナナを見放したのだった。嫌がるナナを無理やり車に乗せ、取引の場所までやってきたラウルは金と引き換えにナナを相手に渡すが、金が足りないと再びナナを捕まえる。相手は銃を構えて脅すがラウルはナナを盾にするように抱えて金を要求する。そんなラウルに向けて相手は容赦なく発砲、ナナが銃弾を受け、相手はそのまま去っていく。ラウルもまた助けを求めるナナを撃ち、その場から去る。
銃弾に倒れたナナは一人、路上に置き去りにされたままだった。
この映画「女と男のいる舗道」は、ジャン=リュック・ゴダール監督の傑作の一本だと言えると思う。
あるいは、この監督の一番いい部分の出ている映画だと言えるかもしれない。
もうひとつ言えば、なんとなく解るような映画だ。
じっと観て、セリフを聞いていると、まるで詩を聞いているような気分になる。
そして、アンナ・カリーナの私娼ぶりが、とても可愛い。
映画の冒頭、いくつかの受賞名が出たあと、「B級映画に捧ぐ」といった言葉が出る。
全体が12章に分けられていて、第1章は、アンナ・カリーナ扮するナナが、夫と別れるくだりから始まる。
第2章では、自立してレコード店で働くナナだが、やがて、私娼としてパリの舗道に立つようになる。
モノクロームのパリの風景が、ドキュメンタリー・タッチで映し出され、セリフには詩のような比喩と間合いとが含まれている。
挿入されている音楽も効果的で、芸術的、かつフランス映画の素晴らしさを感じさせてくれる。
特にナナが、カフェで一人の老人と話すシーンは、哲学的で、強く印象に残る。
いつも明るくふるまっているナナだが、時折、ふっと”孤独な影”を見せることがある。
どこか刹那的で、それでいて優しさを感じさせるナナを、アンナ・カリーナは実に繊細に演じていると思う。
ラスト・シーン、ナナはヒモの男とヤクザとのいざこざに巻き込まれ、拳銃の弾を浴びて、路上につんのめって死ぬ。
ナナの若くて白い肉体に、めり込んでいく銃弾が見えるようで悲しい——-。