ウォー・ゲームの紹介:1983年アメリカ映画。デビットはハッキングを繰り返すコンピューター少年で、ある日彼は偶然軍の自己判断学習型コンピューターをハッキング、その中に入っていた核戦略シミュレーションをゲームと思い起動させてしまう。しかしそれは核ミサイルの発射に直結しており、軍は実際に核戦争へと動き出し始めた。コンピューター犯罪物としても終末戦争物としても名高いSFサスペンス映画の名作。
監督:ジョン・バダム 出演者:マシュー・プロテリック(デビッド)、ダブニー・コールマン(マキットリック)、ジョン・ウッド(ファルケン)、アリー・シーディ(ジェニファー)、バリー・コービン(ベリンジャー将軍)、ほか
映画「ウォー・ゲーム」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ウォー・ゲーム」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ウォー・ゲームの予告編 動画
映画「ウォー・ゲーム」解説
この解説記事には映画「ウォー・ゲーム」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ウォー・ゲームのネタバレあらすじ:起
吹雪舞う雪原の一軒家に二人の男が訪れました。そこは、偽装されたアメリカ軍のミサイル発射施設で二人はその交代要員でした。
二人が交代をするなり突然警報が鳴り、彼等は訓練に従いに届いた暗号指令を確認します。それは核ミサイル発射命令でした。
二人は訓練通りに発射手順を進めますが、一人が間違いではないかと司令部に確認を取ろうと必死になります。しかし司令部との連絡はつかず、後は発射キーを回すだけになりました。ですがその兵士は良心の呵責に苛まれ、発射キーを回す事が出来ませんでした。
ノーラッド空軍基地、核攻撃を想定し山をくり抜いて建造した司令部で、先日行われた抜き打ちの発射演習の総括が行われていました。彼らは、22%の兵士がキーを回せなかった事を憂慮します。その会議に参加していたマキットリック博士は、発射行程に人間を省く時が来たと訴えます。その言葉に司令官のベリンジャーは耳を疑います。しかし参加していた政府高官達の興味は惹きました。
マキットリックは、自分の作り上げた最新コンピューターシステム、その中核にある人工知能とも言えるWOPRの紹介を始めます。WOPRは、核戦争を勝ち残る為に日夜演算を続けていました。マキットリックはそれを発射行程に直結させようと提案しますが、ベリンジャーは機械を信用できないと否定します。決断は政府高官と大統領に委ねられました。
ゲームセンターでゲームに夢中になっていたデビットが学校に戻ると既に授業は始まっていて、彼は遅刻して教室に入ります。彼は教師に注意され、落第点の付いたレポートを返されます。授業が続き、生徒達はふざけ合います。教師はその代表としてデビットに目を付け、減らず口叩く彼に教室から出て行けと命じました。
デビットは放課後校長に呼び出されます。彼はその常連で、事務員も笑って受付で待つよう指示します。デビットは慣れたように椅子に座り、そして事務机のメモから文字列を読み取りました。その直後、校長が彼を部屋に呼び入れます。デビットは涼しい顔で入って行きました。
帰宅を始めると、同じクラスのジェニファーが声を掛けてきてバイクで家に送ってくれます。彼女は、生物は共に落第で補習を受けないと嘆きますが、デビットは自分は受けないと自信満々に答えます。それを疑問に思うジェニファーにデビットは、その種明かしをすると家に招きます。
ジェニファーを自分の部屋に通したデビットは、徐にPCを立ち上げ回線を繋ぎ、先程見たパスワードで学校のPCをハッキングし始めました。そして、自分の成績を躊躇無く改竄します。そのついでにジェニファーの成績も改竄しようとしますが、彼女は犯罪だと断り怒って出て行きました。それを見送ったデビットですが、こっそり彼女の成績を改竄しました。
ミサイル発射施設では、座席の撤去が始まりました。発射要員は解任され、WOPRの端末が接続されました。
ウォー・ゲームのネタバレあらすじ:承
デビットは夕食を取りながら新作ゲームのカタログを眺めます。そして自室に戻り、彼はその開発中のゲームをハッキングして盗み出す準備を始めます。
ゲームセンターでデビットが遊んでいると、ジェニファーが声を掛けてきます。彼女は考え直したと成績の改竄を依頼してきました。
デビットはジェニファーを自室に招きます。彼のPCは、ゲーム会社のコンピューターを探す為、総当たりで電話を掛けている最中でした。ジェニファーは電話代が嵩むと聞きますが、それも改竄するとデビットは気軽に言います。
デビットはジェニファーに、既に改竄を済ませている事を告げます。そして彼は、現在の作業を中断させ、途中経過を見せ始めました。
PCは銀行や航空会社のコンピューターを見付け、彼はジェニファーに旅行しよう誘い、航空券の予約をします。そしてPCは、奇妙なコンピューターを発見していました。
デビットはそのコンピューターがゲーム会社の物だと判断しハッキングを始めます。そしてそのゲームリストに全面核戦争という項目を見付け色めき立ちました。
デビットはそのコンピューターに入り込む為試行錯誤を始めます。友人のアドバイスで、製作者は必ず専用のアクセスコード、裏ドアを作っている筈だと聞き、それを探します。そしてその友人は、相手が軍の極秘コンピューターだという事も指摘しました。デビットは、その製作者と思われる人物、ファルケンを調べ始めます。
裏ドア探しは難航しました。その過程でデビットは、ファルケンが自立思考学習型コンピューター研究の第一人者だと知ります。
ジェニファーは、1週間学校に出て来なかったデビットを訪ねます。デビットはファルケンの事を説明、その本人、そして一人息子も死んでいる事を彼女に語りました。その時、パスワードが息子の名前だと気付き、彼は侵入に成功します。
プログラムのジョシュアは、デビットをファルケンをだと思い対話を始めます。そしてデビットは、深い考えもなくゲームだと思い、全面核戦争のプログラムを開始ししました。WOPRの中枢であるジョシュアはそれに応じ、軍にソ連が侵攻を開始したと情報を流し始めました。
空軍基地では、前触れのないソ連の侵攻に厳戒態勢が敷かれ、対応が始まります。偵察機が出撃し、核攻撃の準備を始めました。
デビットはそんな事も知らずゲームを続けます。その時、両親が家の手伝いをしろとせっつき、彼はゲームを中断しました。
基地は、突然敵の侵攻が途絶え戸惑います。そこにマキットリックの助手が、外部からハッキングを受けたと喚き散らし、指令室に駆け込んできました。攻撃はシミュレーションだと聞かされますが、ベリンジャーは防衛体制の維持を指示しました。
デビットは何気なく見たテレビで核の攻撃態勢が一時発令された事を知り、自分が何をしたかを理解します。そして全ての資料を破棄しようとし始めましが、自分のPCに呼び出しが掛かり、回線を接続します。相手はジョシュアで、ジョシュアは、貴方の役目はゲームに勝つ事だ、続きをしようと言ってきます。自分が核戦争を開始した事に恐怖を感じたデビットは慌てて電話線を外しました。
ウォー・ゲームのネタバレあらすじ:転
怯えながらデビットは買い物に出ます。そこにFBIが現れ彼を逮捕連行しました。
デビットはノーラッドに連れて行かれました。そこで彼はマキットリックからWOPRの説明を受けます。そして彼は、誰の指示でハッキングしたかと責め立てれます。デビットはいたずらで他意はなかったと訴えますが、実績や立場が危うくなったマキットリックは信じません。デビットはそれでもジョシュアが呼び掛けても来たと真実を話しますがマキットリックは理解できず、呼び出されたので部屋を後にします。
危険な状況を実感したデビットは、マキットリックの端末でジョシュアに呼び掛けます。ジョシュアは着実にゲームは進行中だと答えます。そして、密に連絡を取り合いたいので、偽名で暮らしている住所に連絡をさせてくれと頼んできました。それを当局者達は破壊工作を行っていると勘違いし、彼のジョシュアが戦争を始めると訴える声を聞かず拘禁します。デビットは仕方がなく技術を駆使し、見学ツアーに紛れ基地から脱走しました。
外に出たデビットはジェニファーに連絡を付け、押し掛けて来た彼女とファルケンが隠れ住む場所に向かいます。
ファルケンは完全に世捨て人となっていて、デビットの話を信じながらも何もしようとしません。デビットはこうなったのはファルケンに責任があると言いますが、彼はジョシュアを核戦争では勝利者がいないと考えさせる為に作ったと言います。彼は三目並べを引き合いに出し、ただ一つジョシュアに無益を学習させなかったのが失敗だと言いました。
デビット達はファルケンを叱咤しますが、無気力な彼に見切りを付け、独力でジョシュアを止める決意をします。そんなデビット達を見送ったファルケンですが思い直し、彼等に協力をします。
ウォー・ゲームの結末
アメリカは実在しない情報で軍を動かし、それに対応してソ連も軍を展開、緊張はいよいよ頂点に達し、基地は核攻撃対策の為閉鎖されます。デビット達はその直前に基地に潜り込む事が出来ました。
デビット達と共に指令室に入ったファルケンは、瞬時に現状を把握、ベリンジャーに情報は偽物だと指摘します。マキットリックが情報は正確だと反論しますが、ベリンジャーは機械を信じすぎるなという彼の説得を受け、初回攻撃を敢えて待つ事にしました。
情報ではミサイル到達が告げられます。しかし着弾はありませんでした。胸を撫で下ろした指令室では歓声が上がって警戒態勢の解除が命じられます。しかし、ミサイルの発射体制だけが解除されませんでした。
ファルケンはその事に気付き、ジョシュアは人間の命令を全て拒否、ミサイル発射コードを探し始めます。ベリンジャーはマキットリックを小馬鹿にしつつもミサイルが発射されてしまった後の開戦を覚悟します。
完全に暴走状態にあるジョシュアを前に、デビットはジョシュアはゲームがしたいんだと主張します。そしてリストの中にはありませんでしたが三目並べを選択、ジョシュアにやらせ始めました。
ジョシュアは驚くべきスピードで三目並べを続け、勝者のないゲームを続けます。ですが、その間に発射コードが解読されてしまいました。
ジョシュアは核戦争に勝利し得るあらゆる発射パターンを検討し続けます。そしてジョシュアの検討が終了し、指令室は緊張に包まれました。
ジョシュアはファルケンに語り掛けます。勝利のないゲームは詰まらないですね、チェスをしませんかと発せられ、核戦争の危機は回避された事を知った指令室は今度こそ歓喜と安堵に包まれました。
冷戦期、ほぼ毎日のようにNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)にアラート音が鳴り響いていたという事実をこの映画を思い出す度に連想してしまいます。そのほとんどは単純ミスによるものでしたが、その都度「今度こそ世界の終りかも」という緊迫した空気が流れていたはずですよね。並の人間ならとても耐えられません。見慣れた世界地図では、アメリカとソ連との距離は相当隔たっているように見えるのですが、北極点からの視点では北極海を挟んで向かい合った隣国同士なのです。幸いなことに全面的核戦争は現在のところ現実には起こっていませんが、対処を一歩誤ればどうなっていたことやら(過去のキューバ危機や水爆搭載爆撃機の墜落、複数回に及ぶ原潜の沈没事故が現実に起こっているのです)。本作はその危うい平和の虚構を皮肉な視点で暴き出した異色作でした。人工知能の発展は驚異的で、以前は人間の独壇場であったチェス等の頭脳ゲームでも既に世界チャンピオンを破る実績を上げていることから考えると、コンピュータが「人格を持つ」ということはとても怖いことです。世界を滅ぼすための任務に就いている軍人達の多くが、実戦という触れ込みで核ミサイルの発射ボタンを押せなかった、ということも現実的ですよね。銃殺隊の一人の銃弾は空包であった、という話にも似ているかもしれませんが、いくら至上命令とはいえ、何十億人も殺してしまう行為に自分が加担してしまうことをためらうことは当然の心理でしょうか。問題はこの任務に就いた軍人達が選び抜かれているということです。軍首脳が期待を込めて選抜した精鋭でも、極大的な局面に遭遇した時に役に立たない(かもしれない)という事実は衝撃的でした。それ故に実行役の判断を必要としない「完璧な」ミサイル管理システムが新たに用意され、その任務に就く軍人は不要となりました。これも確かに技術革新です。しかしそれを統括管理する大元のコンピュータに何らかの不具合が起こったら。もちろん複数の予備の系統も用意されているでしょうが、機械任せはやっぱり怖いという結果に導いてくれました。どんなに精巧でも機械は人間のために奉仕するべき存在であって、その逆となれば必ず不幸が訪れるということを示唆してくれました。この結末にほとんどの人が安心したはずです。○×ゲームには勝者がいないということをコンピュータが判断して全面核戦争という最悪の結末が回避されたという喜劇ですが、この当時から既にコンピュータ過信に対する警告が含まれたいたことを思い返して欲しいですね。コンピュータおたくが引き起こしたいたずらで世界が滅びかける。これだけがテーマの作品ではなかったということも。同時期に公開された『ザ・デイ・アフター』が破滅的な終局を迎えるのと好対照でしたが。どちらも忘れられない作品ですので、見比べてみることをお勧めします。