2010年の紹介:1984年アメリカ映画。SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』の続編です。前作で行方不明となった宇宙船ディスカバリー号の行方を追うため、米ソ合同調査団が木星へ向かうのですが…。前作では明らかにされなかった謎が次々と明らかになっていきます。
監督:ピーター・ハイアムズ 出演者:ロイ・シャイダー(ヘイウッド・フロイド)、ボブ・バラバン(R. チャンドラ)、ジョン・リスゴー(ウォルター・カーナウ)、ヘレン・ミレン(ターニャ・カーバック)、キア・デュリア(デヴィッド・ボーマン)、エリヤ・バスキン(マキシム・ブライロフスキー)、ダグラス・レイン(HAL9000の声)ほか
映画「2010年」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「2010年」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「2010年」解説
この解説記事には映画「2010年」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
2010年のネタバレあらすじ:起
2001年、月のティコクレーターで発見された謎の石板、通称“モノリス”の謎を解明するため、木星探査船ディスカバリー号はデヴィッド・ボーマン船長(キア・デュリア)以下5人のクルーと人工知能HAL9000(声:ダグラス・レイン)を乗せ、モノリスが謎の電波を発している先の木星へと飛び立ちました。しかし探索は失敗に終わり、原因不明の暴走を起こしたHALはクルーを次々と殺害、生き残ったボーマンは木星の衛星イオの軌道上に巨大なモノリスを発見、「凄い!降るような星だ」と言い残したのを最後に消息不明となりました…。
あれから9年後の2010年。かつてディスカバリー号の指揮を執っていたアメリカ宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士(ロイ・シャイダー)は探索失敗の責任をとって評議会を去り、今ではハワイ大学の学長となっていました。ある日、フロイド博士の元にソ連の科学者が訪れ、ソ連の宇宙船アレクセイ・レオノフ号によるディスカバリー号探索のための米ソ合同調査を申し出ました。フロイド博士はディスカバリー号を設計したウォルター・カーナウ博士(ジョン・リスゴー)、やHAL9000の設計者R.チャンドラ博士(ボブ・バラバン)らレオノフ号に乗り込み、木星へ向けて飛び立ちました。
2010年のネタバレあらすじ:承
木星の衛星エウロパへ着いた一行は、そこに生命の兆候らしきもの発見しましたが、突然謎の電磁波放射により探索は妨害されてしまいます。フロイド博士はこれを何者かによる警告だと考えました。
その後、レオノフ号は衛星イオの軌道上で無傷のディスカバリー号を発見しました。カーナウ博士とソ連人飛行士マキシム・ブライロフスキー(エリヤ・バスキン)が内部に潜入、HAL9000を再起動しました。ディスカバリー号の近くには巨大なモノリスが浮遊しており、フロイド博士の反対を押し切ってソ連側がマキシムをモノリスへ接近させたところ、突然謎の電磁波が照射され、マキシムは作業用ポッドごと消滅させられてしまいました。電磁波はそのまま地球へ向かっていきました。実は電磁波の正体は、モノリスとの邂逅によりエネルギー生命体と進化を遂げていたボーマン船長であり、地球に残していた家族に別れを告げるために地球に向かったのです。
2010年のネタバレあらすじ:転
チャンドラ博士はHALの暴走した原因を突き止めました。ディスカバリー号が飛び立った時、モノリスの存在はボーマン船長と副船長には伝えられず、他のクルーのみに伝えられたのですが、ホワイトハウス側がHALにもその秘密を伝えてしまっていたせいで、HALは情報を知る者と知らない者との間で板挟みになっていたのです。その頃、地球ではかねてから緊張状態にあったアメリカとソ連が遂に全面戦争に踏み切り、フロイド博士らアメリカ人クルーはディスカバリー号に乗り移り、レオノフ号のソ連人クルーとは別々に帰還するよう命令が下されました。その時、HALが「ここは危険、2日以内に木星から立ち去れ」というメッセージを受信しました。発信源はボーマン船長であり、フロイド博士の前で胎児から老人まで様々な姿に変身、「素晴らしいことが起こる」と告げて姿を消しました。フロイド博士は地球からの命令を無視してレオノフ号に乗り込み、カーバック船長(ヘレン・ミレン)にもこの事実を告げ、全員がレオノフ号に乗り込んだうえでディスカバリー号をブースター代わりに使い、一気に地球へと帰還する作戦を立てました。しかし進路変更にはHALの能力が必要で、ディスカバリー号を捨てることはすなわちHALも捨てることになるのです。
2010年の結末
突然巨大モノリスが姿を消し、木星に巨大な黒点が現れました。黒点の正体は大量のモノリスの集合体であり、木星を侵食しては圧縮しようとしているのです。フロイド博士は不安がるチャンドラ博士に、HALに“嘘をつく”よう指示しました。HALはなぜ進路変更をするのかチャンドラ博士に問い、チャンドラ博士はディスカバリー号を犠牲にしなければクルー全員が死ぬのだと真実を伝えました。事情を理解したHALはチャンドラ博士に感謝の意を伝え、全員が乗り込んだレオノフ号を無事地球への帰還ルートへと導きました。木星は恒星として生まれ変わり、第二の太陽となったのです。ディスカバリー号に残ったHALにボーマン船長が再び現れ、地球に向けたモノリスからのメッセージを送信させました。「これらの世界はすべてあなた方のもの。ただしエウロパは除く。エウロパへの着陸を試みてはならない。すべての世界を皆で平和のうちに利用するのだ」このメッセージを受け取ったアメリカとソ連は争いを止め、世界は平和へと歩み始めました。
そして数千年後。木星の衛星だったエウロパは緑豊かな惑星へと生まれ変わっており、新たな生命が生まれ始めていました。そこには巨大なモノリスがそびえ立っており、あたかもいずれ訪れるであろう知的生命体との出逢いを待っているかのようでした。
「2010年」感想・レビュー
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アーサー・C・クラークのスペース・オデッセイ・シリーズは,本当に宇宙の誕生を考えさせられる秀逸の作品だと思います。特に,2001年の続編である2010年は,モノリスの意味が少しずつ見えてくる,しかもそれをコンピュータではなく人類が解明していく,いやむしろ人類でなければならないと感じました。そして,次は2061年へとつながるわけですね。
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我々映画ファンを魅了したSF映画の傑作「2001年宇宙の旅」の続篇が、この映画「2010年」だ。
厳密に言えば、続篇というより解決篇だろう。スタンリー・キューブリック監督による前作は、物語性を極度に排し、素晴らしい映像のシンフォニーで、独自の宇宙哲学を伝えたものだった。
何より、真理の判断を観る者自身のイマジネーションに委ねたところが、我々の興味を嫌が上にもかき立てたのだ。
それに対して、この娯楽職人監督のピーター・ハイアムズが撮ったこの作品は、よりわかりやすく、全ての謎を具体的に解いてみせる。
胎児となって宇宙へ消えた乗組員は?
叛乱を起こしたコンピュータは?
地球や月にあった石板の謎は? ———-。ロイ・シャイダー扮するアメリカの科学者たちが、ソ連の宇宙船に同乗し、謎の解明のために木星へと向かう。
前作のあまりにも壮大なスペクタクルと興奮に対決するには、ピーター・ハイアムズ監督としては、この手でいくしか方法がなかったのだろうと思う。
しかし、米ソの関係悪化が、宇宙船の乗組員にまで影響を及ぼし、石板の異変が起きるあたりは、作者のテーマと思想が露出して、我々の前作に対するイメージまで、否定してしまう不満もある。
しかし、「スターウォーズ/帝国の逆襲」や「レイダース」でアカデミー特殊効果賞を受賞したスタッフによる特撮は、実に見事だ。
宇宙船のドッキングや、木星を覆う石板のスペクタクルにも目を見張らされる。まあ、前作との比較はさておいて、この作品はこの作品なりに、ドラマチックな宇宙サスペンスとして楽しめばいい娯楽作品なのだ。
「2001年宇宙の旅」を見ていないと意味のない作品。見ていない人はまずそちらから見てください。HALの再起動シーンは、本当にいいのか、と首を傾げながら見入ってしまいます。ただHALの真実を知れた事はよかった。ボーマンの行末とラストには賛否があると思いますが、これぞSFだといえる内容です。