映画「007 消されたライセンス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
007 消されたライセンスの紹介：1989年イギリス作品。『007』シリーズ第16作にして4代目ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンの卒業作となった作品です。東西冷戦時代の末期を舞台に、親友の結婚式のためアメリカに飛んだボンドは密入国した麻薬王と死闘を繰り広げます。
監督：ジョン・グレン 出演者：ティモシー・ダルトン（ジェームズ・ボンド）、キャリー・ローウェル（パメラ・ブービエ）、ロバート・デヴィ（フランツ・サンチェス）、タリサ・ソト（ルペ・ラモーラ）、デヴィッド・ヘディソン（フェリックス・ライター）、ロバート・ブラウン（M）、デスモンド・リュウェリン（Q）ほか
この解説記事には映画「007 消されたライセンス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
MI6（英国秘密情報部）の歴戦の諜報員ジェームズ・ボンド（ティモシー・ダルトン）は、親友であるCIA（アメリカ中央情報局）のフェリックス・ライター（デヴィッド・ヘディソン）の結婚式のためアメリカ・フロリダに飛びました。しかし、結婚式当日になって、DEA（麻薬取締局）が長年追い続けている南米の麻薬王フランツ・サンチェス（ロバート・デヴィ）がアメリカに密入国したとの連絡が入り、ボンドはライターと共にヘリコプターで現場に飛び、サンチェスの乗ったセスナ機をヘリで釣り上げて捕らえることに成功しました。ボンドとライターはスカイダイビングで新婦デラ（プリシラ・バーンズ）が待つ教会に降り立ち、結婚式は無事に執り行われました。参加者の祝福の中、ライターは結婚祝いのライターをボンドにプレゼントしました。しかし、護送中のサンチェスは予め買収していたDEA捜査官エド・キリファー（エベレット・マクギル）の手助けで護送車から逃亡しました。
サンチェスは手下のミルトン・クレスト（アンソニー・ザービ）らとともにライター夫妻を襲撃、デラを殺害したうえにライターをサメの泳ぐ池に吊るして片足を食いちぎらせてしまいました。帰国の途につこうとしていたボンドは空港でサンチェスの逃亡を知り、急いでライターの自宅に向かい、重傷のライターを病院に連れて行きました。親友の復讐を誓ったボンドはクレストの倉庫に潜入して麻薬を発見、その場にいたキリファーを捕えてサメの餌食にしました。しかし、本国からボンドの上司M（ロバート・ブラウン）が渡米してボンドを呼び出し、本国での別の任務に就くよう指示しました。しかし、ボンドはライターの復讐を優先、“殺しのライセンス”を返上して逃亡、単身でサンチェスと決着をつける決意をしました。
ボンドはクレストの船に潜入して大金を奪い、サンチェスを追うため女性パイロットに扮して潜入していたCIAのパメラ・ブービエ（キャリー・ローウェル）と手を組みます。休暇のため渡米していたMI6の発明家Q（デスモンド・リュウェリン）から秘密兵器を受け取ったボンドはサンチェスの愛人でありながらも彼を憎んでいるルペ・ラモーラ（タリサ・ソト）の協力を得て、奪った大金を軍資金としてフリーの麻薬密売業者を装い、サンチェスに接近することに成功しました。しかし、ボンドは同じく取引相手を装って潜入していた香港の麻薬取締官クワン（ケリー・ヒロユキ・タガワ）の作戦を誤って妨害してしまい、クワンらはサンチェスのボディガードのヘラー大佐（ドン・ストロード）に殺害されてしまいました。その後、ボンドらの差し金によりクレストは裏切り者とみなされてサンチェスに殺害されました。
うまいことサンチェスの信用を得たボンドは、瞑想センターを隠れ蓑としたコカイン精製工場への見学に参加しました。サンチェスはこの工場でガソリンにコカインを混ぜてタンクローリーに積め込み密輸しようとしていたのです。しかし、ボンドはサンチェスが用心棒として雇った殺し屋ダリオ（ベニチオ・デル・トロ）に正体を見破られてしまい、咄嗟に実験室でコカイン入りのガソリンに火を付け、コカイン工場は大爆発を起こして火の海と化しました。ボンドは潜入していたパメラの協力を得てダリオを倒して脱出、サンチェスも武器を盗んで裏切ろうとしたヘラーを殺害して脱出しました。ボンドとパメラはセスナでサンチェスのタンクローリーを追い、荒野でのカーチェイスの末にサンチェスの乗ったタンクローリーを横転させました。ボンドはライター夫妻からもらった結婚祝いのライターで気化したガソリンに火を付け、サンチェスはタンクローリーごと炎に包まれて死亡しました。MI6への復帰が決まったボンドはフロリダでライターを見舞い、ルペから感謝されるも迷わずパメラの元へ向かいました。
香港の捜査官のエピは必要だとは思えなかった。サンチェスの顧客が中国人だから入れたんだろうけど。CIAの女よりサンチェスの愛人のほうが綺麗だったが、アクションができないせいかあまり出てこなかった。サンチェスはいかにも残虐だが、部下や盟友も信用できない孤独な感じが他の作品のボスとは違っていた。結局、その猜疑心の強さがボンドに付け入られる隙となって滅ぼされたわけだが。
007シリーズの中で評判も悪く、興行収入もパッとしなかったこの「消されたライセンス」。
評判が悪かった理由は、ボンドが親友の復讐のため007を辞するので、任務ではなくなり、必殺仕事人と化すため、ボンド本来のクールで洗練された味わいがなくなってしまったから。
興行収入が悪かったのは、当時007にライバル映画が多く出てきたためだったと思う。
1980年代後半に公開されていたアクション物といえば「インディ・ジョーンズ」「ダイ・ハード」「リーサル・ウェポン」シリーズなど、ボンド・ムービーの影響を受けているが、明らかに面白さやスケール感が上回っているアクション物が多く、007はちょっと古臭い印象を与えていたのだと思う。
前作「リビング・デイライツ」で颯爽と登場したニュー・ボンド 、ティモシー・ダルトン。
それまでのユルく年寄り臭くなった感じのロジャー・ムーアから一転、クールでタフな感じで評判もよく、この「消されたライセンス」にも出演したが、たった2作で降板してしまった。
冷戦構造が終焉を迎え、それまでのスパイもののプロットが成り立ちにくくなり、苦慮しているときにボンドになってしまったのが、ダルトンの悲劇であろう。
この作品は、それまでのボンドシリーズではあまりなかった残酷な描写もある。
親友フェリックス・ライター（デヴィッド・ヘディソン）は、鮫に足を食いちぎられる、減圧室でのクレスト（若き日のベ二チオ・デル・トロ）は、むごたらしい最後を遂げ、麻薬王サンチェス（ロバート・ダビィ）は、炎につつまれて死ぬ。
そんなリアルでダークな描写もあったため、各国のレイティングでの年齢制限も上がってしまい、この「消されたライセンス」は、アメリカでは、007シリーズのワースト興行成績を上げてしまうことになる。
ティモシーダルトンのボンド第二弾にして最後の作品。見た目もよく、アクションも申し分ない彼だったが、長年オファーを断ってきた５代目007ピアース・ブロスナンが出演を決めたため、この作品で引退となってしまった。
さて、この映画だが作風がやや暗い印象をうけた。CIAの友人が足を敵に食われるなど拷問の描写がいつもに比べてぐろてすグロテスクであった。007にはやや珍しいほどに怒りに任せて復讐を始めたようにおもえた。だが、作中のかれのアクション、表情はピアース作品特有のハードボイルドさがありピアースのボンドの最後としてとても良いものだった。