ボディ・ダブルの紹介:1984年アメリカ映画。ブライアン・デ・パルマがいつものようにヒッチコックを真似て作ったエロチック・サスペンス。今回は「めまい」と「裏窓」を模倣し、ポルノ女優が出てくるなど、セクシーな要素を全面に押し出している。
監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:クレイグ・ワッソン、メラニー・グリフィス、グレッグ・ヘンリー、デボラ・シェルトン、デニス・フランツ、ほか
映画「ボディ・ダブル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ボディ・ダブル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ボディ・ダブル」解説
この解説記事には映画「ボディ・ダブル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ボディ・ダブルのネタバレあらすじ:起
低予算のホラー映画を撮影中、売れない役者のジェイクは安っぽい吸血鬼の扮装をして棺桶に入っていましたが、突然苦しみだして撮影は中断。ジェイクは閉所恐怖症だったのです。「おかげでスケジュールがメチャクチャだ」と散々スタッフに毒づかれて帰宅すると、恋人が他の男と浮気中でした。思わず出てゆきましたが、その部屋は恋人のものなので住むところもなくなります。公私共にどん底に落ち込んだジェイク。しかし、幸い、あるワークショップで新しい友達ができます。そのサムという男は大金持ちで、住んでいるところも豪邸。おまけに隣りに住んでいるグロリアはやたらに体を露出させて窓辺にいるため、望遠鏡でのぞき放題。うらやましい環境でした。
ボディ・ダブルのネタバレあらすじ:承
サムが地方公演に出るためにその家の留守番を頼まれたジェイクは毎晩彼女の様子をのぞいていましたが、グロリアがある男に脅されていることを知ります。彼女に惹かれていたジェイクは心配になり、外出したグロリアを尾行します。下着を買った後、浜辺を散歩するグロリア。そこにアメリカ原住民の男が現れ、彼女のバッグをひったくります。ジェイクはその男を追いますが、トンネルの中で閉所恐怖症の発作を起こし、取り逃がします。しかしおかげでグロリアと肉体関係に。
ボディ・ダブルのネタバレあらすじ:転
サムの家に帰ったジェイクはまた望遠鏡でグロリアの家をのぞきますが、あのひったくりが彼女の寝室に忍び込むのを目撃します。あわてて家を飛び出すジェイク。グロリアの家に入ると、彼女は殺されていました。捜査の甲斐もなく、犯人の行方は分かりません。自責の念から自分でも犯人を探そうとしていたジェイクは、ある日ポルノビデオを見て、その出演者がグロリアと同じ踊りをしていることに気づきます。プロデューサーを装ってそのポルノ女優ホリーと話をすると、やはり彼女が依頼を受けてグロリアの部屋で踊っていたのでした。
ボディ・ダブルの結末
そしてジェイクがサムからの電話に応答している時、ホリーはサムが依頼主だと察知。逃げるためヒッチハイクをしようとしたところへあのアメリカ原住民の男がまた現れ、ホリーを連れ去ります。自分がハメられていたことを知ったジェイクは、その後を追います。男は墓場へゆき、ホリーを穴にうめようとしていました。男と乱闘するうち、被っていたマスクが取れ、素顔が現れます。それはサムでした。一旦は穴に落ち込み殺されそうになるジェイクですが、閉所恐怖症に打ち勝ち、サムに反撃。サムはそばの水路に落ちてしまいます。恐怖症の治ったジェイクは新作の撮影に入りました。
この映画の題名の「ボディ・ダブル」というのは、映画用語で演じる俳優の体(ボディ)の部分の代役の事で、スターは顔のアップで演技をし、ヌードのラブシーン等は肢体の見事なボディの代役で撮影をする事を指しています。
この映画は、映画界を背景として謎と猟奇の殺人事件が展開していく物語です。
売れない三流役者(クレイグ・ワッソン)が、閉所恐怖症のために失業してしまいます。
そして、彼は友人の紹介で知り合った男に頼まれて、豪華な家の留守番役を引き受ける事になり、そこから望遠鏡で覗いて見ていると、向こうの家に半裸の美女がいます。
いつの間にか彼女を恋してしまった、この三流役者が、ある夜、彼女がインディアンの大男に惨殺されるのを覗いてしまい、さて、その後、彼の運命やいかに—-というサスペンス・スリラーです。
当然の事ながら、この映画はサスペンス・スリラーの神様、アルフレッド・ヒッチコック監督の熱烈な信奉者で、その作品も一作毎にヒッチコック監督タッチの演出技法を駆使し、オマージュを捧げ続ける、「殺しのドレス」、「ミッドナイトクロス」のブライアン・デ・パルマ監督が、ヒッチコック監督の代表作の「めまい」と「裏窓」を題材に、ひとつの物語に状況設定をしてオマージュを捧げた映画なのです。
恋してしまった女を三流役者が延々と追うところ—-。色情狂ともいえるこの女性との太陽の下でのラブシーンを、360度回転させながら撮りあげる場面。
元ネタがわかっていても、思わず膝をのり出さずにはいられない面白さ。
本当に、デ・パルマ監督はヒッチコック監督が好きで好きでたまらないのが、よくわかります。
師匠のヒッチコック監督も、ケレン味たっぷりの面白さがありましたが、デ・パルマ監督は、それをもっとどぎつく、血みどろの演出で我々観る者の心を氷つかせます。
ドリルが美女を刺し通し、更に下の部屋の天井へ突き抜けて血をしたたらせる描写等、本筋には関係のないところで、デ・パルマタッチを炸裂させて、まさしく地獄絵の歓喜と恐怖を増幅させていくのです。
とにかく、意外な真犯人の登場するラストまで、官能シーンを織り込んだ緻密な構成、凝った音楽の効果等、デ・パルマワールド全開で、刺激たっぷり、トリックいっぱい、映画の遊びを存分に楽しませてくれる作品です。