ザ・ファンの紹介:1996年アメリカ映画。この作品は、1995年にピーター・エイブラハムズが発表した小説を原作にした映画です。1996年に『トップ・ガン(Top Gun)』(1986年)などを手がけたトニー・スコットが監督し、映画化されました。キャッチフレーズは「人はスターを崇拝し、その輝きに陶酔する。しかし、憧れが憎しみへと変わると、スターを脅かす最も恐ろしい存在となる」というサスペンス映画です。
監督:トニー・スコット 出演:ギル・レナード(ロバート・デ・ニーロ)、ボビー・レイバーン(ウェズリー・スナイプス)、ジュエル・スターン(エレン・バーキン)、マニー(ジョン・レグイザモ)、ホアン・プリモ(ベニチオ・デル・トロ)ほか
映画「ザ・ファン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ザ・ファン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ザ・ファン」解説
この解説記事には映画「ザ・ファン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:プロローグ:ギル・レナードの野球哲学
熱烈なジャイアンツファンのギル・レナードは自身の野球哲学をこう語りました。「俺はワクワクしながら、その日を待つ。歓声をあげて贔屓のチームを迎える時を。シーズン開幕の日は確実にやってくる。この喜びがあるから、ファンは辞められない。…俺は過去の栄光の日々を思い出す。普通のファンより、入れ込みが激しいのは、元プレーヤーで腕に覚えがあるからだ。…野球観戦は今や俺の人生の一部。父と子を結ぶ大切な絆だ。…自分の為にプレーするという今時の選手。俺はむかっ腹が立ち。イライラが溜まる。試合に金を払うのはファンだ。それが選手たちに富と名声をもたらす。だが彼らにこの声は届かない。…連中の欲とかけひきには、もううんざりだ。あるべき姿に戻そうと俺は誓いを立てた」と。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:1996年、開幕戦前日:ギル・レナードとボビー・レイバーンの出会い
ギルは車でDJ・ジュエルのラジオ番組を聴きながら、仕事に向かう途中でした。ギルは、その番組に自動車電話で電話し、番組に参加していました。その最中、ギル愛用のジャイアンウォッチのアラームがなりました。ジュエルはその音を聞き、そのアラーム音がジャイアンウォッチであることを知りました。ギルは「俺は今、最高に興奮している。今までのとは違う。長いこと、こいつを待っていた。レイバーンのジャイアンツ入りさ…」とファンとして言いました。ジュエルは「それなら、今年はすんなりと優勝する?」と尋ねると、ギルは「俺の全財産賭けてもいい」と言いました。ジュエルは「彼は4000万ドルの値打ちがあると思う?」と尋ねると、ギルは「生涯打率3割1分。その2倍、3倍の価値がある」と答えました。ジュエルはこの番組の中でレイバーンに電話出演を企画していました。「さあお待ちかね。真のジャイアンツファンの夢と希望を担う元ブレーブスの名センター、5年連続ナリーグ打点王に輝く地元シスコ出身のボビー・レイバーンです」と紹介すると、レイバーンは球場に向かう車の中でした。ジュエル「まずシスコに戻った感想は?」と訊くと、レイバーンは「最高だよ。俺はここで育った。ジャイアンツは俺の街のチームだ」と答えました。ジュエルは「自分に4000万ドルの価値があると思う?」と訊くと、レイバーンは「俺だって人間に値段をつけるのは好きじゃない。だだ、どこのチームでも100%のプレーを心がけてきたことは確かだ」と答えました。それを聴いていたギルは「いいぞ、ボビー、その通りだ」と賛同しました。ジュエルは「ファンに対してはどうなの?…期待は大きいけど」と訊くと、レイバーンは「俺は選手である前に、いち野球ファンだと自負しているよ。プロ野球はファンで保っているという事を忘れてはいけない」と答えました。さらにジュエルは「プリモとのポジション争いは? 6年間、ジャイアンツのセンターを守ってきた彼があなたの加入でライトに追いやられて怒るファンもいるんじゃない」と意地悪な質問をすると、レイバーンは「プリモは全然気にしてないさ。チーム第一に考える選手だ。…一緒にプレーするのが楽しみだ」と答えました。この会話を聴いていたギルは「ボビーが大金貰って何が悪い。…何でボビーだけ悪者みたいに言うんだ。…ボビー、聴いているかい」と電話で話しかけると、レイバーンは「聴いてるよ。俺に味方してくれてありがとう」とギルに礼を言いました。ギルは「いいんだ。俺が言ってたという事を覚えておいてくれたら。…あんたを初めて見たのは、’82年の都市対抗、7回に満塁ホームランを打ったのを覚えてる。あの時以来、あんたは俺にとって別格の存在になった。レイバーンとジャイアンツは夢のドッキング。…今年の優勝は決まりだな。俺は誰だ」と気持ち良さそうに言うと、レイバーンは「ギルだろ」と答えると、ギルは「名前を覚えてくれた」と言って喜びました。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:1996年、開幕戦前日:ギル・レナードの1日
ギルは、サンフランシスコの「レナード&ギャリティ社」というナイフ会社で、営業マンとして働いていました。この会社はギルの父親が始めた会社でした。彼の父は腕のよいナイフ職人でした。営業会議の後で、上司からギルは、最近、仕事の成績が悪いことを指摘され、月末までに成績が上がらなければクビにすると宣告され、大口のマッキンリー社と契約を切られないようにしろと命令されました。しかし、ギルは父親の職人気質な性格を受け継いでおり、自社のナイフが安物で良い商品でないと内心思っており、さらに頑固で激昂しやすい性格が災いし、営業に行っても邪険にされた客に怒鳴るという態度なので、必死で彼なりに営業をしますが、なかなか契約が取れませんでした。しかも大口のマッキンリー社の社長と約束していた面会時間に、ギルは遅刻して、この日は会えませんでした。ギルは秘書に、明日の面会予定可能時刻を尋ねると、午後2時半なら大丈夫と言われました。ギルはメモ帳を見て、明日は楽しみにしていたジャイアンツの開幕戦を息子・リッチーと観戦する予定ともろに重なってしまうので、秘書に社長との面会時間を何とかしてくれないかと頼みますが、秘書は社長のスケジュールはぎっしり詰まっており、明日は午後2時半でしかダメだと言われてしまいます。ギルは仕方なく、その時間で約束をします。ギルは明日のジャイアンツの開幕戦のネット裏のチケット2枚をダフ屋から、高額の1枚200ドルで仕方なく買います。ただ、息子・リッチーと行くことを楽しみにしていました。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:1996年、開幕戦前日:ボビー・レイバーンの1日
レイバーンは、エージェントのマニーと球場のロッカールームで背番号33のユニフォームを見ます。レイバーンにとって11という数字は特別な意味があったので、「俺の背番号は11だ。譲れない」と彼は不平を言い、マニーに背番号を11にするように言いました。しかし、彼の意見は通らず、背番号11はこれまで通りプリモが着けることになりました。球場では、スター選手のレイバーンの加入のインタビューや撮影で、大勢の記者たちが写真を撮ろうとしていました。レイバーンは、プリモに一緒に撮ろうと誘い、プリモは「センター、取って満足か」とレイバーンに囁きますが、彼らは二人で撮影に応じ、球場を離れます。レイバーンはマニーの指示通りに、宣伝用のサイン会をこなし、その後、「スターと歩む会」からの指名で、入院中の子供のお見舞いに行きました。彼は、子供へのお見舞いにサイン入りのバットを持っていきました。彼はお見舞いに行き、子供を見て驚きます。相当の重病で死の寸前でした。しかも、彼は、その子供の名前が自分の息子と同じ「ショーン」で、更に驚き、意気消沈します。ショーンは、レイバーンに「明日の開幕戦で僕のためにホームランを打って」とお願いをします。彼は断ることもできないので「やってみよう」とだけ言って、子供と握手をして、お見舞いを終えました。その後、レイバーンはマニーにショックを受けたことを愚痴ります。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:1996年、ジャイアンツ開幕戦
レイバーンはエージェント・マニーの電話で叩き起こされました。マニーはレイバーンに、「プリモは、11番は自分のラッキーナンバーであり譲れない。もし50万ドル出すなら譲る」と言っていることを伝える。レイバーンは、半ば諦め「たかが背番号だ」と言って、マニーの迎えを待つことにしました。ギルは、離婚後の妻エレン・レナードの恋人・ティムの家で離れて暮らしている息子・リッキーと開幕戦を観に行くため、迎えに行きました。元妻・エレンはギルを信じておらず、リッキーを午後6時までに帰宅させないと、警察に連絡するときつく言いました。ギルは彼女の言葉を聞き流し、リッキーを車に乗せて、ミックジャガーの曲を流し、ノリノリで球場へと向かいました。その車中、ギルは、リッキーに自分が教えたバットでボールの打ち方を訊いたり、リッキーが家から持って来ていたグローブを見て、それがティムから買ってもらったことを知るなり、「安物だ」と言い放ったりして、リッキーをがっかりさせたりしていました。試合前の打撃練習をしているときに、ギルとリッキーは球場に着きました。ちょうど、そのとき、レイバーンが打撃練習に入ろうとしていました。お守りでいつもしている11という数字が刻印されたペンダントにキスして打撃練習をし始めました。リッキーは席に着くなり、ギルのホットドックを買って欲しいとねだり、ギルはそれを買って、リッキーに与えました。打撃練習も終わり、暫くして、アメリカ国家の斉唱が行われ、いよいよプレイボールのかけ声と共に開幕戦が始まりました。ジャイアンツの投手は好調なすべり出しを見せます。ギルは「いいぞ」とかけ声をかけますが、隣のリッキーはゲームを見ずに、踊るマスコットに夢中になっていたので、「ちゃんと試合を見てろ」と言いました。2番打者が右中間に大きな当たりを打ちました。センターのレイバーンとライトのプリモがその打球を追いかけました。レイバーンは「俺に任せろ」と声をかけますが、プリモも「このフライもらった」と言い、両者は捕球の瞬間にぶつかってしまいました。レイバーンはお守りの11番ペンダントを落としてしまいますが、この打球を捕球し、アウトにしました。しかし、彼は右脇を痛めたようで倒れてしまいました。ギルはリッキーに「あれは指示を出すのはセンターだ。ボビーが声をかけたのに、プリモが譲らないと」と教えます。試合は一事中断、彼はすぐに治療室に入り、痛み止めを注射してもらいますが、マニーはもうこの試合には休めと彼に忠告しますが、彼は病気の子供との約束もあるので、出場します。ギルは時計をしきりに見出しました。大口の取引先マッキンリー社の社長との面会時刻・午後2時半に入れていたからで、その時刻が近づいていました。その時、ファウルボールがネット裏のギルの方向に飛んできました。ギルはリッキーの足を踏んでも気にせず、そのファウルボールを捕球しようと客席をかき分けて追いましたが、そのボールは他の子供が捕ってしまいました。ギルは悔しがります。リッキーは「足を踏んだよ」とギルに言いますが、無視します。そして、ギルは時計をまた見て、リッキーに「電話をかけてくる」と言って、席を立とうとします。しかし、試合は、ジャイアンツのレイバーンの前の打者がヒットを打ち、満塁となり、得点のチャンスを迎えます。リッキーはホームランを要求しますが、ギルは彼に「ここは欲張ってはダメだ。最も美しいのは犠牲フライだ。確実に1点を取るほうが良い。それがチームのため。…人生と違って野球はフェアだ」とリッキーに教えます。ギルはまた時計を見て、席を立ちますが、次の打者はレイバーンなので、席に戻って、応援します。レイバーンは1球目を空振りし、痛みをこらえます。その姿を見て、ギルはリッキーに「痛みを堪えてる。あれがプロ魂だ」と褒めます。レイバーンは打席に入ろうとしますが、お守りの11番ペンダントがないことに気がつき、当惑し、タイムをとります。そんな姿を見て、ギルは苛立ちます。ギルは1球1球に熱くなり、周りの迷惑も考えずギルは立ち上がって声援をおくり、とうとう、後ろの席の人から「立つな。見えない」と文句が出ます。仕方なさそうに座ったギルは、そんな自分をじっと見つめているお婆さんを見つけ、彼女に「何だよ!クソ婆!」と暴言を吐き、隣のリッキーに「すぐ戻る」と言って、彼を1人おいて、仕事に向かいました。レイバーンは満塁ホームランを打ち、大歓声を浴びます。ギルは、レイバーンのホームランを見ずに走って車に向かい、着替えをして、汗を拭い、マッキンリー社の社長との面会に行きました。時刻は午後2時半を遅刻してしまいましたが、「社長は急遽、スケジュールを変更して、野球観戦に出かけた」と秘書に言われます。驚くギルに秘書は社長からの置き手紙を渡されます。ギルはそれにざっと目を通すと、怒って出ていきました。そして、ギルは再び、球場に戻りリッキーを探しますが、いませんでした。リッキーはあのお婆さんに連れられて、家に帰っていたのでした。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:ジャイアンツ開幕戦終了、ギルを見舞う不幸
開幕戦は終了し、ロッカールームでマニーは、レイバーンを褒めますが、彼はあまり嬉しそうではありませんでした。また、レイバーンは「あの病気の子供はホームランを見てくれたのか」とマニーに訊くと、あの子はホームランを見る前に息を引き取ったと聞き、彼はショックを受け、マニーに「もう重病の子供をお見舞いするのは辞めたい」と言いました。ギルは息子・リッキーと会うために家に行きます。元妻・エレンは大事な息子を一人残したと激怒し、ギルをリッキーに会わせまいと家の中に入れようとしません。ギルはそこを強引に押し入って、リッキーの部屋に入り、鍵をかけ二人だけで話をします。リッキーは寂しそうにベッドで寝ていました。リッキーはギルに「大リーガーになれる?」と訊くと、ギルは「やる気で頑張れば、何にでもなれる」と励まします。エレンは、ギルに警察から差し止め命令を出してもらったことを告げ、彼を追い返しました。翌日、ギルが会社に出社すると、上司に呼ばれました。上司は、マッキンリー社が取引を中止してきたので、事態収拾のために他の人間を行かせたことをギルに告げます。ギルは自分の客を取られたと怒りますが、上司はギルに「君の態度が原因なんだ。客が君を怖がっている。客を怒鳴りつけるなんて、営業マン失格だ」と叱咤します。ギルは、この会社は自分の父親が作った会社で、お前たちが乗っ取ったと怒りますが、上司は聞く耳は持っていませんでした。とうとう、ギルは解雇されてしまいました。家に戻ったギルに家庭裁判所の人間が来て、ビルに差し止め命令書を強引に手渡します。ある日、ギルはリッキーの入っているリトルリーグの練習を観に行きました。そこにはティムもいました。ギルはコーチがリッキーに投げる球を見て、「ストライクを投げろ」「手加減しろ」などの注文をつけ、リッキーが空振りばかりしている姿を見かねてグランドに出ていきました。ギルはバットを選択し、リッキーに近づき、バットを変えて打ち方を教えようとします。しかし、その時、狂気したエレンが出てきて、「家裁の命令書を見たでしょ。100m以上離れてろと書いていたでしょ」と言って、ギルをリッキーと引き離しました。ギルは仕方なく、家に帰りました。ギルは家でTVで野球観戦をしながら、思いにふけっていました。ギルの嫌いなプリモは絶好調ですが、レイバーンは不振に喘いでいました。ギルはやり場のない怒りを、自分を解雇した上司の車のフロントをナイフでめった刺しにして、穴だらけにして、解消します。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:レイバーン、謎のスランプ
レイバーンは不振に苦しんでいました。レイバーンが打席に入るたびに、観客からはブーイングが起きます。その中でもギルだけはレイバーンを応援し続けました。レイバーンはロッカールームで11番の自分のユニフォームを下に着て、その上から33番のユニフォームを着て、新しく作った11を刻印したペンダントを胸に試合に臨みます。しかし、5月最終戦になっても、レイバーンは開幕戦の満塁ホームラン以来、いいとこなしで、打席に入っても気迫が感じられない状態になっていました。ジャイアンツファンからは「アトランタへ帰れ」というプラカードまで出る状態になっていました。完全にレイバーンはスランプに陥っていました。ビルはジャイアンツのロッカールームに電話して、レイバーンを呼び出してもらいますが、彼が電話に出ても何もギルは言いませんでした。レイバーンはロッカールームで「相手がわからないのに、取り次ぐな」と言いました。その声を受話器で聞いたギルは電話を静かに切りました。エージェントのマニーは一計を案じます。それはDJ・ジョエル・スターンのインタビューを受け、あの満塁ホームランは病気で亡くなった子供と約束して打ったものだという美談にし、人気を回復させようというものでした。しかし、レイバーンは「死んだ子を出汁に使うのは気が咎める」と言って、断ります。レイバーンはホテルのバーで、DJ・ジュエルとプライベートインタビューに答えます。ジュエルはスランプに悩むレイバーンに「スランプは大いに歓迎すべきよ。…一生、演技し続けるのは無理。いつも完璧、ノーエラー、そんな芸当誰にもできない。自分に優しくしたら?ただの幻想じゃない」とアドバイスをしました。相変わらず、プリモは絶好調でした。ビルはそんなプリモを「目立ちたがり」と言い嫌います。絶好調のプリモは帰るときもファンからサインを強請られるが、対照的にレイバーンはファンから罵声を浴びせられます。ただギルだけが彼に「気にするな」と言って励ましますが、レイバーンにその声は届きませんでした。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:背番号11を巡る狂気~プリモの死
ある日の夜、ジャイアンツの選手が生き抜きに来るバーにギルは行きます。そこではプリモが友人たちと楽しんでいました。そこにレイバーンが1人で入ってきました。彼はプリモたちの席の隣に座ると、プリモたちは席を立ち、ビリヤードをし始めました。その様子を見ていたギルはレイバーンに声をかけますが、彼はギルを制して、プリモに二人だけで話がしたいと頼みます。ギルはトイレに入り、用を足していると、レイバーンとプリモが入ってきました。レイバーンはプリモに11番を譲れと執拗に迫りますが、プリモは頑として11番は譲れないと言い張り、二人は喧嘩を始めました。ギルはこの二人の会話を静かに聞いていました。孤独になったギルにとって、ジャイアンツ戦観戦だけが生き甲斐になってきました。そして、ギルの心の中では、昔からのファンだったレイバーンの存在が次第に大きなものとなってきていました。ギルはラジオ番組でまたレイバーンと話す機会を得ます。ギルはレイバーンに「あんたの苦しい立場は全部分かるよ。…11番の背番号については特に頭にきてる。…あんたは4000万ドルの値打ちのあるスターだ。オーナーやフロントは何を考えている。…どうしても背番号が譲れないというなら、クビにしてしまえ!」と自分の思いを話します。DJ・ジュエルは「まともな事を言うファンもいるのね。…交渉係に雇ったら」と言いました。レイバーンも「ギル、あんたのその情熱で口説けば、プリモの性根も変わるかな。今は藁にもすがりたい気分だ」と言いました。この会話をテープに録音していたギルは、何度もこの会話を繰り返し聞き、ある事を決意します。ある日、ギルはプリモの跡をつけます。プリモがホテルのサウナルームの1人で入るのを見て、ギルも入り、プリモに背番号11をレイバーンに譲るように話をします。しかし、プリモは案の定それを拒否しました。ギルはナイフでプリモを刺し、そして、プリモの肩に刻印していた11番の紋章をナイフで削ぎ落としました。プリモは出血多量でそのまま息を引き取りました。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:変わったレイバーンの人生観~おかしくなるギル
次の日の試合では、プリモの不遇の死を追悼するため、ユニフォームの袖に11の紋章を全員つけて、試合に臨みました。試合が始まる前に、プリモの死の追悼式が行われました。彼の死で、レイバーンは4番にすわることになりました。不振のレイバーンが4番にすわることに不満をもつファンも多くいました。しかし、予想に反して、レイバーンはこれまでの不振が嘘のように、打ちまくります。この日の成績は4打席4安打でした。レイバーンは試合後、マニーとゴルフの打ちっ放しに行きました。彼はマニーに「プリモを殺したいと思っていたが、…望んでいたわけじゃない」とプリモの死を悼み、自分を責めていました。プリモの死後、レイバーンはスランプから完全に抜け出し、絶好調になります。記者から彼はスランプから脱却した理由を聞かれますが、彼は「俺にもわからない」と答えました。それをテレビで見ていたギルは「わからない?少しは感謝しろ」と呟きます。とうとう、ギルは海辺のレイバーンの家の近くまで行き、双眼鏡で彼のプライベートまで監視するようになりました。ある日、彼の息子・ショーンが海で溺れる場面に出くわしました。ギルは急いで、海に入り、ショーンを助け出しました。駆けつけたレイバーンは、ギルに感謝します。しかし、レイバーンは彼がギルだとは知りませんでした。ギルは「カーリー」と偽名を名乗ります。何も知らないレイバーンは自宅にギルを招き入れ、自分の服に着替えていいと言います。ギルはシャワーを浴び、彼のクローゼットに入ります。そこにはブレーブス時代の彼の背番号11のユニフォームがありました。ギルはそれを着て、赤いスタジャンを上から着ました。そして、ギルは野球には関心がなく、レイバーンも知らないふりをして、彼と話をします。レイバーンはそんなギルを見て安心し、「野球の凝り固まったファンじゃなくてホッとしている。くだらん連中ばかりだ。…当たっているときは愛してるわ、打てなくなると平気で唾をかける。打つときも打てないときも同じ人間だとわかっていない。だから自分のためにプレーする」と本音を言いました。ギルは失望しながら、レイバーンがこれまで属してきたチームの帽子が並んでいるのを目にして、彼に許しを得て、ジャイアンツの帽子をとり、被りました。ギルはレイバーンに自分の投げる球を打ってほしいと頼みました。レイバーンは承諾し、海岸に出て、ギルの球を打ちました。ギルが「スランプを抜け出したきっかけは?」と訊くと、レイバーンは「バカバカしくなった。どうでもいいと思った。ベストを尽くして、完全主義者であろうとしたが、それは間違いだった。プリモの死で俺の人生観は変わった。…スランプ?たかが野球じゃないか。しゃかり気になることはないと思ったら、どうでもいいと思って気が楽になって、当たりだした」と答えました。ギルは「どうでもいい?それがあんたの新しい人生観か。冗談じゃない」と言うと、彼の頭めがけて投げ、彼に「野球より大切なものは何だ」と訊くと、レイバーンは「俺は息子を愛してる」と答えました。ギルは野球なんかどうでもよいというレイバーンの態度に腹を立て、「背番号を取り戻しただろう」と彼に言うと、彼は「背番号と不振とは関係ない」と答えました。ギルは静かに上着のスタジャンを脱ぎました。レイバーンはその姿に驚きます。ギルはブレーブス時代の自分のユニフォームを着ていたからです。ただならぬ雰囲気をレイバーンは感じました。ギルは執拗にレイバーンにプリモが死んで喜んでいると言ってくれと囁きますが、レイバーンはそれを拒み、ギルに別れを告げ、逃げるように家に帰りました。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:狂気に走るファン、ギルの目的
レイバーンが家に戻り、寝る前の歯磨きをしているとき、イヤな予感がして、息子・ショーンを家中探しますが、居ませんでした。おまけに駐車場の自分の愛車もありませんでした。レイバーンはギルがショーンを誘拐したと思い、愛車の電話に電話すると、ギルが出ました。ギルは彼の息子・ショーンを釣りに行こうと騙して誘拐したのでした。レイバーンはギルに「息子を返してくれ」と懇願し、望みを訊きますが、ギルは「俺のようなファンがいなければ、あんたはクズだ。…あんたとペアで有名になることだ」と言い、まだ状況を把握していないレイバーンにギルは「冷凍庫を見ろ」と指示しました。レイバーンは、そこで血だらけのプリモの11番の皮膚の紋章を見つけ、驚き、状況を把握しました。レイバーンは警察に連絡をします。ギルは昔、リトルリーグでバッテリーだったクープに会いにいきます。クープは、ギルが連れ来た子供がレイバーンの子供であることを打ち明けられ、写真を撮らせます。そして、ギルはレイバーンに電話をかけ、要求を伝えました。それは、明日の試合で、ホームランを打ち、写した写真を送るのでそれをジャンボスクリーンに映し出し、“このホームランを真のファンのギルに捧げる”と宣言しろということでした。クープはギルが犯罪を起こそうとしている様子を察し、子供を逃がすために、キャッチボールで暴投し、ギルがボールを捕りに行っている間に、子供を逃がします。ギルはクープが裏切った事に腹を立て、撲殺します。そして、ギルはショーンを再び捕まえ、ある場所に監禁します。
ザ・ファンのネタバレあらすじ:ギルの遺言「一言ぐらい礼を言ってもいいだろ」
レイバーン、ギルにとって重要な試合が始まりました。警察は必死で捜索しますが、ギルは見つかりません。ギルはDJ・ジョエルに電話しました。ジョエルは、聞き覚えのあるジャイアンツウォッチのアラーム音を聞き、犯人はギルだと知りました。ギルは「今夜は野球史上に残る大変な試合になる。…ボビーにとって忘れられない夜になる。恩知らずの人間には天罰が下る」と言い電話を切りました。ギルはこの球場内にいることがわかりました。警察は証拠のナイフから犯人はギル・レナードであると知り、さらに捜索をしますが、見つかりません。試合は進みますが、8回裏、レイバーンの打席、何も事情を知らない相手方は敬遠策をとり始めました。レイバーンは「打たせろ」と訴えます。するとボール2球が終わったところで大雨が降ってきました。試合は一事中断されます。レイバーンは試合再開を願います。雨足が少し穏やかになったころ、試合は再開されました。そして、レイバーンは再び打席に入ります。そして、ピッチャーに駆け寄り、「勝負しろ」と訴えます。ピッチャーはレイバーンと勝負します。雨がまた強くなってきました。2ストライク2ボールと追い込まれたレイバーンは、5球目を必死で打ちました。打球は大きかったですが、ホームランにならずフェンスに当たりました。しかし、レイバーンはランニング・ホームランを狙い、ホームベースに滑り込みました。審判は何度も「アウト」と叫びました。その声に聞き覚えのあるレイバーンは、審判が犯人ギルと分かりました。選手、警察がグランドになだれ込みます。ギルは飛びかかってきたレイバーンの肩をナイフで刺します。警官たちは銃を抜き、ギルを取り囲みます。レイバーンは警官を制しながら、ギルにショーンの居場所を訊きだそうとしますが、ギルは「知らないな。天国のスカイ球場じゃないか」と藁って答えました。レイバーンは「何が欲しい」とギルに詰め寄ります。ギルは「何も欲しくはない。俺のベストピッチを見てないだろ」と言うとマウンドに立ち、ナイフを持って振りかぶり、レイバーンに向かって「ファンはどうだ。ちょっとは気になるか?」と言いました。その瞬間、警官が一斉にギルに発砲し、ギルは倒れます。ギルはレイバーンに「一言ぐらい礼を言ってもいいだろ」と言うと、息絶えました。
ザ・ファンの結末:エピローグ:ギム・レナードの野球への思い
警察はギルの息子・リッチーに父・ギルがよく行くところを聞き出しました。そこはもう使われていない古いスカイ野球場でした。レイバーンはその球場に駆けつけ、息子・ショーンを探しだします。彼が無事に発見された場所には、ギルが集めたボビーや、野球グッズ、新聞の切り抜きでいっぱいでした。そして、トロフィーの奥に大切に額に入れられていた新聞記事がありました。それには「リトルリーグ決勝戦、ギム・レナードの決勝ホームラン」という見出しに、チームメイトから祝福され担がれているリトルリーグ時代の嬉しそうなギルの写真が掲載されていました。
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