荒野の七人の紹介:1960年アメリカ映画。黒澤明監督の「七人の侍」をリメイクした西部劇の秀作。シリーズとなり、続編が3作製作された。主演のユル・ブリンナーにとっては「王様と私」と並ぶ代表作。2016年にはデンゼル・ワシントン主演でリメイク。
監督:ジョン・スタージェス 出演:ユル・ブリンナー(クリス・アダムス)、スティーブ・マックイーン(ヴィン)、チャールズ・ブロンソン(ベルナルド・オライリー)、ジェームズ・コバーン(ブリット)
映画「荒野の七人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「荒野の七人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「荒野の七人」解説
この解説記事には映画「荒野の七人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
荒野の七人のネタバレあらすじ:起
馬に乗った男たちがある村落を訪れます。そこはメキシコのイズトラカン。男たちは盗賊で、毎年時期になるとやってきてはごっそりと収穫物を強奪してゆくのです。盗賊の首領カルベラは村民と会った上で「また収穫の時期になったら来る」と脅しをかけ、手下を引き連れ一旦帰っていきます。去年は人死まで出たこともあって、もう村民たちは我慢できません。長老に相談すると、自衛のための銃を買うべきだとのアドバイス。数人の農民たちが国境を越え、テキサス州の町まで出かけます。
荒野の七人のネタバレあらすじ:承
そこで彼らは、クリスという流れ者のガンマンに出会います。彼は町の反対に抗して、原住民の遺体を白人墓地に埋めてやったのです。人種偏見がないらしい彼に、農民たちは銃の購入について助言を求めます。購入理由を聞いたクリスは、銃を買うよりガンマンを雇うべきだと答え、スカウト役を引き受けます。ラック、ヴィン、ブリット、リー、オラリーといった腕に自身のある面々がクリスから話を聞き、村へゆくことを承諾。青二才ながら、クリスを尊敬してやまないチコも無理やり仲間に加わります。
荒野の七人のネタバレあらすじ:転
こうして7人のガンマンがそろい、農民の案内でイズトラカンへ。ガンマンたちは時間を無駄にせずに農民に銃の使い方を教え、チームワークのために心を打ち解け合って交流を深めます。やがてカルベラと手下たちが村を襲撃。激しい銃撃戦の末、ガンマンと村人は盗賊たちを一旦追い返します。反撃させないためには盗賊全員を根絶やしにする必要があると見て、クリスは彼らのキャンプを急襲。しかし、そこはもぬけの殻です。実は村人の1人が裏切り、盗賊を手引していたのです。
荒野の七人の結末
村は盗賊が占領。7人のガンマンは近づくことができなくなります。一旦は村を見捨てて去ろうとした彼らですが、クリスの決断により戦いを続行。必死の戦闘により、ようやくカルベラとその一味を全滅させます。戦いは熾烈で、ガンマン側もハリー、ブリット、リー、オラリーたちが犠牲となりました。戦いが終わり、長老に促されてクリスたちは村を去っていきます。ただ、村の女性と親しくなったチコだけが、農民として残ることになるのです。
“黒澤明監督の「七人の侍」の舞台をメキシコに設定して映画化した西部劇の痛快作 「荒野の七人」”
エルマー・バーンスタインの軽快でダイナミックな心躍らせる、この「荒野の七人」のオープニングのテーマ曲は、「大いなる西部」「アラビアのロレンス」と並んで、”これから何かとてつもなく面白い事が始まるぞ”という予感を、いつ聴いても感じさせてくれます。
この映画「荒野の七人」は、黒澤明監督の「七人の侍」に惚れ込んだユル・ブリンナーが翻訳権を買い取り、「七人の侍」へのオマージュとリスペクトを捧げて、舞台をメキシコに設定して映画化した西部劇の痛快作です。
この映画のタイトルにきちんと、”東宝映画「七人の侍」より”と、クレジットされていて、本家の「七人の侍」のような重厚さこそありませんが、アクションの見せ場がふんだんに用意された、映画史に残る、上質の娯楽作品だと思います。
農民のために野盗の群れと戦う七人のガンマンには、まず、リーダー格のクリスに黒ずくめの服がピタッと決まって、リーダーの風格漂う精悍なユル・ブリンナー(「七人の侍」の志村喬の役)。クリスの片腕的存在の参謀役のビンに、ユル・ブリンナー以上のカリスマ的な存在感を示すスティーヴ・マックィーン(稲葉義男の役)。
無口なナイフ投げの名手ブリットに、粋でダンディーなジェームズ・コバーン(宮口精二の役)。
インテリくずれのニヒルなリーに、ロバート・ヴォーン(新しく作られた役)。
可愛い子供たちの身代わりになって、壮烈な戦死を遂げる、子供好きのメキシコ男ライリーに、チャールズ・ブロンソン(千秋実の役)。
金しか頭にない曲者ハリーに、ブラッド・デクスター(加藤大介の役)。
そして、七人のうちで一番若い、血の気の多いチコに、ドイツ映画界から招かれたドイツのジェームズ・ディーンことホルスト・ブッフホルツ(三船敏郎と木村功を一緒にした役)。
マックィーンもコバーンもブロンソンも当時の映画界ではまだ新人で、この映画が彼らにとってブレークするきっかけとなった作品で、文字通りの出世作になったのです。
華麗で見事なショット・ガンさばきを見せるマックィーンと、セリフらしいセリフは一言もないナイフ使いのコバーンと、朴訥な中にも男の渋さと哀愁を感じさせたブロンソンは、特に我々映画ファンに強烈な印象を残してくれました。
監督は「OK牧場の決闘」「ゴーストタウンの決闘」など西部劇の痛快作を数多く手がけているジョン・スタージェス。
この監督はなぜか汽車の好きな監督で、自分の映画に必ずと言っていい程、汽車を登場させていますが、この映画にもSLを使っているシーンが出て来ます。
従来の西部劇がひとりの強いヒーローを主人公にしていたのに対して、この映画は七人の集団グループを主人公にしたところが新鮮で、その後の西部劇の映画史の流れの中で、新しいタイプを作ったと言えるかも知れません。
この映画は世界的にも大ヒットを記録し、以後、このシリーズは4作目まで作られる事になるのです。
当時としては珍しいメキシコ・ロケの作品で、メキシコの乾いた風景がこの映画の雰囲気に、実によくマッチしていたと思います。
仇役は名門アクターズ・スタジオ出身の名優イーライ・ウォラックとコバーンにナイフで殺される、西部劇ではお馴染みの名脇役ボブ・ウェルキが、憎々しげに悪役を楽しんで演じていたのが印象的でした。
これら七人のガンマンは、野盗との何度かの攻防の末、結局、生き残ったのは、三人のガンマンのみ-。
リーダーのクリスがラストで呟きます。
「勝ったのは俺たちじゃない。百姓だよ」と。